☪ SEXY TONIGHT……! ☪ ⑮ さーしーえー
「──"せくすぃー"を忘れし愚か者がぁぁああああッッ──!!! 」
『 フォハハハ!! 弱者は、大きな声を出しよるわぁぁぁ────!!! 』
────ドドドドドドドド!!!!!
{{ て、店長……! }}
店長と、白ブリーフの攻防が始まったわ!
格闘職のスキルかしら……店長が、流路の輝きと共に、打撃を叩き込む!
でも、伯爵の三対の転換路は、その殆どを無効化してる……!
う、動けない私……なんて歯痒いんでしょう!
{{ くっ……て、店長……! }}
まさか、ここまで自分が役立たずになるとは……!
八つの白い十字架の檻は、この場所に私を縛りつけている!
紫の十字架を持つ手には、力が、入らない……!
{{ 私のカラダの半分が魔の者であることが、災いしているんだわ! 伯爵の流路に、少しでも隙があれば……! }}
すぐ側には、戦う店長を見守る、老夫婦と少女……!
そして、乱立する、十四の乙女の像……!
ガルンは心にキズを負い、黒い球体となってしまっている!
{{ ……ッッ! ガルン、ガルン! 目を覚まして……戦って! 貴方は確かに、無から生まれた存在かもしれない。でも、それは……その心は偽物なんかじゃあないわっ……! 他ならぬ、私だからこそ、よくわかるのよッッ……! }}
う、動かない……! ガルンが、動かないよぅ……!
あのブリーフ男の言葉は、そんなにショックだったの……!?
お願いよ……起きてよ、ガルンぅ……!
「……ぉい、悪魔っ子……」
{{ ──ぁッ……! や、ヤンっ、貴女……! }}
「はっ……呼び捨てか……いいぜ、これで悪魔と友達か? あ、くっそ……いってぇぇ──……!」
{{ 何度も、ぶっ飛ばされていたけど、大丈夫……!? }}
「はッ、その台詞、そのまんま返すぜ。胃の中のモンぶちまけてただろうがよ……──くっそッ! ポーションが効きづれぇ!! "属性魔法やられ"か……?」
ヤンは、衣服から小さな剣を抜き────……!
「ジっとしてな──……シッ──!!」
{{ ──っ! }}
鋭い一閃が、私を拘束している白い十字に、斬りかかる──!
────ガキィンン!!!
{{ ──! あ、貴女…… }}
「くっそ……!! 硬ぇ!」
{{ ……ダメよ。一度起動した転換路は、自己の防衛のために魔力の結界を張るようだわ……それに、彼女たちに接続されたままの転換路を破壊したら、どんな影響を及ぼすか、わからないっ……! }}
「なっ!? じ、じゃあ、どうすればいいってんだッ!?」
{{ ……何とか、ヤツの隙を作って、私の"転換路"で、接続を切る! }}
「や、だから、どうやって……」
{{ ……伯爵本人を、叩くしかない!! }}
「……はっは! オーケーオーケー、オーライオーライ……計画考えんのヘタクソ悪魔チャンだな……? あんなにダンナがラッシュ決めてもダメなのに、果たして隙なんか、できっか……?」
{{ ぅ………… }}
「うおおおおおおおおおおおお────!!!」
『フォハハハハハハハハハハハ────!!!』
白と黒の、激しい打ち合い!
しかし、少しばかり、店長の方が圧されてるっ……!?
「──ちっ! てゆーかイニィ! ガルガルはこれ、どうしちまったんだよっ!?」
{{ うっ……伯爵の言葉に傷ついたみたいで……今は殻に閉じ篭ってしまって…… }}
「おいおい……!? 冗談はよせよッ!? 引きこもるのにも、タイミングってモンがあんだろうがよっ……!!」
真ん丸の球体のようになったガルンを見て、複雑な表情になるヤン……!
今の私には、視覚としてそれを捉えることができる。
そのせいか、私の心が、不安に駆り立てられる──。
{{ まさか、ガルン……貴方自身が、"くろいあな"に、ならないわよね……? }}
その時、音が響いて!
───ガンッッ……!
{{ ──!! 店長ッッ!? }}
「──そんなっ!? あのダンナが、膝を付きやがったぞ!!」
『 ふ、隙だらけだなぁ……?
エ ロ テ ィ ッ ク、
ウ ィ ザ ー ド ォ ォ !!! 』
「ぐっ、ぐぉおおおおおお──!!!」
────どごぉぉおおお!!!
──危ない!
エロメイネス伯爵は、アブノ店長の膝を踏み台にして、顔に膝蹴りを入れそうだったわ────!!
すんでのところで、店長は腕でガードする!!
が、その勢いで、後ろに飛ばされてしまった!!
ブリーフ伯爵は、空飛ぶ十字架たちのトリッキーな動きの合間に、強力な肉体技をかましてくる!!
見た目も、攻め手も、厄介な相手だわ!!
───ズザザザザッッ!!
{{ あっ…… }}
ふっ飛ばされた店長は、ちょうど丸くなっているガルンへと、ぶつかった……!!
『 ………ル 』
「うおっ、ガ、ガルン殿、か……!?」
────ドプン、と。
まぁるい漆黒の球体に衝撃を吸収されて、店長は無事みたい……。
僅かに闇の球体に沈む、店長の鍛え抜かれた肉体。
その時、ガルンの心が少しだけ、店長に流れこんだ──……!
私にも、その"心の色"が、見る事ができた。
「こ、これは……!」
{{ ……ガルン、貴方……! }}
『
ガルンハ、ニセモノナンダ
ガルンハ、ナイモノナンダ
ガルンハ、ミンナトチガウ
コワイ カナシイ ツライ
ガルンハ、ホンモノデナイ
ガルンハ、イテヨイノカナ
ガルンハ、ナクナルノカナ……
』
「なん、と……」
ガルンから、店長が離れる。
その心を、しかと読み取ったんだ。
そう。ずっと、不安だったんだね。
自分が、みんなと、違うってことに。
「……」
敵の前ではあったけど────。
店長は、そっと手を、ガルンにそえて、言ってくれた────。
「ガルン殿……いや、ガルンよ。其方の寂しさ、そして孤独……我にも、よくわかるのである。自らが、"どうやら他の者とは違う"……それは、とても寂しいものだ。だが、だかなッッ! "世界でひとつだけのせくすぃー"を、まず、自身が認めてやらねば……! なにくそと、己を貫く意思を見せねば……! そうでなければ、悲しいではないか……!」
『 …… 』
{{ ガルン……、店長…… }}
黒い球体は、反応を示さない……!
店長は、少しだけ黙っていたけど、
やがて、私とヤンの方を向く。
ガルンが気になるだろうけど……今は、敵の前だものね。
でも、私の身体は、白の十字架に縛られている……!
さっきから、私は、仰け反るようなポーズで、
光に拘束されているのだ。
ちょうど、前に胸をつき出すようなポーズで……。
は、恥ずかしい……、……。
「イニィ殿……すまぬ」
{{ っ! いいえ! これは、私の未熟ッ……! }}
「……先ほどの話、少し聞こえていたのである。伯爵に隙を作れば、あの"せくすぃーがーる"たちの流路とリンクしている転換路を、切り離せるのであるか?」
「はっ、すげぇなダンナ……ファンタスティックな地獄耳だぜ」
{{ ……か、可能性はありますっ! ただ、白の転換路を壊してしまうのはマズイかも……っ!! }}
「……"転換路"は壊さず、伯爵の動きを止め、しばらくの間、"転換路"を操作させない……こんなところであるか。ヤン、いくぞ」
「はぁぁぁぁ……すっっげぇ無茶振り、だよな?」
「──たのむ」
「あー、あぃあぃ……くっそ! 仕方ねぇっ! すんばらしいブラジャーのためだっっ!! ヤンさんは、闇に踊るぜッッ──!」
{{ ち、ちくしょう……! こんな時に、私だけ動けないなんて……! }}
「──! ふ、イニィ殿よ……」
……店長の人差し指が、私の口に、そっとあてられた──。
{{ んっ…… }}
「……そのワードは"ノンノンせくすぃー"であるぞ……? せっかくの"約束されしせくすぃー"が、台無しになってしまうゆえ……」
{{ お、お戯れを…… }}
「ふ……」
店長は仮面の下で笑い、
再び武闘家たる構えをとる!
ヤンは、両手の剣をくるくると回し、構えた!
『 ……さて、おしゃべりを待ってやった神に対して、何か言うことはあるかな? 』
「「 とっとと、服を着ろぉおおお!!! 」えっ──!?」
まさか、店長と台詞がかぶるとは思ってなかったわよね!
ヤンは、ちょっと「えっ」という顔になったけど、今は戦いの最中!
すぐに集中するっ!!
「みせてやんよ……"苦無・殺取"──!」
昼間なら、ちょっと恥ずかしい台詞を決め込んだヤンは、白いブリーフめがけて、鋭き刃を放つ──!!
────ブォン!! シュラララッッ──!!!
『 ……──ほぉう? 』
彼女が腕を振るう度、小さな刃が飛び盛る!
その数、ひと振りで、八つほど──!
そのしなやかな身体のどこに、数多の刃が隠されていたのか!
刃の連撃は、続いていく!
シュラララララ────……!!
「──シッ──!!」
『 神に向かって楊枝を投げるか? 愚かしいことよ…… 』
伯爵の嘲りを無視し、小剣を投げ続けるヤン!
でも、剣は聖なる壁に弾かれて、
彼の周りに落ち、刺さり、針山となっていく!
{{ や、ヤン……! 貴女……!? }}
「イニィ……あきらめんな、隙をねらえ」
誰もが、無駄な事をしていると、そう思いつつあるような光景!
でも、次の瞬間────!!
────ちゅおおおおおんん……!!
{{ ──!! }}
──金属の、たゆたう音!!
地面に落ちていた少剣の幾つかが、浮かびあがった──!!
「──よっ、とらァァ!」
まるで、見えない糸に、引っ張られるような──!!
{{ まさに、"魔法の糸"──!? }}
『 ──っ! くおお……! 』
その動く剣は、白い十字架の防壁の、中!!
油断しきっているブリーフ野郎の顔に、吸い込まれる──!!
シュッ……!!
刃が、顔をカスる──ッッ!!
それに合わせて、店長が踏み込むッッ────!!
いっけぇぇ────!!
「ふぅおおおッッ!! "奥義"ッ、"ダークネス・ストレイト"ぉぉおおああ────!!」
ちょっと恥ずかしい名前だけど、一応正式な"格闘職"のスキルっぽいのを発動して、踏み込み、闇の波動を殴りつける、アブノ店長────!!
『 ……っ!! 』
……ガキィィイインン!!
拳は、十字架に受け止められてしまった!!
でもっ、店長はッッ……、
────ねじ込む! ねじ込む! ねじ込む!!
「……!! どらっしゃああああああ──……!!」
すごい、気迫だわっっ!!
『 ……っ、ちぃぃぃい──!! 』
ガガン……と。
伯爵のホワイトブーツが勢いに負け、一歩さがる!
──そう! 自称・神を、一歩さがらせたのだ!!
『 ……!! 貴様ァァああああ!! 』
「っ! むうぅ……!!」
──!!
白い光が爆発し、思わず店長が飛び退く!
伯爵の顔には、切り傷!
ヤンが、にひひと笑い、余計なチャチャを入れた!
「おぉ──や、おやおんや……神たまにも、赤い血が流れてやがるたぁなァ……私とおんなじ色ってなぁ、ヘドが出るがよ? ハッハー!! 神たまごっこのクソ貴族が……服着ておウチ帰んな?」
{{ あっ……アンタ、なんて事言うの……ッ!! }}
ちなみに、ここがおウチじゃないのっ!!
『 ぐ、ぐおおおおおおおお!! 貴様ァァあああああ!! 』
そ、そうか……!
ヤンが伯爵を挑発したのは、わざとね!!?
怒りは、時に思わぬ隙を作る事を、ヤンは知っているんだわ!
……でも。
白き王の白ブリーフと白ブーツが、狂ったように輝きだす!!
────ィィイイ!!
{{ っ! いけないッッ!! }}
「むぅっ!? まっしろである──!!」
「ちぃっ──!! でも、これだけ眩しけりゃ……!」
眩しさは、チャンス!?
ヤンは、残りのバラまかれた刃にも、見えない糸を通す!
心の色を見て、わかる──!!
"苦無・殺取"!
魔法流路を糸状にして刃物を操る、
ヤン・センマイだけの、ユニークスキル────!!
「くらっとけや、パンいちがぁぁああ──!!」
『 ……舐めるなよ、小娘 』
「──ッ!?」
伯爵が! 糸を! 掴んだ!!
見えないはずの、糸を!!
光が、糸を逆流する────!!
「ぎゃっ──!!」
{{ ああっ──!! }}
闇の狩人の身体が、光る!!
プスプスと、煙……!
「き、きゅぅ────…… … … 」
{{ バカぁぁぁああ!! }}
ヤンが……気絶しちゃった!!
「な……!? ヤンよ……!?」
『 ────神を目の前にして、女の心配か 』
「はっ……!」
『 ────エ ロ テ ィ ッ ク
バ ッ ク ド ロ ッ プ ゥゥゥ!!! 』
「うおっ、ぐぁぁぁあああああああああ───!!!」
{{ て、てんちょおおおおおお────!!! }}
自分から出ているのが信じられないくらい、
大きな、声。
……ゴッ…………ズ、ズン……。
『 ……ふぉ……フォッ、フォッ、フォッ……フォハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!! 』
{{ そ、そん、な…… }}
負け……負けちゃうの……?
どこかで、信じこんでいた。
あんな、とんでもない変態さんが、
普通の人に、倒されるはずがないって……!
でも、違った……!
彼は、あんなだから、
多分、一人で戦ってきた……!
助けてあげなきゃあ、いけなかった……!
あの、黄金の少女が、私にしてくれたみたいに……!
一人だけでは、ぜったいに、できないことがあるから……!
それなのに、私は、どうして、こんな────……!
『 フォハハハ……私は髪の色しか気にしていなかったが、どうやら白の少女たちには、聖なる属性の才を身に宿した者が多かったようだな……私の血筋も相合わさり、より、光の力が強化されておるわ……フォハハ、フォハハハハハハハ……!!! 』
{{ く……! }}
伯爵の笑い声と共に光り輝くブリーフは、不快感しかない……!
『 さて……。エロティックなポージングで拘束された、悪魔の女よ……。おや、残るは、お前だけだなぁぁ……? 』
{{ …… }}
ヤンが、倒れ。
店長が、倒れ。
ガルンは、動かない。
そ、んな。
いや、これは、私の油断が招いたこと。
『 その髪の色は、まっっったく私のシュミではないが……かつての叡智が詰まった、その十字架は……私の踏み台くらいには、なろうかな? 』
{{ きさまぁ……! }}
私の、産みの母からの髪と、
私の、産みの父からの贈り物を、よくも……!
私の身体に迫る、伯爵。
にらみ、つける。
ふっ……と。
影が、さえぎった。
────ラミエリだった。
「…………」
{{ あ、貴女…… }}
『 ……おやおや、こんばんは。綺麗な髪の色だねぇ…… 』
伯爵が、反吐が出る冗談を吐く。
多分、両手を広げたラミエリは、泣いている。
震えながら、私を庇ってくれている。
「わ、ワシの孫は、なんという、勇敢な孫じゃ……」
「ら、ラミエリよ……誇り高い、我が孫娘……」
{{ よ、よしなさい……立てるのなら、逃げなさい…… }}
……ふるふる、と。
ピンク色の髪が揺れ、向こうを向きながら。
……確かに、綺麗な髪だわ。
「……わたしっ、男の子ならよかった!!」
唐突に、言う。
「もし、男の子なら、あなたのこと、ぶっとばすくらい、強くなってやったんだ……!! もし、私が男の子なら……っ!」
『 ……フォハハハ、ハハ、ハハハハハハハハハハ…… 』
伯爵が、デコを抑えて、笑っている。
久しぶりに、消えて無くなったほうがいいと思う、人間だ。
『 ……君には、私の大切なモノを守ってもらう予定だったんだが……冷静に考えると、既に私は、最強の防具を備えていたな…… 』
{{ ──な!? ま、まさか……!! }}
『 ……悪魔と共に死ぬ前に、教えておいてやろう……"ブリーフこそが、最強の、下着だ"……!!』
伯爵の、筋肉まみれの腕が、あがる────。
{{ ──逃げなさい!! ラミエリぃぃぃいい────ッッ!!!! }}
「う、うううぅ〜〜〜〜!!!」
『 ────────死ね 』
─── グ ォ ォ オ オ ・ ・ ・
────。
────。
────。
────青白い、光。
{{ ────え……? }}
『 バ カ な …… ! 』
────止まっている。
────伯爵の、振り下ろされた、拳が。
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────青白い光に、受け止められて。
────私は、見たことがある。
────この光を、私は、知っている────!!
{{ ──"多重積層アナライズコーティング"ッッ!! }}
────そう、これは。
────かの、黄金姫が使う、光の障壁。
──黄金を支えてきた、もうひとつの、神秘。
『……──ニ"ャフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ……!!!。』
{{ あ…… }}
───いた。
───浮いている。
───私は、よく知っている。
───だって、
──────千年の時を、共に過ごしたのだから。
『──おんどニ"ャァァアアアアア────ッッ!!!
イニィちゃんに:何しくさっとんのニ"ャァァァアアアア────!!!。』
───彼女と同じ黄金が、鳴く。
───わかる。
───ぶちギレている。
『 ……何者だ、キサマ…… 』
『──名前さきニャのれニャ:失礼ニャ……。礼儀って大事ニャ!。』
『 ……私の名『──キサマに:ニャのるニャニャどニャい!。』貴様ァァああああ……!!! 』
{{ ……はは、かわんないなぁ }}
黄金の歯車のひとつが、
私たちに、味方してくれる。
『──ニャむぅ。イニィちゃん:助けにきたニャ☆。』
{{ クにゃウン……ナンバーセブン!! }}
────反撃の、のろしだ。
ボスにも被せるヌコ!d(ゝω・´○)+