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☪ SEXY TONIGHT……! ☪ ⑬ さーしーえー

GWはマジふにゃふにゃでした^^;(笑)

さすがゴールデン……! 忙しいぜ!(。>д<。)




 おらず、

     おらず、

         おらず。



 桃の乙女が案内する先は、人の気配がない。


 先ほど、私兵たちが連れ込んだ部屋からも、


 他の乙女たちは見つからなかった。


 いくつかの部屋は、ガレキとなった。


 桃の乙女は、戸惑う。


 あとは、あそこしかない。


 でも、そこには、必ず、あの男もいるはずだと────。




 変態は悩んだ後、ゴーサインを出した。


 変態、悪魔、魔獣、狩人、そして、乙女。


 踏み入れる────。



 ──ガチャコ────。




 大きな食堂には、僅かに月明かりが漏れるのみである。


 本来あるべきである、食事を乗せる机はなく、


 背もたれが異様に高い椅子が、乱立している。


 過剰な壁の装飾は、光をテラテラと返し、不気味だ。


 天使、悪魔、植物の(つる)のような彫刻。





 ────その暗闇に、奴がいた。


 部屋の真ん中に、静かに、座っていやがったのだ。




 …………。




 言葉を飲む、闇の騎士たち。


 桃の乙女ですら、冷や汗を流すも、声は出さず。


 変態が、一歩、踏み出し。


 声をかけようとした瞬間────……、




『 ……──キミ達は、"シルクモスラン"を知っているかね──? 』


「「『「「 ──……ッ! 」」』」」



 ────伯爵は、声を発したのだ。



 いやに脳に残る、深い声の響き。


 (うつむ)き、(ひじ)をついて座る彼の顔は、よくは見えない。


 白い、ふくらはぎまでを隠すブーツを()いているようだった。

 

 髪は、男性にしては長い。


 うねうねと、垂れるそれは、白。


 全身を覆う服に、僅かだが、光をはね返す刺繍が見える。



『 ……──キミは、"シルクモスラン"を知っているのかね──? 』



 暗い人影は微動だにせず。

 座して、また、場にそぐわない問いを繰り返す。



「……なぁおい、あいつ……私らをバカにしてんのか……?」



 闇の狩人が、変態に聞く。

 答えるは、伯爵。



『 ──なんだね。夜分に訪ねてきた割には、ずいぶん失礼な輩だな……屋敷の主の問いかけにも、答えぬとは…… 』


「……」



 奇妙だが、伯爵の筋は通っている。

 変態は、大食堂の入り口に立ち、返礼した。



「……我も、服飾に身を置く者の(はし)くれ。もちろん、知っているのである。"シルクモスラン"は、遥か太古から家畜化が進み、完全に野生回帰能力を失くした大型の(モス)系の魔物である……。()(まゆ)からは良質なシルク糸がとれ、我らの衣服の発展に貢献している……」


『 ほおぅ……! 服の面積が少ない割には、学があるじゃあないかね……! 』


「……」



 敵であるはずの男の、謎の愉悦(ゆえつ)

 変態たちは皆、厳しい目つきで彼を睨みつけている。


『 そぅ、"シルクモスラン"は、"飼い慣らされし完全"……! かの幼体は、野に放てば力は無く、一日と待たずバート系に(ついば)まれるだろう。人の手によって世話をされ、初めて(サナギ)となり、羽化し、天使のような羽根を広げるのだ……! 』


{{ ……何を言っているのかしら、この人は……。所詮、ヒトくらいの大きさの、おっきな蛾でしょう…… }}



 悪魔の小言に、伯爵は見向きもしない。

 彼の興奮は、天へと伸ばされる両手に表れている。



『 ……おお、おお! なんと美しく、儚く、素晴らしいことか! 世話をされねば、失う命で! ワーム(幼体)クリサリス(サナギ)エンジェル(成体)! くくくくく、客人たちよ……更に、シルクモスランの素晴らしい所は、なんだと思うかね? 』


『 ガゥルルルルルロロロロロ………ッッ!!! 』


「さ、さっきから何を(おっしゃ)っているんですかぁ、伯爵サマはっ……!?」


{{ ……ラミエリさん、こんな頭のおかしい男に、敬称など要りませんわ…… }}


「悪魔チャンは今いいこと言った。こいつにサマ付けするなんざ、ドブに金を捨てるようなもんだぜ……」 


「……エロメイネス伯爵よ、何のつもりであるか……!」



 疑いようもなく、乙女達の尊厳を(けが)す行いをしているであろう男。

 親しげに、おしゃべりを楽しめるものか。

 黒の者たちは、白い髪の男へ、

 嫌悪を(あらわ)にする。



『 は、は、なんだ、難しかったかな? いつだって、答えはシンプルなのだ……考えすぎてはいけない! ……そう、答えは、"白い"、ことだよ……、ふ、ふ……! 』


「…………」


「……ダンナ、こいつ、イカれてやがる……」



 エロ伯爵は、椅子でガクガクと震え、笑っている。



『 ──ああ、ああ! そうさ! 飼い慣らされ、生命としての尊厳を捨て! イモ虫から、天使へと変貌する、その姿! 完全!! "完全変態"だっっ……! う、美しい……! そして、その美しい未来を殺す代わりに、純白の糸を生む、その健気さたるや……! 白、白、白……! "白"は良い……ずっと白だ……ふふふふふ、白いんだ、ふふふ、ふふふふふ……! はっひひ、はははははははは………!! 』


「う、うぇぇ……! なんなんですか、このひとぉ……!」


『 ガルルッッ……! 』



 エロ伯爵は、取り憑かれている。

 何が、言いようのない、幻想に。

 (おび)える桃の乙女を、魔獣が庇う。



『 ふ……! ふ……! ふぅ……。さぁて、そこで、だ……! こう考えるのは、至極ふつうの事(・・・・・)だろう……。この少女達もまた、シルクモスランのように飼い慣らせば、そして、茹で繭のように未来を奪えば……"美しい何かが、生まれるのではないか────、とな? 』



 ────パチン、と。



 エロ伯爵が指を鳴らすと、

 暗闇に、光の魔石が浮かびあがる。。


 そこに、照らしだされたのは───……!



「───!!」


{{ ……ちっ }}


『 ……ガゥルガルゥゥ──ッッ!! 』


「……このやろッ……!」


「ひ、ひどい……!」



 ───床に、鎖で繋がれた、白の乙女たち。


 はだけ、力なく、項垂(うなだ)れている。

 服など、ないに等しい。

 本来、彼女たちには、輝く色気があるだろう。

 だが、ボロ布のように横たわる身体は、

 ただ、ただ、哀れである──……。


 先ほど、兵に連れられていた少女たちも、

 床に打ち込まれた、金属製の杭に繋がれた鎖に、

 手足を絡め取られている。


 ──────その数は、14。



『 見たまえ……! なかなか"エロティック"だろぅ……? くくく、我が"よりすぐりの幼体"たちは…………!! 』


「……、ッ……! 貴様ぁッ!! この"せくすぃー"たちが、イモ虫(ワーム)だとでも、ほざくのであるかぁぁあああ──ッッ!!」


『 ……! "せくすぃー"、だ、と……? ……ふ、ふふふ、ふふふふふ、ははははははははははははははは!!! お、おもしろい!! おもしろいぞ!! ははは!! なるほど!! お主はどうやら、今宵の客に、ふさわしい者のようだ!!! ふは、ふははははははははははははははは────!!! 』


「ぬぅぅぅぅ……!」


{{ ……店長、もういい。被害者は、みんな揃っています。助けた後で、ヤツをぶん殴って、顔を踏みつけながら聞けばいいんだわ }}


「……おぅよ。悪魔チャンの考えにノッたぜ。性に合わねえんだよ、こういうボンクラ貴族はよォ……!!」


『 ──ガルルロ、ガルガルガルルルゥゥ……ッッ!!! 』



 エロ伯爵の、愚かな態度に、

 怒りを表す、夜の騎士たち。



 黒の変態は、覇気を纏い、

 黒の悪魔は、十字を構え、

 黒の魔獣は、黒炎を噴き、

 黒の狩人は、双剣を薙ぐ。



 ────愚かなる白に、逃げ場などない。




『 ……ふぅ──……。バカな部下共は女を鎖に繋いだ後、キミ達の暴れよう(・・・・)を聞き、逃げてしまったようだな……。まったく美しくない奴らめ、ふん、ゴミだな。なるほど、自ら消えるゴミとは、なかなか優秀じゃないか…… 』


「……余裕ぶっているのも、今のうちであるぞ! エロメイネス伯爵よ……!! このメンツを、お前のような線の細い貴族が、一人で相手にできると思っているのであるか!!」



 未だに余裕を失わない伯爵を、変態が、まくし立てる!!

 しかし、エロの笑みは消えず────……。



『 ふふふ、なるほど、なるほど……まるで、私は物語の悪役のようだな……だが、だが、だがだねぇ……それは、勘違いじゃあ、ないのかな? ───キミたちは"黒"で、私は"白"……なのだよ? 』



 伯爵は、ゴソリと。

 自らの胸元から、取り出す。



『 ────さぁて、これ、なぁ──んだ? 』



 ……それは、緑色の、クローバー。

 三枚の、大きな葉が、集まったような────。



「 ……────"ジェム(・・・)"だッッ!!!!! 」


「「「──なッッ──!!!?」」」



 狩人が、叫ぶ。

 エロメイネス伯爵は、ジェムの開発で富を得た貴族である。

 その知識は、職人(しか)り、学者(しか)り。 

 当然─────……


 ──"新型の魔導ジェム(・・・・・・・・)"を開発していても、おかしくない人物である────!





     ■

     ■

  ■■■■■■■■■

     ■    ■

     ■    ■

    ■    ■

   ■    ■■



    ■ ■  ■

     ■ ■ ■

        ■

     ■■



    ■   ■

    ■   ■

    ■   ■

    ■   ■


    ■   ■




「ぐおっ」


{{ ──いやぅぅ! }}


『 ガルルオッ! 』


「 ──ちぃ!! 」


「わわわぁ〜〜!」




 いきなりすぎる、白の閃光。


 まるで、破裂。


 光が、夜を引き裂いている。



「……? あれ、力が……」


{{ ……ぐ!? ら、ラミエリさん……!? }}



 カクンッ、と……。


 桃の乙女が、膝をついた。



「た、て、ない……ねむ、い……」


「お、おい!! しっかりしろォ、桃色ォ!!」





 前が見えないほどの、光 ────。


 夜を、(むしば)むモノ ────。


 しかし、悪魔は、光とは別の(いろ)を見る ────!



{{ この流路は……まさか!! }}



 自身の身体を焼く(・・)、この感じ。


 悪魔は、光の中で、感じ取る。


 彼女たちの、嘆きを────。




       キ

    キ  ル

 キ、キルキルキル……

    ッ  ル  キ

    キ  キルキルキルキキキ

    ル たル  キ

   キルルルキルルルルルルル

    ル  ル  ッす

   キッ、キキルキキキキ、キ

       ル  ル

       け  ル  キ

      キ   ル  ル

  キルキルキルキキキキキキ

      キ      ル

  キ   ルて   ル

 キルキ、キルキルキルル

  キ   ル    ル

  ル        ル

  ル

  キル……



 光の中、

 今にも倒れそうな桃の乙女を、

 闇の狩人が抱きとめる。 



「おいっ! 悪魔っ子! 桃色、なんかやべぇぞ!? なんでだ!? 胸の時限石は破壊したのによっ!? くそっ、眩しくって、よく見えねぇ──!!」


{{ せ、つぞくがッッ、切れて、いない──っ!? }}


『 ガ、ガルルルルル……! 』



 闇の力を持つ、悪魔と魔獣を押さえつける、光。

 そう、それは────……!



{{(ぎっ……バカなっ……! こんな、こんな非道を行う者が、"聖属性"の魔法使いだというのっ──……!?)}}



 魔に堕ちた身体の脅威は、すなわち光である。

 眩しさと聖なる魔素で皆が動けない中、

 白の空間に、伯爵の声が響いた。



『 ふはは……! ふはは……! 素晴らしい……! "天使の子"! "白の十字架"! そして、私が開発した"ジェム"!! そうさな……キミたちの、ここまでの奮闘を讃え、"セクスィークローバー"と名付けようではないかっ! 見よ! この聖なる輝きを! 私は、"完全変態"し、"天使"になるのだ────!! 』


「せ、"せくすぃーくろーばー"、だとッッ!?」



 変態が、エロ伯爵の言葉に反応する。


 光が、唸りをあげ、14の十字が、飛来する。



{{ ……──!! て、"転換路"ッッ!! }}



 悪魔の杖よりは小さいが、確かな、白の十字架。


 エロの元に────……!





 ────光が、爆散した。




 ────。




 ……シュウウウウウウウ……。




「…………」


{{ ………… }}


『 ガ、ルルルルル……! 』


「……んだ、ありゃあ……」


「きゅう〜〜……!」



 闇が戻りし空間で、彼らは見た。



『 ふ、ふふふふふ! どうだ……これが私の"完全変態"だ……!! 』



 高らかに、伯爵は、叫ぶ。


 その体は(・・・・)宙に浮いている(・・・・・・・)


 先ほどまでの、ひょろっちょい肉体ではない。


 筋肉は膨れあがり、服のほとんどは、破れ飛んでいる。


 ────悪魔は、悟った。



{{ そう、か……! "シンプル"、答えはいつだって、シンプル、なんだ、わ…… }}


『 ……ガル、ロ? 』


{{ 単純……実に、単純だわ……伯爵は、"転換路"を使って、生命エネルギーの流れを、"自分に向けた"……!! }}


「……な、何言ってんだ、悪魔っ子!?」


『 ふふ……悪魔にしては、察しがよい……だが、不合格だ! "遺跡から発掘された書本"だけの技術では、"完全変態"たりえない!! 同じく遺跡から見つけだした、"緑色の水晶"! これを加工したジェムが、私の聖なる力を後押ししているのだ……!! 』


「……"せくすぃーくろーばー"……!!」




 白の、圧倒的、存在感。




 エロメイネス伯爵の胸には、


 緑に輝く、三つ葉のクローバー型のジェム。


 背中には、七対の白十字が、重なり、輝き、


 まるで、神の羽根である。


 長くクセのある白髪は、重力を無視して(なび)いている。


 筋肉は膨れ上がり、腕は丸太のようだ。


 そして、服。


 変化し、膨張した質量に耐えきれず、


 ほとんどの服は、消し飛んでいる。


 だだ、残った物もあった。


 白。


 しろ。


 シロ。


 下着。




 シルクモスランの、


 最高級シルクで織られたソレ(・・)は、


 伯爵の、邪悪なる光を、耐えきった。


 パンイチである。


 いや、パンイチちがう。


 白い、ブーツも頑張って残った。




 宙に浮かぶ、筋骨隆々。


 胸板の中央に、三枚葉の輝き。




 身につけるは、


 真っ白の、羽根の十字架。


 真っ白の、ふくらはぎまであるブーツ。


 そして、



 真っ白の、高級ブリーフである────。





挿絵(By みてみん)

『 ふふふ、ふふフォ、フォハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……!!! 』






 たしかに、天使に見えなくもない。


 ────────────だが、アウトである。







 オオオオオオオオオォォォ…………。




 天使の肉体を包む、聖なる光が増す中、


 変態は、天使に問うた────。




「……ひとつ、問おう……。何故、色薄のせくすぃーばかりを、狙ったのであるか……」



『 ……? ……ふ、知れたこと。このジェムと、十字架を使い、私が直接、力を取り込むのだぞ……! 』



「……?」




 伯爵は、ニヤリと笑い、


 白い髪を(なび)かせながら、


 ──こう、答えた。





『 ──もし、汚い色で私の髪が染まれば、大変であろう──……? 』


「……ッッッ!! このッッ、外道(げどう)がァァあああああああああああああああああああぁぁぁ────!!!!!」





 咆哮と、愉悦。



 黒の変態と、白の変態。





     戦いが、始まる────。




((((((((;゜Д゜))))))))

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[一言] なんだろう、服着てないだけでシリアスが消し飛んだ。
[一言] アブノさんがマシに思えちゃう、あれか?エロ伯が妙に内股だからか、、、?(・・;) それとも、アブノさんが、主人公属性があるからか?(;´▽`)
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