☪ SEXY TONIGHT……! ☪ ⑪ さーしーえー
連投のような気がせんでもない(*´ω`*)
悪魔の崩れ去る体を見て、
狩人は動揺した。
「……まじ、かって……」
冷たい汗が、顔上半分を隠す黒の面より、流れる。
信じたくはない。
だが、この状況で、こんな嘘をつく意味が、あるだろうか。
────"自分は、杖である"と──。
「……"人を原料としたマジックアイテム"だって……自分がそうだって、そう、言ってんのかよ……」
目の前の悪魔は、悲しく、答えない。
隣にいる露出魔も、今は静かに構え、
三つ目の魔獣は、落ち込んだかのように、下を向いた。
「な、なぁ、アブノさん……やべぇぜ……」
ヤン・センマイは、言いようのない不安を感じていた。
もしかしたら、自分は今、とんでもない領域に足を突っ込んでしまっているんじゃなのか、と──。
「この悪魔っ子の言うことが本当なら、エロメイネスの野郎は、民衆に手を出して、人体実験をしてやがる……貴族だからって許されることじゃないぜ……」
変態の仮面が、ギリリと鳴った気がした。
目の前の、身体が歪む悪魔に、目を向ける。
「く……」
杖。
十字の、杖。
悪魔の身体に、不釣り合いな。
しかし、その杖こそが、悪魔の本体だと言う。
言いようのない苦さが、喉と心に拡がった。
(千年前に生み出された、マジックアイテムだと……!?)
そんなことが。
ヤンはまだ、信じられない。
だが、しかし。
意思を持つその、真っ赤な瞳。
とても、悲しい瞳。
狩人は、思う。
自身がもし、人ならざる物に、なってしまったら。
杖になって。
いつ死ぬかもわからずに。
千年の時を、生きる?
生きてるって、言えるのか?
悲しくないのか?
孤独ではなかったか?
この気持ちは、切なさを超えている。
悪魔が言った。
貴女は見た目よりは、優しい人ね、と。
狩人は、どういう顔をしていいか、わからなかった。
仮面に甘え、口元を隠す。
よくわからない。
よくわからないが、
この悪魔を縛りつけた術式が、復活しようとしている。
今夜、この屋敷で────。
「……イニィちゃんよ……わかるのか。伯爵がよ、その……"転換路"、か……? それで、何をしようとしてるかってよ……?」
悪魔の身体はゆっくりと輪郭を復元し、
"わからない"と、瞳を光らせて、言った。
"元々は何かを封印するための物"
魔力の通り道のような物だったらしいが、
その材料が、生きた人間なんて、反吐が出る。
「……アブノさん。一度、ヒゲイドさん所に、戻ろうぜ……? こいつぁエグい案件だぜ……私たちだけじゃ、ウェイトがでかいってもんだ……」
変態は静かに、僅かに悩み、首を振った。
ひとつ目は、もうかなりの騒ぎになっていること。
ふたつ目は、囚われたせくすぃー達が危ないこと。
(……くそっ! 今夜、今、ここでやるしか、ないっていうのかよ……! その、悪魔っ子、見ろよ! めちゃ思いつめた顔、してるじゃねぇか! そんな顔したヤツがよ、こういう時に、生き残れんのかよ! 魔獣のヤロウも、明らか元気がねぇじゃねぇか! それが、けっこうこっちの不安になんだよ!)
苦い不安に冒されていく狩人。
しかし、それが幸いした。
悪魔を、見ていたからである。
その空間のゆらぎに、暗殺職の眼は、輝いた。
なにかのジェムが、
悪魔の背後の空間で、解除される────!
──────ドクンッッ!!
足が、勝手に床を蹴る────。
ヤン・センマイの、双剣の閃光を、見よ────!
「────っっ!!! おいバカヤロォ────!! 後ろだァ────!! ぼぉっとしてんじゃねぇええええ────!!!」
ヤン・センマイは、悪魔の肩を手前に引き寄せ、
キラリと光った所に、剣閃をねじ込んだ。
──ギャィィィイイインンン!!!
ひっくりかえるような、金属の音。
悪魔からは汗が噴き出し、真紅の目を丸くしている。
狩人と共に、距離をとった。
「──クソッタレが!! 隠れてやがる! おいっ、悪魔っ子!! てんめぇ、すげぇ魔法使いのクセに、ジェムの効果に無頓着すぎんぞ!? やばい効果のヤツも、あるんだからよ!? 目ん玉、かっぴらいときな!!」
悪魔は、この言葉に、何も言い返せない。
目を見開き、表情が凍る。
「はっ……そうか。千年前にゃあ、ジェムなんて無かった、てか……?」
仮面の狩人は、乾いた笑いを浮かべ、
双剣を逆十字に構える。
先ほど、悪魔の首筋を狙っていた光が、姿を現しはじめる。
……───ぐにゃり。
すぅぅううう────……。
キルキル……
キルルルル……
「────!! こいつぁ……!!?」
変態も、構える。
しかし、狩人と同様、驚きを隠せない。
ジェムの効果が消え、姿を見せたのは、
「"髪の色素が薄い、半裸の女────!?」
────シュバ──!!
変形した爪が、狩人を襲う───!!
双剣の、返しが弾く────!!
──ギャァアアンン!!
再び後ろに距離をとる狩人。
「ふた、り……? おいっ!? ダンナ!? この女たちっ!? もしかしなくても、今回の被害者じゃねぇのか!?」
キル キル キル……
キルル キルルル……
「──なにを言ってやがんだ、こいつらは!? こわいんだよ!!? なんで私たちを襲う!?」
色薄の乙女達の目は、虚ろである。
まるで、何も見ていないかのような。
その爪や髪は、鋭い刃のように変形しているように見える。
「……! おい、後ろの悪魔さんよ、聞いてっか。今から私は、最低な事を言うぜ……。あいつらの髪と爪よォ……アンタの色違いだと、思わねぇか……」
ヤンの背後で、ギリリと、歯を噛み締める音が通った。
キルルル……
キル ル ル ラ?
近づいてくる、虚ろな、白い、女たち。
「教えてくれよ、イニィちゃんよォ……"転換路"ってのは、ヒト様の流路を、杖に焼き付けてんだよなぁ……アンタはそれで、その姿になったんだろ……てことはよォ、目の前にいるこいつらが、こんなクレイジーなネイルと髪型をしてんのはよォ────!!!」
キルルルゥゥゥウ!!!
キャッッシャァァアアア────!!!
「いくつか、"転換路"が、できちまってるって、事なんじゃねぇのかよォォオ────!!!」
二人で襲いかかってきた、狂気の白い女たち。
一人を、双剣が受け流し、
一人を、十字架が弾き返した。
狩人が横をチラリと見ると、
騎士の顔をした悪魔が、前を見据えていた。
紫の爪に握られるは、自分自身でもある、戦杖である。
「……てめぇを刃に当てて戦うっては、穏やかじゃねぇなぁ……心中お察しするぜェ……」
悪魔は、その狩人の言葉を聞いて、
チラリと彼女を見たが、
その後、"……ハッ"、と、
短く笑い飛ばした。
ガルルルル、と、獣の溜まるような、声。
ハッと、悪魔と狩人が、後ろに跳ぶ。
その瞬間、入れ替わるように、魔獣の爪が、白を襲った。
──ギャギャギャギャギャギャ───!!!!!!
白の女たちは、虚ろな目のまま、髪と爪で、弾く。
変態が、魔獣に手加減をするように、声を投げる。
また、光が月明かりだけの室内で、距離があいた。
────ここで、ヤンの元・密猟者としての感覚が、
妙な点を捉える。
「……ヘィ、やっぱりだぜ、悪魔チャンよォ……」
"?"と、首を傾げる悪魔。
「あの、苛烈な被害者さん方はよォ……"アンタの十字架"を狙ってるぜ。引き寄せられてやがる……!」
悪魔がキュッと口を閉じ、目を真ん丸にする。
すぐに彼女は白を向き、試す事にしたのだろう。
十字架の杖を、少し、揺らす。
左に……右に……左に……。
白い少女たちは、確かに反応した。
「なぜか、わかっかよ……?」
悪魔は、否定する。
「そうか……エロ伯爵は、その十字架を狙ってんのかもな……」
悪魔と狩人は、仲良く、反吐が出そうな顔をした。
────だァァァあああんんん!!!
驚き、見ると、変態が、
悪魔と狩人の合間に、踏み込んでいる。
そして────。
う
え
か
ら
。
────ギャィィィイイインンン!!!
「──ッッ!! まず"こんばんは"を言えってんだ!!!」
上からの、三人目のゲストの攻撃を、
変態の漆黒のグローブが、防ぐ……!!
落ちてきた女は、くるくると宙でまわり、
すたりと、地面に落ち着いた。
彼女もまた、白く、淡く、美しい。
肌は、月光の祝福を受けている。
「……次、ドニオスで流行んのは、あんなファッションなのかねェ……。アブノのダンナ、アンタの時代だな?」
"ちゃかすな"と、変態。
「ふぅ──……貧乏クジだぜ。直接やり合うなんざ、なっちゃいねぇ」
双剣を構え、悪魔に語る。
「──見ろよ。胸の所に、"時限石"がある。何かアイテムを隠し持ってるかもしれねぇ。気をつけな」
狩人が言った通り、白の女たちは、
はだけた胸元に、きらりと光る青の宝石を見に付けている。
それを聞いて、悪魔は、ハッとする。
しかし、それよりも───。
変態が、こう言った。
"淡い、ピンク色の髪"───!
そう。淡い、ライトチェリーピンクの髪。
「おい、どした! 知ってるヤツか!?」
悪魔が、いきなり飛び出す。
「───オいッッ!?」
──ギャァアアンン!!
──ギャキィィイン!!
──ガァァアアンン!!
幾度が交わる、かみとじゅうじか。
濃い、紫の爪。
淡い、桃の爪。
削れ、はらう。
だが、千年の差が、功を成したか。
────シュッっ──!!
ばきぃいやぁぁああんん──!!
「──!! おっ──……」
薄桃の爪の女の、胸元の宝石が、砕けた。
すぅ……と。女の足から、力が抜ける。
変態が踏み入り、身体を抱きとめた。
残り二人の白の女が、天井に消えた。
変態は、ゆっくりと少女の身体を、床に触れさせる。
薄桃の少女の爪は、ナリを隠し、
鋭い髪は解け、清らかさを持った。
魔獣がカーテンをちぎり、少女に被せる。
悪魔が、少女の名を呼んだ。
────"ラミエリ……"と。
ラミちゃんゲット(`・ㅅ・´)+
あ、露出一族の末裔の子です(笑)(^_^;)