☪ SEXY TONIGHT……! ☪ ④ さーしーえー
「うへへへへへ……もぅ一軒いこうぜ〜〜!?」
「ちょっと〜〜、飲みすぎなんじゃないのぉ〜〜?」
「たまにはいっじゃねぇか! こういう日のためにいつも頑張って働いてんだからよぉ〜〜!! 」
「もぉ〜〜! しゃーないなぁ──……え……─────!!?」
────シュバッ──!!
「? どした」
「い……いま……屋根の上を、頭と腕がない男が、通り過ぎたような……」
「な、なんだよ……お前の方が酔ってんじゃねぇのか?」
「い、いやいやっ!? ほ、ほんとにだよっ!? 闇夜に浮かぶ、腹筋と筋肉質の足ががが……」
「お前なぁ……そんなゴーストがドニオスの街に侵入できるはずないだろ! 飛ばされた洗濯物とかだよぉ」
「そ、そっかなぁ〜〜」
「そうだって! あんな屋根の上をそんなぴょんぴょん……────ッッ!!?」
────タァン──!!
「え、なに……どしたの変な顔して」
「い、いま、すげぇ格好したねぇちゃんが、屋根の上を……」
「は、はぁ……?」
「し、下から見たけどよ、すげかったぞ……なんか、隠してるようで、隠してなかったような……」
「ああああんたねぇ!? 何言ってんの!? 私というものがありながらぁぁ!?」
「──や!? ホントだって!! 屋根の上を、こう、ボンキュッボンなねぇちゃんがだな……」
「ば、バカァ────!!!」
変態と、悪魔と、魔獣。
魔獣は闇夜に溶け、
変態の仮面と外套は、闇に紛れ、
悪魔の肌は、浮かび上がった。
────そう、大サービスである。
{{ ちょ……ちょい待ち、店長…… }}
『 ガルン? 』
「む……! どうされたのだイニィ殿! そのようにモジモジとなさって!」
羞恥心に悶える悪魔の足は重い。
{{ は、恥ずかしいんです!! いま私、全裸なんですよ!? それを街中の屋根の上をぴょんぴょんぴょんぴょん……! }}
「むぅ? 先ほどは自ら見せつけておったでないか!」
{{ そ、それはっ!! 私ぃ、昔は目が見えなかったですからぁ……! その、視覚からくる恥ずかしさの理解がぁ……! }}
「む? 素敵な真紅のお目目があるではないか」
{{ だ、だからですぅ〜〜!! うゆゆぅ〜〜……! }}
悪魔は身体を隠そうとし、移動どころではない。
その時、魔獣の身体が揺らめいた。
『 ……ガルンルン!! 』
{{ ぅう……? ガルン……? ──わっ!! }}
膨張する魔獣の闇が、悪魔を覆う。
闇と無の力は、悪魔と相性が良い。
悪魔の肌を、闇の衣が覆っていく。
{{ ぷっ、はぁ……!! こ、これは──っ!? }}
『 ガルンル〜〜ン♪♪♪ 』
「おぉ……!! イニィ殿! そのお姿は……!!」
魔獣の離れた悪魔の姿は、変化していた。
月夜に浮かぶシルエットは、鮮やかなる、黒。
ピッタリと身体に密着する、ボディースーツ。
光沢のある黒に、見事なそのプロポーション。
顔の下半分を隠す、漆黒のマスク。
────ぶっちゃけ、ラバースーツであった。
{{ わぁ……!! 私の流路に介入して、服を作ってくれたのね! }}
『 ガルンガルゥ〜〜ン!! 』
{{ ありがとガルンんん〜〜!! この子は私が育てた!! }}
「ほぅ……素晴らしいな!! しかし、よりいっそう"アバンギャルドせくすぃー度"が上昇しているような……?」
{{ 何を言っているんですか店長! 見てください! 肌の露出はほとんどありませんわ! 口元もしっかり覆われていて、顔も隠せますし! }}
十字架の杖は小さくなり、
黒い神秘に包まれる胸元に、輝いている。
悪魔のピッチピチのボディースーツは、
月夜の中、妖艶な光を放っている。
口元を隠すマスクは、拘束具に見えなくもない。
悪魔は、自信満々に、ガッツポーズをとった──!!
{{ ──よっし!! これで私、変態じゃありませんわ!! }}
「よし、ならば急ぐぞ!! 夜は待ってはくれないのである!!」
『 ガルンっ!! 』
確かな意志の元、
半裸筋肉質コートと、
ラバースーツデビルウーマンと、
黒いよくわかんないのが、駆け巡る────!!!
{{ 色薄の少女を集めているという、詰め所の方には行きませんの? }}
「うむ。その"せくすぃがぁるず"が集められるとしたら、エロメイネス伯爵の屋敷に違いない。まず、屋敷を秘密裏に探索するがよかろう」
{{ 私には羽根があり、ガルンは影に紛れられます。偵察には私たちをお使いになって }}
『 ──ガルン!! 』
「……ふ、頼りになるものだ。っ! 見えたぞ」
{{ ───!! }}
───タタっ、と。
軽やかに屋根に舞い降りる、闇の者たち。
向かいには、豪華絢爛な屋敷が構えている。
{{ ここが……エロメイネス伯爵の屋敷……! }}
「うむ」
屋敷には、チラホラと火の魔石の灯りが見え、
この夜に、眠らない者がいることを物語る。
門番が二人、微動だにせず、立っている。
{{ どうします? }}
「忍び込むのは確定である。しかし、まだ伯爵が本当に"せくすぃNG"を犯しているかはわからぬ……やめるなら、今であるぞ?」
{{ ……愚問ですわ。この火照った身体、今更どうしろと言うの? }}
『 ガルルん!! 』
「ふ……。さて、どうしたものか……」
変態は、仮面の下に笑みを隠しつつ、
次の手を考える。
────その時、件の屋敷の前が、騒がしくなった。
「お、お願いしますじゃ! ラミエリに、ラミエリに一目でも、会わせて欲しいですのじゃ!」
「お願いしますじゃ! 私たちゃ、あの子が心配で……」
{{ あの、お爺さんと、お婆さん……? }}
「…………」
屋敷の門番に、壮年の男性と女性が掴みかかっている。
老夫婦だろうか。
「───ええぃ!! 離せ貴様ら!」
「こんな夜更けに伯爵様の屋敷で……無礼だろうが!!」
「そ、そんなことを仰っても……いつも追い返されてしまうのじゃ!」
「ラミエリを……あの子を預けてから、一度も会っておらんのですじゃ! 保護するといって、これでは軟禁ですじゃ!」
「失礼な事を言うなっ!! このババア! 孫娘を捨てておいて、人聞きの悪い!!」
「わ、ワシらはラミエリを捨てたわけではないっ!」
「そ、そうじゃ! ただ、貧困に苦しまずに大人になれるなら良いと……!」
{{ ……! 店長……! }}
「……うむ。あのご老体たちは、エロメイネス伯爵に孫娘を預けてしまったようだな。恐らく、色薄の少女なのだろう……」
『 ガルン…… 』
変態たちは、向かいの建物の屋根に身を潜め、
孫の顔を一目見ようとする老夫婦を見守っていた。
「──く! しつこいぞっ!! この──!!」
「──ぐぉ!」
「──あ、あんた!」
──ドカっ!
門番の一人が、金属装甲のブーツで蹴りを入れた。
老人の男性は、腹を押さえ、唸っている。
老婆が駆け寄った。
{{ ……っ! あの門番……! }}
「……愚かな」
『 ガルルルルルル…… 』
うずくまる老夫婦たちは門番に一喝され、
なんとか立ち上がり、ヨロヨロと歩き出した。
見ているだけで、むなくその悪い光景である。
「……あのご老体たちに、話を聞いてみるのである」
{{ ……。──えっ!? 店長!? その格好でですか!? }}
「──無論!! ゆくであるぞ!!」
『 ガルンっ!! 』
{{ ちょ、ちょとぉお!! }}
角を曲がり、路地に入った老夫婦。
その上より、変態共は、飛来する。
────ひゅるらるるるらるるる──……。
────ずどぉおおおおんん!!!
「──な──!?」
「──なんじゃああ──!?」
いきなり目の前に降り立つは、
半裸の筋肉質。
黒いボディースーツに身を包んだナイスバディ。
黒いユラユラした怪物である。
老夫婦の驚愕は、想像に難くない。
老人は老婆を後ろに庇い、警戒する。
変態は、軽く一礼した。
「……まずは、非礼を詫びよう。驚かせてすまないのである」
{{ ち、ちょっと…… }}
『 ガルン? 』
「な、なんじゃこの変態は……!? いったい何処ぞから……!?」
「な、なんという少ない布面積じゃあ……!!」
変態紳士は、まっすぐ老夫婦に向き直り、
言葉を紡ぐ。
「失礼ながら……先ほどの門番との一部始終、拝見したのである。ご老体、その孫娘を想う"せくすぃーブレイブ"……見事であった!!」
「な、なんちゅう鍛え抜かれた筋肉じゃあ……! ポッ♡」
「──なっ!? バァさん!? おんどれぇぇ、ワシというものがありながらぁぁあ──!!?」
老婆は、変態の肉体美にうっとり顔である。
文句を言う老人は、門番に蹴られたにしては元気そうであった。
「目の保養じゃ、目の保養じゃあ……♡」
「お前たちゃ、露出狂か何かかの……? そういう性癖は、もっと見せつける対象から距離を置いてじゃなぁ……」
{{ い、いや、あのそうでは無くてですね…… }}
老人に話しかけたのは、
全身を黒いテカテカしたボディーウェアで包んだ、ナイスバディの悪魔さんである。
「な、お嬢さん、アンタもなんという変態チックな格好じゃあ……!! で、でかい……! うっ、わ、ワシの忘れ去られし何かが、疼きだす……!」
「おいジジィィイイ!!! おんどりゃあ!! ワシというものがありながらぁぁああ──!!!」
{{ ──ええっ!? ちょ、変態ッッ!?!? わわわ、わたしの何処がっ!!? えッッ!? }}
ラバースーツの悪魔は、心底ビックリした様子で、ワタワタしている。
慌てる度に、真っ黒な神秘で覆われた胸が、ぽいんぽいんした。
「……ご老体よ。我らは露出狂ではない」
「「マジで」」
「……我らは、"行方不明になっている色薄の少女達"の事を探っておる者だ」
「「────ッッ!!」」
変態は膝をつき、目線を落とした。
「……ご老体よ。立ち聞きをして済まない。だが……"ラミエリ"と言ったか……。其方達の孫娘の事を、我らにお聞かせは願えぬだろうか……」
「おお……!」
「あ、あんたさんら……!」
変態の見た目は、確かに変態であったが、
年の功を重ねた老夫婦には、
確かな、変態の誠意が伝わったのである。
{{ えっ、えっ!? な、なんで! なんで!? こんなに肌が隠れてるのに、なんで変態なの!? えっ、どうなってんの!? わ、わからないっ、そ、外の世界こわいぃい……!! }}
『 ガルンガルン♡ 』
ひきこもり属性が復活しつつある、
ラバースーツの悪魔をよそに、
老夫婦は、ポツポツと、語り始めた。
(๑癶ω癶๑)。・:+°










