カミング仮面 さーしーえー
クラウンさん、絶対おこらせないようにしよう。
細切れにされちゃう。
『────懸念の基本概念が不明。』
あ、筒抜けだわ。
てか、ここ来る時、1回おこらせてるわ。
「……長生きしたいです」
「……あんた、その歳で何言ってるんだい」
あ、バスリーさん、おはようです。
私も、おばあちゃんになるまで頑張ります。
『────根幹スキル群は、年齢に関係なく活動可能です。
────敵対撃破数:30。残:2。』
え、もう残り2体なんすか……。
クラウン先輩、マジぱねぇっす。
『────クラウンギアより、態度の改変申請。』
「あによ。ちょっと悪ふざけしただけじゃん……ごめんて……」
『────"先輩"ではなく、"相棒"です。』
「────……!」
おい、やめろ。
……ちょっと顔、赤くなんだろ。
なんで、こういう事まっすぐ言うかな、この子は。
まったく、誰に似たんだか。
くぉぉぉぉおん!
ええい!
人が照れてる時に、背後をとるんじゃねえ!
ドゴン!
ぎゃうぅ!
「ん?」
『────敵対撃破。残:1。』
振り向いたら、草ウルフが吹っ飛ぶ所だった。
? 何で?
……あ、尻尾だわ。
1本、のこってたの忘れてた……
これも高速回転してっかんな……
振り向きざまに、思いっきり叩きつけてたわ。
尻尾、マジ、凶器。
「……もう驚くヒマもないね」
「すごいとんだ〜!」
「とんだね〜〜!」
うん。空中分解してたね。
「……残り1体、どこ?」
『────震音索敵、反応無。』
じっとしてんのか。
もう、往生際、悪いわよ。
「────おい、お嬢ちゃん」
「? はい?」
「そろそろ、おろしてくれるかぃ?」
「あ、いや……まだ1体いるんです」
「そうなのかい……。でも、これじゃあいい的だよぅ」
「! ……確かに」
煙突に、手足を固定されたままだからな。
身動き取れないと、葉っぱで狙い撃ちとかされるかも。
バスリーさんと、ロロロと、ラララ。
1人ずつ、屋根の上に降ろす。
「ふぃー。年寄りには刺激的な光景だったよ」
「あ、ごめんなさい……」
「いいんだよ。……しかし、たまげたね。あんた、凄腕の冒険者なのかい?」
「いえ……あの、これからなると言うか……」
「ほぉう。そいつは将来有望だね。こんな数を相手にできるのは、1人じゃあ、そうそういないよ」
「かっこよかった〜!」
「きれいだった〜!」
「ははは……」
なんか、ベタ褒めですね。
照れるってば。
私、魔無しだったから、褒められ慣れてないんだってば。
しかし、もう1体、どこだ?
最後まで、枝きれにしないと、安心できない。
キョロキョロする。
地面には見えない。
朝日がきれいだ。
もうすぐ、このオレンジは、おさまるだろう。
違和感が、ある。
どこだ。
! 煙突だっ!!!
蔦が2本、見えてやがる!!
────煙突の中にいる!!
ビュッ!!!
まずいっ!!
槍のような蔦が、ロロロ達の所へ!!
歯車は間に合わない!?
とっさに、身を呈して、前にでる!
くっ!!
「嬢ちゃん!?」
首元に、蔦が、吸い込まれる。
あ、しぬ。
キンッ!
「─────っ!」
恐ろしくとがった蔦は、何かに弾かれた。
横にそれた蔦を、反射的に掴む。
ひっぱる。
煙突から、草の獣。
腕の歯車が、飛ぶ。
──────くぎあああぁ──!!
ガランガラン……
煙突の中に、枝が散らばる音が響いた。
『────敵対戦力:0。掃討を確認しました。』
「────……」
ゆだん、たいてき、よ、ね……。
さ、いごに、アレはないわ……。
死んだかと思ったわ……。
「────クラウン。最後の防御、ありがとう」
『────私ではありません。先を越されました。』
「え?」
首元に、手を触れる。
「あ……」
「! アンタ! ……それはまさか」
仮面だ。
仮面が勝手に出て、守ってくれた。
バスリーおばあちゃんに、見られた。