ふらふらふろう! さーしーえー
心の目で見るのだ(`・ㅅ・´)+
そして、黄金の義賊は喜んだ。
「───わっはっはっはぁぁあああいいい!!!」
きんきぃ───んん!! ぴょんぴょおおんん!!
「……ま、まぁ、お前も新人の割には色々がんばっているしな……これくらいの贅沢はよかろう。ずっと使えるものだしな……俺もお前のようなちんちくりんをあずかる身としては、毎日の清い生活の援助をだな……」
「……うわぁ、ツンデレだ。ツンデレ魔王パパがいますよ……」
「キッティ。お前仕事追加な?」
「え……──ぇぇぇぇえええおおおえええええッッ!!?」
「身の程を知るがいい……雇用者と被雇用者の、壁ってやつをなぁ……? ちなみに今日はもうおやつは食うな」
「あんまりどぅぅうぁぁあああ!! 生活の潤いがあびゃゃあああああああ!!」
「うるせぇ。さっき食ってただろお前」
「ま、魔王ぅぅうだぁぁああああああ───!!! 魔王がここにいますよぉおおお!!? アンティさぁぁああんん!! 倒してくださぃぃいいい!!!」
「ふふふっ♪ おっふろ〜〜♪ おっふろぉ〜〜♪」
きんっ♪ きんっ♪ きんきらきんっ♪
「あ……!? アンティ、さぁぁあん……っっ!? だめだこりゃ────!!!」
「あぁ、ちなみにアンティ。その湯船は不良品だ。穴が開いてないからな? 気をつけろよ」
「……えっ? ──ぇぇぇぇええええええええッッ!!?」
「よしっ、いくぞキッティ」
「──びゃっっはははぁぁああああんんん!!! はなしてぇぇえええ!!!」
ドニオスの魔王は、
仕事をした者には褒美(不良品)を、
仕事をせぬ者には制裁を加えるのだ!!
がんばれキッティ! まけるなキッティ!!
明日のおやつは、もうすぐだ!!
「びゃっっはああぁぁああんん────!!!」
というわけで、お風呂もらいました。
{{ じゃ、バイト行ってきまぁ〜〜す♪ }}
『 ガルンガルゥ〜〜ン♪♪ 』
……かぁ──らぁ──のぉ?
☆アンティのおふろに入るまで〜〜♪♪♪☆
①ドニオスギルドのロビーに置いてある湯船を格納します。
うわっ、てかこれめっちゃきれい、白くてツルツル!
きひひやっば、金属の猫足で立ってるよ!?
かっわいい……! うんあぁ、これすっごい好き……。
でも穴が開いてないって? あ、ほぉんと……。
栓がない……でっかいデッシュ皿じゃないのよ……。
あ、そか! バッグ歯車使えば問題ないもんね!
もちろん人目があるので、白金の劇場幕を使って、
シュルリと隠しますよぅ!
──シュルシュルぱぁ──!! しゅばばっっ!!
「うぉっ……す、すげぇ、黄金姫の魔法の布地に風呂が入ったぞ!」
「マジかよ〜〜!! どんな容量してんだあのマント……」
「前にスイカを10個くらい買ってるの見たことあるわよ」
「それよ……義賊ちゃん、騙されてねぇか?」
「てゆーかよ、風呂入る時って、あの金ピカ鎧、脱ぐのかな? な?」
「ばっかやろぉ! そりゃあ、脱ぐだろうよぉ!!」
「……賭けるか?」
「……ど、どうやって?」
は〜〜い、あ〜〜い、きこえなぁ〜〜い。
②自宅まで40メルの階段を登り……ません。
「──とうっ!!」
跳びます。キィ────ン!!!
「──時は金なり!!」
『>>>ちょ、それきみの世界にない格言だろう!?』
『────クラウンギアは:お金ではなくお風呂だと訂正したい所存です。』
「些細な問題よっ!!」
③お風呂を置く場所に迷います。
ついたで。
「うっわぁ、やばいやばいやばいめっちゃ楽しみお風呂だわぁいわぁいどうしよぉ!」
『>>>お、落ち着きなって……普通にシャワーの部屋じゃダメなの? あそこ結構広いじゃない』
「お前みたんか」
『>>>おっと……助けてクラウンちゃん?』
『────バッグ歯車の格納スキルは:お湯の排出・温度管理・飛散した水分の格納も完璧です。シャワー室ではなく:部屋の中央に配置してはいかがでしょうか。』
「なにそれラグマットの上でお風呂に入れるってことやばいゾクゾクしてくゆそれ採用。ちなみに先輩は?」
『────逃げられました。ビーコンによれば現在位置:箱庭の檜風呂です。』
「ビーコンって何? てか、まぁた風呂ですか、この私を差し置いて……! クラウン? 私が許可する。こんど先輩のお風呂現場、襲撃なさい。シゼツが使ってたタケの水鉄砲、複製できる?」
『────承りました。お任せください。彼の穢れは:殲滅です。』
④湯を注ぎます。
ドボボボボボボボボボ…………。
「ああっ、やばい……この、初めて見る湯船にお湯が溜まっていく時のこのドキドキがたまんない……! うわぁ──はやく入りたいよぉ! 透明無色なお湯に小さい泡がプコプコするの綺麗よね」
『────瞬時に湯を満たす事が可能。実行しますか。』
「それはダメ。味気ないから」
『────……り:理解不能。』
「うわぁぁ──!! すごいっ! お湯ってほんとに透明なんだね!! 白い陶器の湯船がすごい透けて見えるよォ!」
『────と:当然です。』
「うわまだお昼前だよぉ!? ぜ、ぜいたくすぎるぞ私……! 全世界の皆さんごめんなさい! うわぁ、すごぉいすご──い!!」
『────お:落ち着いてください。湯船本体が倒れます。だめですって。』
⑤はだかになります。
ギャオォォオオンン……!!
「んっ……」
……を
……あのですねぇ。
このヨロイですねぇ……。
……。
いや、もう言っちゃうわ。
内側さぁ、肉じゃない?
ベットベトしてるトコが剥がれる時も、
まぁ……"ぞわぞわっ"とするんだけども、
これ、撫でられるように滑りとれるトコがあって、
そん時に……"ぞくくっ"とすんのよ……。
お尻の筋肉からチカラが抜ける感じね?
それがなんと言うか……、
そんなに不快じゃなくなってるというか……。
それがちょいヤバと言うか……。
「久しぶりにアブノさんのお店のドア、蹴り壊したくなってきたわね」
『────イニィ・スリーフォウが:驚きます。』
「あっ……。そういやさっき、ガルンと行くって言ってたね……ちっ」
『────ツインテールギア:アンロック。』
────ガチンゴチン! サァァァ……。
ごーるでんぱんてぃは、さいごです。
……しゅる……。
⑥湯を楽しむべし
カポ────ン──……!
「………………………………………………しあわせだ」
『────謎の反響音を感知。』
「気のせいよ」
『────箱庭からです。』
「え、それって先輩じゃあ……。はぁ、まあどぉでもいいや……」
チャポッ……。
お昼で。
部屋の中で。
陽気が射し込んでて。
まっっっ白な、お風呂の中で。
光が優しく照らして。
お湯が本当に透明で。
自分の肌の色と形が、よくわかって。
すっぽりと、おさまっている。
湯船がヤバい。
まるで貴族だ。
ちょうど、頭を支えてくれる位置だ。
これはあかん。
最高だ。
自分の裸がめちゃくちゃ見えるので、
ちょっと恥ずかしい。
普通の部屋の中だしなぁ──……。
ほんわか、水面から白い湯気がたっている。
これが、とても日の光と、よく、合う。
ひかっている。
「……ふぅ、ふぅ〜〜──……! ここは異世界だわ……!」
『────は:はい……。』
「……いきててよかった……」
『────……はい。』
────……。
「いっこ、わがままを言ってもよいでしょうか」
『────入力してください。』
「……私がここで、裸んぼのままで寝ちゃったら、溺れないようにしていただけますか」
『────レディ。
────そのオーダーは:これからあなたの生涯において:遂行し続けます。』
「あ、あは……ありがとうございます」
『────お任せ下さい。』
…………。
……──チャプ。
「──ぷぐぷぐぷぐぷぐぷぐ」
『────それは窒息ですか。』
チャバッ──。
「──いや、これは遊び」
『────……はい。』
……。
ふぅ〜〜〜〜……、……、……。
たのしぃー……。
『────……ひとつ:聞いてもよろしいでしょうか。』
「──ん? ん、どーぞ」
どしたどした。なんだなんだ。
『────お風呂とは:気持ちがよいものなのでしょうか。』
「お、おほほほほ……そ、そうねぇ。いまの私が、そうだからねぇ……」
おもしろいコト聞いてきたな。
「……あったかくて、気持ちがいいよ? うーん、言葉で説明するの、難しいけど……」
『────……あたたかい。』
「ん。なんだろ……体ってさ? ぜったい、どっかチカラ入ってるのよ。どっかで支えたり、どっかで反応したり、目……とかもね? 鍋ふってる時なんか、手首やばい時あるもの。あ──まぁ、あのヨロイ着てる時は、パワーがすごく出るから、助かってるけど……」
『────……意図を……。』
「あーとね、つまり、全身のチカラを、ふわぁ〜〜って抜ける場所って、なかなか無いんだ。お布団よりも、こういうのって、イチバンなの。私の実家にも、湯船、あったでしょ? あれ、本当に父さんらに感謝してる」
『────良いもの:なのですね。身体の休息に起因。』
「身体だけじゃないんだよ、クラウン」
『────……入力をお願いします。』
「きもちもね、けっこう、これで回復するよ?」
『────。』
「あったかいって、正義だよ。わたし、昔はお風呂で、けっこう泣いたもん」
『────アンティ。』
「へへ。悔し泣き。学校では泣かなかったけどね? でも、お風呂がなかったら、ちょっとキツかったかも」
『────……。』
「でも、泣いて、あったかくね、ほぉ〜〜……ってなって……。んで、明日も走ってた。心も身体も、もちなおしてた」
『────……。』
「クラウンも、お風呂に入りたい?」
『────! ……そう:ですね。そうかも:しれません。』
「そっか……。あ! でも、箱庭におっきいお風呂あるんでしょう?」
『────はい。いくつか存在しています。』
────じゃぼっ……!
「──えっ!? いっぱいあんの!? なにそれ羨ましい……」
『────あ。しかし:どれも木造の構成データですので:このような白い陶器で構成されたものは:この個体のみです。』
「あら……それはちょっと、優越感、かなっ? ふふふ……」
『────……アンティ。妙な事を言っても:いいでしょうか。』
「ふぅいぃ──……。ん。いつでもどうぞ?」
『────あなたは今:お風呂は心も回復する:と仰いました。』
「そうだねー」
『────……。』
「遠慮なんか、いらない。クラウン?」
『────……クルルカンが:よくお風呂に入るのは:心のキズが治っていないからなのでは:と思うのです……。』
「──────……」
…………。
───チャボ……。
「むずかしいこと、言うなぁ……」
『────申し訳ありません。』
「……」
『────アンティ。』
「……わたし、先輩の事、なぁーんも知らないや……」
『────……。』
「たまに、ちょこっと話してくれるけどさ? それでも、ぜぇ──んぜん……」
『────……。』
「クラウン」
『────はい。』
「違う世界からこっちに来るって、すごい、つらいことなのかな」
『──── 、』
「……正直言うとさ、そこを、先輩に突っ込むのが、怖いんだ、私……」
『────……、……。』
「だってさ……。ぜったい、つらいこと、あったじゃん……お父さんや、お母さんにも、会えないじゃん……」
『────はい……。』
「友達とか、仲良い人とか、みんな無くなっちゃうじゃん……そんなん、ダメじゃん……」
『────……はい。』
「……そこがさ、やっぱ、こわいわ、私。なんか、どうしていいのか……」
『────。』
「ねぇ、クラウンさ」
『────? ……。』
「いっかい、箱庭で、先輩のために怒ったでしょ」
『────ん! あ:れ、は……。』
「ダァァァアアンン!! って、ちゃぶ台叩いてさ? あ、あれはちゃぶ台じゃないのか……おっきくて四角かったしなぁ……」
『────その:あれは:ですね……。』
「……先輩は、クラウンに、何か話してくれたの?」
『────!! ……、……。』
「ほら、そっちでさ? 二人になることも、あんじゃん。信用されて、話してくれたのかなって。つらい、過去のこと」
『────違う:のです……。私は……。』
「あ! いやっ! いい! 無理に聞いてるんじゃないから!」
『────アンティ……。』
「先輩がクラウンだけに言ったなら……それは、私に言わなくていい。そんなの、ずるいから。あんたが、大切にしてあげればいいから」
『────。』
「私は、わたしで聞くよ。その方が、先輩も安心だと思うから。ね?」
『────感謝を:うまく表せません。』
「え、ええへ、ふふ、くっくく、なんだそれ」
『────あなたの:思いやりを感じます。』
「……あんたもさ、最初よりさ? ずいぶん、女の子っぽくなったわねぇ」
『────! ……。』
「ちっこい時にも、あんたがいたらよかった」
『 、』
「なぁ──んてね? ふふっ……」
『────……私も:そう思います。』
「おやおや、のっかってくれまして……と!」
────ばちゃああ……ぽとととと。
『────あがるのですか。』
「ええ。これ以上は出汁がでるわ。ダシは出しても出されるな!!」
『────理解不能。理解不能です。』
「やぁねぇ。お風呂のノリってやつよ」
『────お風呂は異世界ですね。』
「ふっふ、わかってきたじゃない……そうだ」
『────? ……。』
「先輩がお風呂で傷心してるなら、あんたが一緒に入ってあげたらいいじゃない?」
『────な!!!。そそそ。』
「きひひっ……なぁんて、冗談よ。え、クラウンでも照れるんだ?」
『────そっ:んな、こと……。』
『──もう計画してるとは言えんニャ?。──ブゴッ。』
「ん……? なんか今へんな音しなかった?」
『────……なんでもありません。』
「ほぉ、さよか。それ! どすこぉ───い!」
──どんっ!
おおっ、猫足の湯船と床って、高低差すごいわね。
いかん、ちょっとのぼせたわ。
ふらふらふら。
ぱんてぃ、ぱんてぃおくれ……。
ご飯のあとに下のギルドに行くと、
キッティに泣いて書類整理を頼まれた。
苦笑いで、安請け合いする。
人目につかない部屋で、
目の前で2000枚くらい処理したら、
膝をついて拝まれた。
神様扱いされかねないので、鼻をつまんでおく。
「ふんにゃ! な、なにするんですかぁ!?」
明日はクリーメルにでもいこうかな。
新作のケーキは、いつだって女の子のエネルギーだ。
いつだって、がんばっていける。