きをつけっ! やすめっ!
給湯器が転生したようです(*´ω`*)
あ、連投のような気もしますね!
その質問に、ギルマスと受付嬢は、凍りつく。
カーテンから光が漏れるお昼前に、
その表情は、とても不思議な感じがした。
この二人にも、ずいぶん私の秘密がバレている。
そして、とても信用している人たちだ。
私は、踏み込むことにした。
「……──"紫電の魔法使い"。お二人なら知っていますよね? 4年前に、ここを訪れているはずですから……」
「……」
「……」
あんな小さな女の子の冒険者。
ぜったい、記憶に残っている。
「……なぜ、それを聞きたいのか、聞いてもよいか?」
「──!」
ヒゲイドさんが、いやに神妙な声のトーンで聞き返す。
……? なんだろう?
えと……。
私がなんで、"紫電"のことを聞きたいか、か……。
……。
「……二人とも、もう私の出身地はご存知……ですよね?」
「──! ……」
「……あっ!」
「……そ。私の出身地は、この街の隣……カーディフの街です。4年前、不完全な結界柵から、数頭のフォレストウルフが街に侵入した時──……私の街は、あの女の子に助けられたわ」
「……むぅ」
「アンティさん……」
「……"私の"憧れの冒険者"なんです、"紫電"は。あの子がいなければ、今の私はない」
カップの中の、深紅のお茶を見つめながら、
真剣に、思い出すように、言う。
「……そうか」
「あっ、秘密ですからね? その……憧れ、とか……」
「わかっている……」
ヒゲイドさんは何やら思いつめているような表情だ。
ボサボサの前髪とお髭の隙間からも、それがわかる。
「……アンティ。その、お前はあいつに……会いたいのだな?」
「──! ええ、もちろん! 実はですね……私、もしかしたら"魔法職"のプレミオムズが"紫電"なんじゃないかって勝手に期待してた所がありまして……えへへ。実際はマジカさんだったんですけど……」
「……」
「…… ……」
キッティが不安げな目線で、ヒゲイドさんを見ている。
……なんだろぅ?
「……すまないアンティ。結果から言うと、俺たちは"紫電"の行方を把握していない」
「──! ギルマス……」
「そ、そですかっ……はは、ですよね! 今どこにいるのかなんて、すぐには、わかんないですよね……」
……予想はしていたけど、そんな簡単には会えないか……。
はは……やっぱちょっと、残念だな……。
「……すまないな」
「──! い、いえ! そんな深刻な感じにならなくても!
ま、私が頑張って冒険者を続けてたら、いつか会えますよ!」
「……そうだな。そうだとよいな」
「はぃっ!」
「……アンティさん……」
日差しは、かなり上がって来ている。
今日のお昼は作ろうかな。
それとも外食にしようか。
「──はぁっ! まぁ、なんとか生き残りましたし、しばらくはお手紙の配達、がんばりますっ!」
……ギュムっと、ソファから立ち上がる。
「──! 待て、アンティ。お前は今日の午後はどうするつもりだ? 王都から帰ってきたばかりだろう」
「え? や、留守にしていた分のお手紙、たまっているでしょう? 届けますよ?」
「ばかもの……お前は少し働きすぎだ。他の冒険者は、ちゃんと休養日のことも考えている。数日でそんなに手紙の依頼はない。ちゃんと休め」
「えっ……うーん……」
働きすぎ? そ、そうかな……。
ちょくちょく小まめに、休憩とか挟んでんだけどな?
配達先の街の、ギルド出張所でお茶してても、
もうあんまり驚かれなくなったし……。
うーん、ウチの食堂では、ほぼ毎日お手伝いしてたかんなぁ。お腹痛いわけじゃないし、あんまり休みすぎても落ち着かないんだけど……。
「あはは、確かにアンティさんが来てから、配達の依頼は増えました。でも、この街のお手紙は、最初にアンティさんがやっつけちゃいましたからね! 数日で100も200もたまりませんよ。ある程度たまってから配達するのも効率的ですよぅ?」
「そ、そう言われれば、そうだけど……」
「ふん、というわけだ。少し休暇をとれ。もし急ぎの配達依頼があれば、キッティの持っているベルで呼ぶ」
「ベル? ──ぁあ! そんなのありましたね!」
「あぁっ、アンティさん、ひどいです! 私、これはいつも腰の後ろにつけているんですよぉ!?」
「……え、あ、ほーんとだ。その革のケース、どしたの?」
「ふふっ、特注です!」
えっへんと、胸を張るキッティ。
む、私よりあるな……。ちっ……。
「アンティ、お前に見せたいものがあるのだが……。お前の休暇にピッタリなものだぞ」
「ふふふ……」
「??? 私に……? "休暇にピッタリ"??」
なんだなんだ?
ヒゲイドさんとキッティが、悪い笑顔になっている……?
イタズラ考えてる時のユータ達の顔に似てんだけど……?
……あっ!
「……あ、あのっ、やっぱ私、午後に配達でます! 実は王都で、貴族の方から手紙の依頼を受けていまして」
「 」
「 」
おっきい貴族さんから受けた依頼。
"手紙"と"口伝"。
これは最優先で、さっさと済ませたいわ!
「えと、その"見せたいもの"でしたっけ? それはちょっと後で聞きますね!」
お昼はテキトーに屋台かなんかで済ませよう。
なければバッグ歯車にかなりのストックもある!
「じゃ、そゆことで……」
────ガシッ。
執務室の入口に向かおうとしたら、
魔王の巨大な手が、私の肩を掴んだ。
ググググググ……。
「……はい?」
「おいアンティ……いま、なんと言った……?」
「えっ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
あれっ……なんだ、この感じ……?
「あ、あの……?」
「……"貴族から配達依頼を受けた"……そう言ったのか?」
「……ひゃ、ひゃい?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
な、なんか、とてつもない威圧を感じる……。
チラッとキッティを見る。
「アンティさん、、、。あ〜〜う〜〜とぉ〜〜!!」
顔から感情の消えた受付嬢が、
両手を胸の前でクロスするところだった。
魂が半分抜けているようにも見える。
……そのバッテンはなんすかね。
「おまっ、コノヤロ……そんな大事な事を、なぜ俺に報告しない!!」
「えっ! あっ、やっ、でも、配達依頼ですし……」
「ばかやろうぅぅ!! お前がイチバン気をつけなければいけない事は、その特異な能力が貴族階層の人間にバレることだ!!」
「や、やろうじゃないもぉぉぉ───ん!!! 女の子だもぉ───ん!!!」
「あぁこいつ……! やっぱりやらかしてやがる……! くそっ、それは正式な依頼だったのか!? 初見のわけのわからん配達人に、貴族が依頼するなど普通ではありえんぞ……!?」
──あれっ、なんか泣きたくなってきたナ……?
わけのわからん……。
わけのわからん……って言われた……ぐすん。
「あ、アンティさん? 民衆の噂のタネになるのと、貴族の封書を配達するのでは、政治的な意味合いの強さが違いますよ……?」
「え!? ど、どゆこと……!?」
「お、おまえは……。たまに、どこか田舎っぽい非常識さが垣間見えるな……!」
「い、いぃ──!!? そ、そんにゃことないモ──ン!!」
さっきから、ヒゲイドさんの言葉がグサグサささる……!
「おいクルルカン、依頼受けたのいつだ」
「きっ、昨日の夕方です」
「配達先は」
「パートリッジの街です……」
「北か……おまえ、いつ配達しようとしてた」
「きょ、今日の夕方までには……」
「アホぉかぁぁああああああ────!!!」
「え、ええぇぇぇぇええええ────!!?」
なぜ、ギルマスは怒ったの……!?
「あ、あのですねアンティさん……100歩ゆずって、貴族さんから依頼を受けるのはいいんです。いや、アンティさんの秘密を考えると、あまり良くはないんですが……」
「き、キッティ? わ、わたしなんで怒られてんの……?」
「いや、だからですね……」
「……はぁ、おいアンティ。さっき言っただろう。"貴族階層の人間に、特異なチカラがバレる"、それが一番危険だと……どこかの野心だらけの木っ端貴族に、囲われたりでもしたらどうするのだ」
「て、手紙の配達だけで、そんなの!?」
「あ、アンティさん、あのですねぇ──……」
「は、はい?」
「……普通の人間は、24ジカで、王都とパートリッジの街の間を移動できません」
「……あっ……」
あ、あぁ〜〜……。そ、そゆぅこと……?
「おまえはなぁっ!! 前々から思っていたが、速すぎるのだッッ!! 光の速さで走れるのか貴様はッッ!?」
「や"っ!? そ、それは言い過ぎですよぅ……」
『────777ケルメル/ジカです。』
『 ガルンガルぅ──ン♪ 』
{{ そうねぇ……えらいわねぇ…… }}
「貴族間の配達記録は注視されやすい! 優秀な速度の伝令者など、無理やり引き抜かれるぞ!!」
「そ、そんにゃあ!!?」
「アンティさん、あんまり嘘つくの上手くないんですから、貴族に雇われたりしたら、ポタタづる式に秘密がバレたりしちゃいますよ……?」
「うわあぁ───ん!!?」
そ、そげなことってぇぇ……!?
貴族様方のお手紙配達に、そんな危険性が──ッッ!?
「──いいかアンティ!! お前のようなビックリ人間は、注視されないよう、たまにゃあ、わざと! ゆっくり! 配達する事も必要だッッ!! お前は一日……いや! 最低でも二日は大人しくしとれッッ!!」
「え、えぇぇぇええええええええ────!!!?」
「いいかっっ!!? ぜっっったいに、二日間は配達禁止だ!! これはギルドマスターである俺からの絶対命令だ!! 風呂にでも入って休め!! 生活が苦しいなら、給料は出してやってもいい!! もぉし、どっかに配達に行ったら冒険者はクビだ!! ドニオス劇場にでも紹介するからな!! 」
「えっ、ギルマス、連休うらやましいんですけど……」
「そ……そんにゃあぁぁ〜〜……!!」
……ギルマスに怒られて、休暇もらった。
『────休息期間:設定しました。』
『>>>給料でる……てことは有給ってやつじゃん。いい職場だなぁ……』
【 なんじゃいこのデカブツ、安嬢をいじめよってからに……! 】
< あんらぁ、ちゃうんよ花? あれはぁ、お優しさの裏返し♪ >
{{ えっ、二日間おやすみ? じ、じゃあ、お店に顔だそうかな……? ガルンもくるよね? }}
『 ガルンッ! ガルンガルンッッ♪ 』
『──ニャー。ほニャ:ゆっくりあのスライムの意識修復やるニャか──!。』
『──いや:ミャーたちはずっとやってたミャ……。今まで何してたミャ……。』
『──ニャ!。』
【朗報】アンちゃん、二連休。(๑و•̀Δ•́)و+