真夜中の太陽へ さーしーえー
電子書籍半額、あと2日ですよ〜〜!
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あ、今回も砂糖が多いなぁ……((((;゜Д゜))))
むかぁしむかし。
黄金の乙女のアイテムストレージには、
"箱庭"と呼ばれる、船のお上のお屋敷があったとな。
その摩訶不思議な空間で、
今日も、ある元盗賊が、
畳の部屋で、ゴロゴロと────。
────ずどんっ。
『>>>──ぐえっへ』
……。
『────……大変です。』
『>>>……。ああ……大変だね……』
……。
『────た:たいへんなのです……。』
『>>>……ぅぐ……なんでいきなり半泣きなのさ……』
……。
『────く:クルルカン:助けてください……。』
『>>>……うん、わかった。いつでも助けるさ。……えーっと、ぼくも寝起きで混乱してるな? だから、とりあえずそこから降りてくれるかな? 』
……。
『────止まらないんです……。』
『>>>ぼくの言うこと聞いてる? ねぇ? クラウンちゃん? ぼくに馬乗りになりながら涙目になるの、やめよっか? 色々まずいからね? ね?』
……。
『────……アンティに:怒られてしまいます……。』
『>>>うん、怒られるね。仰向けのぼくに半泣きのクラウンちゃんがガッツリ跨ってるからね。完全にコレぼくが不利だね。うわぁ寝起きの男子のそんなとこに乗っかっちゃダメだよ? ねぇ、ちょっと? しっかりして?』
……。
『────どうしましょう……。』
『>>>聞いちゃいない……ったく。最近、ぼくに対しての警戒心、なさすぎだよクラウンちゃん……。よいしょっと……』
上体を起して、起き上がる。
今、馬乗りされてるワケで。
うあっ、顔がっ……、近いじゃないか……。
な、泣いてる。
ホント、どうしたんだ……。
お人形さんみたいだって言ったら、怒られそうだな……。
『────……ぅぅ。』
『>>>……、ぁの……どうしたのさ……』
『────あ、あ、アンティには:秘密で……。』
『>>>……ぅ、ぅん、わかったから……』
クラウンちゃんが、後輩ちゃんにヒミツとか、
よっぽどの案件だろうな……。
目の前の、"歯車法"の精霊たる"クラウンギア"は、
とても表情豊かな喜怒哀楽を標準装備化しつつある。
やれやれ、ぼくにどうしろっていうんだぃ……?
『>>>で、どしたの?』
『────"ソルギア"が:止まらないんです……。』
…………。
『>>>……あちゃあぁぁ────……』
────ペシっ!
────びくっ!
ぼくが自分のおデコを叩いたら、
目の前のスキルっ娘は、ビクっとした。
……とりあえず、おりない?
……。
『>>>暗いな……』
『────深夜2ジ:0フヌ:44ビョウです。現在の"箱庭"システムの日照期間は:現実世界とリンクさせています。』
『>>>……』
時限結晶内にある"箱庭フォートレス"は、
バカでかい空母のような構築物だ。
無限の流路の海を、航行している。
なかなか趣のある意匠をしており、
その空母のほとんどが、遊郭や神社など、
ぼくから言わせれば、"和風建物"のイメージを反映している。
朱色の建築や、所々に見られる金や黒の装飾は、
まさに職人技! と言った様子で、見事なものだ。
クラウンちゃんが半泣きだとわかるのは、
至近距離で見ているのもあるけど、
この部屋の灯篭に、静かに灯りが灯っているからだ。
闇の中、頼りない、優しい黄の光。
ぼくは、坂本龍馬は、
こういう空間で天に召されたのかなぁ、と、
ふと、思ってしまった。
……で、目の前で泣かれてるワケだが。
『────どう:すれば……。
────完全制御できないデバイスがあるなどと:アンティに知られたら……。』
『>>>お、落ち着けって……えーっとだねぇ……』
こ、このこ、なんでぼくにまたがってんの……?
てか、ぼくもなんでこのまま対応してんの……?
『>>>あ────……』
小さな火に照らされた暗い和室は、
いつもと、ちょっと違う空間だ。
畳の上の、綿がつまってそうな、しっとりと硬い布団。
ほぅほぅと、淡く照らされる、垂直に交わる木材の筋。
しん、としていて、暖かい色なのに、
ちょっと、空気の寒さがある。
今、障子は全て閉めている。
ここは切り取られた、四角い部屋だ。
ここは、静かで、暗くて……うん静かだ。
青という色が目に入らない、赤と黒の、一室だ。
この和風ホラーよろしくの静寂な空間で、
メカっ娘とも言うべき女の子に馬乗りくらってるのは、
なんとも、浮世離れした光景だ。
いやぁ、ある意味、浮世はしっかり離れてるけども。
あまり光がないからか、彼女の声は、よく聞こえた。
『────クルルカン:私はどうすれば……。』
『>>>え、えーと、"ソルギア"はそんなにヤバい状態なのか? 暴走しているとか?』
『────……そう:判断できます。"カーディフの火"を中心に:球体状に展開した歯車機構の高速回転を:停止する事が不可能判定となりました。』
『>>>げっ……それって』
『────記録上:52ジカほど前に:歯車機構が"カーディフの火"自体に飲み込まれました。操作不能。流路構築も不可能判定。球状炎体内部で一部:今も亜光速回転を継続しています。』
『>>>……、まさか……"ダイソン天球"に近いモノになってるんじゃ……』
『────"ダイソン天球"の概念情報をダウンロード中……。』
『>>>だとしたら、ヤバいぞ……クラウンちゃん、その構造体は拡大しているのか?』
『────全力で阻止しています。外部拡張は抑え込めていますが:内部拡張に干渉できません。』
『>>>っ!? ないぶ、だって……?』
『────"カーディフの火/球体歯車機構"="ソルギア"は:内部エネルギー密度を上昇させながら:今も稼働しています。』
『>>>……無限の空間が、エネルギー内包量の上限をなくしているのか……。太陽が、でっかくはならないけど、どんどん高熱になっていってるって感じだな……』
『────正確な表面温度:計測不可能……。』
『>>>……ふぅ、なるほど。後輩ちゃんにヒミツにしたいはずだね』
どうやら、アイテムバッグの中に、
バケモノのような太陽の歯車ができてしまったらしい。
大きさは変わらないけど、内部のエネルギーは増え続けている。
やれやれ……山火事が出世したもんだよ。
『>>>燃焼気体をシャットアウトしてもダメなのか?』
『────直結したいくつかの流路が:エネルギー変換を行っているようです。』
『>>>……やっかいだよソレ……。自分でエサ作ってるじゃないか……』
『────……、ぅぅ……。』
『>>>あ、いや……』
……きゅううぅぅん。
クラウンちゃんは、近くにいると、
たまに体内から、マニピュレーター部の駆動音がする。
腕部とかに、モーター機構でも組まれているんだろう。
それだけ聞くと、すごいアンドロイドっぽいんだけど、
最近それらの違和感は、その表情よりは力を持たない。
ほら、今も半泣きだし。
……こりゃ、魂インしてるよ。
『>>>あ──……、ぼくに言ったのが、初めてなんだね?』
『────はい……。』
『>>>あ、あんま落ち込むなって……。ここが無限の容量の空間なら、"ソルギア"がどんなにおちゃらけてても、格納は続行可能なはずだ……そうだろぅ?』
……ぽんぽん。
『────はい……。』
『>>>……と、とりあえず、ぼくも一度、視認してみたいな。案内してくれるかぃ?』
『────……了解しました。』
お……うおっと。
無意識に、クラウンちゃんの頭を、
手でポンポンしていた……。
いかんいかん、セクハラこわい……。
いや、死んでるのに何言ってんだぼくは……。
『>>>とりあえず、とてもまずいポジションなので、そろそろ降りてください……』
『────ぁ:……はい……。』
ぎこちない動きでぼくから降りたクラウンちゃんは、
太陽への旅の説明をし始めた。
『>>>なるほど、単純でいいや。アナライズホロコーティングで身体データを保護して、ある程度まで接近すると……』
『────今は夜間運用中です。"ソルギア"を別隔離格納している空間まで移動します。』
『>>>みんなは寝静まっているよな……チャンスだ。仲良く夜遊びと行こう』
『────火遊びの間違いでは。』
『>>>ふ、ちょっと余裕が出て来たじゃないか』
『────……お供します。空間跳躍します。私に接触してください』
『>>>ベタに手を繋ぐ、とかでいいかな?』
『────ご随意に。』
『>>>じゃ、頼むよ』
『────跳躍します。3……2……1……コネクト。』
ぼくとスキルの精霊は、真っ暗な空間に、投げ出された。
─────ォ ォ ォ ォ ォ────。
『>>>…………』
『────……。』
手を繋いで、真っ暗な中を、落ちていく。
いや、進んでいるのか?
今ここに、方向なんて、ない。
夜のビルから飛び降りたら、こんな感じじゃないかと思う。
となりの彼女を見る。
暗くて、不安になったからだ。
どうやら、クラウンは察したらしい。
『────……申し訳ありません。今:ソルギアをこちらに出してしまうと:箱庭にも光量が届いてしまうので……。』
『>>>いや、わかってる。みんな起きちゃうかもしれないもんな……』
『────……。』
『>>>…………』
真っ暗で、上も、下もわからない。
先が、辛うじて見える。
たまに、幅がわからないほど広い、
アナライズカードの壁があり、
そこを通り抜けていく。
ちょっと、ガラスに突っ込むみたいで、ひやりとする。
───── ォ ォ ォ ォ ォ ────。
『>>>こわい、もんだな……』
『────詳細の入力を。』
『>>>いや、真っ暗で、先が見えないってのはさ……?』
『────……私がいます。』
『>>>はは……ほんと、助かるよ』
手を、にぎっている。
───── ォ ォ ォ ォ ォ ────。
『────アンティにも。』
『>>>ん……?』
『────こんなふうに:手を握ってもらえる存在が:いればよいと思うのです。』
『>>>……きみがいるのに?』
『────……。』
───── ォ ォ ォ ォ ォ ────。
『────確かに:私も、私自身に心がないなどと:もう、随分思えなくなってしまいました。』
『>>>……そうだね。バッチリ喜怒哀楽、インストールされちゃってるねぇ』
『────だ:誰のせいだと思って……。しかし:それでも、それでもです。』
『>>>……』
『────いざという時、側で抱きしめてあげられる誰かが:アンティには必要だと:私は思うのです。』
『>>>……』
『────私は:くるくると回っているだけですから。』
『>>>……こんど、こっちに呼んでさ? 存分に抱き着いてやればいい……』
『────ふ。あなたはお優しいですね:オウノ・カネトキ。でも、だからこそ:わかっているでしょう。』
『>>>……ちぇ』
『────その行為は:確かに実現可能です。でも、そうではなくて、私は……。』
『>>>……』
───── ォ ォ ォ ォ ォ ────。
『>>>いっこだけさ』
『────はい。』
『>>>あ、全然さっきと違う話なんだけど』
『────はい。』
『>>>"オウノ・カネトキ"って、ぼくのなまえ』
『────……お気に触りましたか。』
『>>>ふっふっくく……ま、ちょっと正解っていうか……きみ、ぼくの記憶ほとんど見たろぅ?』
『────……ええ。』
『>>>フルネームで呼ぶの、先生のクセでさ』
『────そう:でしたね。』
『>>>ちょっと、思い出しちゃうってのとさ……もう一つあってさ』
『────? ……。』
『>>>いやぁね? ぼく、"カネトキ"って名前、ちょっと嫌いっていうか、恥ずかしいんだよね……?』
『────恥ずかしい:ですか。』
『>>>いや、だってさ……この名前の由来、ぼくの世界のことわざから来てるんだけどさ……あきらか間違った意味なんだよね』
『────検索中。』
『>>>たぶん、ぼくの両親は、"時はお金にはかえられないもの"って意味でつけたんだ。でもね……本来の"時は金なり"の意味は、"働いた時間だけ、お金になる"だ!』
『────なる:ほど。』
『>>>はははっ! 冗談じゃない! くく、もう死んでるっての! 働いてお金稼いで、どうすんのさ?』
『────……。』
『>>>あ、いや……つまりね、"オウノ・カネトキ"って呼ばれるのは、ちょっと気恥しいんだよね……いろんな意味でさ……』
『────理解しました。』
『>>>ふふ、変な話したな』
───── ォ ォ ォ ォ ォ ────。
『────……あの。』
『>>>ん?』
『────……なんと:お呼びすれば。』
『>>>っ! ああ! ぶっ! くっくく……』
『────わ:笑う必要はないかと。』
『>>>い、いやごめん、気ぃ使ってくれたんだなぁと……。そぉだな……ぼくはかなりいっぱいアダ名があったんだけど……』
『────……。』
『>>>"カネト"ってのは、けっこう好きだったんだ。あんまり呼ばれなかったけど』
『────"カネト"。』
『>>>あ、いいね。それでお願いします』
『────二人きりの時は:これで呼びます。』
『>>>……だからさぁ』
『────?。』
『>>>そーゆぅのって、殺し文句なんじゃないの?』
『────。』
『>>>──』
『────到着します。』
『>>>ん』
──── ォ ォ ォ ォ ォ、ォ、ォ。
……で、見てみたんだけど……。
ゴ、ォ、ォ、ォ、ォ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
ビッガァァァアアアアアアァァッッ、アアァァッッ、オッッギヤァァアアアアアアアアア!!!!!!!
『>>>…………これあかん……。後輩ちゃんには秘密にしよう……』
『────……ひゃい……。』
ふたりの秘密がふえた。
((((;゜Д゜))))あ、あかぁん……