シゼツエンブ さーしーえー
『『
おうみ おうみで めがやける
けども それでは かわいそう
ならば はじめは みぬように
みんな おわりに きづかぬぞ
』』
きひひ……
きひひ……
きひひ……
きひひ……
きひひ……
きひひ……
きひひ……
『『 ──きひひ 』』
「──ッ!」
──シゼツの声が聞こえる。
──らんらん
あそびのような。まじなうような。
──らららん
それは、きれいに、ぶきみに、ひびく。
──るるるん
夕の光が、有り得ない瞬きをした。
きひひひ──
今は、逢魔ヶ時である────。
──そうだよ。
「……───あら?」
ちらりと、下を歩く一人と、目が合った。
ドキリと、する。
天井に、大きな剣のようなものを持った、
金ピカの女の子がいるのだ。
見えていたなら、大騒ぎだ。
でも、その女中さんは、
何事も無かったかのように前を向き、
皆さまと、行ってしまった。
天井に張り付きながら、
私は、ポカンと、それを見ていた。
『『 ──きひひ、だいじょうぶだったでしょう? 』』
「…………」
『────……。』
『>>>…………』
くすくすくす……
いたずらっぽい声が響き、夕焼けの光が、少し唸る。
くっくっく……
音がなく、唸る。
……あははは
この色は、きれいなだけではないのだ。
しらぬぞ……しらぬ!
でも、それと善意は、また別だ。
……ふふふっ
戸惑いを、見ないふり。
はぁ〜〜っ……
御礼を言った。
「……えと、ありがとね、シゼツ」
『『 わぁ〜〜い! どんとこぉ〜〜い!! 』』
いや……どんとこいって、アンタ……。
『>>>……どーなってんのさ。さっき、見られたんじゃ……』
『────目線の位置から推測:視認されたと断定します。』
「私も……あのメイドさんと、目が合ったような……」
『『 "王絶"の時は、誰も"王"にあったことを、わからないよ? 』』
「……"おう、ぜつ"?」
『『 そ! "王絶"! 』』
「……わたしが、"王さま"?」
『『 そうだよ。3人も集めて、3人に会った事がある。そして1つとなる 』』
……???
"3人"……?
サキ達のことかな……?
……。
わたしが、"王さま"……。
"王"にあった事を、わからない"……?
『>>>"王絶"……。確か、"斬王心反"、だったか……。キミの持つ、四つの"絶"のスキルのひとつだね?』
『────……発動スキルを:認識できません。』
『『 今のクラたんには、難しいよぅ! 』』
「……く、クラたん」
『>>>……クラたん……』
『────……。』
……あたらしいわね、クラたん……。
「……んで、クラたん? これ、大丈夫なスキルなの?」
『────……クラウンギアより:不服申請。』
『>>>シゼツ、クラたんにスキル発動が認識されないのは何故だ』
『────……むぅ。』
『『 "王"に関係する事が絶されるんだから、当然だよ 』』
『>>>……"アンティ"に関係しているから、という事かぃ? 確かに彼女は"王"のスキルって事になるが……』
『────……。』
「……ちょっと待てっての。ここ、王城よ? ホンモノの王さまいるから。そちら様をさし置いて、食堂娘をおーさま扱いするのは、おやめなさいな」
『『 ──! きひひ、アンティおもしろい! 』』
「いや、面白くはないわよ……」
『>>>教えてくれ、シゼツ。なぜさっき、メイドさんに見られたのに素通りされたんだ?』
『『 "王絶"は、"王"に関する事は、絶対に"記憶"できないよ? 』』
「──っ!」
『>>>……事実なら……ふざけてやがる……』
『────疑問。視認された状態でも:という事でしょうか。』
「……見られても、"気に止められない"……?」
『『 ──そぅ! 誰も"王"を、覚えない! 』』
……なにそれ。
マジっすか……。
いみわかんないんだけど……。
『>>>"代償"はなんだ……』
『────! ……。』
……せんぱい?
『>>>それほどの力だ。何かあるんじゃないか?』
『『 ──ふふふっ! "生命の火"を代償に──!! 』』
────ゴッッ。
『>>> お ま え ど こ に い る
>>> ば あ い に よ っ ち ゃ
>>> た だ じ ゃ お か な い ぞ 』
『────クッル……、……。』
────ぅわっ!!
う、うぉいおいおいおぃぉぃ……!!
ちょっと、先輩、声、こわいってぇぇ!!
『『 ──きひひっ!! おこった? おこったぁ!? くふふっ! だい・じょう・ぶっっ!! "代わりのモノ"が、いっぱいあるからっ!! だいじょうぶだよぉ〜〜!! 』』
『>>>……なんだと?』
『────……。』
『『 あれだよ!? あっちの空で、ぴかぴか、ズドドーン、ぱややぁーん!! ってなってる、火の塊!! 』』
「ずどどん……?」
『────パヤヤン……。』
『>>>──!! "カーディフの火"か!?』
『『 せいかぁ──い!! 私は本来、火と、とても相性が良いの! あれはステキ。使い放題! いつでもアンティは、ヒトビトの記憶から、消える事ができるわ!! 』』
「……凄いこと言われてんな、私。ぐすん……」
『>>>……誓え。その力、"アンティの寿命"は縮まないんだな?』
『『 "王"に誓って。私はアンティが好き。この人のようなモノは、ゆっくり、笑顔で死を迎えるべき 』』
……。
……熱烈だこと。
変な言い回しだけど、気に入られてんのかな?
『>>>…………』
『────……クルルカン。』
『>>>……凄んで、わるかった。』
『『 いい。あなたは真剣だから怒る。あなただったら、"王"のナイトに相応しいね? 』』
『>>>やぁ、そんな柄じゃないさ』
『────? ……。』
『『 きひひひ…… 』』
「ちょっと──、私ほっとかないで──どすんの──このまま天井行くの──?」
『>>>……! ああ、後輩ちゃん……シゼツの言う事が本当なら、ぼくたちは、見られてもスルーされる、みたいだ』
「わぁ。"ガン無視"ってやつね?」
『>>>……! おやおや、それも僕の記憶からかぃ?』
「あっ、先輩はそういう経験あるの?」
『>>>ノーコメント』
『『 だいじょうぶだよ! あれだけ真っ赤にバッヒャ──!!! って、燃えてるんだもん!! きひひっ! でもクラたん、あれ、止めなくていいの? ビカビカで、すんごいグルグルしてるよぉ〜〜!!? 』』
『───な……。』
「で……ほんとうに私、見られても平気なの?」
『>>>あぁ……そのようだ。降りてみな』
「……。ふぉえぇ〜〜……」
よしょと……。
────シュバッ──……キン!
金のブーツに展開していた、
浮力を持った歯車を消して、床に降り立つ。
手には、でっかい大きな剣……みたいなモノ。
…………。
『────前方。』
──っ?
……──ガチャ……。
「────っっ!!」
ツインテールが、ばびょんと跳ね上がった気がした。
若いメイドさんが、すぐ前の部屋から出てきたのだ。
私を、ちらりと見る。
「────……」
「こ、こんちわ……」
あ……。
もう夕方だし、こんばんは?
『『 きひひ……! 』』
『>>>そういう問題じゃない……』
『────視線が外れます。』
「──っ!!」
……。
トッ、トッ、トッ──……。
メイドさんは、そのまま違う方向へ行ってしまった。
「……マジすか」
『>>>シゼツ。なぜ、ぼくはアンティを知覚できるんだぃ? ぼくは"歯車法"と同期はしているが、"仮面"としては独立していないか?』
『『 あなたは既に、"王"に関係するもの。"概念"が、無関係とは判断しない。あなたは私の力を感じ取れない代わりに、私の力が影響しない 』』
『>>>……よくわからないが、そいつはいい。ぼくだけ記憶喪失なんてゴメンだ』
「……先輩? なんか言葉がいつにも増してトゲっぽいよ?」
『>>>っ! ……ふぅ。シゼツ、きみが味方で良かった、と言わせてくれ……』
『『 きひひぃ〜〜……!! 』』
……──ばっさ!!
『>>>──うおっ!?』
『────あっ。』
……? なんだなんだ。
なんか騒がしいわね……。
『『 なかなか、キミは、いい子だなぁ〜〜!! いい子いい子……! 』』
『>>>いや、後輩ちゃん、なんでもない……今、こっちにシゼツが出てきてるんだ……』
「え、そっちいるの?」
『─────は:離れなさい。』
『>>>うん……後ろから覆いかぶさられてる。いい子いい子されてる……』
「う、うん……?」
『『 きひひぃ〜〜っ!! 』』
『────は:離れなさい:シゼツ。』
───わっしゃ、わっしゃ。
……。
うむむ……。
私はどうやら、"シゼツ"のスキルと、
"山火事"パワーで、人目を気にせずに、
建物とかに侵入できるみたいだ……。
───"王絶"。
つ、つまり、"全員にガン無視される"スキルってことよね……。
……うん。
二ヶ月前より以前の私には、
存在を教えたくないシロモノだわ……。
ああ、どうしてこうなった……。
なんで、こんなところにいんだろ……。
ホント、なんじゃろな私。
ぐすん。
『『 お兄ちゃん、つむじ後ろの方だね? 』』
『────むむむっ。』
『>>>はぁ……ねぇ? 他のスキルは、例えば、"心絶"とかは、どんな能力なんだぃ?』
『『 "目的"がわからなくなる。"王の関係者"にはきかない 』』
『>>>な、なにそれこっわ……って、きみは何してんの!』
『『 うりうり、うりうり 』』
『────むむむむむむっ。』
……。
……ギュオン。
片手で握っている、"大きな剣のようなモノ"を見る。
────"魔刃シゼツ"。
その見た目は、形容しがたい。
剣のようだけど、剣じゃない。
盾のようだけど、盾じゃない。
杖のようだけ……いや、杖じゃないなコレ……。
色んなモノが、混ざったような、大剣みたいなモノ。
私の金のグローブに、握られている。
あの時に見たモノと、一緒だわ。
不思議な、新しい、何かだ。
……。おっきいな……。
たぶん、このヨロイがなければ、
私には、持ち上げられないだろうな……。
「……ねぇ、シゼツ。私、このまま歩いて上まで行っていいの?」
『『 ん! だいじょうぶだよ! こんな所に、"王"はいないから! 』』
「いや、何言ってんの。ここお城だってば!」
『『 ──! きひひ、アンティおもしろ──い!! 』』
「いや、だから面白くはないって……」
…………はぁ。
元気な女の子の声に、ため息をつきながら、
私は、柔らかな絨毯の上を行くことにした。
でっかい剣をもった王さまが、とおりますよーだ。
ぐぃ、ぐぃぐぃ。
『────は:離れなさい。離れるのです。』
ぐぃぐぃ、ぐーぃぐぃ。
『『 きひひ〜〜っ! クラたんったら、いちばん近くにいるからって油断しすぎじゃないのかなぁ〜〜? 』』
ぐぃぐぃ、ぐぃんぐぃん。
『>>>……どうでもいいけど、揺らさないでくれる……? ちょっ……』
ぐぃぐぃぐ──ぃぐぃ、ぐ──ぃぐぃ、ぐぃ──ん。
「はぁ〜〜〜〜、どっかにうさ丸おちてないかなァ──……」
(´◉ω◉` )おにいちゃん、だと……