いつから〇にいくと錯覚していた?
(●´ω`●)前話に挿し絵を2点追加。
────うさ丸が、窓の外に消えたッッ!!?
「ちょ、ちょおおおおお────!!!??」
ガッ、ガバッ!!!
「う、うさ、うさ丸、おちたッッ!?」
『>>>わ──!! ばかっ!! なんか着なって!! ダメだって!! 窓枠に足かけちゃ──!! 下から丸見えだって!!』
『────建築構造的には:不可視領域です。』
『>>>いや止めなって!? 女の子としてダメだって!! ああ、もぅ──!!』
「どこに落ちたっ!? クラウン!! うさ丸を歯車でつかまえるわ!!」
『────レディ。予測投擲します。』
────キュウウウウンンン!!!
────オォォォオオンンン!!!
いくつかの歯車が、窓の下に撃ち出される!!
くっそー!! ベッドに足を取られなければぁ……!!
「……!? あそこ、下! なんか空間が歪んでない……!?」
『>>>ええい! せめてぼくだけでもかぶりな!!』
「えっ、あっ?」
──カポッ!
脱いでた先輩仮面が、空中浮遊してきて私に被さった。
王冠と仮面を被った全裸の私が、爆誕する。
『────アンティ:空間が歪んでいたポイントを見てください。』
「……──あっ!! うさ丸!!?」
『>>>……!! 何かの術式に引っかかってるぞ!?』
下の方に、うさ丸がいた!!
もぞもぞ動いてる!! 生きてるわ!!
ずいぶん、こちらの窓から離れたところにいるわね……!
キングベッドの、弾力ぇ……!!
く、空中で、光る網みたいなのに、引っかかってる!?
あれって……!?
『>>>っ!! "落下防止用"の術式か!?』
「そ!? そんなものがあるの!?」
『────アンティ:術式流路に動きがあります。』
「──!?」
うさ丸を受け止めてくれていた、空中の光のネット。
光が、強くなって────!?
ググググググ────……!!
──────びょぉおおぉおおおんんん!!!!!
「──わっ!!!」
『>>>跳ね返ってきたぞ!!!』
「ちょ──……!?」
『────投擲中の歯車を反転。』
まっ……窓から離れてんだって──!!
手を伸ばしても、もちろん届かない!!
うさ丸が、上に飛んでくる!!
下に向かっていた歯車と、行き違いになってしまった!!
歯車が上に向きを変えて、おいかけるけど──!!
──きゅうううんん!!
「……──にょきぃぃとぉぉぉおおお────……」
「わぁ────!!? ここ、通り過ぎちゃったぁ────!?」
『────上昇途中で:うさ丸の加速を確認。』
『>>>やっぱり! 窓から落ちたモノを、上部におくる術式なんだ!!』
そ、そんなぁ!!
うさ丸は、ドンドン窓から離れていってしまってる!!
これはアカンって!!
「先輩!! うさ丸がどこに着くかって、わかる!?」
『>>>いやぁ、それはちょっと……クラウンちゃん! 間取り図を積層分析できるかい?』
『────情報不足です。申し訳ありません。』
『>>>くそっ、アナライズスキャンにも限度がある……』
「クラウン!! ヨロイ着込むわよっ!! ──"変身"!!』
『────レディ。装着変身シークエンス。』
『>>>ちょっと、どうする気だい!?』
───きゅぅぅうううん!!!
床に置いてあった、クルルギアが持ち上がり、
綺麗な六枚花弁のお花のカタチから、
ギザギザと肉が、拡がりだす。
──喰われる前に、咆哮が、聞こえる。
──ギャアオオオオオンンン──!!!
『────ボディコンディション:確認。』
『────外甲殻基礎フレーム:転換。』
『────第一装甲:リローディング。』
『────バイタル正常:血流脈コントロル。』
『────"ごーるでんぱんてぃ":装着完了。ストック残:5。』
『────フレーム内部:流路形成。』
『────全ジョイント:展開完了。』
『────右脚部:捕食展開。』
『────左脚部:捕食展開。』
『────右腕部:捕食展開。』
『────左腕部:捕食展開。』
『────関節部:気密圧縮。』
『────第二装甲:パウンテッド。』
『────四肢装甲:鎮静化に成功。』
『────ジグザグギア:正常鎮圧。』
『────プレミオムアーツ:結合化。』
『────マント生成:展開値抑制中。』
『────マスク部位:ツインギアに固定完了。』
『────ツインテール部:形成完了。』
『────頭髪部:露出部:アナライズホロコーティング中。』
──きゅぅぅううううんんん……!! ぴか──!!
『────装甲展開正常率:100パセルテルジ。
────"クルルカンスタイル":
────スタンディング・バイ。』
くぅ……よっしゃあ!!
「──クラウン!! "カーディフ・ブースター"!! 構成ポジションまかせる!!」
『────レディ。
────登録デバイスの展開を開始。』
『>>>──! ちょ、ちょっと待ちなって……!!』
───きゅうううんん……ガチャ、ガチャコ……!
私の両肩と、両太ももの後ろに、
大きな"バーニヤ部"が形成された!!
「飛び出たら、ブースト!!」
『────レディ。』
『>>>ちょ……!』
──きぃぃいいん──!!
背中を地面に向けるように、上を向いて飛び降りる!!
──ボッ──!! ゴオオオオオォォ───!!!
ふわりと浮く、私の身体!!
上を見ると、書庫の部屋の上には、
まだまだ建物が天に向かって伸びている!!
『>>>や、ダメだって!! ブーストの音!! 見つかるよ!!』
「だ、だって……!!」
『────行けるところまで:上昇しましょう。』
『>>>え、え〜〜……!?』
もうっ!! だって緊急事態でしょうが!!
うさ丸が、お城の上に向かって打ち上げられたのよ!?
どうすんの!? うさ丸が、貴族の誰かにキャッチされたら!?
メイドさんとかに料理されて、夕ごはんにされちゃうわよ!?
「──わよ!?」
『>>>そ、それはありえるかも……』
『────上昇開始。』
────ゴォオオオオオオ!!!
「ああ……見つけないと、ヒゲイドさんに殺されるわ……!」
『────本音ですね。"ベアークラッチ":展開。』
『>>>あぁっ、もう……! アナライズ積層構造で、できるだけ音を殺してみるよ! でも限度があるからね!? この建物が一番、背が高いのが幸いしてる……まだ死角だね!』
ベアークラッチを見て後方を確認すると、
バーニヤの周りを、透明の筒のようなものが包んでいた。
ゴオォオオ──……ァァァァァ──!!!
「──! 音が変わった!」
『>>>単純なサイレンサー機構だ。付け焼き刃だけどね。消音効果に期待するなよ? さっさとウサギを追いかけよう!』
「……ありがと」
『>>>いいからもうやっちゃいなよ! はは、こんな忍び込み方、ぼくでもやったことないよ!?』
「はっ、でしょうね」
『────申し訳ありません。視覚域に:うさ丸を発見できません。』
「仕方ない。どうせ真上だわ」
『>>>うん、あの術式は、明らかに上で落下物を回収するためのものだから……。──!! アンティ!! とまれ!!!』
「───!!!」
『────!! ──急制動。』
私もクラウンも、先輩が"アンティ"呼びした時は、
なんか"ヤバい時"だってことが、身に染み付いてる。
バーニヤはぐるりと反転し、上昇は止まった。
『────ホバリングします。』
「先輩、どした!?」
『>>>……ほんの少しだけ、上に行ってみな。ゆっくり!』
「……クラウン?」
『────了解。少しずつ上昇。』
──ァァァァァ──……!!
本当に、少しずつ、上に浮いていく。
身体の向きが違うから、
お城の建物が、地面みたいだ。まるで橋ね。
──突然、前の風景が、変化する。
……──ジジ……。
───ゾンゾンゾンゾンゾン!!!
「……うっわ……」
『>>>……城壁に仕込んであるトラップらしい。槍だな』
『────上部壁面より:魔術流路構築による槍の放射状展開を確認。』
「これって……そのまま外を登っていくと、あの光の槍に、刺されるってこと?」
『>>>ああ……"ネズミ返し"ってやつだ……殺傷能力がありそうだけどね……』
「うげ……思いっきり建物から離れて、上空から迂回する?」
『>>>いや……上、見てみな。あの槍のトラップの上の階は、窓が多い。重要なエリアなんだ。必ず貴族がいる。見張りも何人かいるだろうから、空からは発見される……』
「うぇぇぇえ〜〜……」
『────うさ丸は:確実に上部です。』
『>>>……どうする?』
「ど、どうするって……」
……うさ丸を見捨てるって選択肢は、ない!!
でも、どうしようか……。
お城の上なんて、えらい貴族の人とかが仕事してるに決まってる……。
時限結晶を、ふたつも持っているっていう秘密を考えると、
私の天敵みたいな人たちのいる場所だわ……。
「う、うう〜〜……」
『────震音感知。上部より。』
「──!!?」
『>>>壁に密着し、やりすごす』
「ん!」
即座に壁に張り付く。
わぁ、泥棒みたい。
『────カーディフ・ブースター:停止します。』
『>>>歯車の浮力で、背中を押す。あと、手足に歯車製スパイクだ。やれやれ、ロッククライミングといこうか?』
「ちょっと、ちょけないでよ……」
『────……アンティ。』
『>>>……窓にいるね? アンティ、静かに……』
「……っ」
上から、少し小さいが、確実に、声が聞こえた。
「──おや、防御魔術が作動しましたな」
「──おやおや、そのようで。どうせ、鳥でしょう。下向きに飛んでおれば、助かっただろうに……」
「──おや、それは可哀想なことだ。せめて亡骸さえあれば、弔ってやれるものを」
「──おやおや、お優しいことを仰いますな」
「──おや、照れますな……娘が小鳥を飼っていたことがあってな、私のほうに懐いていたものだ」
「──おやおや、そのような思い出がありましたとは」
「──おや、そろそろでございますかな?」
「──おやおや、それは急がぬと……」
「…………」
……鳥じゃないでーす。義賊でーす。
『────震音:遠ざかります。』
『>>>やっぱり、貴族っぽいのがいたね……』
「こ、こっわぁ……」
『>>>うーん、これさぁ……』
「な、なに……」
『>>>"内側"から侵入するしか、ないんじゃないの……?』
「……へっ!?」
『>>>いや、だから、"内側"……』
「…………」
いや、先輩……。
内側って、お城だろ……。
「私に、忍びこめってか……」
──ヒゥゥウオオオォォォ──……。
+ ∩ ∩ !?
●(ฅ˙꒳˙ฅ)●
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