私のお部屋はどこやねん
2日前くらいに、はぐるまどらいぶ。
一周年だったんだって……((((;゜Д゜))))
そんな経ちますかぁ!
いろんな方に読んでもらえたなぁ(;´༎ຶٹ༎ຶ`)感謝+
一年で420話……あれっ?(笑)(*´ 艸`)
あ、第1巻、電子書籍も発売中です♪ヾ(*´∀`*)ノ
キィン、キィン、キィン───。
今、私、アンティ・キティラは。
王城の階段を、キンキン登っています。
あ、肩に、うさ丸もいます。
ぬっくい。
もっふもふやで。
「──にょむっ!」
「ふぃ〜〜〜〜……。なんとか、生き残ったわねぇ……」
『────本日の最重要作戦は:完了しました。』
『>>>最初はどうなる事かと思ったけどねぇ……』
私、アンティ・キティラは、
初めてのプレミオムズ集会を、
何とか、やりとげましたぁぁああ〜〜!
「う〜〜、やったぁ〜〜……!!」
『────お疲れ様です:アンティ。』
『>>>まぁ、あの印象だと、嫌われてはないでしょ。そこ、大切だもんねー』
ま、まぁ、わるい人達ではなかった。
……。
ふぅ、オシハさん、只者じゃなかったなぁ……。
ぶるるっ……あ、あの時の感触がぁ……!
ヒキ姉、よくあんな快活なお姉さんと暮らしてこられたわね。
……あ、だからあんな乳になってんのか。
「……あ、そういや私、審議官のコト、聞くの忘れたわ……」
『>>>えっ、ぼくが堕ちてる間に、聞いてたんじゃないの!?』
『────光る水晶球をお持ちの少女でした。』
『>>>なにそれ、気になるな……クラウンちゃん、やっぱログ見せてよ……』
『────問題ありません。』
『>>>ほんとにぃ──?』
「あ、そういや……先輩。私、エコープルちゃんに、精霊花あげちゃったんだけど、まずかったかな」
『>>>え? ああ──……いや、問題はないよ。"トレニアイズ"は、純度の低下や、数の問題があったから、エルフ達が秘匿してきた花だ。でも今や、ほとんどのエルフが、あの花を捨てて、社会に出てきているんだろう? それに、ぼく達で、あれだけ数を増やしてしまってるじゃないか!』
「それは……」
『>>>バスリーちゃんも、女の子のために花を贈ることを、咎めたりしないさ。とても正しい、素晴らしい花の使い道だよ』
『────……むぅ。』
『>>>え、な、なぁに?』
『────……何でもありません。』
「──そっか、ありがと! まぁ、あんまりお気軽には、バラまかないようにするわ!」
『>>>! うん、そうだね。それでいいさ!』
「よしゃ! さぁて。じゃあ、私の"王城のお部屋探し"の、続きといきますかぁ!」
"クラスルーム"。
どうやら、プレミオムズのメンバーは、
王城のギルド管轄区域に、自分の部屋をもらえるって話。
さっきの話だと、私のもらえる部屋は、かなり上の階にあるみたい。
……新人がテッペンってのも変な話だと思うけども、
イチバン階段を登らなきゃいけない、ってのは、
ある意味、新人っぽいのかな?
でも──。
「うーん、どこなのよ──! わっかんないなぁ──……」
「にょっきゃ?」
下の階でもわからなかったから、この階に来たのよねー。
「いけばわかる」みたいなこと、言われたんですけどね……?
さっきの階の、それっぽい部屋を開けると、
なんと入口の付近まで、謎の書類束が山積みになっていた。
何枚か見たけど、食料庫の備蓄とか、めっちゃ前の資材予算とか、明らかに昔のどうでもいい書類だったわね……。
ちなみにその隣の部屋は、簡易水場のような部屋で、
さらにその隣の部屋は、掃除用具がビッシリだった。
さすがにここの階ではないだろうということで、
今の階に登るにいたる。
「にょきっとなー!!」
私の肩からおりたうさ丸が、ぴょんぴょん跳ねながら、前を行く。
あれ……この階から、赤い絨毯が敷かれているわね。
私の過激な足音が、吸収されておりますわ。
「にょむ!」
ぺしぺし。
うさ丸が、立派な扉を小突きながら、私を見てる。
いやぁ、まさかぁ、そこじゃあないでしょおよぉ……。
──ガッゴ。
「うぇ──い。カギかかってるし……そりゃそうよねー。あれ、そういや、私のクラスルームって、カギとかかかってんのかな。私、このカードしか、もらってないんだけど……?」
「にょんむ──……?」
私の金ピカグローブに握られる、
ギルドカードと、ほぼ同じ大きさの白いカード。
金色の星が、輪になるように七つ、描かれている。
プレミオムズの七人を表しているのかな?
『────分析完了。
────やはり:"クラスルームカード"と表記されます。
────ギルドカードの流路回路と、何らかのリンク機能があるようです。』
『>>>うーん、部屋の前にいくと、自動的にカギが開くとか、そういうんじゃないの? よくわかんないけどさ?』
「ええ──、そうなのかなぁ──……」
う、うーん。
集会が終わったのはいいんだけど、
クラスルームの場所、どこやねんさ……。
窓から見える日差しは、かなり傾いてきている。
白は、オレンジに移り変わりつつあるわ。
あと1ジカもすれば、まったり夕焼けになるでしょうね。
ゆっくりした気分で景色をみたら綺麗なんだろうけど、
今は、はやく王城から出たいわね……。
うう、さっきの集会、
けっこう変な汗かいたからなぁ……きもちわるっ!
特に、オシハさんに襲われた時の冷や汗といったら……!
うぅ〜〜、お風呂入りたいよォ〜〜……!
「……私のクラスルーム、お風呂とかあったりしないよねぇ……?」
『>>>えっ……いやまぁ、鍵付きの部屋だったら、どこでもお風呂できるじゃないの。きみのバッグ歯車でさ?』
「あ、あぁッッ! そ、そーいや、そうだけどねっ!」
『────お任せ下さい。世界中:どのようなコンディションでも:バスルームを構築してみせます。』
そ、そうよね!
大きめの歯車をふたつ、
上と下に出して、お湯を滝みたいに流せるもんね、歯車法!
バッグ歯車の中って、格納したアイテムの時間を、
止めたり、進めたりできるみたいだし。
山火事さんで、地下水つかって、お湯を沸かして、
不純物を取り除いて、シャワーし放題……。
ぜ、ぜいたくねぇ──!!
歯車バスルームに、栄光あれ、だわ!!
「や──……あとは湯船さえあればいいのになぁ──! もし手に入ったら、ベッドと一緒に持ち歩くわよ、私! あ……いや、王城でお風呂とか、流石に調子乗りすぎかなぁ?」
『────"クラスルーム"が:アンティ専用の部屋だと規定するなら:問題は無いと判断。』
『>>>そだね──。中で何しようと、ぼくらの勝手だよね──』
「そ、そ──ぉ?」
「──にょんにょんにょん、にょんにょんにょん♪」
──コロコロコロ──。
お、"王城でお風呂"、か……。
わぁ────!
な、なんか、一生できないような奇跡体験よね! それって!
少なくとも、田舎っぺ食堂娘にとっては、ものっそい思い出になるわ!
う、うわぁ、一回やってみたくなってきたわね!
……で、うさ丸さん。
アンタは何、絨毯の上をローリングしていらっしゃるの……?
ちょ、あんた、きちゃないわよ? ねぇ……。
──コロコロコロ──。
「! にょきっとな! にょきっとな!」
「ん? ん? なぁに、うさ丸……」
んん? この先……。
「ちょ! 行き止まりじゃないの!!」
「にょきっとなぃ!」
え、えええ──……。
ちょ、これって、この建物の最上階ってことなんじゃ……。
私の部屋どこやねん……。
日が落ちる前に宿屋に帰りたいんだけど……。
『>>>あっりゃ──……。一番上まで来ちゃったねぇ……』
『────建築構造的には:ここが最上階のようです。』
「な、なんでよっ! ここまでで、マトモな部屋なんてなかったわよぉ!?」
んも──!!
ど──なってんのよ──!!
どんつきまで来ちゃったじゃないのよ──!!
「にょき! にょんむ──……」
「……クラスルームとかいいから……さっさと宿屋に帰って、歯車シャワー、しよっかな……」
『────クラウンギアは:アンティの決定に追従します。地下水の加熱を開始します。』
『>>>いやいやいや気ぃはやいって、クラウンちゃん……。──ん? あれ……?』
「……どしたの先輩?」
『>>>いや、この壁……』
突き当りの、壁?
……?
「……なぁに?」
『>>>石のレンガの積み方が、おかしいな……ここ』
「へ?」
『────:詳細の入力を。』
『>>>あ、いやね? ここの壁の石レンガ、互い違いじゃなくて、格子状に積んであるだろう』
『────理解しました。』
「……えっと?」
『>>>あ──、つまりね?』
──ヴォン! ヴォヴォヴォ……。
わっ。
アナライズカードが、たくさん出る。
小さな四角がいっぱい……?
『>>>今まで歩いてきた、お城の壁の構造は、こう──』
□□□■□□□□□□
.□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
.□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
.□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
「ふむふむ」
『>>>でも、ここの突き当りの壁は、こうだ』
──ヴォン……。
□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
□□□■□□□□□□
「あ──! はいはいはい! まっすぐ積み重なってるわね! あ、ほ──んとだ……」
『>>>建造後の強度を考えると、この石レンガの積み方はありえない。まるで、塞ぐためだけに積んだみたいだ……』
『────該当壁面部に向かい:アナライズスキャンを試行。トライ:1。』
『>>>「え」』
────ヴォン!! ヴぉヴぉヴぉヴォン!!!
壁に、アナライズカードが吸い込まれていった。
クラウンは、最近、自発的にこういうことをやってくれる。
たまに、いきなりすぎてビックリするけどね? ふふ……。
『────スキャン完了。厚さ:8メルトルテ単位。同連続構造です。』
『>>>ッッ!? あ、厚すぎるって! 通路幅と同じくらいの厚みの壁じゃないか! なぁんだここ!!』
「あ……ねぇ先輩。ここ。この壁の真ん中辺りに、星の意匠があるんだけど……」
『>>>……!』
規則正しく積み上げられた立方体のレンガ。
その真ん中に、七つの星が輪になった紋章が彫り込まれてる。
これって……。
『>>>あ、ほーんと……』
「にょむ! にょんや!」
「これ、クラスルームカードの紋章と同じよね?」
『────分析完了。
────アンティ:正面の壁の材質に:多数の魔術流路構造が組み込まれています。通常の壁ではありません。』
「──!! どゆこと!?」
『>>>てことは、何か魔術的なギミックがあるのか……んー、セオリー通りにいくなら……。後輩ちゃん! そのクラスルームカード、壁の紋章のところに、かざしてみてくれないかぃ?』
「こ、こぅ?」
……、……。
……ファァァ……!
「にょっき!」
「──!」
『────"眼魔":発動中。』
『>>>魔力が壁全体に流れているね! 後輩ちゃん、見えてる?』
「うん! スキマが光って見えるね!」
目の前の、綺麗に積み上げられた石のレンガのスキマに、
光がカクカクと、走っているように見える!
これは、実際に光ってるんじゃなくて、
先輩の仮面のスキルで、魔法が光って見えてるのね!
……──ジ、ジジ……!
「──! プレミオムアーツが!」
『────文字が:表示されています。』
『>>>当たりみたいだねー』
金の首輪になっているプレミオムアーツが、
少し、あったかくなっているような気がする。
私の口の、30セルチくらい前のところに、
こう、金の光の文字が浮かんでいる。
"────name?"
「……」
『────……。』
『>>>…………』
「にょきっと」
……。
「……、アンティ・クルル……」
"──── A:N:T:I - Q:U:R:U:L:U▼"
"────cleared."
……ジジ。
"────Premioms:class-code?"
「……、……」
『────アンティ。』
『>>>だ、大丈夫……言って言って!』
……。
「……プレミオムズ、"配達職"!」
……ジジ。
"────Premioms-Riders."
"────cleared."
"────scanning・・・--"
────ヴゥゥウオオン!!
「──わ!!」
プレミオムアーツに表示される通りに、
名前と役職を言ったら、
いきなり、足元から変な音がした!!
びっくりして、下を見ると──!!
──ヴヴヴ……ヴヴヴ……。
「こ、れ……!? "アナライズカード"!?」
『────私が発生させたデバイスではありません。王城の建築構造に組み込まれた機能のようです。』
「そんな……!? アナライズカードって、お城の中で使われているの!?」
……ジ……ジ……ジ……!
足元から、私達由来じゃないアナライズカードが、私をスキャンしていく!
うわぉ、これ大丈夫なの!?
……ジジジジジ!
「わ、わ……!」
「にょんやぁ〜〜!」
『>>>後輩ちゃん、落ち着いて! どうやら、元々この壁に組み込んである"仕掛け"らしい……害はないだろう』
「ふ、ふぇ〜〜! こんな事って……」
透明の板が、足から、太もも、腰、お腹、胸、首……、
う、顔……通り過ぎていく。
うう、なんかゾクゾクする……。
まさか、お城にアナライズカードの機能を使った場所があるなんて……!
アナライズカードって、自分では、
とっても珍しい能力だと思っていたんだけど……。
もしかして、王城では、普通のことなのっ?
せ、世界ってひろいのねぇ……。
……ジ、ジジ……。
"────G-to-G:rank・・・cleared."
"────blood・・・cleared."
"────class-code/matching・・・completed."
"────Alrighty"
"Welcome. Ms.Anty────."
── ゴ。
「んっ!?」
──ゴゴゴ……ゴゴゴゴゴ……!!
「にょんやぁ───!!!」
「なんだなんだなんだ……ゆれとんぞゆれとんぞゆれとんぞ……」
『────魔術流路の起動を確認しました。』
『>>>……。"血"、だって……?』
「──! 見て! 目の前のレンガ、今度は本当に光ってるんじゃない!?」
明らかにヤバい地鳴りのような音がして、
壁の、立方体のレンガたちが、ピカ──ッッて、光る!!
うぉい!! なんじゃこりゃあ!?
「ちょ……ちょ、やばくない……?」
「にょにょにょにょにょ……!」
うさ丸が、私の左顔面にへばりついて震えている。
……ぬっくい。
『>>>──! 後輩ちゃん! 少し後ろに下がって!』
「──ッッ!」
先輩の忠告は、いつも、とっても大事だ。
素直に、瞬時に、後ろに一歩、ステップする。
────その時だった。
──キィン!
────────クァァアアアンンッッ!!!
「 ── うっわ! 」
目の前の、立方体でできた壁が。
──ほどけた。
向こう側に、押し出されるように、へこんでいく。
普通、こんないっぱいの石のレンガが動いたら、
ゴリゴリって、擦れる音がするはず。
……なのに、それが、一切ない。
すごい、滑らかに、滑るように、押し出されていく。
ランダムに、スライドしていく、四角い石たち。
……!? あれって……浮いてるよね!?
見ていて、ぞわぞわする。
──クォォオオン──、クォオオオン──、カ───ン!
ふわふわと、それぞれが、浮きながら、動く。
……めまいがしてきたわ。
ランダムに陥没し、ほどけ、道を、作っていく。
なんとも不思議な光景が、拡がっていく。
コン・・コンコン──コンコン・・コン──……!
それぞれの石が、はじけ合い、ゆずり合い、
私の前から、逃げるように、奥に進んでいって────。
────上から、穏やかな光が、射した。
「──! ……"外"だわ!」
オレンジ色になりつつある、太陽の光。
って、これって……壁、貫通してるじゃないの!!
ちょっ、うお──ぅい!!!
お城に、穴あいてもたやないかぁ───い!
うっわぁ……大惨事じゃないのよぉ──!!
「え、これヤバくない!? ヤバくない!? てか、下から見られてるんじゃあ……」
『>>>──! 後輩ちゃん! "眼魔"でよく見て! 空中に、なにか術式が走ってる! "幻影"……いや、"隠蔽"か……?』
「げ、げんえい、いんぺい……? いや、これは幻じゃあないでしょうよぉ……! うわぁ! 完全に壁に穴、あいちゃったわよ──!?」
さっきの壁、厚さ、8メルくらいあったんでしょう!?
ここの通路、横幅もそれくらいあるわよね!?
そこにぎっしり詰まっていた四角いブロックが、
ぜんぶ、外に推し出されてしまってる!!
てか、なんであのブロック、宙に浮いとんのや……。
あ、あれだ……まるで、
群れて飛ぶ、小鳥の集団みたいになってるわ……。
わ、わけがわからない……。
夕暮れ間近のオレンジ色の空に浮かぶ、大量の四角形。
い、"異様"の一言だわ……。
「……にげよっかな……」
『────……。』
「にょんむ──……」
『>>>い、今は逃げない方がいいと思うよぉ……?』
だ……だってさぁ──……。
お城の壁に、私の名前を言ったら、
壁が崩壊して、無数のレンガが空を飛んでんのよ……?
自分で言ってて、意味不明すぎてビビるわ……。
いち食堂娘の、受け止められる容量を超えてるっつーの。
あ──。
景色きれいねぇ──……。
『>>>あっ!!』
『────アンティ。』
はぁ──……お風呂入りたいぃ……。
……よし、わかった。帰ろう。
お城に穴、開いたけど、帰ろう。
乙女の汗よりは、些細な問題よ、きっと……!
『────アンティ:正面に。』
「な、なによぅ、こんどは……」
『────正面の中空部に:階段が形成されています。』
「 」
───スゥゥ────。
……。
ほんとだ……。
あまりにも音がしないから……。
見ないフリ、したかった……。
さっきの立方体ブロックが、連なりあって、
空に、なっっっがい階段をこさえている……。
階段を登った先には、いま、私がいる所とは、
別の建物が、待ち受けているようだ……。
下を見る。
たっかい。
なんちゅう所に階段つくっとんねん。
「……これ、私に登れってか……」
「にょきっとなぁ──……!」
目の前に現れし、天空へと続く階段。
食堂娘は、脱力した。