100万点のクルルカン さーしーえー
シャッチョさんジャッジメントまで、あと5日……!
((((;゜Д゜))))
第一巻、よければぜひとも(*´ 艸`)♪
今回のお話は、まさかのあの方が主役です(笑)
「ずずずずず〜〜……んまんま……」
王立ギルドの、ほんわかベテラン受付嬢、
マリー・マトマットにも、休息の時はある。
今日の彼女の夕食は、
職員が選ぶ、ギルド飯・百選、第18位、
"野菜たっぷり☆ココ鶏白湯麺"であった。
ギルド併設食堂の常連である彼女は、
当然、味玉券を持っている。
ハーフカットされたエッグが2つ、
しっかりとスープの上にのっており、
いつも通り、ユズペッパーが突っ込まれていた。
ココ鶏肉、野菜、麺。
──女性職員にも人気の、万能食である。
彼女はマイ・チョップスティックスを使い、
慣れた手つきで、麺をすすっていた。
「ずずずずず〜〜……んくんく。いやぁ〜〜、受付で聞いた、うさちゃんの歌、可愛かったですねぇ〜〜。ずずずずず〜〜……」
今日、受付で会った、
まん丸ラビットを連れた、"黄金の義賊"の、女の子。
今日が、初めてのプレミオムズ集会だと言う。
「シャクシャク……ふふ、面白いコが七人目に来ましたねぇ〜〜。さぁて……センパイ方の"採点"は、どうなるでしょおか〜〜ずずずずず〜〜……」
新しい出会いと、白湯のスープの美味さ。
愉悦に浸る、休息中の受付嬢の元へ、
後輩職員の魔の手が、届こうとしていた……!
「──まりぃさぁぁあああんん!! マリーさんはおられるかぁぁああ!!!」
「──ぶッッ、ぽ!」
大声で叫ばれる、自分の名前。
ほんわか肝っ玉ベテラン受付嬢、
"マリー・マトマット"といえども、
ご飯中は、無防備なレディである。
かろうじて、白湯は鼻から逆流しなかった。
「──おいこらうっせぇぞてめぇええ!!」
「──食堂では静かにしやがれぇええ!!」
「わー、すんません! ほんとすんません!! こぉらぁ、アンタなんでそんな叫ぶの!?」
「!! あっ!! マリーさんっっ!! いらっしゃいましたか!!」
普段、丁寧な対応に定評のある、王立ギルド職員たち。
だが、併設食堂にいるのは仲間内。
外っ面は剥がれ、食堂の入口で叫んだアホ職員に、
次々と罵声が浴びせられる。
叫びながら入ってきた男性職員と、
周りに謝りながら付き従う、女性職員。
二人は、マリー・マトマットへと、
まっすぐ向かってきたのであった。
「……ふぁい〜〜? オコットくん。ワラビちゃん、何かありましたか〜〜?」
「ありましたかーじゃないですよ!! マリーさぁん!! あいつらはいったい、何を考えているんですかっ!!」
「わぁ〜〜!! バカ、あんた声おさえなさいよぉ!? めっちゃ睨まれてんじゃないの!! あんたバカァ!?」
「……ずずずずず……んくんく……"あいつら"?」
「──"プレミオムズの方々"のことですよぉッッ!!」
「しずかにしろバカぁあ〜〜!!」
マリーの後輩の男性職員は、何やら、いきり立っている。
どうやら女性職員の方は、心配で付いてきたようだ。
「ふぃ〜〜、やれやれ……」
先輩職員とは、時には面倒事をおっかぶるものだ。
マリーは、でっかい器を片手に持ち変え、
とんとん、と、横の席を、かるく叩く。
「もぐもぐ……とりあえず、座りなさいな〜〜」
「まったく!! だいたいあの方たちは、いつもフラフラとしすぎなんですよ!! プレミオムズだという自覚をもっと持てっていうかですねぇ!!!」
「ちょっとオコット……! 声がでかいから……!」
──ダァァアン!!
「 すわれェ…… 」
「──ひっ」
「……あ、はい」
いつもは、ほんわかな先輩の眼光に、
二人の後輩は、そそくさと席についた。
「んく、んく、ぷっはぁ〜〜。それで〜〜? プレミオムズの方達が、どうしたんですかぁ〜〜?」
「そ、それですよマリーさん! ボカぁ、この書類を見て、頭にきちゃってですね……!!」
「──! それは……新人プレミオムズさんの、"採点書"ですねぇ〜〜? オコットくぅ〜〜ん? そんな機密書類、食堂に持ち込んじゃあいけませんよぉ〜〜?」
「それは、その……すんません……」
男性職員の持つ書類の裏には、
以下の注意事項が書かれている。
"新人プレミオムズ採点書"
・新しいプレミオムズは、水晶球の魔術機構によって、
自動的に選出される事が多い。
その者のランク、討伐数、評価などから判断され、
プレミオムアーツが精製、送信されると思われる。
・しかし、自動選出された場合、
実力値、及び人格的な判断をする必要があり、
これらを、現役プレミオムズによって採点、
最終判断とする。本人の素行、印象に、
あまりにも問題があると判断された場合、
新人プレミオムズの権限を剥奪する物とする。
・"新人プレミオムズ採点書"は、
基本項目以外は、書式自由である。
初回顔合わせとなる集会終了時に、
既存プレミオムズは本人抜きで、採点をする事。
・点数化する場合、100点満点での記載をお願いします。
「も〜〜、仕方ないですねぇ〜〜。でぇ〜〜? それがどうしたんですぅ〜〜?」
「……!! それがですね!! 内容ですよ!! 内容を見てください!!」
「あ、あははは……。マリーさん、その"採点書"ですね……私とオコットが受付してる時に、オシハさんが「よろしくね〜〜!」って言って、渡してきたんです」
「あらぁ、そうでしたか〜〜」
「そっ、その時にですね!! すぐ横にいたベアマックスさんがですね! 「……え、おま、ソレ、あのまま出したのか……!?」みたいな事を、仰ってたんですよ!!」
「ほあぁ、そうでしたか〜〜。相変わらず仲良いですねぇ〜〜」
「あ、はい……それで、オコットと一緒に内容を見てみたんですが……」
「これは、ふざけているとしか、ボカぁ! 思えませんねぇッッ!!」
「へあぁ、そうなんですかぁ〜〜?」
「あはは……マリーさん、そのですね……。実を言うと、私もオコットと、けっこう同意見と言いますか……」
「あらぁ。ワラビちゃんも、その"新人プレミオムズ採点書"が、ふざけていると?」
「え、ええ……前代未聞レベルで……」
「あらぁ〜〜」
黄金の義賊クルルカンの格好をした女の子。
謎の復活をとげた、"配達職"のプレミオムズ。
その"採点書"が、どうやら問題のようである。
マリーは、空になった器の上に、
マイ・チョップスティックスを揃えて置き、
そっと手を、さし出した。
「ほんでは、ちょっと見せていただきますぅ〜〜?」
「どうぞ!! 本当にふざけています!!」
「あはっははは……」
ぺらっ……
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■ 新人プレミオムズ採点書 ■
対象者:アンティ・クルル(郵送配達職)
●基本項目
つよさ まほう まもり はやさ
10 0 10 10
ゆうき はーと すきる なかま
10 10 10 10
●自由項目
手料理 きらきら かわいい
70000 70000 70000
手品師度 かくのう いねむり
70000 70000 70000
親切度 すなおさ アイテム
100000 100000 100000
謎解き マッピング 翻訳
1000 1000 1000
クルルカン度 主人公度 子供の味方
10000 10000 10000
ツインテール度 くま警戒度 英雄度
10000 10000 10000
いいヤツ度 おっぱい ちちした ひっぷ
10000 75 64 81
摩訶不思議度 仲間にしたい度
10000 70000
にょきっと度
126710
●特記事項
・ポーター適正有。有事に協力依頼求む。
・次回プレミオムズ集会時に食材の支給求む。
・配達の依頼があれば斡旋求む。
●採点者連名
・オシハ・シナインズ
・ベアマックス・ライオルト
・ヒナワ・タネガシ
・マジカ・ルモエキラー
・ユユユ・ミラーエイド
・エコープル・デラ・べリタ
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「──ぶあっはっはっは! ぶあっはっはっはっは!」
「おい見ろよ……マリーさんが爆笑してるぜ……」
「おおぅ、珍しいこともあるもんだな。あの落ち着いた人が……」
「まっっったく! ふざけてやがる! 何考えてんだあの人たちは!!」
「あはは……というわけです、マリーさん。検算すると、ちょうど100万点になりました……」
「はぁ〜〜、おっかし……おもひおい〜〜」
「100点満点にしろっつってんだろ!! なのになんだよ『手料理 7万点』って!! ナメてんのか!!」
「あはは……私はその……この、お、『おっぱい』の項目が気になっちゃいまして……内容が内容だったんで、はやめに見せようと思いましてですね……?」
「マリーさん!!! これ、後で王族の方も見る、正式書類ですよ!? なのに、このふざけよう!! 下っ端ギルド職員を、なめくさってます!! で、考えたんですけどね!! これ、正式に受理しちゃいませんかッッ!?」
「──! ほぉ〜〜? というとぉ〜〜?」
「この採点書をですね!! そのまま、審査を通してしまうんですよ!! じゃあ、王族の方やら、司祭様方が見て、『なんじゃこりゃあ』ってなるでしょう!! そうしたらボカぁ、"いや、その採点はプレミオムズの方たちに言われた通りにしただけですからぁ"って言ってやりますよ!! じゃああいつら、王族に呼び出しくらったりするでしょう!! ざまぁみろってんだぁ!!!」
「あ、あのねぇオコット……そんなの無理に決まってるでしょう……こんなのそのまま出したら、私たちクビよ? めんどくさいけれど、後日、プレミオムズの皆さんに確認をとって、添削してちゃんと100点満点形式にして……」
「ワラビ!! キミは悔しくないのか!? 見ろ!! このぶっ飛んだ内容の採点書を!! なんだ!? 『にょきっと度』って!?」
「いや、だから私も内容にはビックリしてるってば!! 特にその……ひ、『ひっぷ』とか……」
「いやぁ〜〜これを見るに、クルルカンさん、安産型ですねぇ〜〜」
「あ、それなんですが……新人のプレミオムズさん、本当にクルルカンの格好をしているんですか?」
「ん!? な、何だそれ……」
「オコット知らないの!? 昨日ね? カフェ・ド・ランドエルシエで、けっこうひどい火事があったんだけど……その時、クルルカンの格好をした人が、子供を二人助けたのよ?」
「え……あ、あれか!! なんか噂になっていた……」
「何言ってんの、今、王都中その話題でもちきりよ? そこら中に、挿し絵入りの号外の新聞がばらまかれてるわ!」
「さ、挿し絵入りの号外新聞って……記事印刷用の金型が組み直されたってことじゃないか!!! な、なんて豪勢な……」
「英雄さんも、ちゃんとお仕事してるってことですねぇ〜〜。ふむ〜〜、『まほう』がゼロ点なのが、気になりますねぇ〜〜」
「と、とにかく、新人のプレミオムズの方はいいんですよ! ボカぁ、採点した他のプレミオムズさんに、むかっ腹立ってるんですって!! マリーさん!! この無茶苦茶な書類、王族に見てもらえるように、通しちゃいましょう!!」
「だからオコット、それは無理だって……」
「のりました〜〜♪」
マリー・マトマットは、採点書に、
確認した印であるサインを、サラサラと書いた。
ペンを胸元のポケットにしまう。
「ええぇえぇええぁえええ〜〜!!?」
「ま、マリーさんッッ!!! さ、さすがだっ!! 話がわかるッッ!!」
「マリーさん、い、いいんですかぁあああ!?」
「いいんですよ〜〜。このまま通しちゃった方が、プレミオムズの方の意思も、オコットくんの意思も通るじゃないですかぁ〜〜!」
「うんうん、さすがはマリーさんだ!! 柔軟な対応力の持ち主!! すばらしい!! くくく、見てろよあんのプレミオムズどもめ……! 後で泣きっ面かくがいいっ……!! は──ッはッはッはッは────!!!!!」
「ぇぇえええ〜〜……ほ、ほんとにこのまま、上に上げちゃうんですかぁ〜〜!?」
「プレミオムズ、敗れたり!! は──ッはッはッはッは────!!!!!」
高笑いして、周りから睨まれる、男性職員。
涙目で、信じられない顔をする、女性職員。
その二人の前で、にまにまと笑う、マリー・マトマット。
ぼそりと、つぶやいた。
「ふふふ〜〜……でも、もしこの採点書がそのまま通ったら、クルルカンさんは、"プレミオムズ・エルシエルド"になっちゃうかもしれませんねぇ〜〜。それはそれで面白いかぁ〜〜!」
「ね、ねぇ、マリーさぁん!! お願いですから、その、明らかにサイズの所は塗りつぶしてあげましょおよぉ〜〜!! 可哀想ですってばぁ〜〜!!」
「は──ッはッはッはッは────!!!!!」
「あぁ〜〜、安産型ですもんねぇ〜〜♪」
かくして。
一人の女性職員の手によって、
あるクルルカンの秘密が、守られることとなった。
あのあと、何があったんだ……((((;゜Д゜))))










