プレミオムズ集会〆 さーしーえー
+ ∩ ∩
●(ฅ˙꒳˙ฅ)●
にょきっとなぁ〜〜!
『────翻訳:第一巻にキッティがいます。』
小さな女の子から、うさ丸を返してもらうには、
どうすればいいのかな……?
「ううう〜〜」
「……にょっき?」
「あはは……」
──思えば。
私は、可愛いぬいぐるみとか、
女の子らしいモノを、持っていなかった。
実家が食堂であると言うこともあり、
昔っから店番をしているうちに、
ずいぶんと、オトコまさりな性格になってしまった自覚はある。
色んなお客さんの接客をしていたら、
知らない間に度胸や、見聞はつくもんだ。
人形やら、ぬいぐるみやらを欲しがる前に、
共働きの父さんらに、気を使うことを覚えてしまったのかもしれない。
その……学校に入ってからは、
バカにされても、けっこう見栄をはってたし……。
何とか、気持ちで負けないようにはしてたけど、
やっぱり、私は魔無しだった。
学費を払ってもらってる両親に、わがままなんて言いたくなかった。
家に帰って、いつか必ず、と思って……店番して……。
子供の頃の私は、正直、けっこう、色々流されてたんだと思う。
自分から、欲しいモノを言おうなんて、思いつきもしなかった。
だから、目の前の女の子から、
どうやって兎の王様を返してもらおうか、
私は悩んでいる。
彼女は、私と違って、
ちゃんと、欲しいものを、求めているのだ。
「うさ丸ちゃん……帰っちゃうの……?」
「にょきっとな……?」
うーん、どうしよう……。
完ッ全に、エコープルちゃんは、うさ丸に、ご執心だぁ……。
めっちゃ、抱きしめてる……。
えとぉ──……、
昔、ユータとか、ログとかを、あやした時とかに、
似たような事は無かったかな……。
「……エコープル殿。アンティ殿が困っておられるでござるよ?」
「マジ、気持ちはわかっけどな……」
「……ぅぅ」
私が、どうしたもんか悩んでいると、
ヒナワさんと、マジカさんが、なだめに入ってくれた。
妹をなぐさめる、お兄さんとお姉さんみたいだ。
頭をぽん、ぽんとされるエコープルちゃんは、
じっとり涙目で、顔を俯かせている。
うーん、困ったわね……。
小さな女の子をなぐさめるには……。
アナとかが泣いた時はどうしてたっけ……?
や、ダメだ。
あの子、サバサバしたとこあるから、参考にならん。
野菜投げて怒られて泣いてたから、自業自得だし……。
「はは、すっかりラビットのこと、気に入っちまってるなァ……」
「まぁ、審議官って立場で、こんな、無害な魔物に触れる機会は、滅多にないものね……?」
ベアさんとオシハさんが、苦笑い、と言った感じで、
優しく困っている……。
「──だ、だいじょうぶ!!! また会えますよ!!!」
「…………」
お、ユーくんが、それっぽいことを言った……。
う、うーん、間違いではないけど、今はねぇ……。
「………ぅん」
「……にょ……」
「……!」
そっ、、、と。
エコープルちゃんが、うさ丸を、床におろした。
……えらい。
小さな子だけど、自分が、わがままを言ってるって、
ちゃんと、理解してる。
でも、見ている私の方は、なんだが複雑な心境だった。
欲しいものを、あきらめる所を見た。
仕方ない事だけど、とても、さびしいと思った。
……小さい頃の私は、
無意識に、こんなことを、繰り返していたんだろうか。
なぜだか、私まで、ショボンとしてしまう……。
「…………」
【 ……──こぉれ。なに一緒に落ち込んどんねや。おまんの優しさは、俺っちが、よう知っとる……でもな安嬢。今は、絵物語の英傑のように、歌舞きんさぃな。一緒に塞いでも、笑顔は生まれんてな? 】
「──!」
大人の女性の声がして、ハッと、気持ちが瞬く。
そうだ。
子供の頃の私にも、求めたものがあったじゃない!
いや、まぁ、女の子っぽいものじゃなくて、
包丁だったんだけども……。
……。
"歌舞く"、か……。
よく、意味はわからなかったけど、
奇抜な行いをして、元気づけるという意味かしら……?
う、うーん。
確かにカッコは、クルルカンだけどもさ……?
「……」
「にょっき……」
エコープルちゃんは、うさ丸を離してはくれたけど、
やはり、とても、さびしそうだ。
うさ丸が、下から顔を覗き込んでいる。
……ぱっと。
うさ丸が、私の方を向いた。
目が合う。
「……?」
「……にょっき!」
……。
うさ丸が、とても真剣な目だ……。
もう一度、エコープルちゃんを見て、
また、私を見た。
……?
「──! そうか……!」
(クラウン! "にょきっとマスター"を起動)
『────レディ。
────翻訳デバイス:"にょきっとマスター"Ver.3.0を起動します。』
──ヴォン!
目の前に現れる、うさ丸の形をした、アナライズカード。
これは、うさ丸にも見えているはずだわ。
ぴょんぴょんと、うさ丸が近づいてきた。
私は、しゃがんで、耳をかすポーズをする事にする。
「……?」
「……なんだ?」
周りのプレミオムズの皆さんが、
首を傾げているのが見える。
ちょっと、気恥ずかしい。
うさ丸が、私の耳元に、にょむにょむと、語っている。
ほとんどのうさ丸語は、翻訳することができた。
「……──!」
アナライズカードに映った翻訳結果を見て、
少し、驚く。
……うさ丸、あんたって……。
「…………」
「……クルルカンの、お姉ちゃん……?」
どうしようか。
こんな事、そのまま言って、信じてくれるだろうか。
……。
うーむ。
いや、ここで、想いをねじまげるのは、よくないわ。
私は、ちょっと悩んだ末に、
うさ丸の言ったことを、そのまま伝える事にした。
「……エコープルちゃん。うさ丸がね、今は、一緒にいることができないって」
「……──!」
少し、びっくりした顔になる少女。
でも、かまわず、続ける。
「……うさ丸ってね? 昔は、色んな所を旅したんだって。その中で、たくさんの、出会いと別れがあったって。だから、生き物に、別れがあるのは、仕方がないことなんだ、って……」
「……! そうなの……?」
「うん。でも、大丈夫だよ、って、うさ丸は言ってるよ?」
「……どうして?」
「"ぼくも、キミも、ちゃんと、生きてる。また、必ず会えるから、心配ない"、って……そう言ってるわ」
「!! うさ丸が、そう言ったの!?」
「にょきっと♪」
う……。
本当に言ってるんだけど、やっぱ信じないかな……。
……まぁ、ここまで来たら、なるようになれ、だわ。
「──えぇ。クルルカンはね? どんな心でも、お手紙にできるのよ──?」
「にょきっとな!」
「──!!」
あ、いっけね……ちょっと奇抜なコト言いすぎたかな……。
エコープルちゃんは、胸元の水晶玉を両手で包んで、
キラキラした目で、私を見ている。
「……すごい……!」
「う、うん。えとね……"キミは、ぼくより大きいけど、もっと大きくなれる。キミは、ちゃんと生きてる。だから大丈夫!"って!」
うさ丸のココロを代弁しながら、うさ丸のコトを見て、
ちょっと、認識を改める。
……この子、さいしょに出会った時は、
"居眠りうさぎボール"だと思っていたけど、
多分、かなり、しっかり生きてきたんだなぁ、と感じる。
もしかしたら、私なんかより、
とってもオトナなラビットなのかもしれない。
キッティは、うさ丸がドニオスギルドに来たのは、
2年くらい前だと言っていたけど、
……たった一人で、旅をしてきたのかな……。
「にょむ、にょんや!」
「──あっ!」
──ぽんむぽんむ!
うさ丸が、ぶっとい両耳で、
エコープルちゃんの小さなお手手を、はさみこんでいる。
「にょむっ、にょきっとな!」
「──うさ丸が昔、いた所ではね? 両耳で相手をさわるのは、親愛の証だったんだって。うさ丸が、"また会いましょう"って、言ってる」
「──!」
「にょきっとな!」
「……ふふ」
"うさ耳サンドイッチ"されているエコープルちゃんは、
まだ、少し涙目だけど、ちゃんと、微笑んでいる。
──まいった。
私なんかより、うさ丸の方が、
小さな子供を元気にするのが、とってもうまいわ。
「にょっき!」
「えへへ……」
……この子を元気づけるような、もうひと押しが欲しいわね。
どうしようかな。
うーん。
クルルカン……歌舞く……。
──ちょと! せんぱい! なんかいい方法なーい!?
『>>>え"っ……そ、そうだな……』
『────先人の知恵:お手並み拝見です。』
『>>>プレッシャーかけないでよね……。あ──……。つ、月並みだけど……"美女には花"……ってね?』
『────……。』
──ぶっ!!
く、く、く……!
先輩が、思いのほか、キザな事を言った。
笑うのを、ずいぶんガマンする。
ちょっと、やめてよもぅ……。
「……、……」
「お、お姉ちゃん……?」
「にょむ?」
……ふぅ。
いい、いいじゃないの、それ!!
なんだか、やたら、気に入ったわ!!
さぁて……じゃあ。
先人に倣って、
キザな台詞でも、宣いましょうか────。
──キィ──ん……!
「──!」
しゃがんだ状態から、
片足の膝を、床に付け、
わざとらしく、左右のマントを、後ろになびかせる。
────意識するのは、絵本の1ページ。
誰もが心に持っている、"黄金の義賊"、その姿。
顔の前で、金の拳を握る。
祈るような、しぐさ。
ゆっくりと、小さな乙女の前に、差し出す。
そっと、手をひろげると────……!
「……わぁ──!」
一輪の、光り輝く、大輪の花。
バッグ歯車の中で、イチバンでっかい、精霊花だ。
ふふ……さぁて。
小さな尊い笑顔のために、戯れるとしましょうか────。
「
小さな姫君よ、
今宵は、これにて、失礼いたします。
見れば、我が友が、大変お世話になったご様子。
僭越ながら、聖なる大地に咲く、
神秘の花など、贈らせていただきたい。
我が友と共に、また、お会い出来る時を、
楽しみに待つことと、いたしましょう。
どうか、その可愛らしい御手の中に、
今宵の、輝く思い出と共に──……。
」
「わ、ぁ……!」
……ぷく、く。
クルルカンのカッコをした女が、
バカみたいにカッコつける様子は、
悲しみを、ぶっ飛ばすくらいには、マヌケでしょう。
窓から射した陽射しは、ずいぶん色を付けてきている。
差し出した、花を持つ金の装甲が、キラキラと反射した。
神秘の花は、小さな両手に、握られる──。
「……また、うさ丸とくるわ」
「……うん!」
「にょきっと!」
やれやれ……。
ホントはプレミオムズ集会なんて、
何度も来たら、寿命が縮むんだけど……。
こりゃあ……次に来る時も、うさ丸を連れてこなきゃあね?
さて……。
確かな笑顔を見て、ゆっくりと、立つ。
マントと、二つ結の髪が、ふわりと続く。
ぴょん、と、兎の王が飛び、肩に乗った。
「ふ、ふ……じゃあな、義賊サマ。また、次ん時に、よろしく頼むぜ?」
「む……」
意識の外から話しかけられ、
はた、と、周りを見ると。
総出で、皆さんが、ニヤニヤと、こちらを見ていた。
……。
……やべぇ。
こんなお偉方の前で、なに芝居ぶっこいてんだ、私。
赤面しているであろう、自分のほっぺを無視し、
つっけんどんに、言い返す。
「……では、失礼致します! また、お会いしましょう」
「なんだ、絵本の通り、シュバッ!! っと、一瞬で消えねぇのか?」
「む、む〜〜ぅ!!」
──最後のさいごに、くまさんが、ちょっとキライになったわ!
「……本当に、お先に失礼しても?」
「──! ああ。おれ達は、まだやる事がある。先に行きな。ごちそうさん! 美味かったよ」
「……! あ、はぃ……お粗末様です」
ととっと……。
アンティ特製・スペシャルバイキングをご馳走した事は、
ヒゲイドさん達には、断固黙秘だな……。
ほっぺたがいくつあっても、たりないわ……。
「……ばいばい。また来てね」
「──! ……ええ、またね!」
「にょきっ!」
──さて、黄金の義賊は、そそくさと、トンズラすることにしましょ!
少し、名残惜しさのようなものを、感じながら。
イチバンさいしょに、部屋を出る。
……静かに扉が閉じ、
誰もいない廊下の、静かな空気に、浸る。
……。
「……ふぅ、私……うまく先輩のマネ、やれた、かな?」
『────作戦の遂行を完了。お見事です。』
『>>>……ちょ、ちょっと待ってくれる……? さっきの言い回しって、ぼくのイメージなのかぃ……?』
「にょ──きっとな!」
手には、小さな七つの星が描かれたカードが、
確かに、握られていた。
(*´∀`*)アンちゃんがイチバンイケアン(笑)