プレミオムズ集会⑦ しゃーしーえー
うさ丸を、ハリウッドに押し上げるぞ……!!
((( ✧Д✧)))カッ!!
(笑)(*´ 艸`)はぐるまどらいぶ一巻、発売中です。
──手のひらに、のってしまうような。
「──お、おま、これなんだ……?」
「うわぁ、あははっ! ちっさいわねぇ〜〜!!」
「ほっほ──。本当に、こんな小さな宝箱が、最下層でドロップしたのでござるか?」
「マジちょんまいな……」
「うわぁ──! かわい──箱だね!!」
熊の戦士が驚き、
羊の剣士が笑い、
侍の銃士が尋ね、
魔の術士が嘲り、
幼の導士が輝く。
「いやぁ──!!! 10フロアくらいの小さなダンジョンだったんですが、結局、最後の部屋で手に入れた、これだけだったんですよォ──!!! ははっ、まいったなぁ────!!!」
白の法士は語る。
あれだけ準備をしたのに、
手に入れた宝は、この箱だけだったと。
だが、その表情は、明るいものだった。
「しっかし、これは確かに、ちいせぇーなぁ!! はっは、こんなの初めて見たわ!!」
「ほんっと、見ない小ささだよね〜〜」
「マジ、どっかの雑貨屋でも売ってんぞソレ……」
「確かに、そう言われても信じてしまうでござるなぁ!」
「でも、きれいだよ──!」
木製のように見える材質。
表面には、浮き彫りの装飾。
まるで、オルゴールのような。
未だかつてない、珍しい質量が、
妙な愛着と、愉快な雰囲気を生み、
皆、迷宮を打ち破った証にしては、
随分と、慎ましやかである褒美に、
皮肉めいた、面白さを感じている。
────でも。
「 、……」
無言で、目を見開く。
似たものを、知っていた。
仮面の下に、戸惑いは隠れているだろうか。
『────……アンティ。』
『>>>……後輩ちゃん?』
音が遠のく中、二人の声が聞こえた。
先輩と、クラウンの…──そう、クラウン。
"歯車法"。
"時限結晶"。
"アナライズカード"。
クラウンは、3つの要素から生まれた。
ひとつは、私のヘンテコスキル。
そして、残りふたつは────……。
……ぅぅうん。
『────……記憶域同期により:情報を取得。把握しました。
────クルルカンに状況説明のため:流路伝達を試みます。』
『>>>え、ちょ……』
『────目を:閉じなさい。』
……──!
クラウン、あなた……。
──きゅぅううううん……!
『────転送中。』
『>>>──! これは、"映像"……? 後輩ちゃんと、きみの過去なのかい……?』
クラウンは、今の私のオドロキを、
分析・理解してくれたみたいだ。
さすがね、相棒。
昔の私の記憶を見て、判断したのかな?
どうやらうまく、先輩に伝えてくれているみたいだ。
『>>>……!! これは……!! クラウンちゃんが生まれたところか……!? "時限結晶"と、"アナライズカード"……!! この木箱は!!』
『────:必要な情報流路伝達を完了。
────クルルカン:警戒を。
────あの木箱の内包アイテムは:危険度:未知数です。』
『>>>あれに! "時限結晶"レベルのアイテムが入っているかもしれないっていうのかぃッ!?』
『────形状は:かなり酷似しています。』
──そう、似ている。
今、ユーくんの前にあるあの木箱は、
私の実家にあるアレに、クリソツなのだ。
小さな宝箱に、引き寄せられるように、
エコちゃんが、ユーくんの所まで移動した。
うさ丸だけが、円卓の上で、
不思議そうに、私を見ていた。
「……にょむ?」
「……」
「はいっ!!! きいてください!!! 実は、この宝箱、まだ開けていないんですっ!!! みんなで中身、見ようと思いまして!!!」
「あら、そうなの?」
「なんだおまっ、こんなちっこいモン、未開封で持ってきたのか!」
「中身マジ、ショボかったらどうすんだ……」
「はっはっは! 逆に楽しみでござるなぁ!」
「エコープルね! 箱だけほしい──!」
「……、……」
みんな、静かな私に、全く気づいていない。
この、小さな宝箱。
こんな、和気あいあいとした……。
これが……フツウの反応なの?
これは、そんなにスゴいものじゃ、ないの……?
……──ヴォン……パキ。
「──!」
透明の板が、宝箱にぶつかって、くだけた。
『────アナライズスキャン:弾かれました。』
『>>>ダメか……いくら小さくとも、未開封状態の宝箱の中身を把握するのは、難しそうだね……』
クラウン……。
先輩……。
ありがと……。
『────当然の分析をしているだけです。』
『>>>"パンドラの箱"が、大きな物だとは限らないからね!』
……うん?
先輩の言葉は、よぅわからんかったが、
この二人は、私と同じく、警戒を強くしてくれた。
こーゆうときに、同じ方向を向いてくれるのって、いいよね。
私は、あの宝箱のおかげで、クラウンに会えた。
クラウンに出会えなければ、私はここに、絶対にいない。
先輩や、サキ、ダイさん、イニィさん、ガルン……あと、うさ丸も。
たくさんの出会いが、あそこから、始まった。
私の人生にとって、あの宝箱は、大切な運命の歯車だ。
────でも、言い換えるなら。
あの宝箱は、私の今までの人生を、
余裕でぶっ壊すチカラを持っていた。
──"無限を司る結晶"。
──"情報を司る流路体"。
たぶん誰もが欲しがる、伝説級の、レアアイテム。
それが入っていた箱と、"ほぼ同じもの"が、ここにある。
……大丈夫、なの……?
「じゃ、開けますよォ〜〜」
「中身がマジしょぼいに100イェル」
「……掛け金しょぼくないか?」
「わくわく!」
「……!」
あわわ、なんか、軽く開けちゃいそうだな……。
宝箱に、カギとか付いてないのかな……。
『────いつでも分析できます。』
『>>>解析デバイス走らせとく』
……さんきゅ。
むぅ、私がビビりすぎなのかな……?
あの宝箱のお陰で、今ではすっかり、
ビックリクルルカンだかんな……。
でも、ここにいる人達がこんな雰囲気なんだから、
本当に、しょぼーいアイテムが入っているだけかも……?
心配、しすぎ、か……。
ユーくんが、小さなふたを、開けようとしている。
さて、何が入っているんだろう……。
ドキマギしながら、見守っている────と。
「──トラップは大丈夫でござるかな?」
「──通常、ダンジョンドロップの宝箱のトラップ威力は、アイテムのレア度に比例するわ。この程度の大きさなら、大丈夫でしょ」
──オシハさんと、ヒナワさんの会話に、ゾッとする。
(────トラップってなんだ────!!?)
父さんも、これと同じような箱を開けたはずだけど、
トラップの事なんて、言ってなかったわ──!!
"トラップ威力は、アイテムのレア度に、比例するッッ!?"
ばかいえ。
もし、"時限結晶"レベルのトラップなんてあったら。
ビックリじゃあ、すまねぇぞ。
(クラ──……)
『────"反射速度"。』
……──ギッ……
私が手を出したのと、
ユーくんが宝箱を開けたのは、
ほぼ、同時だった。
────時は、重くなる。
……──ガッ…………シュ……シュ……!!!
ドスい紫色の魔力が噴き出し、
小さなフタが、はじき開き、
くさび型の弾丸が、撃ち出されやがる。
ふ ざ け ん ッ。
三発、ゆっくりと、開けた本人の顔に、向かう。
肉がコゲたような、色の杭だった。
ビックリ箱が、ヒト殺しにかかってんじゃねぇ。
目で、穢れた杭を、ゆっくりになった時の中、追う。
右手のグローブの、全部の指のスキマに、
歯車を、ひとつずつ、出した。
クラウンと先輩は、私のやりたい事を、わかってくれた。
『────補整します。』
『>>>任せろ、とおせ』
イッパツメが、中指と、薬指の、間の歯車の、穴に。
──キィィィ──!!
ニハツメが、人差し指と、中指の間の、に。
──ィィィィ──!!
ラスト、サンパツメが、薬指と、小指の間の、に。
──ィインン──!!!
クラウンか先輩かわかんないけど、
穴に通った瞬間、きゅっ、と絞めて、とめる。
かなりの勢いだったけど、
ドラゴンのヨロイが、ビックリ箱ごときに、負けない。
驚くエルフっ子の顔、5セルチ手前だ。
……──バツン……!
「 」
右手の指の間の、穢らわしい三本の杭が、
らせん状に裂け、
明らかに、中から何か、噴き出しやがる──。
『>>>毒、熱に弱い色』
「やけ」
『────最大出力。』
──ゴォオッッ、ゴオオオオオオオオオ───ッッ!!!!!!!
私の指のスキマから、三本の火柱が上がった。
いーね。
先輩は一瞬で毒の種類がわかったし、
クラウンは、容赦なく焼き払う。
──上等よ。
私の神聖な食料庫にな?
ヒトを殺しにかかるような毒のよ、
居場所は、ねっからな?
『────鎮火します。』
……ボォオオぉぉぅ……、……。
杭が、三本とも消し炭んなって、
目の前が火事になったエルフが、とってもビックリしてる。
イスの背もたれに、張り付いたみたいになってんわ。
目の前に、アナライズカードのようなモノが、出やがる。
──ヴォン!
────────────
は
ず
れ
!
────────────
「……あ?」
『────私達ではありません。』
『>>>宝箱から出たっていうのか?』
いっっっらぁ……!
ヒト殺しそびれといて、何がハズレじゃ……。
ぶち壊すぞ、おまえ。
──────────────────
"リバースチケット"
──が当たりました!
──────────────────
「…………」
『────……。』
『>>>…………』
……んだこれ……。
私らだけに、見えてんのか……。
『────……アンティ。"リバースチケット"なるデバイス情報を取得しました。使用効果:不明です……。』
『>>>ちょ、解析、できそう……?』
ちょっと……なに貰ってんのよ……。
はぁ……。
いみわかんなぃ……。
「……はぁ〜〜〜〜……」
……──ドォォオオ──ンン!!!
「──ッッうっお……!!」
な、何の音よ!?
後ろから……?
振り返る。
あ、イスだわ……。
倒れたんだわ。
私が座ってた、配達職のイス。
踏み込む時に、後ろに、ふっ飛んだかな〜〜?
後ろの、バタ────ンなっているイスから、
前に振り返ると…………。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「──にょっきぃ〜〜!」
「……」
うさ丸以外、
もんのすごぅい顔で、
私を、見てる。
「……」
なんというか……表情が、とんでるわぁ……。
全身から、滝のような、汗がでる。
だぁら、だらだら、だぅらだら……。
「……」
……どしよー。
『────……応援します。』
『>>>ご、ごまかしてー、が、がんばってー……』
いや、あんたらね……。
なんか一緒に、考えてくださいな……。
「あ、あの……」
ユーくんが、話しかけてきた。
……。
……よし。
うやむやにする、チャーンス……。
「……あのね、あんたね……ち、小さな宝箱には、そのダンジョンの、すっげぇお宝がね、──ギュッッッ!! っと、凝縮されてる事が、あんのよっ! ち……ちっこいからって、ナメて開けちゃあ、ダメだかんね……?」
……どきどき。
「──!! はっ、はいッッ!! き、きをつけますッッ……!!!」
……。
……汗。
…………だらだらだらだらだらだら。
私、見ないで……。
うう、ヨロイの下、ぬれる……。
お風呂はいりたい……うぅ……かえるぅ……。
「ゆ……ユーくん、だいじょうぶ……?」
ビックリエルフの隣から、
光らない透明の球を持った女の子が、声をかけた。
(^ω^;)燃やしよったww(笑)