プレミオムズ集会⑤
わざと(*´ 艸`)かためです。
置き手紙。
『>>>この国は、不自然なほど配達の発展に関して、国が介入していない。封筒はもっぱら書類用が販売されているけど、手紙用にするには、代用するか、紙をハンドメイドで折り込む必要がある。後輩ちゃん、これは謎解きかな?』
「……謎の手紙、ね……」
『>>>"三人寄れば文殊の知恵"。今のきみにはわかるかい?』
「……ん」
『────文殊:知恵を司る、仏の次の位の者。クルルカン、死者は後に、知恵を司るのですか。解答の入力を。』
『>>>! ふ、ふ……そんなの、わからないよ』
「……」
『────クルルカン:死者が次の位に行くというのなら、あなたは"文殊"なのでは。』
『>>>!! く、くく、よしてくれ。ぼくが知恵を司る菩薩であってたまるものか。きみがジョークを言うのは初めてかな』
『────情報に起因する指摘です。私はその"三名"にカウントされている。あなたが文殊なら:アンティと私の分の解析力を加算することができます。』
『>>>たしざんではないと思うよ。クラウンちゃん、いっしょに考えてくれ』
「封は、切られているわ……」
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もうやじゃ。
ワシは身を焦がす思いじゃ。
でも、ワシは世界一優しいので、
甘い手紙を置いていく。
いざという時は、封を切るがよい。
答えは、火を見るより明らかじゃがな。
この手紙は、ワシ自身だと思え、バーカ。
リスク・イゴス
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「いざという時は、もう来ている……」
膝の上のエコープルが、独り言を発する私を、
不思議そうな顔で見ている。
『────私には分析ができますが:応用力のある思考は不得意です。』
『>>>ご謙遜が過ぎる。それに、不得意がどうかではなくて、心があるかどうか、だと思う。案外、きみが"文殊"かもしれないよ?』
『────クルルカン。文殊が仏の次の位だとしたら:私は一度:生命活動を停止していなければなりません。理論的矛盾を感じます。』
『>>>ほぅら、生きているじゃないか。お嬢さん、こちらにどうぞ?』
『────むっ。』
「オシハさん、手紙はこの一枚だけですか?」
ええ、と返事がある。
『────その手紙をアナライズスキャンしましたが:構成物質含め:ただの手紙のようです。優しさが甘さと比例する:という内容でしょうか。』
『>>>味覚と感情の表現の例えだね。』
『────"世界一甘い手紙"。』
『>>>ラブレターみたいだ』
封筒をひろげ、中を見る。
封筒には何も入っていない。
手紙はこれだけだ。
ふわり、と封筒がとじる。
「────! あまい……」
『>>>……! 後輩ちゃん?』
「……香りが、した……」
『────封筒をアナライズスキャン中……完了。糖質を検出。』
『>>>!』
「……オレンジ系よ……」
私の独り言を、他のプレミオムズが、
「え?」という感じで聞いていた。
『>>>──! ……な、るほど。"この手紙は、ワシ自身だと思え"、ね……。はは、"シェフ目線"、あながち間違いじゃないじゃないか!』
『────分析中。』
「えっと……」
『>>>後輩ちゃん、手紙はブラフだ。ヒントでしかない。本文にある"封を切れ"は、"中の手紙を読め"という意味じゃない。例えてはいないんだ』
「……──! ええと……。あの! この封筒、切っちゃって平気ですか?」
オシハさんとベアさん辺りに目線を投げた。
ふたりは一度目線を交え、再びこちらを向き、
無言で、同時に頷いた。
封筒を改めて見ると、紙を使ってハンドメイドされている。
糊付けが甘く、すぐに粘着面を切り、ひろげる事ができた。
折り目を手でならすと、一枚の紙になる。
「間違いない。オレンジの香りだわ」
『────こちらの分析結果も同様です。』
『>>>さて……お二人さん? "キャラメル"はご存知?』
「?」
『────詳しい入力を。』
『>>>紙に糖質まじりの液体が塗られた場所は、発火点が低くなっているはずだ。紙が焦げる前に、キャラメルになった箇所は変色する。この手紙を書いたじぃさんは、中々のお茶目だよ』
「……まさか」
『>>>後輩ちゃん。きみのご両親は、火の魔法使いだろう。この遊び、一度くらいはやった事があるんじゃないかい?』
「……なるほど。そゆことね」
金のグローブの歯車から、小さな炎をいくつか出す。
封筒だった紙の内側を、燃やさないように炙っていく。
はっきりと、セピアの濃淡が出た。
おおあたりだ。
「……"魔法薬店キトメ屋"」
『────検索します。』
目の前に現れた、
何枚かのアナライズカードに、
今までに私が配った手紙のリストが、
下から上に流れていく。
情報の流れが止まり、2行、光った。
『────過去の手紙配達記録に:二件:ヒットしました。』
「──ベアさん、さっき使った地図、ありますか!」
ひろげられた地図には、
王都を囲む、四つの都市。
右側、つまり東にある街は、ホールエルの街だ。
『────マーカーします。』
クラウンが示してくれた住所を、だいたい指さす。
「──ここです。私の配った手紙の中に、"キトメ屋様"という宛名が二件あります。その手紙の住所は、どちらもここになっていますね……きいてます?」
見上げると、炙り出した封筒だったものを、
オシハさんが、両手で持ち、複雑な顔で眺めていた。
『>>>……いや、効果的な方法だよ。まさか、こんな子供だましやらかされてるとは思わないだろうし……魔力で文字を書くより、単純な分、気づかないとわからないよね……』
確かに、"炙り出し"だとわかってから、
ヒントの手紙を見ると、苦笑いが浮かんでくる。
最後の「バーカ」が、この単純な仕掛けを、
非常に感情的に隠蔽していると言える。
おこったら、負けなのだ。
『────"文殊"レベルの結果になったでしょうか。』
『>>>はは、"文殊"は、7万件もある配達記録から、瞬時に該当する配達先を探せないと思うよ』
「オシハさん……あの、げ、元気だしてください、オシハさん……」
くまさんが、
ショボンとしている羊さんの肩に、
ポン、と、手を置いた。
(´・ω・`)←オシハさん










