暴君ねぼけンティ
フライング発売、してる、だ、と……
((((;゜Д゜))))
────ヴぉん。
『────おはようございます。
────状態の確認を開始します。』
あれ、私……。
なんだ? 今、何して……。
『────臨戦態勢解除コード:リダイレクト。
────ベアークラッチを切らずにお待ちください。
────露出部:アナライズホロコーティング:剥離中。
────ドラゴニックインナーマッスル:最大収縮。
────各部装甲:バンプダウン。密閉します。
────ジグザグギア部:クラッチ完了。
────各部繊維装甲:軟化中。
────関節部:歯車回転機構を格納開始。
────43…27…1…:格納完了。
────第二装甲のロックを確認。
────オールダウン:通常待機モードです。
────ベアークラッチを:解除します。』
きゅぅぅぅううん……、バシュッ!
「あ……れ?」
なんだ、私、どしたんだ……?
くま。
こども。
けった。
……ゆめ、か、な?
「あ、あの……」
「……ん」
腕の中に、可愛らしい、
ピンク色の髪の女の子がいる……。
うん、まだ夢だ……。
い、いかんぞ、私……。
ちょっと、寝不足すぎだわ……。
くまに、子供が襲われる夢なんて、縁起でもないわ……。
あれ……?
「お、おい! この部屋に、タオルかなんかないのか……おれ、ちょっと着替え探してくるからよ……」
……。
「やっぱり……バーグ、ベアが、しゃべってる…………?」
「えっ、あ、あの、えと……ち、ちが……」
うん、夢だわ。
夢、確定だわ。
なんで、私の夢に、バーグベアが……。
うとうと……。
「うっ……、ううっ……」
……!
泣き声が、聞こえる……?
少し、視線を、ずらした。
「うっ……うぅ……」
「お、おま……泣くなって……」
……!
バーグベアの前で、女の子が泣いている……?
……魔女の、カッコしてる……?
むぅ、くまめ。
夢とはいえ、私の夢で、女の子を泣かすとは……。
ゆるせん。
……うとうと。
出窓の上から、おり、な、きゃ……。
──キィン──!
「あ、あの……クルルカンの、お姉ちゃん!」
ピンク色の髪の女の子が、心配そうにこちらを見る。
……。
すっ……ナデナデ。
「あ……」
「……安心しな。クマにゃあ、負けん」
「う、うんっ……」
……キン……キン……キィン。
「う、うぅ〜〜!」
「な、泣きやめって……おれが悪かったから……な? 元気だせって……」
「……」
背後から、クマを見る。
……? こいつ、けっこう、いいクマだな。
でも、なんでバーグベアがしゃべってんだ?
わきまえろよ……私の夢だぞ?
なんかヨロイ着てるし……。
でも、まぁ……こいつが泣かせたのは、間違いないわな。
「どけ」
『────ぁ:アン──……。』
ごッッきィィイ───んん!!!
「──う"ッッ!!?」
……──だァァ────ンヌ!!!!!
からから……。
「「「「…………」」」」
くまが、横向きにフッ飛んでったが、今は、どうでもいい。
ざまぁみろ。
……キン。
泣いていた、女の子の前に立つ。
「…………」
「…………」
私より、背の低い魔女さんだった。
ん……? そのホウキ、ウチの食堂にもあるぞ……?
ああ、やっぱ夢ね……。
魔女が、私ん家のホウキを持ってるはずがないわ……。
てか……。
「ひどぃわね……」
「…………」
これ、エビチリソースまみれやないか。
いくら私の夢の中っつったって、
魔女がエビチリまみれって、どゆことやねん……。
自分の精神状態が、不安になるわ。
むぅ、流石に可哀想だわ。
「おい……うごくなよ」
「──!」
『────ぁ:アンテ──……。』
……しゅるるるる、ばさぁああ!!
「「「「──ッッ!!」」」」
大きくなった、私のマントを、ぶっかける。
──きゅぅぅういいいんんん!!
──ひく。
──シュババッ──!!!!!
「おら、綺麗になったろ」
「……──! !? っ!?」
どうだぁ……ぺっかぺかやろぉ。
これくらい、私にもできんねやで。
……うとうと。
「ま、マジか……」
「……クルルカン、なめんなよ」
「……マジすげぇ……」
……この子、言葉づかい、あんま良くないわね。
まったく……女の子なんだから、
もっとエレガントに生きろ……?
てか、その、えらい寸胴な女の子ねぇ。
ほら、あ、あれだ……。
ナトリのギルド出張所んカウンタにあった、
"KOKESHI"に似てるわね……。
「ん?」
……あるぇ!?
なんだ、この食い散らかされた食卓は……。
今日、大口様のお客様の御予約、入ってたっけ……?
う〜〜ん、記憶がない……。
……ありゃ! サキとか、ダイさんとか、
出しっぱなしじゃないの……。
やっべ……。
はやく、片付けないと……。
……──しゅるるるる……。
「「「「!」」」」
……──バサァアア────!!!
円卓を覆う、片翼のマント。
おら。
シュバッ!!
……──シュルルルルルル──……。
はーい、ピカピカでーす。
机に、なにもありませーん。
うとうと……。
「へぇ……」
「すごいでござるな……」
「クルルカンですから」
夢の中まで、
この言い訳を使うハメに、なるとはね……。
ん……?
「じ〜〜……」
……あんだ……?
KOKESHI魔女が、私を見てるわ……。
あに、あんなのよ……。
……エビチリまみれから、回復してないのか?
……むぅ、仕方ないわね。
これをやろうではないか。
金のグローブの、手の平のバッグ歯車を、
一瞬拡げて、と……。
──きゅいいん!!
「──!」
【 レモンピールクッキー 】アイテム名
★アンティ・クルルが焼いた、レモンの皮が入っている、
肉厚のスコーンクッキー。厚さ、約1.5セルチ。
少しだけソルトがまぶしてあり、食べても口が潤い、
モソモソしないのがポイント。
レモンピールの優しい風味で、女の子に大人気間違いなし。
紅茶と一緒に食べると、マジで破壊力が増す。
「……くえ、うまいぞ」
「……マジで」
……。
……かぷっ。
もっひゅ、もっひゅ。
ぱらぱら。
あ……粉、落としよってからに……。
そのホウキで、ちゃんと掃くのよ……。
アリさんくるわよ……。
「……」
む、なんだ。
あんまり美味しくなかったか。
「……」
とことこ……。
……ギュッ。
「……」
KOKESHI魔女ちゃんに、無言で抱きつかれた。
無表情だが、真っ黒な目が、
心なしか、キラキラしているように見える……。
ふ……ういやつめ……。
「──あ〜〜ん♪」
「──!?」
あっっるぇっ!?
──ヒキ姉じゃん!!
……何してんだ、私の夢ん中で……。
その角の飾り物、なに……。
え、なんで口開けてんの……。
……クッキーほしいの?
が、がめついな……。
こんなキャラだったっけ……?
う、うーん……。
「……」
……かぽっ。
……もんご、もんご。
……ぱらぱら。
「……」
乳に、粉が、受け止められやがった……。
アリさんパーティになってしまえ……。
「……」
とことこ……。
……ギュッ。
「……」
おっぱい羊にも、無言で抱きしめられた。
……なんだこの、仮面に当たる乳は……。
ケンカ売ってんのか……。
「……おっぱいなど、とるにたらん……」
「マジ同意。もっと言ってやれ、クルルカン……」
「あら、揉んだら大きくなるもんよ?」
……うそこけ……。
それが真実なら、世界はきょぬーで溢れかえっとるわ……。
うう……ぐすん……。
ガラガラ、ごろん……ぱらぱら……。
「……てぇ〜〜! おいコラ、てめぇ何しやがる……いきなりでビビったぞ、全く……」
「くま。キサマに明日などない」
「こっ……このクルルカン、ひどくね……?」
「ベア、あんたに明日はないわ」
「ちょ」
「マジギルティ」
「……わるかったから、クマにも人権をくれ……」
うーん、よく喋るバーグベアねぇ……。
……。
この部屋……ウチの食堂じゃないわね。
ぷにぷに。
……おっぱいじゃまだな……。
「……いーなぁ……」
「ん」
さっきのピンク色の髪の女の子が、こちらを見ている。
何がだ。おっぱいがか……?
「クッキー……」
ああ……。
この子、いい子ね……。
……きゅうん……。
「……ほら、あげる……」
「わぁ〜〜! どこから出したの!? 手品みたーい!!」
「……クルルカンだからね」
「このクッキー、おっきいね〜〜!!」
嬉しそうに、食べている。
……。
……ん?
あれ……この部屋、見覚えあるわね……。
ぷに、ぷにーん。
「……おっぱいじゃまだな」
「マジもっと言ってやれ」
8つある、椅子……。
8つある、長い窓……。
その中心にある、円卓……。
あ……ここ、王城だ……。
「いや〜〜、ま、これでやっと始まりそうでござるなぁ!」
「やれやれ……おま、あの大量の皿とか、どうやってしまったんだ……? ……まぁ、いいか。おら、席に付け、仕事すっぞ」
「ちぇ〜〜、もう帰ろーよ〜〜」
おっぱいが、離れていった。
「マジ、昼寝したい」
魔女が、離れていった。
「えへへーっ! エコープルも、がんばるよっ!」
ちっちゃい女の子も、椅子に座る。
「……」
「おら、どうした新人クルルカン。さっさと座んな? それとも、まだ脅かしたこと、怒ってんのか……?」
「……。あ、あの……い、いえ……」
……。
……あれっ?
これ、夢じゃ、なくね……?
活動報告の、SS情報を更新しました(●´ω`●)+