くまとひつじとおんなのこ さーしーえー
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ちいさな おんなのこ が
おしろ の ろうか で
はしら に もたれかかっている・・・
なんだか ふあん そうだ・・・▼
こえを かけますか?
▼はい いいえ
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「あら……あの子、なんであんなとこにいるのかしら……」
──もみゅんもみゅん。
「……離すまで、話すなよ……?」
「……話すまで、離すな? ……くまちゃん、すごいこと言うわね……それプレイよ? お姉さん新境地だわ」
「バカたれ……」
自分の揉んで、ちょっと回復してきてんなこいつ。
いつもの飄々とした感じが戻ってきている……。
クマ必殺、"冷たい目線"を向けてやった。
"こどもに悪影響だっつってんだろ……"
"こどもに悪影響だっつってんだろ……"
"こどもに悪影響だっつってんだろ……"
──ギロり。
「む、むむっ……! ちぇ──! いいも──ん! 胸当てつけるも──ん! ふーんだ!」
クマ、最強なり。
おっぱいの封印に成功し、
前に見える、ちびっ子に注意を向ける。
フローラルピンクの髪。
それを途中から隠す紺色のローブには、ハネクジラの意匠。
首からはヒモで、きれいな水晶球が、かけられている。
……うん、やっぱなんか、元気ねぇな。
「──おう、エコープル!
こんなとこで、なぁに、うつむいてんだ──!」
「……────っ!」
我らが審議官どのは、
こちらに気づくと顔を上げ、
パタパタと、子供らしく走ってきた。
まぁ水晶球の力以外は、ただの女の子だからなァ。
……ッタッタッタッタッタ────!!
「──クマさん! オッシー!」
「よぉう、久しぶりだな」
「お腹のよろい、とって!」
「いきなりか……はは、やぁだよ。お前グリグリすんだろ」
「えー!」
なんだ、元気そうじゃねぇか!
不安そうに柱にもたれかかってたから、
ちょっと心配したぜ!
「久しぶりね、エコープル?」
「オッシー、今日もおっぱい大きいね!」
「あら、そうでしょう? あなたも欲しい?」
「そんなおっきいのはいらない」
「 ────……!?」
いま、隣のおっぱいが、
絶望の雰囲気を放った──……。
「……くま……慰め、て……」
「よぉ、こんな所でどうした。受付の名簿、ハネてあったから、てっきり先に、集会所に着いてるんだと思ったぜ」
「……くま……無視しないで……もっとおっぱいに優しくして……」
「え──っとね、あのね、ちょっと、"ふあん"なの」
「──ほぅ?」
「くまぁ……! わたしを見ろぉ……! うぅ〜〜!」
すぐ横から、恨めしいおっぱいが聞こえるが、
────今はあとだッッ!
エコープルが、何やら不安がっている!!
「……"不安"ってのは、もしかして……"新しいプレミオムズ"のことか?」
「! ぅ、うん……。その……こわい人だったら、どうしようって……」
「ふぅむ……」
やはり、な……。
エコープルは、けっこう人見知りな所があるからなぁ……。
おれの時も、最初はかなりビビってたし。
まぁ、見た目、クマだからなぁ、おれ……。
「もぅ……心配しなくても大丈夫よ、エコープル。このクマより怖いやつなんて、そうそういないわよ」
「……はは、そうだな、間違いないぜ」
「うーん……で、でも、もしかしたらその、ゴウガおじさんみたいな……」
「ははっ! あんなヤツ、滅多にいねぇよ! アイツはおれでも怖いわ! 大丈夫だ、今日も来てないだろう?」
「う、うん……」
ふむ……エコープルは、厳密にはプレミオムズじゃないからな。
この前あった、"配達職"のプレミオムズの追加通知は、あのタイミングでは、こいつには届かなかったんだろう。
エコープルが、"プレミオムズ配達職"の存在を知ったのは、けっこう最近のはずだ。
まさかの、"配達職"クラスの復活。
さぞ、びっくりしたに違いない。
エコープルは、自分の水晶球を覗き込んで、
随分、思いつめた顔をしている。
「ま、お前がいたら、"新人"が嘘つきヤローかどうかは、すぐわかるからな! それ、ペカー! って光ってよ! それに、お前を怖がらせるような妙な奴だったら、おれがぶっ飛ばしてやるぜ!」
「う……うんっ……!」
「ヤローっていうか……"アンティ"って子、たぶん女の子でしょう? "配達職"なんだし、そんな怖いはずないって! 意外と可愛い子かもしれないわよ?」
「! オッシーより、おっぱい大きいかな……」
「はははっ、こんなバケ乳、そういねぇって!」
「おいくま貴様……」
エコープルが、ちょっと元気になったので、
3人で、王城の廊下を行く。
今は昼前だ。
太陽は上からさし込み、そのせいで、高い天井は、
少し、かげりがある。
横のでっかい窓を、流れるように、光は下に落ちるのだろう。
久しぶりに歩くここは、静かな反射光の溢れる、
きれいな場所だった。
──。
「……おなか減った」
「それな」
おっぱい羊が、風情もへったくれもない事を言ったが、おれは即座に同意した。
「え、エコープルは、ガマンできるよ!!」
「……無理すんな、お前、食べ盛りなんだからよ。お前もけっこう遠くから来たんじゃないのか? よく間に合ったなぁ」
「だいたい、集会の通知が遅すぎるんだぁ! 私、今回は部隊のいざこざで、スケジュール組み直すの大変だったんだからぁ!」
「ほぉ? そういうの、ヒキハにやらせてんじゃねぇのか?」
「色々聞いてまわってないと、わかんない事もあるんですぅ──」
ぐきゅる───……。
「──! うぅ……」
「あらま。よっしゃベア、集会なくして、飲みにいきましょう」
「うーん……なぁんか、変な時間になっちまったよなぁ……もうヒナワとマジカは来てんだろ? ちょっと持ちかけてみようぜ」
「え──!? 集会所往復すんの、めんどくさいよぉ……」
「いや、だからっておま、あいつらと新人ほったからしてメシ行けねぇだろう……」
「みんなで、ごはんいく? ごはんいくの?」
「ああ、そうだな。今回久しぶりの集会だから、みんな色々問題持ち込んでると思うんだよ……長丁場になるだろからな、やっぱ先に飯だな……」
「うゃ──、ヤダヤダ、めんどくさ──ぃ、うぇ──い……」
「こらおっぱい……エコープルの前でそんな言葉遣いを……!」
「あんただって私のことおっぱいおっぱい言ってるじゃないのよ──!!」
「……──ねぇ」
「「ああん?」」
「なんか、おいしそうなにおい、するよ?」
「……ん?」
「え……?」
……。
……すんすん。
……──!
「……ほんとだな……」
「え、何これ……お肉焼いたみたいな」
「いいにお──い!!」
……。
んなバカな……。
王城の渡り廊下で、なんでこんな食欲をそそる香りが……。
「……ちょと……たまんないんだけど」
「……ギルドのヤツら、おれ達に気ぃ使って、差し入れてくれたんだろうか……?」
「んー、いやーでも、これ明らかに調理してすぐじゃない……? 料理持ってきただけで、ここまで芳しくならないでしょ……」
「……そういや、そうだなぁ……」
進むにつれて、強烈な香りは、
おれ達の胃に、容赦なくクリティカルヒットを叩き込んでいく。
「……ベア、これぜったい集会所からよ。コックさんでも居るんじゃないの?」
「てかよぉオシハ……普通の肉って、焼いただけでこんな美味そうな感じになるっけか……なんかよ、明らかこの香り、上物っぽくね?」
「……ベア、ドッキリなら言って? 今なら、ちゅーくらいはするわよ?」
「いや、おれも知らんぞ……なんだこれ……??」
「ねーねー! はやくいこー!」
オシハと首を傾げながら、エコープルの後を追う。
うーん、これはひどい。
本能を目覚めさせる香りだ……。
夜の出店で、たまに美味そうな肉の香りをさせるトコがあるけどよ、
この肉、ぜったいそんなゴロ肉よりかはランク高ぇヤツだぜ……?
……──。
……────きた。
ついたぞ……"第一ギルド集会所"──!!
「……」
「……」
「おなかへった!」
ぜったい、ここからだ……!
お、おれ、場所間違えてないよな……?
「わくわく!」
「「ごくり……」」
扉を、開ける────……。
ギ、ギィィぃぃい────……!
なかには────……!










