表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
399/1216

くまとひつじとおんなのこ さーしーえー



─────────────────────────────


 ちいさな おんなのこ が

 おしろ の ろうか で

 はしら に もたれかかっている・・・

 なんだか ふあん そうだ・・・▼


 こえを かけますか?


 ▼はい   いいえ



─────────────────────────────




「あら……あの子、なんであんなとこにいるのかしら……」


 ──もみゅんもみゅん。


「……離すまで、話すなよ……?」

「……話すまで、離すな? ……くまちゃん、すごいこと言うわね……それプレイよ? お姉さん新境地だわ」

「バカたれ……」


 自分の揉んで、ちょっと回復してきてんなこいつ。

 いつもの飄々(ひょうひょう)とした感じが戻ってきている……。

 クマ必殺、"冷たい目線"を向けてやった。




 "こどもに悪影響だっつってんだろ……"

 "こどもに悪影響だっつってんだろ……"

 "こどもに悪影響だっつってんだろ……"


 ──ギロり。




「む、むむっ……! ちぇ──! いいも──ん! 胸当てつけるも──ん! ふーんだ!」



 クマ、最強なり。


 おっぱいの封印に成功し、

 前に見える、ちびっ子に注意を向ける。


 フローラルピンクの髪。

 それを途中から隠す紺色のローブには、ハネクジラの意匠。

 首からはヒモで、きれいな水晶球が、かけられている。

 ……うん、やっぱなんか、元気ねぇな。


「──おう、エコープル!

 こんなとこで、なぁに、うつむいてんだ──!」


挿絵(By みてみん)

「……────っ!」


 我らが審議官どの(・・・・・)は、

 こちらに気づくと顔を上げ、

 パタパタと、子供らしく走ってきた。

 まぁ水晶球の力以外は、ただの女の子だからなァ。


 ……ッタッタッタッタッタ────!!


「──クマさん! オッシー!」

「よぉう、久しぶりだな」

「お腹のよろい、とって!」

「いきなりか……はは、やぁだよ。お前グリグリすんだろ」

「えー!」


 なんだ、元気そうじゃねぇか!

 不安そうに柱にもたれかかってたから、

 ちょっと心配したぜ!


「久しぶりね、エコープル?」

「オッシー、今日もおっぱい大きいね!」

「あら、そうでしょう? あなたも欲しい?」

「そんなおっきいのはいらない」

「     ────……!?」


 いま、隣のおっぱいが、

 絶望の雰囲気(シンエル)を放った──……。

 

「……くま……慰め、て……」

「よぉ、こんな所でどうした。受付の名簿、ハネてあったから、てっきり先に、集会所に着いてるんだと思ったぜ」

「……くま……無視しないで……もっとおっぱいに優しくして……」

「え──っとね、あのね、ちょっと、"ふあん"なの」

「──ほぅ?」

「くまぁ……! わたしを見ろぉ……! うぅ〜〜!」


 すぐ横から、恨めしいおっぱいが聞こえるが、

 ────今はあとだッッ!

 エコープルが、何やら不安がっている!!


「……"不安"ってのは、もしかして……"新しいプレミオムズ"のことか?」

「! ぅ、うん……。その……こわい人だったら、どうしようって……」

「ふぅむ……」


 やはり、な……。

 エコープルは、けっこう人見知りな所があるからなぁ……。

 おれの時も、最初はかなりビビってたし。

 まぁ、見た目、クマだからなぁ、おれ……。


「もぅ……心配しなくても大丈夫よ、エコープル。このクマより怖いやつなんて、そうそういないわよ」

「……はは、そうだな、間違いないぜ」

「うーん……で、でも、もしかしたらその、ゴウガおじさんみたいな……」

「ははっ! あんなヤツ、滅多にいねぇよ! アイツはおれでも怖いわ! 大丈夫だ、今日も来てないだろう?」

「う、うん……」


 ふむ……エコープルは、厳密にはプレミオムズじゃないからな。

 この前あった、"配達職(ライダーズ)"のプレミオムズの追加通知は、あのタイミングでは、こいつには届かなかったんだろう。

 エコープルが、"プレミオムズ配達職(ライダーズ)"の存在を知ったのは、けっこう最近のはずだ。


 まさかの、"配達職(ライダーズ)"クラスの復活。

 さぞ、びっくりしたに違いない。

 エコープルは、自分の水晶球を覗き込んで、

 随分、思いつめた顔をしている。


「ま、お前がいたら、"新人"が嘘つきヤローかどうかは、すぐわかるからな! それ、ペカー! って光ってよ! それに、お前を怖がらせるような妙な奴だったら、おれがぶっ飛ばしてやるぜ!」

「う……うんっ……!」

「ヤローっていうか……"アンティ"って子、たぶん女の子でしょう? "配達職(ライダーズ)"なんだし、そんな怖いはずないって! 意外と可愛い子かもしれないわよ?」

「! オッシーより、おっぱい大きいかな……」

「はははっ、こんなバケ乳、そういねぇって!」

「おいくま貴様……」


 エコープルが、ちょっと元気になったので、

 3人で、王城の廊下を行く。


 今は昼前だ。

 太陽は上からさし込み、そのせいで、高い天井は、

 少し、かげりがある。

 横のでっかい窓を、流れるように、光は下に落ちるのだろう。

 久しぶりに歩くここは、静かな反射光の溢れる、

 きれいな場所だった。


 ──。


「……おなか減った」

「それな」


 おっぱい羊が、風情もへったくれもない事を言ったが、おれは即座に同意した。


「え、エコープルは、ガマンできるよ!!」

「……無理すんな、お前、食べ盛りなんだからよ。お前もけっこう遠くから来たんじゃないのか? よく間に合ったなぁ」

「だいたい、集会の通知が遅すぎるんだぁ! 私、今回は部隊のいざこざで、スケジュール組み直すの大変だったんだからぁ!」

「ほぉ? そういうの、ヒキハにやらせてんじゃねぇのか?」

「色々聞いてまわってないと、わかんない事もあるんですぅ──」


 ぐきゅる───……。


「──! うぅ……」

「あらま。よっしゃベア、集会なくして、飲みにいきましょう」

「うーん……なぁんか、変な時間になっちまったよなぁ……もうヒナワとマジカは来てんだろ? ちょっと持ちかけてみようぜ」

「え──!? 集会所往復すんの、めんどくさいよぉ……」

「いや、だからっておま、あいつらと新人ほったからしてメシ行けねぇだろう……」

「みんなで、ごはんいく? ごはんいくの?」

「ああ、そうだな。今回久しぶりの集会だから、みんな色々問題持ち込んでると思うんだよ……長丁場になるだろからな、やっぱ先に飯だな……」

「うゃ──、ヤダヤダ、めんどくさ──ぃ、うぇ──い……」

「こらおっぱい……エコープルの前でそんな言葉遣いを……!」

「あんただって私のことおっぱいおっぱい言ってるじゃないのよ──!!」


「……──ねぇ」


「「ああん?」」


「なんか、おいしそうなにおい、するよ?」


「……ん?」

「え……?」


 ……。


 ……すんすん。


 ……──!



「……ほんとだな……」

「え、何これ……お肉焼いたみたいな」

「いいにお──い!!」


 ……。

 んなバカな……。

 王城の渡り廊下で、なんでこんな食欲をそそる香りが……。


「……ちょと……たまんないんだけど」

「……ギルドのヤツら、おれ達に気ぃ使って、差し入れてくれたんだろうか……?」

「んー、いやーでも、これ明らかに調理してすぐじゃない……? 料理持ってきただけで、ここまで(かぐわ)しくならないでしょ……」

「……そういや、そうだなぁ……」


 進むにつれて、強烈な香りは、

 おれ達の胃に、容赦なくクリティカルヒットを叩き込んでいく。


「……ベア、これぜったい集会所からよ。コックさんでも居るんじゃないの?」

「てかよぉオシハ……普通の肉って、焼いただけでこんな美味そうな感じになるっけか……なんかよ、明らかこの香り、上物っぽくね?」

「……ベア、ドッキリなら言って? 今なら、ちゅーくらいはするわよ?」

「いや、おれも知らんぞ……なんだこれ……??」

「ねーねー! はやくいこー!」


 オシハと首を傾げながら、エコープルの後を追う。

 うーん、これはひどい。

 本能を目覚めさせる香りだ……。

 夜の出店で、たまに美味そうな肉の香りをさせるトコがあるけどよ、

 この肉、ぜったいそんなゴロ肉よりかはランク高ぇヤツだぜ……?



 ……──。


 ……────きた。


 ついたぞ……"第一ギルド集会所"──!!


「……」

「……」

「おなかへった!」


 ぜったい、ここからだ……!

 お、おれ、場所間違えてないよな……?




「わくわく!」

「「ごくり……」」



 扉を、開ける────……。




 ギ、ギィィぃぃい────……!






      なかには────……!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ