表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
397/1216

ぐーぐーくっく さーしーえー

おそろしい話です(´・ω・`)



『>>>や、やめろ、やめるんだ──!!』

『────精神制御:不能です──。』


 ────ゆらり。


「つぎ……切り裂かれたい、のは、どい、つ────?」


 しゅおおんん……! ザッシュ──ッッ!!






 >>>どうして、こうなってしまったんだろう。


 ぼくは、この暴走を、


 本当に止めることが、出来なかったのか?




 ……時は、少し、さかのぼる────。





 ────。





「──きれいなトコだね!」

「にょきっとな☆」



 プレミオムズ集会の開催場所、

 第一ギルド集会所は、円卓のある、円柱状の部屋だった。

 思っていたよりかは狭く、誰もいない。

 ぼくは、昔、家族で行った中華料理屋を思い出していた。

 丸い机を、椅子が8つ、並んでいる。

 ……妙だ。やはり、参加者は8人のようだ。

 大クラス職代表は7人のはず。

 ぼく達の知らない、最後の役職がある。


『>>>……"審議官"って、何なんだろう……』

『────会話ログには該当情報:無。』

『>>>しまったなぁ……さっきのほんわか受付嬢さんに、聞いておけばよかったね』

「ん──……、あ、みてみて! この椅子の背もたれさ! なんか"紋章"みたいなマークが付いてるよ! あ、コレ……!」

『>>>! ホントだね! それぞれの椅子が決まっているのか……』


 8つの椅子のひとつに、後輩ちゃんの首輪と全く同じマークの物があった。


「ここ、私の席か……ち、ちょ……なんか、本とか、書類の山が置いてあんだけど……」

『────埃も蓄積しています。』

「うぉい……荷物置きになっとるやないか……」

『>>>あ、ああ──……長い事、"配達職(ライダーズ)"のプレミオムズは空席だったからかな……』

「なにょー、この部屋で最初にする事が、お掃除かよー。私が()んだから、掃除くらいしときなさいよねぇー、ぶぅぶぅ──……クラウン!」

『────レディ(準備完了)。埃の除去:格納を開始。』


 ──にょき、にょきにょき。

 ──きゅうううんん!


 金の歯車がふよふよ舞い、"配達職(ライダーズ)"の椅子の埃を吸い込み始める。

 後輩ちゃんは、椅子の上の本を、後ろのチェストに持ってった。


「……でも、思ってたより、こじんまりとして、明るい部屋ね。それぞれの椅子の後ろに、縦長の窓があるよ!」

『>>>そうだね。ここは筒状の構造物のようだね。白と金の装飾も、シンプルできれいだ』

『────現在時刻:10ジ:12フヌ:34ビョウ。アンティ:休息を推奨します。』

「え」

『>>>少しだけ、寝な? 机と椅子もある。まだ誰もいない』

「や、でも……」

『────アンティ。現時点より(さかのぼ)った:あなたの二日間の睡眠累計は、二ジカにも満ちません。』

「や──……そりゃ、緊張と逃走経路、考えてて……」

『>>>いーからちょっと寝なって。人がきたら、なるだけ早めに皆で起こすから』

「にょきっと、にょきっとな!」

「う……じゃ、じゃあちょっとだけ……」


 この時の判断が、後ほど、えらい事を引き起こしてしまう……。




 ────。




「……ぐ──……、ぐ──……」

「にょむくく──……くぷ──……」


『>>>ガン寝してるじゃないか……』

『────……。』


 後輩ちゃんは、予想以上に、ねた。


 机に、うさ丸を枕にして、突っ伏している。

 ……とても気持ちよさそうだけど、うさ丸は仮面(ぼく)が食い込んでないかぃ? だ、大丈夫かぃ……?


『>>>じゃ、なくて。流石にこれはちょっと心配かな……?』

『────1ジカが経過しました。』

『>>>うーん、いつ他のプレミオムズが来てもおかしくない……』

『────……クルルカン。』

『>>>?』

『────いえ:今は、こちらを優先しましょう……。』

『>>>……。ん……』


 クラウンちゃんが何を相談したいかは、

 なんとなく察しがついた。

 後輩ちゃんが寝ている時、なんか考えている様子だったし。


 でも、まぁ、今は。


『>>>……よし。あんまり直前に起きすぎても、頭が回らないよね。起こそう。お───い! 後輩ちゃ──ん!!』


「むにゃむにゃ……」

「にょっぷく──……」


『────……。』

『>>>……クラウンちゃん。"アラーム音"、いける?』

『────概念取得。実施します。』



 ──ジ──ジジッ。


 ──ピピッ、ピピッ、ピピッ、

 ──ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ!!!!!


「むにゃ」


 ────フッ。


『>>>!? え……なんで消えたの音……』

『────アンティ自身に解除されました。』

『>>>マジで言ってんの……』


 さ、さすが歯車法のマスター……い、いや、やばいぞ。



『──ニャッフッフッフッフッ。ついにニャーたちのデバンが来たようだニャ……。』

『──ちょ:7号機:ミャーまで巻き込まないでほしいニャ……。』


『────む。』

『>>>きみたちは……』


 知らないうちに、背後にクニャウンが2機、接近していた。


『────2号機:7号機:例の計画はどうなのですか。』

『──(とどこお)りないニャ! 今:感度系インターフェイスの組み直しを……。』

『────……ギロり。』

『──ニ"ャッ!!。』

『──ば:バカ……ここではマズいニャ!。』


 ……??

 な、なんだか非常に気になる内容を言っているけど……。


 しかし、確かにいいかもしれない!

 なるほど、このヌコ達は、騒がしい!

 目覚まし部隊に、思わぬ増援だね!


『>>>……きみたちの力で、彼女を起こせるだろうか』

『──ふっ……クルルカン:あまりニャーたちを:ニャめにゃいことだニャ!! ニャーたちの本気:見せてやるのニャ!。』

『──ミャー……しょうがないニャ……やるかニャ……。』


 な、なんか2号機の哀愁が……。

 

 あー。

 この2匹は、まぁ、がんばったんだけど──……。



『──ニ"ャニ"ャニ"ャニ"ャニ"ャニ"ャニ"ャニ"ャ──!!。』

『──ミ"ャミ"ャミ"ャミ"ャミ"ャミ"ャミ"ャミ"ャ──!!。』


「う、うぅん……ぅっしゃぃ……」


『『──ニ"ャッ──……/─ / ─/  ─  


 ──しゅぱっ!


 ……。


『>>>消えたけど、2匹……』

『────……"時限結晶(アイテムストレージ)"内のどこかに転送されたようです。』

『>>>ええっ!? 後輩ちゃんって、無意識で、んなことできるの!?』


 潜在意識、こわっ……。

 "時限結晶内(この中の世界)"って、言ってみたら、"後輩ちゃんが神様"みたいな世界だもんなぁ……。

 あれっ!! これ、起こすの難しくない!?

 ここから後輩ちゃんを不快にさせたら、クニャウン達と同じように、どっかにランダムに転送されるんじゃ!?

 頼みの綱のうさ丸は一緒に寝てるし……!!


『>>>や、やばい()んでる……ど、どうしたらいいんだ……』




【 ──かっかっか……(わっぱ)ァ……なんや、困うとるようやなぁ……! 】

< くすくすくす…… >




『>>>──!! そ、その声はッッ──!!?』




【 ばぁ──────んん!!! 】

< じゃじゃ────んん!!! >




『>>>サキさん!! ダイさん!?』


【 は……安嬢(あんじょう)ひとり起こすのに、いくらかかっとんのじゃあぃ! 情けのうて、見ておられんど! やっぱし、赤ん坊ん時から側におった、俺っちやないとあかんやいのぉ……! 】

< ふふ〜〜! わっちも昔は身体なかったけど、"(はな)"ん体ん中に一緒におったからねぇ。安ちんの事は、よお知っとうよぉ〜〜! >


『────む。』

『>>>た、確かに貴女達の方が、後輩ちゃんとは付き合いが長い……しかし、本当に起こせるんですか? その……不快にさせたら、どっか転送されちゃいますよ……?』


【 か! "食らわず"! "(わっぱ)"! おんどれらは、えらい大事な事を失念しとぅぞ!! 】

< ふふ〜〜! >


『────むむ。』

『>>>な、何をですか!?』


【 安嬢(あんじょう)はなぁ……"戦乙女"である前に、いっぱしの、"お食事(どころ)の娘"やねんぞ!! 】


『────!!。』

『>>>!? それが、どうしたと……?』


【 か! まだわからんかぇ……? この子にはなぁ、聞いたら絶対に起きる、"呪文"みたいなモンが、あるんじゃい……! 】

< えっへん! >


『────予測不能。』

『>>>──なんですって!!』


【 かかか! その顔、なかなかに甘美よのぅ! おら、付き合いの長さっちゅうもん、見せたらぁ!! いけー!! 大姉(だいねえ)ぇ────!! 】

< すぅ────……! >


 ──!?

 ダイさんが、何やら息を吸っている!?

 な、なんだ!?

 大きな声を出すつもりか!?

 そんな事をしたら、歯車法の主である後輩ちゃんに、

 時限の彼方に吹っ飛ばされるぞ!?


 や、やめ────。




< "オーダー、はいりまぁ────す!! 8名サマ、おまかせコースで────!!!" >




 ────!?


 がばぁ─────!!!!!!!


『>>>──な!!?』

『────……アンティの起立を確認。』


 後輩ちゃんが……立った……!!!

 そ、そうか……!

 たとえ大声でも、"食堂のオーダー"なら……!!

 反射的に(・・・・)食堂の娘は(・・・・・)起きる(・・・)──!!!


【 ──か! どや、起きたやろげ? 】

『>>>やられたな……こんな方法があるとは……クニャウン、意味なかったな……』

『────お見事です。ヨトギサキ。ダイオルノシュオン。素直に敗北を認めましょう。』

< わっちらは、あのお食事処で言葉、覚えたからなぁ。発音もバッチリよ〜〜☆ >


 さ、さすが、昔から後輩ちゃんを見守ってたコンビ……。

 よし。

 これで、大丈夫だ。

 まだ、他のプレミオムズは来ていない。

 ……もうすぐお昼なのにな。これがフツウなんだろうか……。


『>>>後輩ちゃん! 目ぇ覚めたかぃ? お昼、まだだけど、大丈夫だよ!』



「……"お昼"…………"まだ"?」



 …………ん?

 後輩ちゃんの、様子が、おかしい……?




「"大丈夫"じゃ…………ねぇだろ…………!」



 ────ス……。




 ────!


 後輩ちゃんが、両手を左右に広げた!?


 …………ま、


 ま さ か …… !!!!!




『>>>みんなぁぁぁああ!!! ちがううぅうう!! まだだァアアあぁ!!! まだ、起きていない(・・・・・・)ィィいいい────!!!!!』




『────!!。』


【 ──な!? 】


< ──え? >



 スゥ────!



 ────!!

 サキさんと、ダイさんの身体が、消え始めている!!


『>>>──!! サキさん!! 手を──!!』

【 !! ──く!! 】


 サキさんも、ぼくが叫んだと同時に、今、最悪の事態が起きていると、悟ったようだ。

 ぼくの伸ばした手に、黄金の爪のある手を伸ばすが────。


 シュバ──!!


『────ヨトギサキの外部転送を確認。』

『>>>くそっ!! 間に合わなかった!! 後輩ちゃんが、本体ごと、精神体まで取り出した!! なんてことだ!!』


< ……わっちも消えようよ……どうなっとんの…… >

『>>>ダイさん、手を──……!』


 スカッ──。


『>>>すけ……た……さわれ、ない……だと』


 ぼくは……無力だ……。


< 何が……起こっとうの……? >


『>>>……』

『────ダイオルノシュオン……。よく聞いてください。』


< はい…… >


『────アンティは:あなたが入力(・・・・・・)してしまったオーダー(・・・・・・・・・・)()完遂するつもりです(・・・・・・・・・)。』


< ────……、……! >


 ダイさんが、息を飲んだ。

 フライパンである彼女も、後輩ちゃんに呼び出されようとしている。


< "8名様"……"おまかせコース"……! >


『────クルルカン:野菜弾薬庫の転送シークエンスが:勝手に稼動しています。』

『>>>!? ばかな……!? ほ、ホントにやる気なのか!? 後輩ちゃんは……!! 今から……、"プレミオムズ集会"なんだぞッッ……!?』

『────……ニンジン:連続射出されます。3、2、1────。』


 ────シュバシュバシュババババ──!!!





「 ────シっ 」


 



 ────きききききききん。



       ──バラッ。





『>>>〜〜〜〜!!!』

『────細断:されました。』


 いや……今の、速すぎだろ……。

 空中で、全て皮まで剥けたように見えたぞ……。

 いつの間に皿で受け止めたんだ……。

 だめだ……今の後輩ちゃんは……!!





 ────"ねぼすけ料理人"だ……ッッ!!!





『>>>お、おい!!! 後輩ちゃん!! アンティ!! 正気に戻れ!! 今から集会だっ!! 会議なんだ!! この円卓が、食卓になっちまう!! きみはそれでもいいのか!!? おいっ!! おいっ!?』


『────……キャベツ弾:発射されます──。』


『>>>──!! そ、そんな……! や、やめろ、やめるんだぁ──!!』


『────精神制御:不能です──。』


 ────ゆらり。


「つぎ……切り裂かれたい、のは、どい、つ────?」


 しゅおおんん……! ザッシュ──ッッ!!




 空中で、次々と野菜が、等間隔でカットされていく。

 だれだ……だれが、こんな……。

 誰が、この凄腕料理人を、生み出してしまったんだ……!!




< ダメや……手が透けて見えん……わっちも、お呼ばれしようみたいやわ…… >


『>>>!! だ、ダイさん……教えてくれっ……! おまかせって……! "キティラ食堂"で、"おまかせコース"ってのは、何のことなんですかっ……!!』


 ダイさんは、火にくべられる前に、教えてくれた……。


< ……"お肉と野菜、30種類バイキング"のことやよ…… >


『>>>〜〜〜〜!!!』


 ばか、ばかやろう……。

 やろうじゃないけど、バカヤロウが──……!


< ごめんな、坊っちゃん……あと、頼んだよ…… >


『>>>う、うわぁ───!!!』


 すっ────……。


 ────ダイさんが、消えた。





 金のねぼすけコックさんが、虚ろな目で、


 "絶対の断絶"と、"絶対の拒絶"を、振りかざす。


 無敵の、コックさんが、生まれて、しまった……。




挿絵(By みてみん)

「……──くっく、くっくっく……栄養バランスが、かた、よると……思うなよォ……!」


『>>>……、……』


 なんで、なんだ……。


『────クルルカン……。オーク肉:及びフルーツブロックも稼動を開始しました……。順次、射出されています。』


『>>>……。もう、ぼく達には、止められないのか……』


 ガタガタ、スゥ──!!


{{ ね、ねぇちょっと、なんの騒──……きゃ! }}


 ────しゅキャン!!


『>>>……、……く』



 障子を開けて入ってきたイニィさんの姿が、

 一瞬で、目の前から、掻き消える。


 後輩ちゃんが、大きめのフォークにして、

 サラダに突っ込んでいる。


 取り分ける気だ……。



『>>>……ぼくは、無力だな……』

『────クルルカン:あなたのせいではありません……。』

『>>>クラウンちゃん……』


 クラウンちゃんが、崩れ落ちたぼくの肩に、

 そっと、手を置いてくれた。



 いまも、黄金の料理人は、暴走を続けている──……。




「むにゃむにゃ……ぐーぐー、くっくっく……にくー」




 シュババババババジュウジウカトカトシュパ───ン!




『────……。』

『>>>…………』




 ただ二人、ハコニワに取り残された、


 ぼくと、クラウンちゃんは、


 己の力の無さを噛み締めながら、


 "お肉と野菜、30種類バイキング"が、


 第一ギルド集会所の円卓に、


 構築されるのを、眺めているしか、できなかった……。






「にょむ──……ぷく──……にょむにょむ……」





Ψ(´・ω・`)Ψ あ、取り皿はこびますよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
テーブルを拭くのは任せろ!✨( ゜д゜)クワッ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ