宿屋はセーブポイントです!
活動報告に、書籍『はぐるまどらいぶ。』1巻の表紙と、うさ丸Tシャツ情報を載せてます!
ぼくらの心の中にある、"アンティらしさ"!
見て、感じてくれたら幸いです!(*´∀`*)えへー
てか、オバラプさんのツイッターに、挿し絵一枚こぼれとるやないか(笑)(*´ 艸`)
王都にある大きな道を、
ちょっとそれた、小さな宿屋。
私のウチである『コムギ亭』の受付は、
いつもと違って、少し、にぎやかです!
お父さんと一緒に、ラビットちゃんと遊んでいます。
「にょきっとなぁ〜〜!」
「あはははっ、変な鳴き声〜〜!」
「はっは! 人懐っこいラビットだなァ。しかも見ろよ! この高級そうな毛並み……こいつぁ、いーい服の襟になるぜぇ?」
──ナデナデ。
「………──に"ょんや"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁあ──!!!」
「う、うおっ──!?」
「お、お父さんッッ! ダメだよ! そんなこと言っちゃ!」
「か、軽い冗談だってェ……。てか、なんでこいつ、オレの言ってること、わかってんだよ!?」
「にょにょにょにょにょにょお……にょにょにょにょにょにょお……」
まん丸ラビットちゃんが、怯えています!
もぅ! お父さんがそんな事言うから!
そうだよね、服になんか、なりたくないもんね……。
しかし、本当にまん丸です。
ダイエットしたほうがいいかもね?
「にょんむぅ〜〜……」
「はは! わるかったって! しかしお前の仮面のご主人は、帰りが遅いなぁ!」
「あのお姉ちゃん、はじめて王都に来たのかなぁ?」
「旅の大道芸人って言ってたが……」
「にょむ──……、にょき?」
あれ?
ラビットちゃんの、長くて肉厚の耳が、
にょきっと、上に立ちました。
すると、あまり聞き慣れない、変な音が聞こえてきました。
……────キンキンキンキンキン──!!
「……?」
「なんだ? この音──……」
「にょんむー!」
まだ遠いですが、この音……、
こちらに近づいてくるような……?
キンキンキンキンキンキンキン──ッッ!!
───ガバァ────!!!
───ズズズざざぁ────!!!!!
「──あっ!!」
「──おっ!?」
まもなく見えたのは、宿屋の前で砂けむりを上げながら止まる、まっ金きんの全身ヨロイを着た、お姉ちゃんでした!
「おっ、お帰りなさい!?」
「オメェ、マントの下そんなだったのかよ!」
「にょやんやーい!」
お昼すぎの時とは違い、お姉ちゃんのマントはたなびき、身体が見えています。
見事に全身、金ピカでした!
あ、あれ……この格好、私、どこかで見たことがあるような……?
「ん〜〜と?」
私が首を傾げていると……、
チリンチリーン──……!
──キンキンキンキンキン!!
────シュタンッッ!
「「─── !!?」」
ものすごい勢いで中に入ってきたお姉ちゃんは、
カウンタに手を置き、ジャンプして、
一気に受付を飛びこしたのです!
宙に舞う、黄金の鎧と、マントと、金の髪。
まるで、時がゆっくりになったようでした。
────ゴキン!!
「うっ」
受付カウンタを飛びこえたお姉ちゃんはカッコよかったですが、お姉ちゃんはこちら側にお尻から落ちました。
い、痛そうです。
今、私の横に、おやま座りしています。
「……だ、だいじょぶ? お姉ちゃん……」
「お、おいおい……オメェさんはお客さんだ。受付の中に入られちゃ困るぜ……」
「にょ、にょんむ──……?」
いきなり、カウンタを飛びこえた金ピカお姉ちゃんに、
私も、お父さんも、ラビットちゃんも困惑ぎみです。
お姉ちゃんは、何やらブルブル震えています。
手と足の装甲がカチカチ触れて、キンキン小さな音がしました。
あ……やっぱり私……この人、どこかで……。
「か、か、か、かく、まって!! 追われてるの……!」
「「──!!」」
「こ、こ、ここまでくるの、ほ、ほ、本当に大変だったの……! あの2人を、ちゃんと、下におろしたのが、マズかったわ!! や、やねをずっと、はしって……」
「お、おねえちゃん……?」
「お、オメェ……いったい何やりやがったんだ……?」
お姉ちゃんの言ってる事が、よく分かりません。
何でしょう、この、モヤモヤとした気持ち。
……──ドドドドド。
……──ワァ……ー、ワァー……。
「……ん? 何やら表が騒がしいぜ……?」
「ほ、ほんとだね……」
「にょっき……?」
不思議に思っていると、次の瞬間、たくさんの人が、
ウチの宿屋に、なだれ込みました!
──ドタドタドタ!!
チリンチリーン♪
どどどどどどど──!!
「わっ──!!」
「な、なんだなんだ!?」
「よ──ぅ! じゃまするぜぇ──!」
「ようグルテン! 元気してるか!?」
「デンプ! お前コレ、なんの騒ぎだッッ!! ウチはちぃせぇ宿屋だっ! こんな人数は泊められねぇぞッッ!!」
「ああ、ちがうちがう! 今日は聞きたい事があってよ!」
何人かの人が、お父さんの知り合いの人だったみたいです。
その人が、話をきりだしました。
「グルテン! ここいらによォ、"クルルカンの格好をした女"は、来なかったか!?」
「お……おおォ!?」
「────!!!!!」
クルルカン!!!
その時、私の中のモヤモヤが、夜明けの朝日のように、照らされました!!
──── " 黄金の義賊クルルカン " !!!
そうです! それです!!
このお姉ちゃんの格好は、まさに、それでした!!
私は、カウンタに隠れて、おやま座りしているお姉ちゃんを、
ちらりと見てしまいました!
「全身、金ピカの鎧を着ててよぉ!! 金髪で、ふたつ結いの、なっがい髪でな!? 背中にマントをしょってる!! いま、王都中はそいつの話題で、もちきりよォ!!」
ぜったいに、いま、隣で隠れてるお姉ちゃんのことです。
「……おい、デンプ。そのお嬢ちゃんは、王都中から追われてんのか?」
「ん? ああ!! ま、王都中は言い過ぎたけどよ、かなりの人数が探してっぜ!! あの時、広場は満杯だったからなぁ! お? どしたグルテン、怖い顔しやがって」
「デンプ……その"クルルカンのお嬢ちゃん"は、いったい何をしでかしたんだ?」
「──!」
……キン……、
お父さんの質問に、横にいるお姉ちゃんの装甲が、
動揺の音を出します。
お父さんは、この宿屋で、犯罪者をかくまったりは、しないでしょう。
私も、お母さんも、ここにいるのですから。
王都中から追われているという事は、それだけの事をしたという事です。
いったい、どんな事をしたら、そんな事態になるのでしょうか。
見上げたお父さんの顔は、真剣で、険しいものでした。
「……デンプ、教えてくれィ。そのお嬢ちゃんは、どんな悪い事をしちまったんだ?」
「──はぁッッ!? 何言ってんだグルテン! あのクルルカン娘は、俺たちの"命の恩人"だぞ!?」
…………。
「……。んん? な、なん……?」
「い、"命の恩人"、ですか……??」
「──おうよっ! ついさっき、"カフェ・ド・ランドエルシエ"で、ひっでぇ火事があってな!! ほぼ全焼したんだぜ?」
「「 ──なッッ!! 」」
わ、私が、お姉ちゃんにオススメした喫茶店です!
「ま、マジかよ……! そ、それで?」
「野次馬はよ、客はみんな避難したと思ってたんだ……けどな。実は、子供が2人、店内に取り残されてやがったんだッッ!!」
「「!!」」
「そんでな? そこによぉ……いきなり、"義賊クルルカン"の格好をした女が来てな! 中に飛び込んでいって、シュバッッ!! っと、助け出しちまったのさ!!」
「お……おお……!」
「そうなんですか!?」
「ああ!! すごかったんだぜ? いきなり吹っ飛んで来たと思ったら、あのでかい店長の像あるだろ? アレを、がきぃぃいん、って蹴ってな!? めちゃくちゃ跳んで、4階にそのまま突っ込んでったんだぜ!?」
「な、なんだって……? 像を蹴って、4階まで……?」
「そ、そんな大ジャンプ、できるんですか……?」
「それだけじゃねぇって! あの子がこなかったらよ!」
「そうだど、宿屋のダンナ!! あのクルルカンちゃんは、オラ達に落ちてきたガレキを、すげぇキックで、屋上まで、ぶっ飛ばしたんだ!!」
「あっはっは!! あれはヤバかったぜ!! オレ達は、かなり前のほうにいたからな!! あの"クルルカン娘"が来なかったら、数十人は、今頃あの世いきさぁ!」
「……は、はぁ……。?? そりゃ、命拾いしたなぁ……???」
「え、えーと?」
カウンタ前の人たちが、嬉しそうな笑顔で、次々としゃべっていきます!
まるで、絵本を読んでいる時の子供みたいです!
どうやら、お姉ちゃんは、わるいことをして追いかけられてるんじゃないみたいです!
「え、えーっとぉ……? よくわかんねェんだけどよ。その、クルルカンの嬢ちゃんは、なんで追われてんだ……?」
「おま、ばぁか! 何を聞いてんだよ! あの義賊ちゃんがいなかったら、何十人も死んでたんだぜ!?」
「いま、王都はこの話題でもちきりさ!! みんな、俺たちの、ヒーローを探してるのさ!!」
「──"王都に、黄金の義賊クルルカン娘が現れた"!! くぅうう〜〜!! こいつはたぎるぜぇ!! なんて楽しい話題なんだ!! 会って話がしてみてぇ!!」
「は、はぁ……、と、とりあえず、そんなキテレツな格好したお嬢ちゃんは、し、知らねぇなァ──!!! は、はっは──!!!」
「あ!」
お父さんが、お姉ちゃんを、かばった!!
ふふっ!
「 」
──ドタドタドタ!!
チリンチリーン♪
わ! また、男の人が一人、かけこんできました!
「──お、おい聞けよ! 店長のランドが、"黄金の義賊の少女"に、懸賞金をかけた!! "私の店の気高さを守ってくれた英雄に、謝礼がしたい!"だってよ!」
「「「──なッッ!?」」」
「ま、マジかぁ──!! それってよォ、"賞金を渡すために、賞金をかけた"ってことかよぉ!! はっは──!! そいつはおもしろくなってきやがった──!!」
「おっしゃあああ────!!! おめぇらぁ!! 見つけたやつが総取りだぁああ!! 恨みっこなしだぞぉぉ!!」
「黄金の英雄を、さがせぇぇえええ────!!!」
「「「うおおお────!!!」」」
……────ドタドタドタドタドタドタ……!!!
「…………」
「…………」
「……にょきっと……」
「うぅ、ぅ、うぅぅ……ぅ」
あ、嵐が、過ぎたようでした……。
私のすぐ横で、黄金の義賊さんが、泣いちゃってます……。
「しょ……賞金首んなった……しょうきんくびんなったぁ、私ぃ……! ぅう、ぅぅぅうう〜〜!!」
「わ、わぁ……」
「あ──……お、お嬢ちゃん? よくわかんねぇが、オメェさん、誰かを助けてやったのかィ……?」
「つ、つ、つい、出来心でぇぇ……!」
歳上の女の人が、こんなにがっつり泣いてるのは、初めて見るかもしれません。
「……おっ、おっ、お父しゃん、お母しゃん、ごめんなさいぃぃぃぃ……!」
「にょ、にょきっとな……」
ぽんぽん。
「あ──……こら参ったなぁ……」
「げ、元気だして、お姉ちゃん……その、わるい事はしてないんだから……」
黄金の義賊も、いろいろ大変なんですね……。
「お、おいオメェさん……何日かいるんなら、ここん泊まんな? その、金はいらねぇから。あと、何か食べっか……?」
お、お父さんが、数日間の宿代を、無料にしたっ!!
「た、たべましゅぅ……」
「おう! 食べて元気だせ! 絵本の英雄は、元気じゃなくちゃなっ!」
「ううう、あ、ありがと、ごさいますぅぅ……!」
この後、ナッツのサラダと、ナナナ油で焼いたオークテキを、義賊さんに出してあげました!
お母さんにも、持っていってあげないとね!
こうして、この日から、
ウチの宿"コムギ亭"は、
"黄金の義賊さま"、いきつけの宿屋になったのですっ!
「うぅ〜〜……おうちかえぅうぅぅ〜〜!!」
『────クラウンギアは:あなたの味方です。』
『>>>がんばった……きみはよく、がんばった……』
(´;ω;`)あ、アンちゃん泣かないで……!