黄金の女子力?
(*´ω`*)もっぱついこうぜ
キ〜ンキ〜ン♪
キンキラキンキキーン♪
「へっへ〜〜!! けっこう買っちゃったね〜〜!」
『────全ての食材の格納を完了しました。』
ただいまわたくし、
うきうき! ほくほく! キンキン娘ですっ!
『>>>ちょっと買いすぎたんじゃないのー?』
「や、だってあの安さ! 一カゴで300イェルとか! ふぞろいだからってアレはすごいから! うわー! 楽しかったなぁー!」
"ラッカセイ市"の"ラッカセイ"は、ナトリの街の言葉で、どうやらピーナッツの事らしい。
この市場の形が、ピーナッツの殻の形にそっくりなのだ。
お店の割り当て表が書かれた、大きな見取り図が市場の入り口に貼ってあった。
なるほど! 確かにピーナッツの殻みたいに、網の目だわ!
ちっちゃいおばあさんの店で、芽の出ていないポタタを選びまくってたら、
「……アンタやるねェ……!! どこのお嬢さんだィ……!」
と、すげぇ眼光で見られたので、
「た、旅の大道芸人ですよぉ〜〜」
と、かわした……よし、この言い訳、使いまわそう。
他にも色々まわって、ちょっと気疲れしたかも。
ティータイムには、ちょうどいい頃合いよね!
── わいわい、ガヤガヤ ──。
この先に、有名な喫茶店があるらしい!
アナライズカードの地図に、クラウンが観光案内を表示してくれている。
「"カフェ・ド・ランドエルシエ王都店"かぁ……!う〜ん、ここは混んでても行きたいかも!」
な、何だろうこの、抑えようのない、"ゆっくりお茶したい感"は……!
はっ!! こ、これが女子力かっ……!
私の中に残る僅かな女の子パワーが、
ここでお茶をすべきだと告げてるわ!!
{{ 心配しなくても、ピエロちゃんは、ちゃんと女の子よぅ…… }}
『──女子力ニャんて:カッコつけてそう呼んでるだけニャ! お茶したぐらいでそうそう上がらんニャー! ずず〜〜。』
おい7号機、あんた何飲んでんのよ……。
「かなり伝統のある喫茶店で、え! 4階まであんの! すご! 上の階だと、目の前の広場が一望できるんだって! 最近、店長さんが、お店の前にアダマンタイト製の自分の立像を建てちゃったらしくて、これは賛否両論なんだって! あはは!」
『────案内情報には:この立像の全長は7メルトルテあると記載があります。かなりの体積の金属を加工していると予測。』
『>>>そんな大きな立像を、アダマンタイトで! そ、そりゃ賛否両論だよね……』
ふふ、見に行くのが楽しみだわ!
ここから、そんな遠くないはず!
むにゃむにゃうさ丸にはわるいけど、
どうやら肩にうさ丸がいないと、
貴族っぽさが、かなり下がるみたいだ。
さっきの市場の人も、「???」って反応が多かったの!
何だろう……金色の甲冑で生き物を肩にのせてたら、
そんなに成金っぽく見えるのだろうか……。
「あ、ねぇ! ちょっと思ったんだけど、私、王都ではさ、マントを取っても平気なんじゃないの?」
『────……詳細入力。』
『>>>えぇッえぇ〜〜??』
な、なによ先輩……その懐疑の声は……。
「や、だってさぁ。マントをしてるとはいえ、ギルト出張所を出てから、まだ誰にも"クルルカン"って、言われてないのよ!? これって快挙じゃない!? それにさ? こんなに人が多いんだからさ? 私一人くらい、ぶっ飛んだ格好してても、目立たないと思うんワケよ!!」
『────……。』
『>>>いや……それはどうかな……』
「な、なによぅ! ほら! コムギ亭のメリちゃんだって、至近距離で見てても気づかなかったんだよ!? い、いけそうじゃない?」
『────クラウンギアは:回答を保留……。』
な……、なぜ保留したし……。
『>>>……本人のぼくが言えたクチじゃないけど……きみは、マフラーマント形態の時の"黄金比率"を、甘く見てはいないかぃ……』
な、なぜこんな深刻な忠告を……。
「う、ううう〜〜! わ、わかった、わかりましたよぉ! マント着ときゃいいんでしょ着ときゃ! すんませんでしたぁ!」
『────……。』
『>>>す、拗ねないでよ後輩ちゃん……』
ふぅーん! 拗ねてませんよぉーっだ!
うう、私服でおちおち観光もできんとはぁ……げせぬぅぅ。
ヒゲイドさんも、仮面はとるなって言ってたけど、
まだ王都では、何もやらかしてないじゃないのよぉ!
まったく、失礼しちゃうわ! ぷんすかぷーん!!
『>>>あ、後輩ちゃん。観光はいいけどさ? 明日はプレミオムズ集会の本番だ。あんまり疲れないようにするんだよ?』
「ぶー! わかってますよぅー!」
『>>>あ、あはは……』
……ま、確かにそうね。
今朝、王城から逃げる時。羞恥に溺れながら、
騎士さんに"開催時刻"をちらっと聞いたら、
どうも、"そろったら開始"みたいなトコがあるようだ。
なんでそんなアバウトやねん……。
私は下っ端新人もいいとこなので、朝からお城に行くことにした。……まぁ、そんな遅くはならないでしょ。
「ふぁぁ、明日は早起き、プレミオムズ集会かぁ……!」
『────アンティ。うさ丸もそうでしたが:あなたの休息は:決して充分とは判断できません。今晩は迅速な睡眠を推奨。』
「あ……そうね。そんな眠くないんだけどな……」
気が張ってるんだろうか、プレミオムズ集会に向けて……。
……確かに、王城の中で、"時限結晶"のこととかバレたら、怖いな……。今は、ふたつも持ってるし。
それにGsランクのことも……。
「……でもね。いっこだけ、楽しみがあるの」
『────。』
『>>>うん』
「──"紫電"が、いるかもしれない……」
紫電の魔法使い。
私と同じ歳の、女の子の、雷使い。
"特異持ち"って言われる、私の憧れの冒険者だ。
もう、4年も会っていないことになる。
「──大クラス職が集まるんなら、当然、魔法職のクラス代表もくるはず。その、可能性は低いって思っても、もしかしたらって、思っちゃうよね。ね、どうだろ。クラウン、先輩、私が"紫電"に会える可用性の試算、ってできる?」
『────申し訳ありません:アンティ。判断要素が少なく:パセルテルジ試算は不可能判定。』
「や、ごめん、無理いったわ! そうよね……」
『>>>うーん、ぼくもそればっかりはわからないなぁ……ねぇ、その"紫電"って女の子、どんな性格なんだい?』
「え……? "性格"……? な、何、先輩、まさか、女の子として気になんの……?」
『────むっ。』
『>>>ち、ちがわぃ! いや、ヒゲイドさんやヒキハさんから受けた情報や印象を考えると、"プレミオムズ"ってのは、強さもそうだけど、性格や人格で選出されてるような気がするんだよ。プレミオムアーツの仕組みは、ぼくはよくわかんないけど……多分、強さだけなら、プレミオムズより強い冒険者は、いると思う。でも、乱暴な性格や、思いやりのない者は選ばれないような印象を受けたんだよ』
「……! "紫電"の性格から、可能性を見いだせるか、ってことね?」
『>>>そゆこと』
「……気の弱い、子だと思う」
『────。』
『>>>──! そうなの?』
「……うん。私ね? カーディフの街からあの子が出る直前、お礼を言いにいったの。街のみんなも同じでね? けっこうもみくちゃにされてて、焦ってて、なんかあわあわしててさ? あんな強いのにだよ? それがなんか、おかしくって……」
【 ほーぅ……俺っちは店におったからなぁ…… 】
< それはなんか、意外やねぇ♪ >
「最後にね? 手をぎゅって握ってお礼を言った時! 私がありがとう! って言ったら、"はい──……"って、すごいちっちゃな声で言ったの。なんかお互い、じっと目を見ちゃってね? ちょっと恥ずかしかったの覚えてる! へへ……」
{{ ……特異な力以外は、普通の女の子だったのね…… }}
「うん……そうなの。だから、余計に憧れたというか……すごい力を持っていても、全然えらそうじゃなかった。私と、同じ女の子だった。それが、すごいって思った」
『────……。』
『>>>いい話じゃないか!』
「へへ……私、あの子の名前を聞かなかったの、後悔してる。また、会いたいなぁ……会って、名前を聞いて、自己紹介したい。本当の、私の名前で……」
『────可能性は:あります。』
「え? ……そ、それって、プレミオムズ集会のこと?」
『────いえ:そちらは私にはわかりかねます。ですがアンティ:"紫電の魔法使い"は、隣街から来たのでしょう。』
「う? うん……そうだよ?」
『>>>──後輩ちゃん。カーディフの街の隣街は、もちろん"ドニオス"だ。そして、カーディフに救援を送ったギルドは、もちろんドニオスギルドだよ』
「──ッッ!!」
『────"ヒゲイド・ザッパー"と、"キッティ・ナーメルン"が:"紫電の魔法使い"と接触している可能性は:非常に高いと思われます。』
──!!! そ、そうよ!!!
そのとおりじゃない!!!
じ、じゃあ……!!
「──ヒゲイドさんとキッティが、"紫電"の本名を、知ってるかもしれない……!!」
『────はい。』
『>>>そゆことだね!』
は、はははっ……!
うわあ……それは失念してた……!
はは、私ったら、バカだなぁ────!!
「どうしよ……! すっごい今すぐ、ドニオスに帰りたい!!」
『────た:耐えてください:アンティ。』
『>>>我慢だよ……』
「うあああああ──!! プレミオムズ集会、生き残るゾぉ────!!!」
『──ガルんがるぅ──ん!!』
【 かっか……! 何や、元気でよったな! 】
< ええことやよ……ふさぎ込んどっても、しゃあないからねぇ! >
{{ 物騒な目的になってますけどね…… }}
やぁ────!! 目標があると、
生きる気力が湧いてくるわね!
うわぁ──、はやく聞いてみたいなぁ──!!
『────アンティ:一時停止を。』
「え──? うわ──」
──キン。
……がやがや、がやがや……。
なんだここ、めちゃくちゃ人多いな……。
さすが王都……? んん? なんか様子が変だ。
隣の人達を見る。
みんな、「?? なんでここ、こんなに人が詰まってんだ?」
みたいな顔だわ。
なんか、あったんだろうか。
「……クラウン、ちょっと人を避けながらいこう。もう少しのはずだから」
『────レディ。』
……──キン!
踏み出す。
人が多いけど、まだ、流れがある。
キン、キンキンキン、キンキンキンキン──……!
ぶつからないように、人のスキマを、ぬう。
「きゃ!」「おおっ!」「わっ!」
ちょっと、横を通った人達がビックリしてるけど、
ごめん遊ばせ?
明日はどうなるかわからんし、
ゆっくりお茶はしてみたいかんね!
これくらいの歩行術なら、お手玉とかわんないわ!
と、思ったんだけど……。
がやがやがやがやがやがや──……!!
「み、見えない……」
喫茶店のかなり近くまで来てるはずなんだけど、
とうとう、人のスキマがほとんどなくなった。
なんだこの人の数!
ここって、喫茶店の前の広場だよね!
めちゃくちゃな人じゃないの!
え、そんな流行ってるの!?
うええ、私、背が低いから、人混みで空しか見えなくなりそう!
『────アンティ。右方向:5メル地点に、登れそうな花壇があります。』
「──ん! 行ってみる!」
……がやがや、がやがやがや──……!!
ちょっと高いとこから様子を見てみたい……!
よしょっと……よしょっと……。
クラウンの教えてくれた通り、石を積んで作ってある花壇があった。
! よく見ると、何人も人が登って、同じ方向を見ている。
?? 何を見てんの?
うまいこと空いている場所があったので、登ってみる。
キ、キン──……!
「よ、と……おおっ!」
花壇はけっこう高かった。
広場が見渡せる!
す、す……すっっっごい人だ!!!!!
なんじゃこりゃあ!!!
「どうなってんの……」
人の流れがない。
止まっている。
みんな、同じ方向を見てる?
……あ!
でっかい、立像がある!
金属でできた、シュッとした人の像だ!
なんか、ウェイターさんみたいなカッコをしてる!
「あれ、さっき案内に載ってた"カフェ・ド・ランドエルシエ"の、店長さんの像だよね!!」
『────そのようです。アダマンタイト製。』
なんだ! けっこう近くまで来てたんじゃない!
30メルもないわよ!
……がやがや、がやがやがや……。
で、でも、この人の量はないわ……。
ち、ちくしょう、悔しいけど、いったん戻って、空いてるトコロを探して────……。
────バリンッッ!!
「──え?」
──ざわざわ、ざわざわざわ!!
「うわああああ!!」
「きゃああああ!!」
「ガラスが落ちたぞ!」
「はなれろ! はなれろぉ──!!」
「──うわぁ! あれはやばいっ!!」
「4階まで、まわってんじゃないのか!?」
「おいおい、よくみると店内、真っ赤だぜ!!」
「水系統の魔法職はいないのか!? 一般のメイジでもいい!!」
「あかんあかんあかんあかん……」
「そんな……伝統的なカフェなのに……」
「避難は終わっているのか!!」
「おい!! お前ジャマだぞ!! 救助が通れないじゃないか!!」
「どの口が言いやがる!! お前も野次馬にかわりねぇじゃねえか!!」
「はぁ!? ふっざけんなよ──ッッ!!」
「……!! な、なん……」
なんだ。
この人たちは、何を見てる。
なんで、こんな荒々しい空気なの……?
みんな、気が立っているような……!
うわ、あそこで取っ組み合いのケンカになりそう……!
『>>>アンティ! 惑わされるな! 人じゃない! カフェだ!! きみが行こうとしていた、カフェだよ──!!』
「────えッッ!?」
先輩が、私のことをアンティと呼んで、ハッとする。
見る。
大きな立像の立つ後ろの、4階建ての、建物を────。
「──……! ……────!! あ、あれって──……!!?」
クラウンが、私が視線を合わすと同時に、アナライズした──。
『────"火災"が:発生しています。
────出火ポイント:"カフェ・ド・ランドエルシエ王都店"。
────現在:1階から4階までの燃焼を確認中。
────窓の脱落により:酸素燃焼の拡大の可能性:大。
──────アンティ:入力を。』
「 」
こんな人がいたら。
助けが、これない。
((((;゜Д゜))))