床は友だち さーしーえー
ギルド混沌回(笑)(^ω^;)
誰がしゃべっているか、わかるかな?
「にょんむにょんむ……」
「くむくむくむ……」
「ぎ、ぎゃああああああああ!! な、なん、なんなのッ……!? うさ丸の横にいるッ……あの、子……バタッ」
「イリノカー!!? ちょ、ちょっと、息吸ってェ──!?」
「おい見ろよ……うさ丸のそばで、見知らぬモフモフがフモフモしているぜ……ははっ、とうとう俺も、おかしくなったかな……」
「……大丈夫だ、俺にも見える。なんだあのプリチィな犬っころは……いつからドニオスギルドは動物園になったんだ?」
「よォう、キッティちゃん! なんかいいクエストない、うおおおビックリした!? なんだこのちっこいウルフは!?」
「あ、あはは、えと、こちらなんかどうですか?」
「なッ……!? ば、バカな……! まず、いぞ……!? あの、存在は……あの存在はッ!? ……我ら、"にょきっと連盟"の、かつてない程の、障害となる……ッ!」
「会長は……アマロン様は、どこへ行ったのだァ!?」
「だ、だめだ……ッ! また、他の都市に説法に行っておられる……!!」
「こ、このタイミングでかっ……!? 取り返しのつかない事になるぞ……!」
「……ワンワン……。いい……」
「──ッッ!? き、貴様ァァアッッ!? 裏切る気かぁ────ッ!!?」
「──ハッ!! ち、ちが、──」
「……な、なぁ、あのちっこいウルフも目立ってるけどよ、受付カウンタに置いてある鉢植えの花さぁ、めちゃくちゃ綺麗じゃね……?」
「あ、思ったわ。ヒゲイドのダンナも、シャレた趣味してるよなぁ。ギルドの受付に花、なんてよ?」
「おぅ! あの花な、どうやら、クルルカンの嬢ちゃんが持ってきてくれたらしいぜ!?」…
「「「「「ほぉ────う!」」」」」
「流石、女の子だよなぁ!」
「ははは! 黄金の義賊が持ってきた花なら、すげぇお宝かもしれねぇぞ!?」
「は、ぬかせって! しかし、さっきから女の冒険者が、どんどん集まってきてないか……? もうすぐ日が落ちるってのに……」
「あの、ちびウルフの噂が、ドニオスの街を駆け巡っているんだろぅ……歴史が、動くぞ……!」
「な、なにマジになってんだ? お前……」
「にょ、にょんむぅ──……」
「かん、くるるぅ──?」
「にょっき。にょっきにょっき?」
「! くるくるぅ──!」
「「「「「ギャ────!!! かわいいィ───!!!」」」」」
「奇跡だ……」
「……おい、ヒゲイド」
「……なんだ、ゴリルよ……」
「2年前を、思い出すなぁ……」
「……うさ丸の時のか……そう言えば、こんな感じだったな……」
「あのウルフよぉ……大丈夫なのか? その……ラビットの横にいてょ……」
「……食い物の事を言っているなら、大丈夫だ。横に置いてある鉢の花しか食わん」
「マジかよ……フォレストウルフかなんかの新種か?」
「ノーコメントだ」
「……もしかして、"嬢ちゃん絡み"、か……?」
「……ノーコメントだ」
「答えを言ってるようなもんだぜ……」
「みなさーん!! おちついてくださーい! クエストを受けない方は、カウンタの前に集まらないでくださぁ────い!」
「「「きゃあああ! カンクルちゃん、こっち向いてぇ──!!」」」
「くゆ?」
…………。
「「「──いやぁァあああァァァ──!!! 」」」
「集まらないでください、こんちくしょ────!!」
「にょきっと……」
「……もう、あれ観覧料とれよ……もうかるぜ?」
「ギルマスのプライドにかけて、それはできん」
「……キッティにボーナスやっとけよ?」
「…………」
ひゅるるるららるるるるるる…………
「ん?」
「なんだ、この音……」
「──!! まずい! お前達!! 天窓の下から離れろッッ!!!」
「「「 ──はっ! 」」」
「「「 ──まさかっ!! 」」」
「「「 ──とうっ!! 」」」
ひゅるるるらるるるるるる────……!!
……。
ガッッ、キィィィィィ────────ンンン!!!
「「「「「かっ、肩から行ったァ────!!!??」」」」」
「う、うおおお!? く、クルルカンの嬢ちゃん、着地失敗してんじゃねぇか!? ケガは!? 大丈夫かッ!?」
「落ち着けゴリル……おい、どうだ」
「おうっ! 床材は無事だぜッ! ハハッ!」
「前に、下に合金の塊をしこんだからねっ! ハハッ!」
「メテオストライクでも、へっちゃらさ! ハハッ!」
「──どうだ、すごかろう。お前から買ったゴーレムで、床は補強済みだ」
「あぁぁほぉおかっ!! てことは、下が合金の床材に、嬢ちゃんは40メル上から突っ込んだってことだろうよっ!? んなもん無事に済むはずが──」
……──ンキンキンキンキン!!
「ギルマスいやヒゲイドさんつうちきたつうちきたほんとにきたどうしよどうしよそういやわたしなんもよういしてないなんかすることないのおしえておしえてやばいやばい王都だってむりむりむりむりむり──!!!!!」
「……嬢ちゃんは、ゴーレムかなんかなのか……?」
「おいアンティ、肩からはやめろ。床材がヘコむ」
「そうですよぉアンティさん……? いくら下が合金だからって、表面は木なんですよぅ?」
「いや、お前ら……少しはお嬢ちゃんの心配をしてやれよ……」
「すげぇな、クルルカン……」
「あんなきりもみ着地で、ピンピンしてるぜ……」
「良い子はマネしちゃいけません……」
「ああ、やっぱクルルカンはだてじゃないな……」
「わ、わたし、回復魔法かけてあげた方がいいかな……?」
「あんだけ元気そうなら、いいんじゃん?」
「──!! おいキッティ、皆、もふもふ共から注意がそれたぞ。チャンスだ! ヤンを呼んでこい」
「ギルマス、すでに呼んでます」
「……ったくよぉ、んだよキッティ……私、まだオークの解体終わってねぇんだぞ……おるるぁぁぁぁ───!!! テメェらァ!!! じゃまだ出てけぇえええ────!!!」
「うお、ヤンさん出てきた」
「逃げろ、解体されんぞ」
「ううう〜〜、まだモフモフ成分がぁ……!!」
「……ヤンのやつ、恐れをしらねぇな……ギルドの解体職が、なんで冒険者の背中をガンガン蹴れんだよ……」
「ふぅぅ、良い蹴りです」
「にょきっと……」
「くるるぅ〜〜!」
「……いまの、かみが水色のおんなのひと、だれ」
「ウチのギルドのお抱えの解体屋だ。おいアンティ、結果的にお前の床ショルダーに助けられたが、そもそもこの騒ぎの原因は、お前が連れてきたカンクルのせいだ」
「え? え?」
「いいか、お前のせいで、あそこの床の下には非常に金がかかっている。次からは重力方向を無視して肩から突っ込むな。床は友だちだ。わかるな? ほれ復唱!」
「ゆ? ……ゆかはともだち……」
「やー、アンティ! お前のお陰でオレは潤ったんだぜ? 合金の床なんざ、ぶち抜いちまいな! また俺がギルドにゴーレム卸してやるからよ!」
「だまれゴリル」
「……ゴリルさん、こんばんわ……」
「やれやれ……一応きいておくが、ケガはないか?」
「あ、だいじょうぶス、ごめんなさい……」
「体が金属でできているからって、肩から落ちるな。足から下りろ」
「ワタシノカラダ、キンゾクデデキテナイヨ……?」
「やれやれ……で、慌てて落ちてきたようだが、何があった?」
「! あの、その……"通知"が……」
ギィ───……
「あ──……ったく! なんなんだ、私の解体の邪魔しやがって……キッティ! なんだありゃ!」
「あ、ヤンさん、ありがとうございました……いや、この子が有名になりつつありまして……」
「お!? おいおい、これ新種じゃねぇの? こんなウルフ、解体したことないぜ!?」
「く、くくくくるるるるるッッ!?」
「にょ、にょんやややややッッ!?」
「はははっ! なにビビってんだよ! おっ! こいつがウワサのクルルカンかぁ!」
「えっ、あ、その、はじめまして……」
「よぉ! 私がここのギルドの解体職、ヤンだ!! あんま肉が手に入るクエスト受けねえんだってなぁ! お陰で私と会うの初めてだろう!!」
「あっ、はい、そうですね……」
「おうおうおうおう! かってぇなぁ! キッティがたまに食ってる料理、おまえだろう?」
「はい、そうですっ」
「おまえ、たまに私んとここいよっ! 珍しい肉とか、安く分けてやるぜ?」
「ほほほ、ほんとですかっ!?」
「はははっ! 食いつくじゃねぇーか! ほんとだよっ! けっこう高レベルの魔物も解体できんだぜっ? ははっ、黄金の義賊ちゃんよぉ、なんかでっかい魔物狩ってきたら、私にもってきな!」
「え……や、はいっ!」
「ははっ! じゃーな!」
……──バタン。
「……ふぇ──、お、男勝りな女の人でしたね……」
「いつもは奥にこもってるんだが、こういう時には助かるのだ。冒険者たちは、ヤンを怒らせたら魔物を解体してもらえなくなるからな……こういう軽い騒ぎの時は、ヤンの足蹴りにかぎる」
「オレの狩ってきたゴーレムもバラすくらいだからな。相当の腕の女だぜ?」
「ほぁ〜〜……」
「にょむぅぅぅ……!」
「くるるゃあ〜〜!」
「で、アンティ……先ほど、"通知"と言っていたが……きたか」
「! ……はい」
「お! なんだなんだ! 気になるじゃねぇか!」
「ゴリル、お前は帰れ」
「な、なんだよぉ、仲間はずれにしやがってぇ!」
「キッティ、ヤンをもう一度呼んでこい」
「あー! わかったわかった! 帰るよ! アンティ、今度ゴーレム狩りでも一緒にいこうぜ!! じゃあな!」
「え? あ、はい……」
「はぁ……おいキッティ、執務室に紅茶を運んでくれ……」
「かしこまりました。はぁ、つかれた……」
「にょきっとな?」
「くるるぅ!」