会計悪魔さん/発明家二人組
一応連投かな?⊂⌒っ´ω`)っ
今日も箱庭フォートレスは、
時限結晶内の無限の海の中を、
のんびりと、進んでいる。
『ガルン、ガルゥ〜〜ン♪』
『>>>はは、いい天気だねぇ』
あ……アイテムストレージの中で、いい天気もへったくれもないか。
でもここ、"カーディフの火"が、すでにプチ太陽みたいになってるから、陽射しのいい縁側みたいなんだよなぁ。
ぽっかぽかだなぁ……。
目の前には、金色の葉っぱの大きな木。
明らかに和風の、赤い木組みの建物。
ちょっと、神秘的な感じがするよね。
そーいやこの船、鳥居もあったな。変なの。
隣には、エプロンを付けた真っ黒な魔獣が座っている。
ちょっと顎がしゃくれた、着ぐるみみたいだ。
『>>>そのエプロン、アブノさんのお店のかい? 似合ってるね!』
『ガルゥ〜ン♪』
ははっ、三つ目の魔獣に愛嬌を感じるね。
受け入れてくれるお客さんは、一人くらいいたんだろうか。
『────ここに数値を入力すると:表計算ソフトで演算されます。』
{{ なるほど……ここの列の数字が、全て合計されるのね。これは便利だわ }}
今、後ろの畳の部屋の障子は開けっ放しだ。
クラウンちゃんとイニィさんが、透明のノートパソコンの前で、アブノさんのお店の売上を入力している。
あの、アナライズカードでできたパソコンみたいなデバイスは、イニィさんに相談されたクラウンちゃんが、ぼくと一緒に作ったものだ。
縁側で、着ぐるみ店員さんガルンとしゃべりながら、ぼくはもうひとつのデバイスを仕上げる……ん、でけた。
こんなんでいいでしょ。
よいしょ。
『>>>イニィさん、クラウンちゃん、マウス、できたよ』
『────助かります。早速:接続を。』
{{ あら、それは──? }}
いつまでもタッチパッドじゃ、
カーソル使いにくいだろうからね。
イニィさん、パソコンなんて初めてだろうし。
クラウンちゃんが、デバイスを接続して、
引き続き使い方をレクチャーしている。
はは。
小さな悪魔の女の子が、パソコンを使って、
服飾店の売上をまとめている。
平和ったらないね。
というか、このでっかい四角い机。
明らかに素材が天然木でできてるよなぁ。
ご飯とか置いたら、映えそうな感じというか。
やっぱり、サキさんやダイさんの記憶が反映されてるのかな。
{{ ──よしっ、ありがと! あとは自分でできそうよ。あ、わからなくなったら泣きつくわね? }}
『────お役に立てて光栄です。』
『>>>ちゃんと表計算ソフト動いてるかぃ? ……えっ!? あ、アブノさんのお店って、こんなに黒、出てるんですか……』
{{ そうなのよ……こんなに稼いでるのに、店長ったら、かなりお金の管理がずさんで……たまに変な素材買ってくるし }}
『────クルルカン:あまり人様の店舗の売上を:見てはいけません。』
『>>>あ……あはは、"社外秘"ってやつかな? はーい。じゃ、ぼくたちはお仕事のじゃましないようにしよーかな?』
{{ ふふ、ごめんね〜〜 }}
『ガルンガルゥ〜ン♪』
クラウンちゃんと一緒に、少し離れた縁側に移動する。
ま、"箱庭"だからね。
縁側は、よっつあるわけだ。
四角形だからね。
よっこいしょ。
クラウンちゃんも、横に座る。
相談を持ちかけられた。
『>>>"ストックギア"の、形状に迷っている?』
『────はい。どのような形態が:扱いやすいか判断に困っています。』
『>>>ふむー』
"ストックギア"っていうのは、クラウンちゃんとぼくが、勝手に呼んでいる呼称だ。
前に、後輩ちゃんの歯車法がガス欠になりかけた時、
ガルンツァーに使われた歯車を補充して、窮地を切り抜けたことがある。
歯車法の"はぐるま"は、"スキル経験値"を変換して作られる。
使用後は、一定期間クールタイムを挟むと、回復する。
特殊なケースを除き、スキル経験値は損失しない。
その特殊なケースってのが、ぼくの憑依だったりするけど。
ま、つまり、
『歯車法を全部使いきらないように、ピンチの時のために、ちょっとストックしておこう』
ということだね。
『────アンティからは:かなりの量のスキル経験値を委託されています。』
『>>>ストックもそうだけど、歯車を使ったデバイスも研究したいよね』
『────同意。こんなものを作ってみたのですが。』
『>>>ん?』
きゅうういいいいいんん……!
──どん!
『>>>うわっ』
目の前の地面? に、
えらいもんが出てきたよ……。
『>>>き、金ピカの……ガトリング砲……?』
『────肯。"GAU-12 イコライザー"をモデルにしました。』
『>>>ア・ホ・か……ッ! 装甲車両や戦闘機につけるやつだよ! どーすんの!? あ、うわ、ここ歯車でできてんのか……すごいな……』
『────むむっ。これはあなたの記憶を元に作り上げているのです。あなたも無関係ではありません。』
『>>>いやいやいやいや……たまたま映画で見たのを、つい調べまくった事があって知ってただけだよ……てかなんでコレをチョイスすんの!? 後輩ちゃん、装甲車両になっちゃうでしょ……』
『────う、うぅ。』
『>>>あっ、あ、いや、違うッ! 責めてるワケじゃない! ただ、この機関砲は、あまりに俗っぽすぎる! ストック歯車として、臨機応変には対応できない! 歯車法が使えなくなった、じゃあ最後はガトリングだ! とか、ちょっとアレだろう!! ただでさえスナイパーライフルは、イニィさんの杖があるし……銃は、ストックには向かないと思う……』
『────……むぅ。ではどうすれば良いのです。』
『>>>い、いや、まぁ……デバイスの研究はもちろん大事だけど、ストックとして使うんだから、あんまり奇をてらったのは、逆にちょっとね……デバイスとして組んで、形を決めすぎても、使いにくいと思う。ほら、ぶっちゃけ経験値を隔離しておくだけでもいいんだから』
『────むぅ:理解はできます。』
『>>>それでも何か手を加えるとすると──……。あ、そだ。"ずっと回転させておく"ってのはどう?』
『────クラウンギアは:詳細入力を希望。』
『>>>えっとね、めちゃくちゃ回転させたままの歯車を、その状態で格納しとくんだよ。じゃあ、パッと召還した時に、すごいエネルギーの歯車がすぐに使えるじゃん!』
『────なるほど:要点を理解しました。しかし:問題があります。それほどの高圧縮回転エネルギーは、アンティが自分の意志で念じないと、出力されません。超回転させるには:他のエネルギーが必要と判定。』
『>>>え、歯車の回転って、そんな根性論チックなんだ……クラウンちゃんが操作しても、歯車の回転数は上がらないのかぃ?』
『────もちろん一定速度までなら可能。しかし:それ以上は。』
『>>>……うーん、そっかぁ……』
ストック歯車を超回転させたまま格納しておくには、
後輩ちゃんの気合い以外のエネルギーがいるってことかぁ……。
どーしたもんかなぁ……。
……──ぽかぽか。
いい、天気だなぁ……。
『>>>ん?』
『────?。』
『>>>……クラウンちゃん、"カーディフの火"って、どんな管理のされ方してるの?』
『────答。"カーディフの火"は、戦闘:及び調理において、非常に使用頻度が高い"アイテム"と認識。決して消滅しないように:可燃物や気体を取り込み、燃え尽きないように運用しています。』
『>>>それだ』
『────クルルカン?……。』
『>>>クラウンちゃん、あれはもう、小さな太陽だ。あれを、ストック歯車の超回転のエネルギーに使おう』
『────!……。し:しかし:どのように。』
『>>>え!? う、うーん……と、とにかく、"カーディフの火"の周りを、球体状に歯車で囲ってみたらどうかな!』
『────球体。』
『>>>うん。いくつも歯車を使ってさ、丸くなるように……どうせ失敗しても、スキル経験値は回復するんだし』
『────クラウンギアは:概念機構を取得しました。クルルカン:感謝します。早速試作に入ります。』
『>>>あ、なんか思いつきで言っちゃったけど、お役に立てたかな……? あと、この和風な空間に金ピカのガトリング砲は浮きまくってるから、しまってくれるかな?』
『────むぅ。』
小さな太陽を使って、歯車を回す実験が始まる。
大丈夫かな? 大丈夫だよね?
暴走したり、しないよね?
『────クルルカン:希望のデバイス計画名はありますか。』
『>>>えっ……? そうだな……急に聞かれると、困るな……うーん』
太陽……歯車……。
『>>>じゃ……"ソルギア計画"』
『────了解しました。本計画の呼称コード:"ソルギア計画"を登録しました。』
『>>>あ、手伝った方がいいよね?』
『────いえ:まずはこちらでベース機構を組みたてます。後ほどご助力を。』
『>>>わかった。いや〜〜、忙しくなりそうだねぇ。……あ、そだクラウンちゃん?』
『────はい。』
『>>>奥の和室で、何作ってんの? ほら、ロックしてある部屋。や、流石に勝手に解錠とかはしてないけど』
『────ぅ……、……。』
『>>>デバイス計画名が、"M2型"になってたけど、あれも銃火器か何かかぃ?』
『────ひ:秘密です……。』
『>>>ありゃ。まぁいいや。できあがったら、見せてね!』
『────……か:必ず、あなたに見せます……。』
『>>>はは、楽しみにしとくよ!』
さて、今日もそろそろ、お風呂に入ろうかな?
や〜〜、贅沢だなぁ……。
アヒルさんデバイスでも、作ろうかな?