光と闇が渦巻いておるわ
(つд⊂)短くてごめぬやよ?
一巻のSS、けっこう長くなりそうです!^^
え──皆様こんにちは、アンティです。
今、私は地元の、炭坑跡地に来ています。
ええ、ええ、そうです。
前に、はぐるま秘密特訓をしていた、あの炭坑跡ですよお。
「……」
「にょきっと」
今、私の目の前には、小さなラビットの魔物がいます。
あ、いえ、炭坑跡に魔物は湧きません。
この、まん丸うさぎは私を追いかけて、
ドニオスという街から、この街まで来てしまったのです……。
「……やっぱ、うさ丸は、うさ丸よね……」
「にょっきぃ?」
私の目の前にいるラビットは、
ま、まぁ何とか、まだ普通の魔物です?
鳴き声は個性的だし、
よく見ると2足歩行だし、
度し難いまん丸ボディだし、
真っ赤なグローブ付けてるし、
ニンジンは鷲掴みにして食うし、
明らかに言葉を識別しているけど、
まぁ、まだ何とか、普通なのですよ。
『>>>後輩ちゃん……。自分に嘘ついちゃ、ダメだよ……?』
『────ユニーク個体なので:"普通"という概念には判別されないように思います。』
……。
横から、ちゃちゃが入ったけれど、
まだ、この状態のうさ丸なら、
ま、まだ、……まだッッ、何とかセーフなのよっ!!
「ちょっと変わった魔物だな〜〜」で、済むのよ!!
え!? いや! す、すむッッ!!!
すむったら、すむ!!!
なんだその目は!? や、やめっ!! ちがうっ!!
私は自分に嘘なんかついてないわよッ!?
ぐっ……でも、でもねぇ……!
私にも、許容範囲っていうか、
無視できるレベルってモンが、あるじゃないのよぉおおお!!
「……うさ丸、アレ、もっかいやって……」
「──にょにょ! にょきっと、なッッ!!」
……──ばぼんっ。
ずおおおおお──……。
……。
「…………」
『 ──にょきっとぉおおぅ! 』
…………。
…………。
…………。
……さわさわ。
『 にょきっと 』
……もふもふ。
『 にょおふ 』
……ふかふか。
『 にょんやぁ〜〜! 』
…………。
……。
①うさ丸(特大)から、少し離れます。
②両膝を地面に付きます。
③両手のひらを地面に付きます。
④うなだれます。
⑤叫びます。
「──ああああああああぁぁぁ──────!!!」
『 にょ……、 』
『>>>ちょ、後輩ちゃん……。いきなり地面に手を付いて、絶叫するのやめよ……? こわいからね? ね? 女の子なんだからね……? 』
『────……。』
あああっ、なぜどぉぉおおああああああああ────!!!
「はっ……!? い、いかん。つい現実から目をそらす所だったわ……」
──ゆらり。
たて、立つんだアンティ……。
この巨大もふもふうっさーから、逃げてはいけない……。
ちゃんと直視してうわやっぱでけぇえええ────!!!
片耳の影に、私ぜんぶ隠れてまうやないのぉぉおおお──!!
「なんでラビットが、こんな巨大化するに至ったのよ……」
『 にょ、にょきっとぉお…… 』
「え、いや、責めてんじゃないのよぅ……ただ、あんたそれはちょっといくら私でも、びっくりすんじゃないのよぉ……」
側によって、巨大うさ丸を、ナデナデする。
……しゃらぁぁああああ────!
う、うわぁ、なんだこの毛皮……!
改めて撫でると、なんか高級な肌触りだわ……。
密猟されんなよ? うさ丸……。
『 にょんやぁ〜〜♪ 』
「はぁ……よしよし。何食ったらこんなうさぎの王様みたいになんのかしらね……」
うさ丸は、どうやら自分の意志で、巨大化できるラビットらしい……。
いや、自分で言ってて意味わかんないけどね?
この目で見ちゃったんだから、しょうがないじゃないのよぅ。
まぁ、でっかくなっても、うさ丸は、うさ丸だ。
この表情を見てると、それはよくわかんのよ。
「──こら。ヒゲイドさんとキッティ、このこと知ってんの?」
『 にょ、にょんむ…… 』
「え……ま、まじでか……。うわぁ、あんたホント討伐されんなよ……?」
『 にょ、にょっき〜〜! 』
おっきくなったうさ丸は、手のグローブだけでなく、
足のシューズも"構成"されるようになってしまった。
どっちも真っ赤で、歯車がついてるわ……。
どうやら、私の歯車法の力を、少し取り込んでしまったみたいなのよ……。
まったく、えらいこっちゃである。
額につけた赤いグリルゴーグルが、ちょっとカッコイイわね。
『 にょんむぅ〜〜、にょんむむぅ〜〜…… 』
「はぁ。わーった、わーったから。誰にも言わないって……てか、言えないわね……」
『>>>いや、学校の人達には、かなり見られてると思うけどねぇ』
『────肯。推定:127名の生徒、及び学院関係者に目撃されています。』
『>>>もう爆発的に噂がひろがると思うよ』
『────摂理です。』
「あなた達は、私に胃の中のモノを吐き出させたいの?」
あの後、かなりの大騒動になった。
まず、私、ふくろにされて質問攻め。
とてもあわあわした。
何答えたか、まるで覚えてない。
その間に、通常サイズうさ丸、みんなに撫でられまくり。
二人ほど、やばい目のヤツがいた。
てか、レンカも撫でてた。
そのあと、あの木箱を蹴り飛ばさなくても、
スネイオ先生の魔法で、ミユナとセヴァが安全だったことが発覚。
私、目立ち損……。やってもたわぁ……。
魔法の授業では、先生が安全を保証するため、
どんなにやばいと思っても、そこに侵入してはいけないらしい。
魔法実習の初回授業のオリエンテーションで、そういう風に説明されたんだって。
うう、だって私、参加してないもん……。
つまり、乱入した私の方が、けっこう危険だったみたい。
た、確かにヘタしたら、木箱の直撃を受けてたワケだもんなぁ……。
ただ、まぁ、何とか色々丸くは収まったみたい。
レンカは、ミユナとセヴァに、ちゃんと謝っていた。
あいつはもっと冷たいヤツだと思ってたけど、
けっこー素直なトコ、あると思ったわ。
バトったからこそ、わかるといいますか。
周りのみんなも、レンカに対する見方が変わったみたいだった。
まぁ、あの魔法は、練習しなきゃ、できないでしょーよ!
ただ、才能におんぶにだっこじゃ、ああは行かないと思う。
見ていた生徒は、みんな気づいたはずだ。
レンカって、影ですっごい、がんばってたんだなぁ。
そりゃ、あんなすごい魔法も使えるよ。
……やっぱ、ちょっと羨ましいなぁ。
私、属性魔法とか、皆無だもんなぁ。
『────アンティ。私は世界で唯一の:あなたのスキルです。』
「! ふふ、ありがと!」
『>>>なんだい! 今のきみなら、山火事でも光魔法でも、撃ち放題じゃないか!』
「あほぅ! そういう問題じゃない……あ、そ、そか。レエンで格納した、あの光魔法と闇魔法……アレも持ってんのね、私……」
私の歯車の中に、光と闇が、渦巻いておるわ……。
「こっ、今度、アレの使い方の練習も、した方がいいのかなぁ……?」
『────放出するだけで:かなりの破壊力が期待できます。
────"レエンホーリー"、"レエンダーカー"で登録済みです。』
「ま、また勝手に技名つけたのね……」
『>>>右手に光の力、左手に闇の力……! とかできそうだねぇ。クルルスーツ形態でやったら、超かっこいいかもよ?』
「ううう〜〜、食堂娘に、超高密度光魔法と限界圧縮闇魔法を、どう使えっていうのよぉ〜〜! どうしてこうなったぁ〜〜……」
『 にょきっとなぁー? 』
──ぽふんっ!
小さくなったうさ丸を頭に乗っけて、
お家に帰りましたとさ。
「にょんやぁ〜〜!」
『────クラウンギアは:脅威に晒されています。』
「うさ丸? お団子触るのやめなさい」
『>>>ふわぁ〜〜……、畳って、すごいなぁ……』