着弾失敗(右後方3メルトルテ) さーしーえー
一応、連投になるのかな?(*´ω`*)
おおおおお!! と、周りの生徒達から、どよめきが起こる。
「す、すげぇ!」
「なぁ、金さじのやつ、今の炎、どうやって避けたんだ!?」
ふむ……生徒達も不思議に思っているな。
オレも、動きは見えていたが、なぜ……。
「ふふ、ジャイアー先生、今、なぜミス・キティラが回避できたと思いますかな?」
「──! 回避方法自体は見ていましたが……なぜ、あんな行動ができたのかは……」
「ふふ、ジャイアー先生。炎系範囲魔法、"ノウゼンヴァイン"の詠唱はこうじゃ。"炎を咲かせし華よ、我の中心より咲き誇れ"」
「! さっきのレンカの……」
「左様。ミス・サラマンドは、その詠唱を、前に進みながら行った。つまり……」
「! まさか、アンティ・キティラは……」
「そうじゃ。ジャイアー先生、ミス・キティラの前回の座学試験、何点か知っておるかね?」
「え? いや……」
「100点じゃよ」
「……」
「ふふ、上位呪文や、無詠唱ならともかく、そんな者に詠唱を聞かせたら、なんの魔法を使うかなど、1発でバレる。そして、"ノウゼンヴァイン"には、ひとつ、致命的な弱点がある……これは、己の"中心"から炎を放射する魔法じゃ。つまり──……」
「──術者のいる中心部は、1番安全、という事ですね……しかし、それを瞬時に判断して、前に突っ込むとは……」
「ミス・サラマンドが前に詰め寄ったのは、詠唱を聞かれる事と、自分自身を近づけてしまったことで、完全に裏目にでてしまったようじゃな。ふふ、ミス・キティラは、そうとう度胸もあるようじゃしの!」
「はぁ……あいつ、足もはやそうですもんね……」
いっつも追いかけっこしてたヤツだからなぁ……。
思わぬ拮抗した勝負に、先ほどまで静かになっていた周囲の生徒たちが、熱を持ち始めている。
「いけいけぇ──!」
「がんばれぇ──!」
と、声もかかるようになってきた。
一方の、模擬戦中の本人達はと言うと……。
「……、…………」
お。
レンカの表情が、変わったな。
冷や汗をかいているが、目は、なんというか、
真剣なものになってきている。
くく、まるで冷水をぶっかけられた後のようだな。
でも、澄んだ目だ。
あれは、侮りを捨てて、素直に相手を見ている目だな。
あいつも、あんな目が、できるんだな。
一方の、アンティ・キティラは────……。
「ふふっ……」
ほほえんで、やがる……?
「おっ……」
「わっ……」
「いま、金さじが、わらったぜ……」
「え、やば……」
「……いや、あいつ……微笑んだ顔、可愛すぎない?」
「おお、神よ……」
「ハァ、ハァ、バタン」
「うっわ、あれは天使でしょ……」
「あれあかんやつやな」
「普段、怒ってるイメージしかなかったからなぁ……」
「いや、あのイタズラっぽい微笑みは、ちょっと女の私でもファンになるわ……」
生徒から、様々な声が聞こえる。
いま、一人倒れなかったか?
「……あなた、なぜ、笑ってらっしゃるの?」
「──え? あ、いや……」
「……私のことが、滑稽?」
「え!? な、違う違う!!」
「ならばなぜ……」
「あ──……、"楽しいな"って……」
「……?」
「あ、ほら……私、魔無しだったじゃない? 魔法の実習に参加したのって、今日が初めてなの。いつも遠くから、みんなを見てるだけだったから」
「…………」
「だからその、ちょっと、"楽しいな"って……」
「…………。認めましょう。あなたは確かに強敵だわ。でも、私の使える魔法は、"炎"だけではなくてよ?」
「え」
「……ふん。せいぜい、怪我をなさらないようになさい……本気を出しますわ」
「あら、優しい? 心配してくれてんだ」
「──! ま、全く! いまいましい女っ!」
───おオンッッ!
レンカが両足を揃え、燃える宝石が光る杖を前に突き出す。
「────"ロックブレイク"!!」
「わ……」
な……!?
「"ロックブレイク"だと!?」
まさかの土魔法の攻撃で、オレは面食らう。
レンカが、炎じゃなくて、よくバカにされる、"土"を……!?
アンティ・キティラは、瞬時に反応した!
自ら上に跳び、持っている本を、下にかざしたのだ!
……────ドォォォオオオオン!!!
下から、岩が衝撃となって、盛り上がる!
しかし、上に跳び上がったタイミングは完璧だった!
! あいつ、本で岩を受け止めたのか!
岩に押され、ぴょーんと、金の少女が舞う。
次のレンカの攻撃に、オレは驚いた。
「────"ファイヤアロウ"!!」
──シュバッッ!! シュバシュバッッ!!
細かな、炎の矢じり!!
な……大きな魔法をバカスカ撃つはずの、レンカが……!
「わわっ……」
このたくさんの炎の矢には、さすがの黄金も驚いたようだ。
ブンッ! と本を振り子にして、わざと落下速度を早めて避けやがった!
惜しい! 今のはもう少しで当たっていた!
あ……つい、自分の生徒のレンカを応援してしまうな……。
「────"ストーンクイック"!!」
! また、土魔法だ!!
あれは確か、石つぶてをぶつける魔法のはずだ……。
!? 石がそれぞれ、炎をまとっている!?
「うわっ! はっ、とっ!」
おお……! アンティ・キティラが、おされている!
いいぞ……! レンカ、凄いじゃないか!
おまえ、こんな細やかなコントロールも、できたんじゃないか……!
……──ビリビリッ、ビリビリィィ──!!!
興奮して、思わず体から、雷魔法がでるっ!!
レンカの戦い方が、明らかに変わった!
アンティ・キティラは避ける一方だ!
これならいける! 勝てるぞ!
「れ、レンカのやつも、すげぇな……!」
「え、あれって、土属性との複合魔法じゃない!?」
「いつも、ドッカンドッカン魔法撃ってるイメージしかないんだけど……」
「おわっ、すげぇすげぇ! 小さな炎の矢で、確実に攻めてってるぞ!?」
……───シュバシュバシュバッッ!!
「あわわっ、あわわわっ!!」
「ふ……まだまだこんなもんではありませんわよ!!」
さらに増える、石の核を持った、炎の矢じり。
凄い……あの問題児が、なぜこんな技を……。
不思議に思っていると、スネイオ先生が、
周りの生徒にも聞こえるように、
少し通る声で、語りはじめた。
「──ふふ、気づき始めたようじゃな!」
「……す、スネイオ先生? これはいったい?」
「ふむ、ジャイアー先生。あなたは一度、レンカをこっぴどく叱った事がありましたな?」
「! 聞いてらっしゃったのですか……」
「あれだけ大声でしたらな。だいたいその時期からですよ。ミス・サラマンドが、土魔法の特訓をはじめたのは」
「な、なんですって!?」
「来る日も来る日も、魔力がつきるまで、一人で隠れて練習を重ねておりましたよ。まぁ、私の研究室の真下でやっておったので、丸見えでしたがな?」
「なんてこった……そんな、練習を……」
「じゃが、今までは練習しながらも、"強い魔法を一発当てれば、勝負はつくのでは"という思いを拭いきれなかったのじゃろう……だが、ミス・キティラとの戦いの中で、痛烈に実感したはずじゃ。当たらない魔法に、価値などない、と」
「! スネイオ先生……あなた、それを教えるために……!」
「ふふ、しかし、ミス・サラマンドの技量も、大したものだ! あの膨大な魔力量と、魔法の卓越さは、決して、才能だけではないと言うことですな」
「……そう、だったのか……」
オレは、知らなかった。
レンカよ。
お前はお前で、一生懸命、努力していたんだな。
土魔法と、炎魔法を組み合わせて、
あんな見事なコントロールを発揮するとは。
オレは、担任失格かもしれん。
何もわかっていないのは、オレのほうだったな……。
「なぁ……レンカって、すげぇやつなんだな」
「あ、ああ……てっきり、魔法の強さにふんぞり返ってるやつだと思ってたよ」
「あの魔力の量は、私たちと同じで、ずっと毎日、ギリギリまで魔力を使ってたからなのね……」
スネイオ先生の話を聞いていた生徒達の意識が、変わりはじめてきている。
レンカ・サラマンドが、実は、影で努力していたと、気づいたのだ。
いや、今、目の前で披露されている魔法を見れば、皆、多かれ少なかれ、わかるだろう。
あれが、どれだけ練習を重ねた上に、できる複合魔法か、ということを。
「……はぁ、はぁ」
「ふぅ〜〜〜〜……」
いったん、二人の動きが止まる。
うむぅ……お互い一歩も譲らない試合だが、決め手がないな。
レンカは、魔法を小分けにコントロールしはじめたが、
最初にバカスカ撃ちすぎた。
あれはもうすぐ、魔力切れになるやもしれん。
アンティ・キティラは、あの本以外に、攻撃手段がない。
どうやら、身体強化のスキル持ちのようだが、
属性魔法は、全く使えないようだな。
ここからは、持久戦だろうか……。
「はぁ、はぁ……まさか、今日、試すことになるとはね……」
「……──え?」
? なんだ?
レンカが、炎の魔石の杖を、縦にかざす。
「────"クリエイト"」
!? "クリエイト"!!
まさか、あいつ──……。
……──ボコっ、ボコボコ!!
……──ギシッ、ギシギシ……!!
「! ゴーレムだっ!!」
「す、すげぇ、俺、初めて見たよ……!」
「みてっ! 3体目が出るわよ!」
レンカのいる地面から、3体の人形の土人形が、立ち上がる。
あいつ、あんな土魔法まで……!
「……──"ファイヤ"」
……────ぼぉぉおおおお!!!
「……──!!」
3体のゴーレムが、炎に、包まれた……!
あいつ、いったい何を……?
「! なんと、ミス・サラマンドは、"炎の騎士"を作りだしたか!」
「!? そ、それはどういう……!?」
スネイオ先生に説明を促したが、その必要はなかった。
レンカの前には、3人の、炎をまとったゴーレムが、姫を守るように、立ち上がっていた。
手には、同じく燃える剣を持っている!!
あれは、ファイヤーボールを剣状に固めたものだ!
当たれば、相当の衝撃だろう……!
「す、ご……」
「……シンプルに、"赤の戦士"、と、呼んでいますわ。戦いには、あなたに使うのが初めてですわよ」
「……いいな……」
「! ……まったく、魔法を羨ましがる前に、身の安全をお考えなさい! 私は、手を抜きませんわよ?」
「う……」
「……この杖の宝石は、火の魔石の結晶体です。あなたの家の台所にも、あるでしょう? あれが高純度で結晶化した杖を、わが火の一族、サラマンド家は、ずっと継承していますのよ。私がこの杖を持ち、どれだけの鍛錬を積んだか、お分かりになる?」
「……!」
「もはや、この杖のコレは、"炎の宝石"と呼んでよいモノですわ……! サラマンドの名にかけて、負けませんわよ!」
「! ……それ、"宝石"なのか……!」
アンティ・キティラに、ジリジリとよっていく、レンカの"赤の戦士"。
あんな魔法のコントロールを、3体同時にできるとは!
これは、勝負、あったか?
3人の騎士につめよられる、アンティ・キティラ。
しかし、なんだ? 本を、開いている?
「 」
な、なんだ? なにか唱えているぞ……?
隣のスネイオ先生に、意見を聞いてみたい。
「スネイオ先生……アンティ・キティラは、何をしているんですかね……!?」
スネイオ先生の顔を見ると……、"驚愕"、していた。
「す、スネイオ先生!? 何を、驚いているのです?」
「ま……まさか……! あの、"本"は……!?」
ほ、"本"──……?
そして、それは、おこった。
……────どおぉぉおぉぁおおおおおおおおんんんん!!!
「────────なぁぁあああ!!!!??」
「「「「「わぁああああああ!!!」」」」」
「「「「「きゃああああああ!!!」」」」」
な、なんだッッ!!?
なにが、起こった!!??
すごい、砂煙だっ!!
なにかが、爆発したのか?
レンカの魔法が、炸裂したのだろうか。
!? いや、あそこにレンカは、3人の赤い騎士と共にいる!
では、アンティ・キティラが────!!?
「スネイオ先生!! アンティ・キティラは、何をしたのですかっ!!?」
魔法学の専門教師であるスネイオ先生なら、
なにか、わかるかもしれない!
オレは、ビリビリするのを我慢し、答えを待った。
砂煙は、まだ、晴れない。
……? 何やら、ごにょごにょとしゃべる声が聞こえるような?
アンティ・キティラは、あの砂煙の中にいるのか?
「しん、じられん……」
「! スネイオ先生!?」
と、どうしたと言うのだ!?
いったい、何が……。
「すごいぞ、ジャイアー先生よ……」
「な、何がですかっ!?」
「ミス・キティラがな──……」
「は、はい!」
「……────"召喚"、しおったぞ──……」
「──え?」
────びゅううううううう!
一陣の風が、吹いた。
砂煙が、晴れる────。
「 」
「 」
「 」←オレ
「「「「「「 」」」」」」
「ふふ、ふふふ、ふ、ふ、ふ、ふっふっふっ、ふぅぅ……」
黄金の少女の、笑い声が、きこえる────。
そして、そいつは、あらわれたのだ────。
『にょきっとぉぉぉ、お?』
「わっ、わわ、わたしも、ほんきをだすときがきたようねっ……」
「ウソだろ……」
でっかい、うさぎの王様みたいなのが、
そこにいた。
おっき(*´ω`*)かわいい。










