白い弾丸
ぼくは、それがわかった時、くずれおちた。
そんな、そんなのって、ない。
なぜだ、なぜなんだ……。
「あれっ? アンティさんなら、ご実家に帰られましたよ?」
キッティからそれを聞いた時、
ぼくのじかんは、止まった。
足からは、チカラがぬけ、
ぺたんと、ゆかに転げ、
両方の手を、コロンとのばした。
このぼくが、
音が聞こえなくなるほどの、
衝撃、だった……。
「あらぁ〜〜……だいじょぶですか? おーおー、かわいそうに、アンティさんに置いてかれたの、そぉーんなに、しょっくでちたかぁ〜〜! よしよしぃ〜〜……ふふ、ぬいぐるみみたいですねぇ〜〜」
……ぐっったり。
キッティに抱き抱えられて、
身体中、こねくりまわされる。
いつもなら、ささやかに抵抗する所だけど、
今のぼくは、この涙ちょちょぎれから、
立ち直れそうにない……。
なぜなんだ、神さま……。
「……おいキッティ、お前、なにを遊んでいるんだ……」
「……ちょ、失礼ですね。見てください! 私はいま、悲しみにくれた彼を、慰めているんです!」
「……ぅ、おい、そいつどうしたんだ。涙目で、ピクリとも動かんではないか」
「ほら、アンティさんに2回目の放置くらって」
「ぉ、おいキッティ、やめろ。見ろ、滝のような涙だ」
「あ……。お〜〜! よちよちよちぃ〜〜……」
キッティ……。
きみとは長い付き合いだけど、
今日だけは、そっとしておいて欲しかった……。
かなり、こねくり回されているけど、
今のぼくは、何も感じやしない。
る────────……。
「あいつ今回、けっこう慌ててたからなぁ……普通に忘れてったんだろ」
……ヒゲイドさん、それ、けっこう、心にきつい。
「というか、いっかい連れてってるってことは、カーディフの街の門番さんは、パスしてるんですよねぇ?」
「おい……街の名前を出すな……あいつ隠してるていなんだから……」
「おっと、いけね☆」
いけね☆ じゃないよキッティ……。
きみ、教会のアマロンさんの伝言、
すっかり忘れてるだろう……。
ぼくが言っといたよ……。
あああ、せっかく、
けっこう言葉が通じるように、なったのになぁ……。
ちょうろう……ぼくはもう、疲れたよ……。
「……ほんとにぐったりしてるな。だいじょうぶか……」
「なんですかギルマス。この子の肩ばっか持って」
「今そいつの肩を持っているのはお前だキッティ。ぬいぐるみ扱いせずに、ちゃんと慰めてやらぬか……」
「あっ、見られてましたか! 心外ですねぇ。私はいつもこの子を、心の友としてですねぇ……」
キッティは、たまにぼくをお持ち帰りするけど、
お風呂でぼくを身体洗うタオルがわりにするのは、
本当にやめてほしい。
本っ当に、やめてほしい……。
大事なことなので、2回、念じました……。
いや、手袋を洗ってくれるのは、
ありがたいんだけどね……。
「……ほれ、お前もそんなに落ち込むんじゃない。本当にぬいぐるみのようではないか……」
「ギルド公認グッズ化します?」
「お前は俺とアマロンを、戦争状態にさせたいのか……」
「へ? なんでです?」
「ギルドで商品化して、独占なんかしてみろ……あんの神官……」
「……今は本物のぬいぐるみがあるのでよしとしましょう」
「本物はぬいぐるみではない……」
いや、ぼくはもう、ぬいぐるみでいいよ……。
あの子に、忘れられてった、ぬいぐるみさ……?
ははは……。
あ、いま、ちょうろうの顔が見えたような……?
そうか、これまでなんだね……。
長生きしたな……。
みんな、いま、いくよ……。
『 ──── 』
あれ? ちょう、ろう……?
『 何か、一つの事を、やり遂げて…… 』
───え?
『 ──生きろ!! 』
────────ばちぃいん!!!
目を、かっぴらいて、
ぼくの心に、
黄金の炎が、ついた気がした。
……────バッっ!!!
────ぴょ────────ん!!!
「おっ」
「わ、ちょ……!」
目指すは、白い大きな塔だ。
あの、黄金の女の子が住んでいる、
この街で、一番高い塔。
のぼる、
のぼる、
のぼる。
ここまできた、旅にくらべれば、
とっても、かんたんだ。
外に出て、
屋根の上にのぼる。
方向が、よくわからない。
でも、あきらめるもんか。
ぼくは、ぼくのチカラで……────やるさ!!
────ぼくに聞こえない声なんて、ないッ。
「 ────"ききみみ"────!! 」
(((((((( ∩ ∩ ))))))))
『 』
『 』
『 』
『やだ〜〜バターきらしてたわ〜〜!』
『おい、それどこで買ったんだよ』
『きみのことが好きだ』
『嬉しいような悲しいような』
『いっしょに、あそぼ?』
『ふははは、きた! きたぞ、これこそが……』
『ちゃんとピーマンも食べなさい!』
『クルルカンがいるって、ほんとかなァ〜〜』
『なぁ……パートリッジの、きいたか……?』
『──ガルンガルゥ──ン!』
『うぅ……知らない間に大きくなって……』
『ごめんあそばせ? 私に似合う服……ぎゃああああ!』
『は〜〜い、おまたせしましたぁ〜〜!』
『今日もドンドン炭鉱いくかァ』
『あ、ゴーレムすか、一緒しますよ』
『さらさらのシーツじゃなきゃイヤ』
『そんなハニー……』
『……でよ、この街門を通ったんだぜ!?』
『うわぁ〜〜! 見たかったァ! ナマのクルルカン!』
『仮面つけてるけど、かなりの美人さんそうですよね?』
『お前、あの子の目、見たことあるか?』
『金色なんですって?』
『ああ。吸い込まれそうだぜ?』
────見つけた!!
────あっちだ!!!
────まちがいない!!!
ぼくはもう、迷わないぞ。
このままの足のチカラじゃ、ダメだ。
でも、ぼくには、もうひとつのチカラがある。
さいしょは、まわりの全てを、
小さくすると、思ってた。
────ちがう。
これは、
──"ぼく自身を大きくする"チカラだ────!!!
『 ────"ちいささ"────!! 』
……──さぁ、いこう。
この空を超えて。
いまのぼくになら、
あの街まで、
ひとっ跳びさ。
……──ダダダダダタ。
ガランガランッ!!
「お、おい、ヒゲイドよォ!」
「あ、ゴリルさん、こんにちはです」
「む、なんだゴリル、慌てているな」
「いや、そりゃ慌てるだろうがよォ……」
「お前、今日はドンドン炭鉱にゴーレム狩りではなかったのか」
「それよりお前……いつの間に、"役たたずみ台"に、砲台なんて付けたんだよ……」
「「はぁ?」」
「いや、今よ……白い弾丸が、こぅ、西の方に、びゅばぁ───んッ!! ってだなぁ……」
「……お前、何を言っているんだ……?」
「娘さんができて、浮かれてんじゃなぁいですかぁ〜〜?」
「え、え……あっれェ〜〜???」
かくして。
勇者王は、
旅立った。
きみたちへ、プレゼントが、とんでったぞ
(; ・`д・´)+










