あるいみとらっぷ
フォレストウルフをまとめて倒せた。
それは、何だか不思議な事に感じた。
4年前、街が、とても恐怖した魔物と同じ種を、私が倒した。
変な、感じだ。
5体同時突撃には、ヒヤッとしたけど。
でも、正直に言ってしまうと、バーグベアにくらべたら、とても、弱い。とてもだ。
この間まで、魔無しだった私の、常識が崩れて、再編成されていく。
うん。
歯車法は、多分、かなりやばいスキルだ。
こんな簡単に、誰でもフォレストウルフを倒せたら、あの時、街は大騒ぎにはなっていない。
何かが、普通じゃないんだ。
工夫しだいで、色々な事ができるだろう。
私は、確かに力が欲しかった。
ずっと、馬鹿にされてきた。
でも、今、戸惑いが大きい。
この力で、手に入れた力で。
どうするの?
何をするの?
そこが、空っぽだ。
私はそれを、見つけにいきたいのだ。
この力を使って、有名になるかな?
なるかもしれない。
馬鹿にした友達を、見返せる?
できるかもしれない。
また、バーグベアを倒す?
お金になるかも。
でも、それだけだ。
その先が、見えない。
ただそれだけで、終わってしまう。
そんなの、嫌だな。
くそ舐めた事を考える。
私だけができる、生き方ってあるのかな。
別にもう、歯車娘と馬鹿にされてもいい。
お金は、頑張って働けば、その分は集まるんだ。
魔物を倒すだけの冒険者に、なりたいわけじゃない。
私が、私を支えてくれた人達に、誇れる生き方は何だろう。
それを、見つけるため、街を飛び出した。
それを見つけたい。
私はまだ、何者にもなっていない。
『────ここです。』
「!」
あ……。
変な考え事して、ぼーっと、歩いてた気がする。
え? ここ?
「……ここなの?」
『────正確には、この下方部にベクトル指数。』
「した?」
木が避けて、落ち葉の溜まり場みたいになっている場所だ。
……下って何よ。埋めるとか?
もしくは、何か埋まってる?
「……どうしようか」
『────衝撃行動の提案。』
「断罪執行を打つとか!? ……物騒ね。それに、私が動けなくなる可能性があるじゃない」
『────正。可能性否定理論:無。』
「もぅ……。よし、本人にきくか! クラウン! 仮面だして!」
『────レディ。』
目の前に、歯車の輪。仮面が出てくる。
最初に見たのが夜だったのと、机カリカリ事件でかなり恐怖を感じたが、何だか……今はもう麻痺してしまった。
両手でつかみ、問いかける。
「ほら、連れてきてあげたわよ。ここでいいの?」
なら、置いて帰っていい?
『────アイテム名:"呪いの仮面"より同期申請を受け付けました。』
「何ですって?」
『────同期後の状態:不明。』
「な、何それ……」
『────────同期しますか?』
"同期"ってきくと、クラウンが時限石とアナライズカードを取り込んだ時を思い出すな……。
なんか取り返しがつかない事になりそうなんだけど……。
「うう〜ん……許可する。らちあかん」
『────レディ。』
きゅいいいいいいん……。
はっ!
でも呪いのアイテムと同期とか!
はやまったか!
「ちょ、ちょま」
『────同期完了しました。』
「仕事はやぁ……」
うっ、うっ。
呪い強化されませんように。
すぅ────……
「! ちょ! クラウン! 近づいてる! 仮面ちかづいてきてる!」
『────確認しています。』
いや止めんかい! 呪いの根源やないの!
────カポッ!
あ……かぶってもたで……。
「長生きできるかな……ん? ……これって!」
仮面越しに、さっきの落ち葉の溜まり場を見る。
さっきまで見えなかったものが見える。
「────ま、魔法陣?」
落ち葉の上に、光の紋様が、浮かび上がっていた。
「すごい……綺麗ね。クラウン、見える?」
『────肯。スキル同期も行われています。』
「これ、何の為の魔法陣なんだろう」
明らかに意味のある形の魔陣。
大きい。
綺麗な正円。
直径10メルはあるわね。
紋様の光は、黄緑色……かな?
場所的に風ではないか……土系統?
学校の授業は座学だけは頑張ってたからね……予習もしてたし。
土系統魔法陣。
うっわ、何これ、複雑すぎる。
でも、大まかな紋様の意味や、起動の仕方は形でわかる。
「"封印"で、"中央"だ……」
この曲線紋様は、魔物を封じてるんじゃない。
多分、場所を隠してる。
真ん中に、起動術式があるはず。
「ここだ……」
無意識に、手でふれる。
少し、仮面が熱を持った気がした。
それは、突然起こった。
それは、もう、突然に。
フッ……
「ひゃ?」
私の下に、直径10メルの穴が空いた。
星の重力って、すごいんだよ?
┐
び
ゃ
あ
あ
あ
あ
あ
あ
あ
あ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
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そりゃおちますよぅ……