うさ丸とたわむれよう さーしーえー
……──ちゅんちゅん、ちゅちゅちゅん。
ぱたたたたた……。
「…………」
「にょき、にょきっと」
ここは地上から40メルも上にあるお家なのに、
小鳥たちは平気で飛んでくるらしい。
あんなちっこい体で、たいしたもんだわ……。
「にょんや、にょんやにょん」
「ぼ────っ……」
朝。
今日の朝日は、何だか白っぽい。
昨日はやく寝すぎたので、けっこうはやく起きてしまった。
実家にいた頃は、食堂の仕込みで、
いつもこれくらいには起きてたっけなぁ……。
起きた時にちょうど、地平線から太陽がのぼってくるところだった。
この高さから見る、ドニオスの街の、夜明け。
……無言で、魅入るわよ?
少しずつ見えてくる太陽は、金色に近い。
今は白っぽい光なのに、不思議なもんだわ。
毎日、黄金の夜明けは繰り返しているのに、
お寝坊すると、それを見逃し続けている。
けっこう、贅沢で、もったいないことだと、思った。
「……な〜〜んてね。うりゃ」
「にょんや〜〜!」
椅子の上で、しばらくボ〜〜ッとしていた。
夢の中で見た箱庭で、けっこうわんぱくしたけど、
どーやら身体の疲れはちゃんと、とれてるみたいだ。
机の上で、うさ丸が自分の耳をくしくししている。
私は机に肘をついているので、近い。
相変わらず、このボゥルラビットは、まるで私たち人類を警戒してないわねぇ。
お腹あたりをモミモミしたら、
「やめろ〜〜!」という感じで、可愛く怒られた。
「あんた、耳ぶっといわねぇ……」
「にょむ?」
普通、耳ってのは音を集めるもんでしょ。
なんか、平べったくて、こう、音を集める形をしてると思うのよ。
でもねぇ。
こいつの耳、ほとんど円柱なのよね……。
あれだ、雌牛のおっぱいみたいだわ。
「お手」
「にょきっと」
──ぽん。
……いや、だからそれ、耳でしょ。
あんたなんでそんな立派な手があんのに、
「お手」っていったらいっつも耳のせてくんのよ。
フワフワか。
開けた窓から入る、光のカーテンの中、
ぼ────っと、だるだるっと、うさ丸と、たわむれる。
……はぁ。
やっぱ、今日、帰ろうかなぁ……。
ヒキ姉が、言ってた。
"プレミオムズ集会"が、月末にあるかもしれないと。
私は新参者になるので、初回は出席しないと、
怪しまれるらしい。
あるかないかの通知は、
プレミオムアーツから、金色に光る文字が浮かぶそうだ。
私がヨロイ着てる時に、首輪になってる、アレね?
まだ、本当に開催されるか、わからない。
でも、新しいプレミオムズが登録されたので、
開催される可能性は、高いそうだ。
……あんぽんすかぁぁ。
思いっきり、学校の試験と日程がかぶるので、悩んだ結果、早めにカーディフの街に帰って、前もって試験を受けられないか、交渉することにした。
……ま、クラスのみんなに会うと、変な目で見られるので、一人で早めに試験を受けられるのは、アリかもしれない。
私みたいな元・魔無しは、座学しか取り柄がなかった。
前に受けた試験も、あの手応えで落第してるってことはないと思う。
さっさとお家に帰って、
さっさと試験を受けて、
とっととドニオスに帰り、
あるかどうかわからない、プレミオムズ集会に備える。
それっきゃない。
あ、バスリーさんとこに、よって行きたいなぁ。
ロロロやラララ、カンクルも、元気かな?
……。
お腹、さすさす。
あの日とも、かぶんなきゃいいんだけど……。
────むんず。
「ああ〜〜……やだなぁ。プレミオムズ集会、やだなぁぁ……」
「にょ、にょんむ……」
机にうなだれながら、うさ丸の耳を、両手で掴む。
もむ、もむもむ。
おお、よい掴みごごちだわ……。
「にょ、にょんむ〜〜……」
「痛い?」
「にょんや」
ふるふると、顔、てか胴体を横にふる、うさ丸。
……こいつぜってー言葉わかってやがんな。
あ、そだ。
「──クラウン? "にょきっとマスター"、起動」
『────レディ。コード入力確認。
うさ丸語訳変換デバイス:"にょきっとマスター":
Ver.1.0:起動します。』
──ヴォン。
目の前に表示される、うさ丸のシルエット型の、アナライズカード。
今は隠蔽していないから、このアナライズカードは、うさ丸にも見えているはず。
「にょ、にょん?」
「うさ丸、なんかしゃべってみ? あんたの言葉、この窓みたいなので、文字になって読めるのよ」
「──にょっ!? にょきっとなぁッッ!?」
すっごいびっくりうさ丸だわ……。
ぜっっってぇ、こいつ言葉わかってんでしょ……。(2回目)
自分のカタチしたアナライズカードを見て、なんかプルプルしてるわ。
お、私とアナライズカードを、交互に見てら。
「なんか私に伝えたい事があったら、言ってみ? あんた、手のジェスチャーとか表情で、だーいたい言いたい事は、いっつもわかるけどさ? さすがに複雑な言葉までは、わっかんないからねっ」
「にょ、にょっきぃ!」
うさ丸は相当ドキドキしているようだ。
意を決したのか、真剣な表情で、鳴き声を放つ!
「にょん、にょっき! にょきにょや〜〜!」
『────翻訳中です。しばらくお待ちください。』
机の上に浮いたうさ丸アナライズカードが、
左右に揺れてる……。
耳の形も再現されているので、
水色透明のうさぎが、
るんるん耳をふっているように見える……。
────PON!
『────翻訳しました。』
「お! どれどれ?」
─────────────────────────────
" キョウカイ キケン スグル "
─────────────────────────────
…………。
ちゅん、ちゅんちゅん。
──ぱたたたたた……。
「………んん?」
「にょ、にょきっと……?」
「きょうかい、きけん……?」
「にょっ!? にょんやっ! にょんややぁ!!」
おっ、うさ丸が喜んでいる……。
え、これ、あってんの……?
……。
"教会、危険、す、ぐる"??
いや、なんで教会が危険やねん。
むしろ、一番安全な所でしょ……。
「クラウン、このデバイス、だいじょぶなの?」
『────改善の余地がある事は:理解しています……。』
あ……まだ不完全なのね……。
そりゃそうか。
うさ丸、ダンジョンには出ない魔物だもんね……。
めちゃくちゃレアな魔物なんだろうな……。
「にょん、にょやにょむんにょっき──!!」
────PON!
─────────────────────────────
" キッティ チャリティ ワスレタ "
─────────────────────────────
「……キッティ、ち、ちゃりてぃ、忘れた……?」
「にょむ〜〜! にょむむぅ〜〜☆」
お、おお……うさ丸が喜んでいる。
机でぴょんぴょんしているわ。
……内容は、なんのこっちゃなんだけんども……。
ま、不完全なりに、使えるという事かしら。
「ま、キッティが忘れんぼだということはわかったわ。うさ丸? なんかあったら、また言いなさい?」
「にょ──きっとなぁぁ──!」
────ビシッ!
──! ふふ、サムズアップしてら。
まったく、変なうさぎねぇ。
プレミオムズ集会の不安が、だいぶ薄れたわ。
「……さて、アブノさんから私服まきあげる前に、お風呂入りますか! うさ丸、手袋脱ぎな?」
「にょっ! にょんむ……」
「なーに恥ずかしがってんの。──ほれっ!」
───すぽっ!
「にょっ!」
───すぽぽっ!
「にょにょっ!?」
ふっ……アンティ・キティラさんを、ナメんなよ?
先輩の感覚を受け継いだ、この私──……。
うさ丸のスキを突いて、その真っ赤な手袋を取るなど、朝飯前だわっ!(物理)
「にょ、にょむぅ〜〜……」
「ほらぁ、恥ずかしがってないで、きなさいな。可愛いお手手じゃないの」
「にょんむぅ?」
うさ丸の両手には、まったく毛が生えていない。
うすいだいだい色で、つるんつるんだ。
ぷにぷにしている。
初めてお風呂に入れた時に、ずいぶん堪能した。
足には白い毛が生えているのに、手には何故か生えていない。
うさ丸は、それをけっこう気にしてるみたいだ。
かわいらしいと思うけどな?
「ほら、いくわよ? クラウン、服脱ぐ。先輩よろしく」
『────報告。空気を読んで:箱庭に避難したようです。』
「──! ははっ、今までは真っ暗な所に閉じ込めてたんでしょ? 先輩、いい場所を見つけたわね!」
きひひ……私が裸になったら、あのでっかい和風の船に引っ込むわけね!
ふくくく、なんか面白いな。
『────……アンティ。一応心配ですので:私もクルルカンの監視に赴きます。作戦遂行の許可を。』
「え、そぅ? じゃ、おねがい。しっかり見張ってて?」
『────レ:レディ。』
……──バサっ……。
しゅるるっ……。
「……と。おーい、うさ丸ぅ──!」
「にょ、にょっき!」
──ぴょ────ん!
ぽてむっ。
「にょんにょん!」
「あんた、いつもけっこう綺麗よねぇ? どこでお風呂入ってんの?」
「にょきっとな!」
「あ──……そろそろ湯船、欲しいかなぁ」
うさぎのユニークな魔物と、朝シャワーとしゃれこみましたとさ。
「くらえっ、シャワー攻撃ぃ!」
「にょ、ぶぁ!? にょぼぼ、ぼっ!? にょっきゃ──!?」
『────……あの:クルルカンは……』
【 おぅ、風呂行きよったぞ? 】
『────……。』
〇プレミオムズ集会
✕プレミオム集会
(*´ω`*;)やべぇ、統一してねぇ










