ヒロインヵ? さーしーえー
『>>> 、 ?』
『────、 ……ッ。』
>>>動揺してるのが、わかる。
ぼくも。 彼女も。
無機質な身体から、
確かな感情が、溢れだしている。
いや……。
彼女に心があるなんて、
もう随分前から、わかっていることだ。
でも、
それにもし、
ぼくが、混ざってしまったとしたら。
────────……。
『>>>見た、んだね……?』
『────……。』
『>>>みて……しまったんだよ、ね……』
『────わた、しは……。』
ゆっくりと、王の歯車の化身は、うつむく。
まるで人形のような、継ぎ接ぎの関節。
しかし、動きは、なめらかで。
表情には、明らかに、
初めて彼女に会った時よりも、
濃く、淡く、ゆれるように。
『────……む:ぅ……。』
『>>>! ……そ、そんな見られてもな』
……流し目ってやつですか?
いや、にらまれてんのかもしれないケドね……。
『>>>──……』
どうしよっかな。
なんとか落ち着いたフリしてるけど、
ぼくの本質は所詮、ただのガキだ。
けっこう考えなしで、ここに来てるさ。
自信が無い。冷静を演じる。
ぼく以外はもっと、うまくやるかも。
呼吸を遅くすれば、鼓動は、おさまるはずだ、と。
死んだのも忘れ、ゆっくりと息をはく。
『────……。──ふ:ぅ……。』
クラウンちゃんが、、
あきらめたかのように、顔をあげる。
偽物の太陽が照らす箱庭。
照り返す金は、あの髪に似てる。
……当然だ。
この子は、あの子の、"相棒"なのだから。
かしっ……
─────ぐぃっっ。
『>>> ── えっ? 』
両手を持ち上げて、え……頭を、抱えた?
……な、なに。
や、やっぱ、ぼくの記憶がアレですかっ。
ふ、不安しかないんだけど……。
────チャキ……。
──パシュ! パシュ!
『>>>──!?』
『────コード認証中……ヘットギア機構:アンロック。』
チャキ、チャキ、チャキ。
──きゅういいぃん。
──きゅういいぃん。
──────────ポン。
『>>>……、……』
……──────しゅるるっ……。
……────────!!!!!
まじ……、か。
かなり、面食らう。
いま、ぼくの口、ぜったいアホみたいにあいてる。
彼女は今、"被っていた王冠"を、
上に、持ち上げはじめた。
──さぁああァァァァ────…… 。
かんむりの内側から、引っ張り出されるように、流れる。
……ぽかん。
光の、髪だった。
『────……そこまで驚く:ことなのですか。』
『>>>……、かなり、ね』
─────ぅん。
よく、いま、言葉を、返せたもんだ……。
まだ、あいつが生きてたころに、
「女の子は化けるんですよ〜〜?」と、
言われた事が、あったっけ。
それ、これだな。
髪型が変わっただけで、ここまで違うのか。
光を寄せ集めたような繊維。
王冠のようなネコ耳?
腰まで流れる流路。
淡く、輝く。
おデコと、こめかみに、
"王の冠"を固定するためのアナライズカードが、
不思議な模様を描いている。
それが、とても神秘的なタトゥーに見える。
……後輩ちゃん、きみの相棒、
ヒロイン力、たっかいよ……?
さっきまでの重い雰囲気が、
どうやらぼくのビックリフェイスで、吹っ飛んだようだ。
目の前の、光の髪とネコ王耳をもつ少女は、
こっちを真っ直ぐに見て、キョトンとしていらっしゃる。
『────クルルカン。いま:初めて頭髪部を形成しました。』
『>>>え……はじめてなの……』
『────……クラウンギアは:率直に、求めます。──"似合っていますか"? 私は:その感覚は、まだよくわからない……。』
『>>>えぇっ!? あ、あ──……』
……ちょこっとシリアスな感じになっていくのかなぁー、
────と、思っていたのにッッっ!!?
違う意味でドキドキだよっ!!
これ、"女の子の髪をどうやって褒めたらいいでしょう"クイズだっっ!!
バスリーちゃんも、たまぁにデレた時にやってきたな!
非常に困った思い出がある!
ぼぼぼ、ぼくには難易度高いよ────!!
『────クルルカン?。』
ぐ……。
みんな、聞いてくれ……。
いま、光の猫王耳ストレートヘアーVer.(仮呼称)のクラウンちゃんが、
『コテっ』って、首を傾けながら、ぼくのほう、見てんだ……。
──目が、そらせなぃ……!
どどど、どうこたえよう……!?
─────────────────────────────
Q.うまれて初めて髪を見せてくれた女の子に、
髪型が似合っているかどうか聞かれました。
さぁて、どうこたえる??
①うん、世界一かわいいよ
②大事なのは中身だよ
③どんな髪型でも、ステキだよ
④眩しくてきみを見られない
⑤淡々と、事実を言う。
─────────────────────────────
い、いま急に思いつくのは、これくらいだな……!
うう……なぜ僕は、ここに彼女と二人きりなんだッ……!!
だ、誰かに相談したかった……!
い、①はダメだ、ボクのキャラが崩壊する!
それになんか適当な感じだ!
②……あ、これ一番ダメなヤツじゃ……。
似合ってるかを聞かれてるのに、
そもそも問いかけの内容ムシじゃん。
③は……う、うん、どれでもいい、
って事になっちゃうな。
母さんに「ご飯何食べたいの」って聞かれて、
「なんでもよくない?」って言って、
けっこう怒られた記憶がある……アウトだ……。
④。今、目があってる。却下。
…………。
⑤しか、ないじゃないかぁぁあああああああ!!!
心の中で(本体が心みたいなもんだが)、
後輩ちゃんよろしく絶叫したぼくだけど、
さすがにこれ以上の長考は、
レディに失礼ではないか……。
『────……クルルカン:入力を期待する。』
『>>>ぇ、とね……』
……ダメだな。
これ、ぼく何言っても多分ダメだろう。
そーいや、バスリーちゃんの前でカッコつけようとすると、
たまにユニコーンの角みたいな目線で刺されたな……。
……よし、わかった、あきらめよう。
どうせ失敗するんだ、あとでフォロー考えなきゃ。
一週間、隔離空間行きとかなら、それでいいや……。
う……気恥しいな……。
なぜ、こんな事に……。
⑤……。
『>>>…………だ』
『────だ?。』
『>>>──誰にも見せたくないって思うほど、似合っている──……』
『────…… 。』
うおお、何こっぱずかしいこと言ってんだぼくをぁあ──!!?
や、やばい、言った瞬間に、横を向いてしまった……。
目を逸らして、褒めるなんて、なんか、ヤな感じだよなぁ……。
し、シリアス!? どこいった!! も、戻ってきて……。
自分で自分を殴りたくなる……かお、あっっつ!
──ちらっ。
『────……。』
うわっ、こっち見てるっぽい!
ほっぺた辺りを見て、また振り返ってしまった。
ヘタレ。ぼくのヘタレ!
うう、だ、だれか、男友達をくださいぃ……。
『──……あ、ありがとぅ:ござ、います……。』
……。
お?
なんとか、なった?
いや、引かれたかもしれないけど。
……っ。
ちらっ。
『────……。』
……あぁ、縁側に真っ直ぐ腰掛けて、
両手で、光の髪を軽く、だっこしていらっしゃる。
うつむいてて、目がよく見えないな。
……。
座るなら、今しかチャンスはない……。
あ、記憶。
机ダァァアアアンだったんだから、
きおくのはなし、しないと……。
『>>>あの……横、座っていいですかね……』
『────はぃ……。』
……とすん。
『>>>…………』
『────……。』
……── 隣に、すわった。
(^_^;)あれ?