はぐるまどらいぶ。

はこにわもぐもぐ さーしーえー

　むにゃ………むぬゅ……。

　うさ、うさ丸、どこぉ。

　むえ、むぇ……、。

　くしくし。

(【　かか。きれぇ〜いに、寝ぼけとんなぁ！　】)

(「>>>はは……夢の中でも、大立ち回りでしたからね」)

　む……？

　だぁれ……？

　────ぱちくり。

『>>>──あ、起きた？　おはよう。まぁ、きみは現実では、まだ、"お休み中"なんだけどねぇー』

『────もぐもぐ：おふぁよふございまふ。』

　──……。

　茶色い木の机……。

　く、クラウンが、なんか食ってる……。

「……夢ね、夢だわ」

『>>>間違いじゃないのが、なんともねぇー』

『────ごっくん。味覚合成データ："黄(き)な粉(こ)餅(もち)"を取得。パーソナル評価："Ｂ＋"に分類されます。』

『>>>一気に食いすぎだからね？　クラウンちゃん……よく噛んでね。お茶いる？』

『────クラウンギアは：感謝を表明。』

『>>>それ、"ありがとう"でよくないかぃ？』

　てぽぽぽぽぽ……。

　うわぁ……。

　クラウンの持ってる"湯呑み"に、

　"急須(きゅうす)"でお茶を注ぐ先輩、って……。

　……んだこれ。

「クラウン……いくら夢でも、お腹こわすわよ……？」

『────謎。質問の意図が不明。』

　……なんでやねん。

　あんた私のスキル。

　お茶とか飲んで、だいじょぶなの……？

　ずずず──。

「……おそろしい夢ね」

【　──その割には気持ちよさそぉに、ヒトの肩で寝惚(ねぼ)けてくれとったけんどなぁ？　】

「──！？」

　頭のすぐ左上から、女の人の声がする。

　特徴のある訛りの、嬉々とした含みのある声。

　どうやら私は、誰かの肩にもたれかかって寝ていたらしい。

　え……ごめんっ、誰だろ……。

　……────ぇ。

【　──おぅ、安嬢(あんじょう)　】

「────ッッ！？」

　……！？

　え、え、え……！？

「…………」

　ええぇぇええ─────！！！？？

『>>>ぅん。もぐもぐ……うわ、うまぁぁ！　また、モノが食えるとは、思ってなかったなァ……！』

【　おぅ、なんじゃい童(わっぱ)。しみじみと嬉しそうにしようてからに　】

『>>>いや！　童(わっぱ)ってのは、まぁそうですが、だいたい200年ぶりですからね！？　なにか食べたの！　あ、レエンの"アレ"も含めたら、せ、1200年ぶりか？　うわぁ……こんにちは食べ物……』

【　く、かっかかっか！　きなこ(・・・)に挨拶しよったぞ、この童(わっぱ)！　──かっかかっか、けらけらけら────！　　】

　──しゃんら、しゃんらぁ──……！

　ああ、あ、

　とッ、となりで、しゃべってるわ！

　黒い、まとめあげられた髪──！

　金の瞳と、おデコの角──！

　黒地に、金の装飾の着物──！

　"しゃんらしゃんら"と鳴り響く、金の簪(かんざし)──！

　手の黄金の爪に持っている長い"キセル"が、

　超、似合ってるぅぅう──！！！

　わわ、わ、た、し……。

　サササ……、の、

　かた、かたかた、肩に……！

『────クラウンギアより：ヨトギサキに、次弾の補充を申請。』

【　ん。台所ぁ、あっちじゃ。大姉に言え。まったく、"食(く)らわず"の冠(かんむり)が、聞いて呆れよるな　】

『────その呼称を当機に使用するのは：あなただけです。ミッション："黄(き)な粉(こ)餅を取得せよ"が：発生しました。』

『>>>同僚がスイーツにハマった。ぼくの分も頼む』

『────致し方ありません。報酬として30パセルテルジ：いただきます。』

『>>>な！？　さ、３割だ、と……！？　きみってけっこうツラのかわ厚いよね……ふとるよ？』

『────……４割です。』

　……すっく。

　すたすたすた───……。

「────、──。」

＜　──！　〜〜♪　＞

{{　……、……　}}

【　……やれやれ、ここも、えらい賑おこぅなったもんよのぅ。すぅ───、ふぅ────……　】

「（ぷるぷる、ぷるぷる）」

【　ふぅ──。……ん？　なんじゃ安嬢(あんじょう)。お。キセルか？　キセル、いやか？　嫌ならやめるえ？　】

「ふるふるふる……」

【　お、ええのんか。あ、おまんは大人んなっても吸うなよ？　俺っちはホレ、鬼やから──……　】

「さ、さ……」

【　──あ？　】

「さ、サキぃがぁああ居るぅぅぅぅううう────！！！」

【　ちょ！？　のわぁああ──────！！？　】

　がばぁぁぁあ────！！

　だきぃぃぃい─────！！

「わ──い！！　サキだ、サキだぁっ！　本物だぁっ！！」

【　──、お、そ、そりゃ本物やわぃな……こんな角の生えた女、そうそうおるかぃ……　】

「わ──い！！！」

【　ちょ、お、こら、ふるな、ふるな、ゆれる、あんじょう、これ、こりゃ、あいや……　】

『>>>ははは……この、"親せきが久しぶりに集まった、おばあちゃん家(ち)"、状態よ……。畳だし、和風だし、縁側あるしなぁ』

『──山火事ぽかぽか、いい陽気ニャ。ほれ：きなこ餅！　いっこよこすニャ！。』

『>>>王冠勢が、容赦がない……』

　わーい！

　わーい！！

　わぁーい！！！

　サキに、あえたぁ────！！！

「えへへへ……」

【これぇ、ええ歳して……ふ、ふん】

　いいも〜〜ん！

　今は甘えるも〜〜ん！

＜　……あんら〜〜、モテモテやねぇ〜〜"花(はな)"ぁ？　＞

{{　は、はなしてくださいぃぃぃ……　}}

『────ミッション：コンプリート。』

「──……え？」

【　お……"茄子(なすび)"も来よったか　】

「え！？　イニィさん！？」

　サキに会えて、めちゃめちゃ嬉しい！

　と、思ってたら、もぐもぐクラウンと、

　イニィさんと……？　誰だこの人！！

　すとん、と、前に座る。

　クラウンは、先輩の隣に戻った。

＜　ごきげん、よろしおすぅ〜〜♪　＞

{{　……ぴ、ピエロちゃん……　}}

　わぁ！

　イニィさんが、着物だ……！　あら、かわゆい。

　で、でも、なんか着崩れてんな……。

　綺麗な、白い髪の女の人に、抱き抱えられ、

　あれ、一瞬、首根っこ掴まれてたような……。

　────しゃんらしゃんらぁ──……！

　──！

　この、髪も着物も白い女の人！

　サキと、同じ金の簪(かんざし)をしてる──？

「あ、の……サキ？　こ、この綺麗な人、だれ……？」

【　──"大姉(だいねぇ)"。俺っちの姉貴やわいの】

「えっ！？　サキ、お姉さんいたの！？」

＜　ふふふ〜〜♪　＞　

{{　は、はなしてぇ〜〜　}}

　……あ、悪魔を手玉に取っているようにみえるんだけど。

　で、でも、サキのお姉さんなら、挨拶しないわけにはいかないわ！

「あ、あの、はじめまして、ダイネエさん……。私、アンティ・キティラです……」

＜　……妹、萌えぇ〜〜！　＞

{{　は、はなせぇぇぇぇぇ……！　}}

　バタバタぁ────！

　──がっ、ちり☆

　あ、イニィさん、抱きしめられた……。

「ねぇ、サキ……私、あなたのお姉さんと、会話が成立しないんだけど……」

【　……。この人はな、普段は、ほぉぉおおんとに、素(す)ん、晴(ば)らしい人なんえ？　この人がおらんな、今の俺っちは無い！　……でもな？　たまにこぅ、こんなふうに……い、イカれよってな……？　】

「……」

　サキのお姉さんは、定期的にイカれるらしい。

＜　ほぉ〜〜らぁ、イニィちゃ〜〜ん！　わっちといっしょに、あーん、しよなぁ〜〜？　＞

{{　騎士の誇りにかけて、ことわるわぁぁあああ！！！　}}

「……なんで私のアイテムバッグに、保母さんがいるんだろう……」

『>>>い、いやいや、後輩ちゃん。気づいて気づいて』

「ふぇ、なにが？」

『────彼女の正式名称は："魔盾(まじゅん)ダイオルノシュオン(大居朱音)"。──エンマ・ドジルグより譲渡された：フライパンです。』

　…………ふぁ？

＜　あ〜〜ん♪　＞

{{　むがぁ〜〜！！　}}

　…………。え。

「えええええええええええええ────！！！？？」

「……ぇぇぇえ……むにゃむにゃ……ぐぅ〜〜」

「にょきっと……！」

「ま、まさか、この人がフライパンさんの化身とは……」

＜　よろしゅうなぁ〜〜、あんちん(・・・・)？　わっちのことは、大姉(だいねぇ)で、えぇよぉ〜〜！　＞

【　ほぉお、よかったの、安嬢(あんじょう)？　その茄子(なすび)共々、気に入られよったなぁ！　】

「あ、"あんちん"……な、"なすび"……」

{{（ぐったり……　）}}

＜　いゃあ〜〜、元々わっち、"花(はな)"の"憑き霊"みたいなもんやってんけどねぇ？　わっちと名前が似とる"揚げ鍋"に、魂うつってもたみたいなんどす　＞

『>>>憑き霊……守護霊のような感じかな？　元々、"魔刀(まとう)ヨトギサキ"には、ふたつの精神体が宿っていた……それが、フライパンに移(うつ)ったということですね？』

『────推測。元々：同じ媒体を共有していた精神体が：同じ製作者のアイテムに同期。滞りなく一体化し：マジックアイテム化した可能性大。』

「ね、ねぇ……さっきから気になってたんだけど、"花(はな)"って？」

＜　その子のホントの名前やよ〜〜　＞

「え、そなの！？　私もそう呼んでいい！？」

【　……かっ、勘弁つかぁさぃな　】

「へへぇ〜〜。"はぁー、なぁ〜〜"──？」

【　──！、ぅ──……　】

＜　あらぁ珍しい、花が照れとぅよ？　＞

【　こ、こらぁ……！　だいねぇ　】

{{　あ、あなた達……いい加減、数日間、飼い殺された私を、助けようと思いますわよね？　そろそろ、ほら、ねぇ？　}}

【　……うっさいこのなすびっ娘(こ)め　】

{{　────おとぉうしゃまぁああ〜〜ァ！！！！　}}　

　わぁ……！

　なんか、楽しいな……！

　私、一人っ子だから、こんな賑わうのなんて、お客さん以外だと、初めてかも！

　親戚とかも、大きくなってから、

　会ったことないしなぁ……。

　すごい、大所帯だわ！

　クラウンに、　　『────：もぐもぐ。』

　先輩に、　　　　『>>>ほんとに食いやがった……』

　サキに、　　　　【　他の食べもんも出るかぃの？　】

　ガルンに、　　　『──ガルン！』※服飾店にて接客中です。

　イニィさんに、　{{　神などいない……　}}

　ダイ姉さんに、　＜　思い出の箱庭やからねぇ〜〜　＞

　ヌコっぽいのに、『──ニャンでやニャン！。』

　あ、龍もいる？　『ギャう・・Zzz・・・』

　まだ、ヒールスライムとかもいるし、

　それに、"キングマン"や、"シゼツ"だって──……。

　…………。

　────────"シ"？

「────ああああああああああああ！！！！！！！」

『────：ぐきゅッ。』

『>>>うっわ……』

【　うぉ……水飲ませぃ　】

『──ガルンガルゥ──ン！！』

{{　あぶだかたぶら……　}}

＜　あーら、どしたん、あんちん？　＞

『──ドン：アンティ。なんで叫んだニャン？。』

『ギャう、ぅ・・Zzz・・・』

『------のん---.』

「シゼツ、どこいったぁぁああんんんん────！！！」

　元気よく、立ち上がりながら、叫びました。