あなたは何を"絶"するの? さーしーえー
久々に、変な話書きました(●´ω`●)
扉を開けると、うってかわって、明るい場所に出た。
いた。
『 くふふ…… 』
……この子だ。
やっぱり、着物を着てる。
髪も、まっしろ。
服も、まっしろだ。
金色の角が、四本、見える。
あれは……確か、サキの額にも……。
帯や、髪紐は、真紅のものが目立つ。
今までに来た、朱の城の趣きに似ていた。
大きな、お墓の石みたいな所に、座っている。
ここは、随分高い場所だと思うけど、
四方を赤の壁で囲われてるだけで、
天は、突き抜けていた。
太陽のようなものが見える。
……さっき、星空が見えたのに……。
ザ……。
「……!」
一歩、踏み出して、感触に驚く。
ここ、草が生えている。
私のアイテムバッグ、ほんとにどうなってんだ……。
て、こんなこと、今はどうでもいい。
目の前の、白と、赤の少女に、たずねる。
「……あんた、だれよ?」
『……まだ、気づいてないのね?』
……はぁ? どういう返しよ、それ……。
あんたとは、初対面だっつーの。
幼い声で、でも、何か、それと相反する、
大人じみた雰囲気がある子ね……。
なんと言うか、声に似合わず、"深み"のある一言だった。
ザ……ザ……と、少しずつ、座っている彼女に、近づく。
「──! あなた、その瞳!」
近づくと、光を、目の前の女の子の瞳が、はじいた。
この子の瞳……"金"だわ。
……この色。
「……綺麗な、瞳ね」
『──変なこと言うね? これは、あなたの金でもあるのに』
あ──……、この子、不思議ちゃん確定だわ。
ガシガシ。
あーもぅ。
おしりぺんぺんする気が失せてきた……。
「おら。さっき後ろから襲撃したろ。お姉さんに何か言うことないの」
『──! ぶ、ぶくく、くくくくっ── 』
い、いらぁ。
さっきの、やっぱとりけす。
「……おい、聞きたい事がある」
濡れ裸にされた怒りで、少し言葉が強くなる。
目の前の少女は笑い声を止め、
しかし、微笑は絶やさず、こちらを向く。
「私の仲間が、みんないなくなった。あんた、何か知ってるの?」
クラウン。
先輩。
イニィさん。
サキ。
あと、フライパンさん?
おまけに、ドラゴンのヨロイと来たもんだ。
神隠しにも、限度がある。
『──あなたと、ふたりで会いたかった。だから、少し、"拒絶"したの』
「んだと?」
こいつの、せいらしい。
"拒絶"……?
確か、フライパンさんのスキルの名前が……。
……あぁ、くそ。
「……。あんた、何でそんなひどい事すんの」
『……あなただって、ひどいことはしてる』
「あ?」
『"仲間が、みんないなくなった"。そう、言った。でも、私はここにいる』
「……え、いや……」
な、何だ? この子……何、言ってる……?
微笑が消え、少し、険のある表情になる。
相変わらず、でっかい岩に座ったままだが。
オレンジゴールドの瞳……。
! サキの瞳も、確か、あんな感じだ。
でも、何故だろう……。
それだけじゃなくて、あの目は、
やっぱり、私にも似てる……。
「……その言い分だと、あんたは私の仲間ってことになるわね。他のみんな、返してくれない?」
『…………』
な、によ。
なんか、怒ってんのか……?
ようわからん……。
服と仲間、隠されて、
何でそんな、じっと見つめられなきゃならないのよ……。
「ちょっと……」
『──あなたはね、みっつ、あつめたの』
「──……?」
『だから、次にいける。3の次が、私よ』
「……なん?」
『"概念"が、みっつそろって、あなたはそれを、"同期"できたの。だって、あなたも魔力はなくて、同じものだから』
「ちょ……まてこら」
『あなたは魔法なんて、使えない。"概念"だけしか、持ちえない。だから、逆にそっちは、積み重ねられる。あなたは、"噛み合わす"ことは、誰よりも得意だから。だから、3の次に、行けるのよ?』
「ま、まてまてまてっ! 意味わからん!」
『……あたま、かたいのねぇ』
お、おいこら、ガキンチョ。
さっきから、変なことばっか言いやがって……。
てか、魔法使えないこと、バカにされてるっ!?
"概念"って、なんだ……。
3の次……?
「よくわかんないけど……えと、"さんのつぎ"が、あなた?」
『……そう。私は、みっつの"概念"が積み重なって、噛み合わさったもの。だから、私は"3の次の概念"を、色濃く持つのよ』
「わっかんねぇ……」
『私はね、あなたが考えてるより、ずっと、こわいものなの』
「…………」
『"3の次"。"5の前"。ふふ、もう、答えを言ってるようなものね』
「……遠まわしな言い方ね。あなたが言いたくない数字があることはわかったわ。内容が、全くわからないけど」
『私は、直接、"その数字の概念を持つ者"なの』
「……ほんとうに意味わからん……」
『……私だって……』
「──?」
……──ザッ。
「──!」
『私はね、きいてみることにしたの』
白の女の子が、岩から降りた。
この子にしたら、けっこう高い岩だ。
でも、着地の衝撃が、とても静かなことに、違和感を覚える。
何歩か前に来て、でも、止まった。
ずいぶん、真剣なひょうじょうで、真っ直ぐ、私を見た。
金と、金の視線が、交差する。
「……──きくって、何を……?」
『 ──あなたが、どう、"絶"するかをよ 』
「は、ぃ……?」
『あなたは、今までに、たくさん"絶"してきたんだと思う。それは生きていたら、当然のこと』
ザッ……ザッ……。
『……でも、あなたは、集めすぎた。それを、できる"概念"を。そして、私になってしまった』
ザッ、ザッ……。
「ちょと……」
全く視線を反らさず、近づいてくる。
『 鬼を"絶"して…… 』
ザッ…… ザッ……
『 魔を"絶"して…… 』
ザッ…… ザッ……
『 命を"絶"したよね? 』
「────……」
『あなたはね、その力が、もぅ、けっこう強いのよ。そして"次の概念"に、たどり着いてしまった』
この子……。
この視線の、意味は、何。
せめる、ような。
みさだめる、ような。
私に、何か、きく?
きく……。
て、こと、は……。
「あなたは……私に、何を教えてほしいの?」
『────、……』
ピタリ、と。
目の前で、止まる。
表情も、動かない。
ちょっと、こわい。
『……ねぇ……』
そして、きかれる、私は。
『 あなたは、"四番目"に、何を、"絶"するの? 』
同時に、くしゃりと。
目の前の、金の瞳が、歪んだ。
……なぜ、そんな悲しそうに、すんの。
白い着物の裾を、ギュッと、手で掴んでいる。
……なんなのよ。
なんで……。
『……あなたは多分、どっちも、できる。のばす、ことも。たつ、ことも。それを、"私達"は、できる……』
「……」
『でも、でもね。私は、"四"の概念からは、逃げられない。そんなの、嫌でしょう……? それが力を持って、私になったんだから』
「……」
『……だからね、きくことに、したの。"四"のチカラで、あなたが、何を"絶"するのか……』
「……」
『私だって……』
あ、あら。
……うつむいてしまった。
年相応の、ショボンとした、女の子に見える。
……う、う〜〜ん……。
どしよ、かな。
はっきり言うけど、この子の言ってることは、
かぁぁ、なぁぁ、りっ! わかんない。
クラウン語より、遥かに難解だわ……。
え、えと、でも……。
なんか、この女の子が、
すっげぇ真剣に、何かを私にききたいのは、わかった。
……"絶"するチカラで、何をするか……?
……"四番目"の概念……?
うん、わかんないね。
よくわからんが、この子は、強い力を持ってるのかな……?
絶する……。
拒絶?
断絶?
……"絶"する。
とおざけて、しまうような。
消し去って、しまうような。
断ち切って、しまうような。
そういう、ことかな……?
"4"……。
うーん……。
どうしたらいいか悩んでいると、
ショボンとした彼女が、言った。
『……あなたが望めば、私を消すことができるわ』
「え?」
『……噛み合わすことができれば、外すことも、簡単だもの……』
「う、うん……?」
『……私は、"絶"されたほうが、いいのかも、しれない……』
「そ、そんなこと」
『"四"を消すために、私を……』
……。
しょぼん。
いや……そんな、落ち込まれてもね。
いきなり、ガキンチョっぽくならないでよぉ!
こ、これ、励ましたほうが、いいの……?
だれかぁ──。なんかヒントぉ───。
……だめだ、誰もおらん……。
「はぁ……」
『……』
うーん。
うーん。
うーん。
……うん。
全く何もわからんが、なんか寂しそうだわ。
ちゃんと、しょぼん娘に、答えてやる事にした。
「 ……────"絶さない" 」
『……へ?』
「さっきのこたえ」
『──え?』
「"四番目に、何を絶するのか"、でしょ? "絶さない"。それが、私の答えよ」
『──あの……』
「"誰かを拒絶する"。"やな事を見ないふりする"。たぶん、あなたって、"絶"するってコト、悪いほうに考えてるのね。でも、そんなことばっかじゃないでしょ。"想像を絶する美味!"とか、"想像を絶する変態!"とか、色々あるじゃないの」
『……、……』
「しょうじき、あんたの言ってることは、まぁるで意味わかんないわ。食堂娘に、難しいこと言ってんじゃないわよ。ただね、何かを"絶"する前に、私はまず、"絶"さない。ようわからんけど、まずは、毛嫌いしないで、こうやって、話してみりゃいいでしょ!」
『……!』
「私は、まず、"しゃべる"。"きく"。"感じとる"。
──それから"絶"するのか、決めるわ」
『────!!』
「……はぁ。こんな答えでいーい?」
なんか、言葉でにごしてしまった感があるけど……。
『 ……──! そう、か……! 』
「んん?」
『 ────あなたは、"絶"を"絶する"のね! 』
「は、はぃ……?」
目の前の、白の少女が、
金の目を、かっぴらいている。
まんまるきんきらである。
めっちゃ、驚いてるように見えるわね。
……ふふ、なかなかステキな、ビックリフェイスじゃないの。
──ん?
……ダダダッ!
がばっ─────!!
ずむんっ。
「──ふッッぐっ!」
げ、ごっほ……。
……お腹に突進してきて、抱きつかれた。
どしたどした、なんだなんだ……。
ようわからんが、ヨロイ消したの、あんただろ。
今の私、追加防御力、ゼロなんだぞぉ……。
『あなたで、よかったぁ……!』
「……んん?」
『わたし、いて、いいよね?』
「そりゃ、ね?」
『だいじょうぶ、消えなければいい! バラバラになっても、ちゃんと、いるから!』
「──え?」
『ねぇ、あなたは、"四"を、こわがらない?』
「?? うん……"4"、きらいなの……?」
『うん! でも、今、好きになった!』
「は、はぁ……」
何言ってんのか、ほんとわかんない子だなぁ……。
「よくわかんないけど、気持ちの持ちようなんじゃない?」
『! そうだねっ!』
おぉ、ちゃんと子供っぽく、笑えるんじゃないの。
えがったえがった。
さて、そろそろ私の仲間とヨロイ、返してくんない?
「ねぇ……あなた、名前、なんてゆうの?」
『!』
名前知らないと、会話しにくいかんね。
『あなたが付けて!』
「え、ええ……?」
『わたし、もうこわくないから!』
「は、はぁ……」
私は、あなたの謎発言が、ちょっと怖いわよ……?
う、うーん。
いきなし名前、つけろったってねぇ……。
えとぉ──……。
「うーん、"し"……"ぜつ"……"四絶"──」
『 !! ──"シゼツ"!! それが、私の名前!! 』
「あ、まっ────……!」
きぃぃぃぃん────────!!!!
「──な……ッッ!!」
ものすごい光が、白の少女を、包む。
めが……あけられない!!
ゴッ、という突風が、下から突き上げる!
ちょ、コラァ!!
いま、下着つけてないんだってばァ、ばかぁ〜〜!!
なんとか着物を押さえ込み、
風と光が止むのを、待つ。
ほんと、私のアイテムバッグ、どうなってんのよ……。
ん、静かになってきた。
「もぅ! ちょ、"シゼツ"……? あんた、なにした─── 」
"刃"が、光の中に、浮いていた。
「 ────、……ぉ、あ 」
──によ、これ。
「………」
黒金の、刃金。
紫の、にぎり。
白金の、拳盾。
私の、身長くらいある、大剣だ。
綺麗な、流線のフォルムを描く、刃。
はじめて見るはずなのに、でも……。
この、意匠。
どこかで……。
少しだけ、前に出て、
手をのばす。
握ろうと────……、
────────… … … 。
パァっ、と。
一瞬だけ、華やいて。
"絶の大剣"は、消えてしまった。
"みっつのはぐるま"が、
きぃんと、わかれた気がした。










