表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
352/1216

あなたは何を"絶"するの? さーしーえー

久々に、変な話書きました(●´ω`●)



 扉を開けると、うってかわって、明るい場所に出た。


 いた。



挿絵(By みてみん)

『 くふふ…… 』



 ……この子だ。


 やっぱり、着物を着てる。

 髪も、まっしろ。

 服も、まっしろだ。

 

 金色の角が、四本、見える。

 あれは……確か、サキの(ひたい)にも……。

 

 (おび)や、髪紐は、真紅のものが目立つ。

 今までに来た、朱の城の趣きに似ていた。


 大きな、お墓の石みたいな所に、座っている。


 ここは、随分高い場所だと思うけど、

 四方を赤の壁で囲われてるだけで、

 天は、突き抜けていた。

 太陽のようなものが見える。

 ……さっき、星空が見えたのに……。


 ザ……。


「……!」


 一歩、踏み出して、感触に驚く。

 ここ、草が生えている。

 私のアイテムバッグ、ほんとにどうなってんだ……。

 て、こんなこと、今はどうでもいい。


 目の前の、白と、赤の少女に、たずねる。


「……あんた、だれよ?」


『……まだ、気づいてないのね?』


 ……はぁ? どういう返しよ、それ……。

 あんたとは、初対面だっつーの。

 幼い声で、でも、何か、それと相反する、

 大人じみた雰囲気がある子ね……。

 なんと言うか、声に似合わず、"深み"のある一言だった。


 ザ……ザ……と、少しずつ、座っている彼女に、近づく。


「──! あなた、その瞳!」


 近づくと、光を、目の前の女の子の瞳が、はじいた。

 この子の瞳……"金"だわ。

 ……この色。


「……綺麗な、瞳ね」


『──変なこと言うね? これは、あなたの金でもあるのに』


 あ──……、この子、不思議ちゃん確定だわ。

 ガシガシ。

 あーもぅ。

 おしりぺんぺんする気が失せてきた……。


「おら。さっき後ろから襲撃したろ。お姉さんに何か言うことないの」


『──! ぶ、ぶくく、くくくくっ── 』


 い、いらぁ。

 さっきの、やっぱとりけす。


「……おい、聞きたい事がある」


 濡れ裸にされた怒りで、少し言葉が強くなる。

 目の前の少女は笑い声を止め、

 しかし、微笑は絶やさず、こちらを向く。


「私の仲間が、みんないなくなった。あんた、何か知ってるの?」


 クラウン。

 先輩。

 イニィさん。

 サキ。

 あと、フライパンさん?

 おまけに、ドラゴンのヨロイと来たもんだ。


 神隠しにも、限度がある。


『──あなたと、ふたりで会いたかった。だから、少し、"拒絶"したの』


「んだと?」


 こいつの、せいらしい。

 "拒絶"……?

 確か、フライパンさんのスキルの名前が……。

 ……あぁ、くそ。


「……。あんた、何でそんなひどい事すんの」


『……あなただって、ひどいことはしてる』


「あ?」


『"仲間が、みんないなくなった"。そう、言った。でも、私はここにいる』


「……え、いや……」


 な、何だ? この子……何、言ってる……?

 微笑が消え、少し、険のある表情になる。

 相変わらず、でっかい岩に座ったままだが。

 オレンジゴールドの瞳……。

 ! サキの瞳も、確か、あんな感じだ。

 でも、何故だろう……。

 それだけじゃなくて、あの目は、

 やっぱり、私にも似てる……。


「……その言い分だと、あんたは私の仲間ってことになるわね。他のみんな、返してくれない?」


『…………』


 な、によ。

 なんか、怒ってんのか……?

 ようわからん……。

 服と仲間、隠されて、

 何でそんな、じっと見つめられなきゃならないのよ……。


「ちょっと……」


『──あなたはね、みっつ、あつめたの』


「──……?」


『だから、次にいける。3の次が、私よ』


「……なん?」


『"概念"が、みっつそろって、あなたはそれを、"同期"できたの。だって、あなたも魔力はなくて、同じものだから』


「ちょ……まてこら」


『あなたは魔法なんて、使えない。"概念"だけしか、持ちえない。だから、逆にそっちは、積み重ねられる。あなたは、"噛み合わす"ことは、誰よりも得意だから。だから、3の次に、行けるのよ?』


「ま、まてまてまてっ! 意味わからん!」


『……あたま、かたいのねぇ』


 お、おいこら、ガキンチョ。

 さっきから、変なことばっか言いやがって……。

 てか、魔法使えないこと、バカにされてるっ!?

 "概念"って、なんだ……。


 (さん)の次……?


「よくわかんないけど……えと、"さんのつぎ"が、あなた?」


『……そう。私は、みっつの"概念"が積み重なって、噛み合わさったもの。だから、私は"3の次の概念"を、色濃く持つのよ』


「わっかんねぇ……」


『私はね、あなたが考えてるより、ずっと、こわいものなの』


「…………」


『"3の次"。"5の前"。ふふ、もう、答えを言ってるようなものね』


「……遠まわしな言い方ね。あなたが言いたくない数字があることはわかったわ。内容が、全くわからないけど」


『私は、直接、"その数字の概念を持つ者"なの』


「……ほんとうに意味わからん……」


『……私だって……』


「──?」


 ……──ザッ。


「──!」


『私はね、きいてみることにしたの』



 白の女の子が、岩から降りた。

 この子にしたら、けっこう高い岩だ。

 でも、着地の衝撃が、とても静かなことに、違和感を覚える。

 何歩か前に来て、でも、止まった。

 ずいぶん、真剣なひょうじょうで、真っ直ぐ、私を見た。

 金と、金の視線が、交差する。



「……──きく(・・)って、何を……?」


『 ──あなたが、どう、"絶"するかをよ 』


「は、ぃ……?」


『あなたは、今までに、たくさん"絶"してきたんだと思う。それは生きていたら、当然のこと』


 ザッ……ザッ……。


『……でも、あなたは、集めすぎた(・・・・・)。それを、できる"概念"を。そして、私になってしまった』


 ザッ、ザッ……。


「ちょと……」



 全く視線を反らさず、近づいてくる。



『 鬼を"絶"して…… 』


 ザッ…… ザッ……


『 魔を"絶"して…… 』


 ザッ…… ザッ……


『 命を"絶"したよね? 』



「────……」



『あなたはね、その力が、もぅ、けっこう強いのよ。そして"次の概念"に、たどり着いてしまった』


 この子……。

 この視線の、意味は、何。

 せめる、ような。

 みさだめる、ような。


 私に、何か、きく?

 きく(・・)……。

 て、こと、は……。


「あなたは……私に、何を教えてほしいの(・・・・・・・・・)?」


『────、……』


 ピタリ、と。

 目の前で、止まる。

 表情も、動かない。

 ちょっと、こわい。


『……ねぇ……』


 そして、きかれる、私は。





『 あなたは、"四番目"に、何を、"絶"するの? 』





 同時に、くしゃりと。

 目の前の、金の瞳が、歪んだ。

 ……なぜ、そんな悲しそうに、すんの。

 白い着物の裾を、ギュッと、手で掴んでいる。

 ……なんなのよ。

 なんで……。


『……あなたは多分、どっちも、できる。のばす、ことも。たつ、ことも。それを、"私達"は、できる……』


「……」


『でも、でもね。私は、"四"の概念からは、逃げられない。そんなの、嫌でしょう……? それが力を持って、私になったんだから』


「……」


『……だからね、きくことに、したの。"四"のチカラで、あなたが、何を"絶"するのか……』


「……」


『私だって……』



 あ、あら。

 ……うつむいてしまった。

 年相応の、ショボンとした、女の子に見える。

 ……う、う〜〜ん……。

 どしよ、かな。


 はっきり言うけど、この子の言ってることは、

 かぁぁ、なぁぁ、りっ! わかんない。

 クラウン語より、遥かに難解だわ……。


 え、えと、でも……。

 なんか、この女の子が、

 すっげぇ真剣に、何かを私にききたいのは、わかった。


 ……"絶"するチカラで、何をするか……?

 ……"四番目"の概念……?


 うん、わかんないね。

 よくわからんが、この子は、強い力を持ってるのかな……?

 絶する……。


 拒絶?


 断絶?


 ……"絶"する。


 とおざけて、しまうような。

 消し去って、しまうような。

 断ち切って、しまうような。


 そういう、ことかな……?


 "4"……。


 うーん……。


 どうしたらいいか悩んでいると、

 ショボンとした彼女が、言った。



『……あなたが望めば、私を消すことができるわ』


「え?」


『……噛み合わすことができれば、外すことも、簡単だもの……』


「う、うん……?」


『……私は、"絶"されたほうが、いいのかも、しれない……』


「そ、そんなこと」


『"四"を消すために、私を……』


 ……。


 しょぼん。


 いや……そんな、落ち込まれてもね。

 いきなり、ガキンチョっぽくならないでよぉ!

 こ、これ、励ましたほうが、いいの……?

 だれかぁ──。なんかヒントぉ───。

 ……だめだ、誰もおらん……。


「はぁ……」


『……』



 うーん。


 うーん。


 うーん。


 ……うん。



 全く何もわからんが、なんか寂しそうだわ。

 ちゃんと、しょぼん娘に、答えてやる事にした。




「 ……────"絶さない" 」




『……へ?』


「さっきのこたえ」


『──え?』


「"四番目に、何を絶するのか"、でしょ? "絶さない"。それが、私の答えよ」


『──あの……』


「"誰かを拒絶する"。"やな事を見ないふりする"。たぶん、あなたって、"絶"するってコト、悪いほうに考えてるのね。でも、そんなことばっかじゃないでしょ。"想像を絶する美味!"とか、"想像を絶する変態!"とか、色々あるじゃないの」


『……、……』


「しょうじき、あんたの言ってることは、まぁるで意味わかんないわ。食堂娘に、難しいこと言ってんじゃないわよ。ただね、何かを"絶"する前に、私はまず、"絶"さない。ようわからんけど、まずは、毛嫌いしないで、こうやって、話してみりゃいいでしょ!」


『……!』


「私は、まず、"しゃべる"。"きく"。"感じとる"。

 ──それから"絶"するのか、決めるわ」


『────!!』


「……はぁ。こんな答えでいーい?」


 なんか、言葉でにごしてしまった感があるけど……。


『 ……──! そう、か……! 』


「んん?」



『 ────あなたは、"絶"を"絶する"のね! 』



「は、はぃ……?」


 目の前の、白の少女が、

 金の目を、かっぴらいている。

 まんまるきんきらである。

 めっちゃ、驚いてるように見えるわね。

 ……ふふ、なかなかステキな、ビックリフェイスじゃないの。


 ──ん?


 ……ダダダッ!

 がばっ─────!!

 ずむんっ。


「──ふッッぐっ!」


 げ、ごっほ……。

 ……お腹に突進してきて、抱きつかれた。

 どしたどした、なんだなんだ……。

 ようわからんが、ヨロイ消したの、あんただろ。

 今の私、追加防御力、ゼロなんだぞぉ……。



挿絵(By みてみん)

『あなたで、よかったぁ……!』


「……んん?」


『わたし、いて、いいよね?』


「そりゃ、ね?」


『だいじょうぶ、消えなければいい! バラバラになっても、ちゃんと、いるから!』


「──え?」


『ねぇ、あなたは、"四"を、こわがらない?』


「?? うん……"4"、きらいなの……?」


『うん! でも、今、好きになった!』


「は、はぁ……」


 何言ってんのか、ほんとわかんない子だなぁ……。


「よくわかんないけど、気持ちの持ちようなんじゃない?」


『! そうだねっ!』


 おぉ、ちゃんと子供っぽく、笑えるんじゃないの。

 えがったえがった。

 さて、そろそろ私の仲間とヨロイ、返してくんない?


「ねぇ……あなた、名前、なんてゆうの?」


『!』


 名前知らないと、会話しにくいかんね。


『あなたが付けて!』


「え、ええ……?」


『わたし、もうこわくないから!』


「は、はぁ……」


 私は、あなたの謎発言が、ちょっと怖いわよ……?

 う、うーん。

 いきなし名前、つけろったってねぇ……。

 えとぉ──……。


「うーん、"し"……"ぜつ"……"四絶(シゼツ)"──」



『 !! ──"シゼツ"!! それが、私の名前!! 』



「あ、まっ────……!」



 きぃぃぃぃん────────!!!!



「──な……ッッ!!」


 ものすごい光が、白の少女を、包む。


 めが……あけられない!!


 ゴッ、という突風が、下から突き上げる!


 ちょ、コラァ!!


 いま、下着つけてないんだってばァ、ばかぁ〜〜!!



 なんとか着物を押さえ込み、


 風と光が止むのを、待つ。


 ほんと、私のアイテムバッグ、どうなってんのよ……。


 ん、静かになってきた。



「もぅ! ちょ、"シゼツ"……? あんた、なにした─── 」










挿絵(By みてみん)


"刃"が、光の中に、浮いていた。








「 ────、……ぉ、あ 」



 ──によ、これ。



「………」



 黒金の、刃金。


 紫の、にぎり。


 白金の、拳盾。


 私の、身長くらいある、大剣だ。


 綺麗な、流線のフォルムを描く、刃。


 はじめて見るはずなのに、でも……。


 この、意匠。


 どこかで……。



 少しだけ、前に出て、


 手をのばす。



 握ろうと────……、



 ────────… … … 。





 パァっ、と。



 一瞬だけ、華やいて。



 "絶の大剣"は、消えてしまった。






 "みっつのはぐるま"が、



 きぃんと、わかれた気がした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ