箱庭ノ夜ノ悪戯 さーしーえーまーつーりー
(*´ 艸`)挿し絵祭りです。
ヨロイを着ていない食堂娘など、
ただの、お手玉上手なハダカ女である──。
二代目クルルカン アンティ・キティラ
「なんて、名言集っぽく言ってみてる場合じゃないわよ、私っ……!」
危機感、感じてぇ、私の本能……!
現実から、逃げないでぇ……!
「にゃぁああぁ……! に、にゃぜ、だぁあ〜〜……」
なぜなの。
なぜ、恐怖と羞恥を、同時に感じねばならないの……。
神よ、私が何をした。
まっっったく知らない間に、煙のように、
フッ……と、クラウンと、先輩と、ヨロイが消えた。
手元に残っているのは、飛ばないぷち山火事歯車だけ。
「ひぃええぇ〜〜」
真っ暗な和風の館で、
しかし、恐怖より、羞恥が勝った。
肌を晒して、直接、火の温かさを感じていたのも、
恐怖を和らげることに、つながったのかもしんない。
「ふぅく、服ぅ〜〜……!」
こわいっちゃこわいけど、
とにかく装備をそろえねばッッ!!
どこかにクラウンと先輩も、いるかもしれない!
そん時に先輩にでも、鉢合わせてみなさい!
あられもない、一糸まとわぬ、看板娘ぼでぃ、
あの呪いの仮面に、見せてなるものかぁぁぁ!
ぼぼぉ〜〜。
小さな炎の熱と光に助けられ、
何とか、動き出す。
謎の探検の、はじまりだ。
これって、悪夢?
せめて、服のある悪夢にしてほしい……。
とて、とてとてとて……。
「ううっ〜〜……、クラウン、先輩、どこぉ〜〜。あ、先輩はまだくるな」
くらい。
夜みたいだ。
山火事、ぷち太陽に出世したんでしょ。仕事せんかぃ。
や、そりゃ歯車からは火ぃ出してもらってますけども。
建物の奥に入りすぎて、光が届かないのかな……。
とて、とてとて、ぺたぺたぺた。
手で、身体を隠しつつ、けっこう、歩き回る。
非常に、まぬけな気持ちだ。
さむくはない。
むしろ、手元の火で、あったかい。
くらい中、人っ気がないのは、こわいけど、
いま裸で、おっかなびっくり歩き回ってるので、
逆に、ありがたかったりもする。
複雑だわ……。
と言っても、かなり恥ずかしがりながら、
歩く、歩く、歩く。
静かで、延々と、くねくねと。まるで、迷路だ。
もう、元の道には、引き返せないかも。
手元の小さな炎で、朱の格子を、照らしながら、進む。
────オレンジ色の、灯りが見えた。
「ここ……灯りが灯ってる」
かなり、くらいから、
逆に、光が灯った場所は、鮮烈に見える。
綺麗な色だ。ホッとさえする。
静かだ。
この、赤い扉は、開くのかな……。
「──! 中に……"箪笥"がある!」
どうやら、先輩の知識を少しもらってしまった私は、
この建物の、建築や、道具なんかの名前がわかる。
……。
あの中に、服は入っているかな……。
「……泥棒に、なるのかな。でも、自分のアイテムバッグの中だしなぁ……背に腹は、かえられないかぁ……」
ちょっと盗賊気分になりながら、
そぉ〜〜っと、赤い、格子状の扉をスライドする。
シュ────っ、と、滑らかに、開いた。
こそこそ……。
畳の部屋だった。
木でできた箪笥は、茶色よりも、艶のある真紅に近い。
火のついた歯車を、横にあった、互い違いになっている棚に置く。
畳よりは、燃えにくいでしょ……。
跪き、引き出しを、下から開ける。
「……! 赤い着物と、帯がある……!」
いきなり当たった……!
……でも、正しい着方が、わからない。
あと、下着とか、どこにあんのよ……。
上の引き出しも、順番に開ける。
……小物だ。肌着らしきものがない。
どうしよう……。
赤い着物を胸に抱きしめ、
引き出しの中を物色していると────……。
────ブシュぅぅううう────ゥゥ!!!
「──びゃぃいいああっはあああ──────!!!!!??」
つ、冷てぇぇぇえええ──────!!!!!??
やややややや!!!
せっなかっっ!!?
ぬれっ!?
【<{{ きゃはハハハハハッ──…… }}>】
──ゴトンッ!
コンコンコンコンコ──……。
「──、……」
……あまりのことに、放心する……。
ぼたぼた、ぽたぁ。
背中らへんから何か、床の畳に、滴り落ちている……。
歯車の炎で照らすと、透明だったので、たぶん水だ。
……背後から、水をぶっかけられたのか? 私……。
下ろした髪と、背中と、お尻が、べっちゃりである。
あれっ? これ私、怒っていいよね?
足音はもう遠くに行ってしまったようだが、
先ほど、すぐそこで、何かが落ちる音がした。
着物を前側に当て、立ち上がり、
部屋の外を覗き込む。
何か、落ちていた。
竹の水鉄砲を手に入れた▼
★連射可能。
かなりの水を込められる。
キュッキュッ音が鳴る。
……ぷっちん。
くらやみで、裸の女に、みずてっぽう……?
いや、ギルティだろ……。
「……ふ、ふっ、ふっふ……ぶちのめしてやる必要があるわね……」
とっつかまえて、ぽっぺひねったろか。
赤い着物を、適当に帯で巻いて、
身体に着込む。
結局、どこに下着があるのか、わからなかった。
裾が、とても長い。
どうやって長さを調節するんだろう……。
禿の衣装を装備した▼
ちょっとスースーするけど、服が着れた事は大きい。
さっきから、あの悪ガキ以外は見かけない。
静かなもんだ。
くらやみに、目と、炎で、慣れていく。
さっきの水鉄砲は、まぁじぃで、びっくらこいた。
追いついたら、おしりぺんぺんくらいは覚悟してもらおう。
すぐ目の前で、足音。
───コンコンコンコン……!
「あ! にゃろ──……」
【<{{ ぐく、ふふふふ! }}>】
階段を、登っていきやがった。
やっぱり、白い着物を着た、ちっちゃい女の子みたい。
……やれやれ。
「……クラウン達も、ヨロイも、見つかんないなぁ。このままじゃ、帰れないかもしれないし……追っかけるしかないか」
トン、トン、と、素足で、階段をのぼりはじめる。
長い着物の裾の重さで、少し、後ろにひっぱられる。
上に行くと、今までに比べると、かなり明るかった。
「──! 灯りが……」
今までの階に比べて、けっこうな灯りが見える。
これは……提灯、ってやつかな……?
等間隔に連なってかかっており、
これまた、オレンジの淡い光を放っている。
照らし出された天井や壁は、
朱や、金で豪華に装飾されている。
反射した赤が、磨かれた床にうつり、
くらやみに、幻想的な空間が浮き出ていた。
「…………」
進んで、進んで、進んで。
わかったことは、あの女の子は、
少し先で、私を待っていると言うことだ。
私が近づくと、逃げる。
それまで、全く気配がない。
無邪気な笑い声と、足音が、また、遠ざかる。
何回か、階をのぼり、空が覗く廊下があった。
「──わぁ……!」
赤の格子の外に、星空が見えた。
イニィさんと見た、あの思い出の星空に似てる。
くらいからこそ、光は、見事に魅せる。
すこし、立ち止まって、魅入ってしまった。
すごく、綺麗な光景だわ。
だけど……。
……私のアイテムバッグ、どうなってんだ。
とてとて、とてとて。
コンコンコン。
ぺたぺた、ぺたぺた。
コン、コロロン。
走りはしない。
歩く。
近づく。
逃げる。
進む。
随分、上に来たと思う。
また、赤の格子がある。
でも、今までの場所と、
何かが、ちがっていた。
「…………こりゃ、お尻ぺんぺん、きたかな?」
取っ手に、手をかけた。










