まっ〇〇! まっ〇! お〇〇〇〇き!(ハードモード)
今回ばかりは、
みなにタコ殴りにされるかもしれん……。
(((´-` )))
──カコン、コン。
いる。
『────……な:ぜ。』
『>>>!! おかしい!! 近くにいるのに、全く、反応がない!!』
──カコン、カコン。
足音。
木の靴を、履いてるような。
『────信じ:られません。』
『>>>アンティ……流路感知系が、まるで反応していない。なのに、何かいる……?』
"後輩ちゃん"じゃなくて
"アンティ"と私を呼ぶ時は、ガチの時だ。
──カコカコン。
……やれやれね。
"アイテムバッグの中に、知らない人がいる"。
どーなっとんねんな。
仮初めの太陽が、
四角く切り取られた庭を、淡く、照らし出す。
私の後ろには、黒い枝に揺れる、金の葉があるはずだ。
ここには……風もあるのね。
照らす風景は、艶やかな朱色でできた、
"檻"のような壁。
タテか、ヨコ。斜めの造形が、見当たらない。
床の材は、どうやら磨きあげられた木のようで、
ここは一貫して、普通の木目だ。
でも視界を覆う素材には、ほとんど黒か、紅が入っている。
綺麗で、こわい色だと思った。
幻惑されるのを恐れながら、
四角い庭の中から、奥を、のぞく。
────この赤ん中に、ぜったい、いる。
【<{{ きききき }}>】
──ココ、ココン。
────!
『────理解:不能。』
『>>>見えてるのに、聞こえているのに、何故、観測できない……』
一瞬だが、後ろ姿が見えた。
奥の角に、消えてった。
朱色の中に、切り取られたような、白。
まっしろ、まっしろだった。
ぜったい、子供だ。
イタズラっぽい、女の子。
『────……記録:失敗しました。』
『>>>ありえないから……』
「──ビビりすぎよ、ビビりすぎ。ね、おく、いってみよ?」
『>>>本気かい……? かなり、得体が知れないよ?』
『────同意。状況の把握を推奨。』
「いやいや、人のこと呼んどいて何、言ってんの」
クラウンと先輩が、えらい警戒している。
この2人、調べたり、観察したりするの、得意そうだもんね。
そりゃ、私も摩訶不思議ワールドにきちゃった感は、すっごいあんのよ……。
でもねぇ。
あの"声"はねぇ……。
「……あれは、ただのやんちゃな子供よ」
『────詳細入力。』
「声で、わかんのよ。"鬼ごっこ"やら"隠れんぼ"やらを、したいのよ……」
私がどれだけ食堂のお客さんの子供と、
バトってきたと思ってんの。
『>>>"鬼"……きみがかい?』
「そ。私が、鬼」
やれやれ……。
金と黒の大樹を囲った庭。
土の地面からは随分高いところに、
床材が横に、伸びている。
……ここへは、靴を脱いであがるのかしら。
「ねぇ、ヨロイを脱いだ方がいいかな? ここ、土足じゃあ……」
『────非推奨の行動。お願いです、アンティ。スーツを着用した状態での探索を推奨。』
『>>>ぼくからも頼む。着といてほしい。かんなり、未知の現象だ。アイテムバッグの中に、感知できない、得体のしれない誰かがいるなんて……』
「ちぇ。クラウン? 足、綺麗にしてね?」
『────……レディ。』
……──きゅうううううんん……。
……──ぶぉぉぉおおおんん……。
左右の金ピカ義賊ブーツの、
両側に付いているそれぞれ歯車輪が、
靴の汚れを吸い取ったようだ。
黄金の義賊は、不法侵入の際も、あなたの家を汚しません。
『>>>いや、これ、きみのスキルのストレージだから……どっちかってーと、不法侵入されてるの、きみのほうだから』
「で、あるか」
『>>>なぜ、その返しになった……』
『────感知は引き続き行います:警戒を。時限結晶""内に、何故この巨大船舶型建造物が構成されたか、私達は何も理解していません。』
「で、あるな」
しゃあない。
じゃ、靴のままで、室内おにごっこといきましょうか。
土と、高い床材の間に、横長の、大きな石が置いてある場所がある。
一段だけの、階段だ。
のぼる。
「おじゃましまぁ〜〜す」
キン、キン。
はい、床ぁ〜〜。
『────動作体:感知:無し。』
『>>>あの子、奥の角で曲がってったよね』
──きょろ。きょろ、きょろ。
『────、──。──クラウンギアは:疑問を提唱。』
『>>>アンティ、どした……追わないの?』
……。
う──ん、やっぱり、これって……。
紙の貼られた、格子状の扉を指さし、言う。
「 ──"障子" 」
『────……。』
『>>>…………』
……キン。……キン……。
ゆっくりと、床の上を、歩き出す。
草の繊維が入った、大きな紙が貼られた、
スライド式のドア。
また、指さす。
「 ──"襖" 」
少し位置の下がった地面、庭の中に建ってる、
石と金属でできた、屋根付きの建造物。
「 ──"灯籠" 」
……キン。……キン……。
『────情報取得中……。』
『>>>アンティ、きみ……』
「……あのねぇ先輩、私、靴のままでここに上がっちゃったでしょう? 私ね、こんな建物に入るの初めてだけど、今、凄ぉおい罪悪感なのよ……」
『────……。』
『>>>…………』
「この建築物……。ホントはさっきの、"縁側"ん所の、でっかい石のトコで、靴脱ぐんでしょう」
『>>>ぼくの……"知識"か……』
「えぇ、ええ、そうですとも。あ、先輩、あの"手水鉢"、かわいい……! あれは何て言うのかわからないわ」
『────情報取得中……。』
『>>>いや、手水鉢の方が普通は、わかんない気がするよ……? あ、あれは"蹲"ね?』
「ふぅん……"つくばい"かぁ」
先輩は、ナトリの家に詳しいのかな?
この朱と、木と、紙でできた家。……家?
けっこう、それぞれのアイテムの名前がわかるわ。
人からもらった知識、なんて、変な感じがするけど、
今はその知識のおかげで、風情や、趣が、わかるわね。
────美しい、箱庭だわ──……。
──! いかんいかん!
あの子を探さないと……。
鬼ごっこで、鬼がさぼって放置プレイとか、
負け犬のする事だわ……。
近所のガキンチョでも、
ちょっかいかけてくるクラスメイトでも、
私からは逃げられはせぬぞ。
「ふっふっふっふっふっふっ──……」
『────、……。』
『>>>き、きみ、鬼ごっことか好きなんだね?』
「勘違いしないで。いつもプライドを持って追っかけてるだけよ」
金と黒の木がある庭から離れ、
奥の方へと、進んでいく。
ただでさえ、ブーツがキンキン言うんだ。
この庭の風景に免じて、走るのは勘弁してやろう。
てかあの子も足音してたから、
思っくそ靴のままで逃走してんじゃないの。
人んアイテムバッグん中に、土足で入りよってからに。
「徒歩で、追い込む」
『────非推奨の行動』
『>>>変な縛りプレイするのやめようね』
奥に、進む。
……キン、……キン……。
……!
急に、暗くなってきたような……。
ちょっと、不気味ね……。
ザラザラ……キン!
「……」
不安からだろうか。
自然と、端に寄り、
壁に片手を付けて、歩こうとしていた。
朱色の赤と赤の間、"漆喰"の壁に、
グローブがかすり、金の音が鳴る。
「……! ここ、こんなに暗かったっけ?」
明らかに、明度が落ちている。
ちょっと! 山火事! がんばって!
あんた、プチ太陽になれたでしょ!?
さっきは、すごい綺麗な空間だと思ったのに、
今は、静けさの中に、自分の音だけがあるみたいだ。
ここ、動いてる船の中なんだよね……?
少し奥に進んだだけで、
なんで、こんなに静かで、暗くなるの?
『────光度感知による異常な空間を確認。警戒して下さい。』
『>>>どーなってる……アンティ、少し移動しただけにしては、暗くなりすぎだ。視覚に注意して。ぷち山火事歯車、出すかい?』
「お願い。この建物、暗くなると、急にこわいね」
『>>>ははは……朱色が暗いと、ひどいな……』
「こぉらぁああ……」
『────小規模の"カーディフの火:召喚します。』
───にょき、にょき、きゅうん!
───ぼぼぉ──。
ちっちゃい炎の、歯車です。
おお、けっこう明るく見えるわね!
「おしゃ、じゃあ、私の前にこのまま飛ばして───」
─────キィン、カララン、コロン。
「────え?」
……──おちた。
火のはぐるま、おちた。
ん?
え?
なんで?
「……──クラウン、どしたの、歯車、落ちたわよ? あっ、火がつきっぱなしじゃないの! 床、こげるって! 私、食堂屋の娘だから、火の不始末にはうるさいんだかんねっ!」
…………。
────し────ん……。
「……? なんでしゃべんないの?」
まわりは、かなり、くらい。
わたしは、たてものの、なかにいる。
「……ちょと……クラウン? ……せんぱい?」
なにやってんのよ……。
床に転がる歯車の火は、思ったより明るいけど、
やはり、安心できるほどの充分な視覚は確保できない。
──そうだ! 前に、アナライズカードで、
夜でも見える地図のマスク! あれ作ったじゃないの!
あれをやってくれれば……よく見えて……。
「ちょっと、クラウンってば」
頭の上に回る相棒を、手で、さわって───。
すかっ。
……。
え?
……。
すかっ。すかっ。
「……」
いない。
あれ。
なんで。
サラサラ──……。
「ひゃっ──……!」
──ビクゥ──ッッ!!
何か、背中に、さわった!?
ぃぃい、いや、今もさわってるというか……。
おそるおそる、手を……。
掴む。
なんだこれ。
ぐいっ。
「うえっ」
ん、なんだこれ。
ひっぱると、頭がひっぱられる。
……あ。
これ、髪だ。
私の髪だわ。
なんでやねんな。
あれ……なんでツインテール、解けてんの?
頭やら、耳の上やら、さわる。
───!?
か、仮面もないじゃないの!?
あれッッ!?
……。
……。
……え?
────ボボッッ!
……!
「火が、床に……」
くらい。
少し離れた所に、
小さな火が出た、歯車が落ちている。
他に明るいものがないせいか、暗闇の中、
火の出る歯車の黄金が、鮮烈に照らしだされる。
すぐ側の朱色だけが、鮮やかに、目にうつった。
……このままじゃ、床の木に燃え移るかも……!
と、!? ……おかしい。
「……なんで、歯車を、飛ばせないの……?」
高速回転していなければ、
私にだって、歯車は宙に浮かせられるはずだわ!
なのに……!
「ピクリとも、しないじゃないの……」
……ダメだ。
……うごかない。
……このままじゃ、燃えてしまう。
……ひろわなきゃ。
近づく。
歯車に、手を伸ばす。
熱くないか、ちょっと、心配だ。
「──、……」
ちょん、ちょん。
……。
ぴと。
……。
うん……。
あつく、ない。
────キィン。
火のついた歯車を、手に入れた▼
持ち上げる。
──! あったかい……。
あれ、なんか、やたらとあったかいなぁ。
火って、こんなに、じわ〜〜っと、あったかいのね……。
……て、んな呑気なこと考えてるバヤイやないわ!?
ちょ! クラウン、先輩!? どこいった!?
はやく、ベアークラッチでもいいから出してよ!?
え!? ほんと、どこ行ったの!?
なんで頭の上にいないの!?
くらいくらい!
ちょっと見えるのが、逆にこわい!
うええ、なんでこんなトコロが、
私のアイテムバッグにぃぃ──……!
───ボボボッ──!
あぁっちゃ!
てか、火、あっつ!
なによこれ!
な、なんか、変じゃない?
変態製とはいえ、ドラゴンのヨロイ着てん────……。
妙に熱を感じる身体を、歯車の火で、照らす。
……。
……。
……。
……ぺた。
……ぺた。
……ふぬ。
「………………………………」
……ぺた。
……ぺた。
「ぬぁ」
……足踏み、してみるぅ。
……とてとて。
「………、ぅゆ、ぉ………」
あ、あわわ……。
あわわわわわ…………。
わたし……、
真っ裸だ…………。
しん、じら、れんぅぅ…………。
……アンティ・キティラ、15歳。
真っ暗な和風のお屋敷に、
真っ裸でェ、ほおりだされましたぁ、ぁ、ぁ……!
「み、み……、みとめたく、にゃいッッ……!」
ぼぼぉ〜〜。
◆初期装備◆
アンティ・キティラ
人間(♀)15歳
装飾:なし
頭部:なし
身体:なし
追加:火が出る歯車(小)
紋章:なし
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