メェにち ぴーえーろーぐーりーふー
ほんとうに、ようしゃがありません。
((((;゜Д゜))))
俺とキッティの前で、
神の偉業がなされている。
これは、伝説となるだろうか。
「──もぉぉぉおおおおしわけございませんでしたぁぁぁあああ!!!!!!!」
「 ……"もぉ"? ……羊よ、羊らしく、メェと鳴け…… 」
「メェェェエエエエエエエエエエ────!!!!!!!」
「にょぉぉんや、にょんやぁあああ────!!!」
「メ、メェェェエエエエエエエエエエ────!!!!!!!」
「…………」
「…………」
高らかなる足音で舞い降りた道化、
その威圧、既に神域に至り。
雌羊の剣士、生贄の如く崩れ、跪き、
雲のような頭、金の膝より下を向きたり。
うさぎの戦士、雌羊の背中にて、怒気を隠さず。
とか、言いたくなる光景だな……。
いったい、どうなっとるのだ……。
何故かとても偉そうな、黄金の道化が、語る。
「 ……巨乳なる羊よ、お前は二つの罪を犯した…… 」
「ふっ、ふたつでございますかっっ!?」
「 ……心して聞け…… 」
「ふぁ、ふぁあい……!」
「 ……ひとぉつ! あんた、私売ったろ…… 」
「もぉぉぉおおおしわけございませぇええんん!!!」
「 ……メェと鳴け…… 」
「メェェェエエエエエエエエ────!!!!」
「 ……チッ、巨乳の分際で、私を売るなど…… 」
お、おい……アンティ……。
それ、関係あるか?
「み、見てくださいギルマス……! 土下座してるヒキハさん、おっぱい地面に付いてますよ!? すごいですね……」
「お前なぁ……今はよさんか……」
「にょっきゃ────!!」
「 ……まぁ、それはよい……慈悲深い巨乳のことだ……あの夫婦を憐れに思ったのだろう…… 」
「もっ! 勿体なきお言葉ぁぁあ……!」
「 ……誰が差し向けたのか、わかった時、ブチ切れたがなァ…… 」
「ひ、ひぃぃぃぃいい────!!」
「 ……メェと鳴けと言っ「メェェェエエエ────!!」…… 」
「うわぁ……なんだこれ……」
「…………」
キッティが、複雑な表情で、
目の前の惨事を見つめている。
いや……俺も同じような顔をしているだろう……。
し、信じられん……。
あの、規律正しいことで有名な、ヒキハ・シナインズが……!
あんなふざけた格好した郵送配達職に、
土下座しながら媚びているなどと……!?
あ、これダメだ。
"隠蔽"のジェム使おう……。
おら。
俺が床に、青色の飴玉のようなジェムを落とすと、
そこから光が拡がり、執務室の全体を撫でていく。
これで、この部屋の気配や音は、外には漏れない。
魔物から身を隠す時や、秘密の話をする時に使う。
少し光が見えたはずだが、
目の前の黄金ピエロと、土下座する副隊長殿は、
まるで意に介していないようだ……。
「 ……他にも、とても言いたいことが沢山あるが……ふたぁつ……! 」
「(ブルブルブル……)」
「 ……いま、私がどんな気持ちでここに来たかわかるか…… 」
「(ふるふるふる……)」
「 ……"王都から、規律に厳しい剣士がやってきた"……私はなぁ、そぉ聞いたんだ……ちょっと今回、ハデにやらかしたかんな…… 」
「あ、やっぱりアンティさんだったんですね……」
「ちょっとじゃないだろう……」
「 ……ぜぇええっっったい、しょっぴかれると思ったんだぞ…… 」
「そ、そのようなことはッ!!」
「 ……私はなァ……いま、ここに、"自首"する気持ちで、きたんだよォォ……! 」
「ああ、ああわわわわわ……」
「 ……"やっべぇなぁ、こりゃもう明るい道は歩けねぇかなァ"と思って、ここまできたらぁ……おォや、おやおやおやおや……"元凶のおっぱい羊サマ"が、いるじゃああーりませんかァあ……! 」
「ごごごごっ……、ごみゃんなさぁぁいいいいいィィ────……!!!」
「たて」
「──ひゃ、ひゃイッ!!!」
────シュバっ!!!
────ぼよんぼよん。
「にょわ────!!!」
ひゅ〜〜……──ぽむ。
……ヒキハ・シナインズが立った勢いで、
上に乗っていたうさ丸が、俺の頭まで飛んできた。
なかなかの勢いだったな……。
見えん、ちょっとどけ。
「にょむぅ〜〜……」
「ぎ、ギルマス!? 今の見ましたかッ!? ヒキハさん、立った瞬間に、おっぱいが!! ぼよんぼよんッ!? ぼよんぼよんッて!!!」
「声を抑えろキッティ……」
「 ……………………………… 」
「ひぃぃぃぃぃぃぃいい……!!!」
「 …………………キン…… 」
……アンティ。
お前、何自分の胸の装甲、さわってやがる……。
あ、震えだした。
おまえ、まさか……。
────きィィイン!!!
自身の装甲から目線を戻し、
一歩、羊へと踏み込んだクルルカンの目には、
なんか、すごいオーラが宿っていた……。
黄金の仮面の前には、
神が与えし、ふた山の、生け贄が────。
「 ……ヒキ姉……何があっても、"きをつけ"、な……? 」
「 ひ!? ひゃ、ひゃあいぃぃ……!! 」
「 ……今から謝ることも許さん……"メェ"とだけ、しゃべる事を許す…… 」
「 みゃ、メェェェエエ……! 」
こ、こいつ……ちょっとやり過ぎでは……。
「お、おいコラ、アンティお前、何をする気……」
──────ぐわしっ!!
────!?
「────なんだとッッ!!?」
「つ、つかんだわッッ!? りょ、両手でッッ!? あの、ふた山の供物を────!!」
「……にょきっと?」
ま、まさか、この義賊……!
や、やめろっ!
取り返しのつかん事になるぞっ!?
────ぐんにっ。
「ひ、ひぃぃぃぇぇええ───!!」
「"メェ"だって、言っただろぉぉ────!!」
「め、メェェェエエ────!!」
「"きをつけ"してろぉぉ────!!」
「メェェェエエぇぇ────ッ!!!」
「あわわわわわ……」
「お、おい、よせっ……!!」
「……にょきっ?」
……ドニオスギルドにて、
この日ほど、"隠蔽"のジェムが役に立った日は、
他に、ないだろう……。
「このおっぱいかぁぁ────!!」
────もんみゅもんみゅ。
「めゃ、メェェェエエぇ────!!」
「このおっぱいが、私をハメたのかぁ────!!」
────もんみょもんみょ。
「め、メェええええええぇぇえええ────!!」
「めっさ顔の前で、見せつけやがってぇぇ────!!」
────もんみゃもんみゃ。
「めっ、めぇええええええゅゅ────!!」
「ぎ、ギルマス!! 見てますか!! ちょっと!! あれ凄いですよッッ!? ホラっ!! 金のグローブが、ほらっ!? 今一瞬、指が見えませんでしたよッッ!? ちょ! え……ギルマス? ……何、書類、まるめてるんですか?」
筒状に丸めた書類を、片手に当てる。
……ポンポン。
よし、こんくらいの紙の厚さでいいだろう……。
行き過ぎた黄金神は、制裁されねばならん。
「くっそぉぉ───!! なんだこれぇぇ────!!」
────むぅなんむぅなん。
「め、めぇぇぇえぁ、えぁえぇぇ〜〜……」
「神さまの、バッッキャロぉぉ────!!」
────なぁむんなぁむん。
「めや、やややぁあやぁ……、ゅ〜〜……」
「こ、これで勝ったとおも──」
「──やりすぎだバカタレ」
────────パコ───────ォオオン!!!!!
────────……。
──────……。
────……。
「……いっっ、たぁぁあああ───!! な、何するんですか、ヒゲイドさぁん……!」
「私怨でヒトの胸を揉むな」
「はっ、はっ、はっ、はっ、ハァ、ハァァ、ぁ……!」
「だ、だいじょぶですか? ……すごかったですねぇ」
「にょ、にょんむ?」
後頭部を押さえて、
涙目になった黄金の義賊、クルルカン。
やれやれ……神の勢いは、おさまったか……。
「おいアンティ、ひとつきかせろ……ヒキハ・シナインズと、どのような関係だ……?」
「え……? ぅ……、……と、"ともだち"……?」
「…………」
……おまえなぁ。
ともだちだからって、
あんなおっぱい揉んだら、ダメだろう……。
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