表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/1216

旅立ちと、わがまま仮面 さーしーえー

 わー。


 いーい天気だなぁー。


 絶好の、旅立ち日和だなー。


 机の上に、仮面あるんよ。


 ふふふふふー。






「ありえねぇー……」


 人間、恐怖のどん底でも、けっこう寝れるもんだ。





 ちなみに、けっこう寝すごした。

 もう昼前だね。

 お日様の位置は上の方だ。

 今日はお店は休みだ。

 朝ごはんと昼ごはんは、同時になりそうだ。



 あらためて、仮面を見る。

 昨日、(ひと)りでに動いてたやつだ。

 お日様パワーで、かなり恐怖が薄れている。

 冷静に見ると、けっこう派手な色の、お面だ。


 全体の色は、オレンジベース。

 黄色いラインの装飾。

 かぶると、(あご)は少し下から、はみ出すだろう。

 貴族様が、舞踏会とかにしていけば、案外似合うかもしれない。

 少しだけ艶があり、朝日でキラキラ光っている。


 呪われてなければ、美しい仮面だった。


「呪われてなければなぁー……」


 仮面を見る。


 こちらをまっすぐ、向いている。


 ……なんか、期待しているような印象を受けるのは、気のせいだろうか。


「ううう、わかりました、わかりましたよ。連れてきゃいいんでしょ」


 机とイスごと、仮面を格納。

 ついでにベッドも、バッグ歯車(アイテムストレージ)に突っ込み、遅い食事を食べに、1階におりた。








「アンティ、風邪でも引いたか?」

「う〜ん、熱はないわねぇ〜」

「はっはっは! 旅立ちに緊張してやがるのかぃ!」

「あらあら〜」


 いや、ごめん父さん母さん。

 ちょっと呪われちゃって。

 放心しぎみで、ご飯食べてごめんね。

 せっかくの門出なのにね。


 ほわほわと、食堂(いえ)を出る。

 父さんらに、声をかけられる。


「アンティ、俺達はここまでだ」

「ふふ」

「! え、なんで……」


 街門まで、付いてきてくれないの……?


「アンティ、見ろ」

「? え……あ」


 この時、私は父さんらの言いたい事がわかった。


 父さんと、母さん、そして、後ろの食堂。

 馬鹿でかい、オレンジ色の派手な看板。

 我が家の風景(・・・・・・)。ここなんだ。


「ここが、お前の帰る場所なんだ」

「ここで、私達は、待っているわ」

「「だから、ここから送りださなきゃいけない」」


 そうだ、この光景を、瞳に、焼き付けなきゃいけない。

 だから、ここなんだね。


 父さんと、母さんに、抱きつく。


「ありがとう……行ってきます!」

「ああ!」

「いってらっしゃい〜」


 ふふ、そうだ。

 私いつも、ここから見送ってもらったじゃない。

 変わらないんだ、それと。


 とても、安心したよ。




「まぁ、1ヶ月後に、テストだけ受けに帰ってくんだろ?」

「父さん、ムード台無しだから」



挿絵(By みてみん)









 街門に行くまでに、何人かの常連さんに声をかけられる。

 元気でやるんだよ、とか。

 そんな軽装で大丈夫か、とか。


 バッグ歯車持ちですから、とは言えんので、先に荷物だけ送ってるとか何とか言い訳した。

 嘘ついてごめん。


 街門につくと、門番のおっちゃんがいた。


「よう、嬢ちゃん!」

「は〜い、こんちは」

「いよいよだな」

「うん!」

「……がんばれよ!」

「……うん!」




 馬車の停留所に行くまで、おっちゃんは、手をふり続けてくれた。


 シンプルな言葉だっだけど、なんか、いいよね。

 お日様の温かさが、心まで届いたみたいだった!


 ……超呪われてんだけどね。









 待合の馬車があったので、乗り込む。

 天気がいいから、4、5ジカで、ドニオスに着くはずだ。

 私の他に、数人乗り合いがいた。

 比較的すいている。




 さて、これから東に進む訳だが、私の気になる事は、ただひとつ。


 仮面さんの、行きたい所が、果たして(・・・・)ドニオスかどうか(・・・・・・・・)、だ。


 他のお客さんは、お昼すぎだから、うとうとしている。

 私は気づかれないように、そっと、歯車から仮面をとりだす。


 キラッ


 おお……やっぱりハデだな……

 オレンジ、て。

 こう見ると、ホント呪いの仮面っぽくないわね……

 もっと、黒とか紫とか、他にあんでしょうよ。



 ────ワクワク。


 ……私は気が狂ったのか。

 一瞬、仮面がわくわくしているように感じた。

 そんなわけねぇ、そんなわけねぇよ。

 自分の感性を疑うわ。


(クラウン。仮面の、べくとる(・・・・)、だったっけ? 行きたい方向を(しめ)せる? )

『────レディ(準備完了)。表示開始。』


 透明の板のような物が、仮面の側に出る。

 アナライズカードの材質だね。

 ……矢印みたいなカタチだ。

 なるほど。こっちに進まないと呪われるのね。


「かんべんしてほしいわね──」

「? 何がだい?」

「! な! 何でもないです……」


 あっぶな──……。

 向かいのお客さん、起きてたよ。

 やばい、独り言に見えるよね……。

 き、気をつけないと……。




 仮面の矢印は、やはりドニオスの方に向いている。

 うごいてくれるなよ……。

 私は祈る事しか、できなかった。





 ガタゴト、がたごと。


 パカパカ、ぱかぱか。





 2ジカほど経った時、悲劇がおきた。


 矢印の方向が、変わったのだ。






「……さいあくだ」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ