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ペッ、しなさい、ペッ! さーしーえー




 ───────────────。




 穴には、何も無い。




 なあんにも、ない。




 光が、うがった。




「…………はぁ、はぁ……」



 おわった、のかな……。



 きぃいいいん──… … …



挿絵(By みてみん)

「ふう…… ふう……」



 眩しくて、夢みたいだ。


 自分の姿が、よく見えない。


 手の中の紫には、


 この穴にあった、全ての白が、集まっていた。


 あ……いま、撃ち出しちゃった(・・・・・・・・)から、


 ちょっと、減っちゃったかもしんないな……。



{{ ……───、───ティ───!!! }}



 あ……イニィさん、無事だ……。


 何もかも無くなった縦穴の端っこの壁に、


 ガルンから……え、あれ、腕かな?


 なんか生えてるのが、壁に突き刺さって、


 車体を支えている……。


 よかった……


 少しだけ、光を反らせられたんだ……。


 これで……これで、終わり、だよね……。



 これで……。



 あ、そいえば……



 ゼロン、ツさん、だいじょ……。





        ぐらッ────……






{{ ……──アンティ──────!!! }}







   ☆

  ☆

 ☆

 ☆           ☆

  ☆         ☆

   ☆       ☆

    ☆    ☆

     ☆ ☆

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        ☆

       ☆

       ☆      

 

       ☆


      

       ☆


       ☆





       ☆







 ────。



「んあ……」


{{ あ……起きたわね? }}


「……ぷに悪魔がいる……」


{{ ……ひっぱたくわよ? }}



 気づけば。


 イニィさんに、膝枕されていた。


 見た目は小さな女の子なので、


 なんか不思議な気分だ。


 起き上がる。



「よ……と、ここ、は……?」


{{ 底よ。一番、底 }}


「え"っ……」


 底って……レエン湖の底!?


「そ、それにしては、明るくない!?」


{{ 今、最後の白のカケラが、ここに集まっているからね }}


「──?」


 イニィさんの言葉はよくわからなかったけど、

 辺りを見ると、ヒールスライムが覆っていて、

 淡く、白く、輝いていた。

 表面のカタチが特徴的で、

 まるで、草原のような、絨毯のような……。

 スライムとは思えないほど、きれいだわ。


『──ガルロロロロ……ガルンッ!』


「! ガルン! あんたも無事だったのね! ……あんた、自分だけでも走れんのね……」


『──ガルゥ〜〜ン♪』


 白の草原に、魔獣が宿った黒のバイクが、映える。

 ……車体の横から、三本爪の腕のようなものが出て、

 上顎の部分を、ぽりぽりと掻いている。

 なんや、照れとんのか。


 ふぅッッ、と息を付き、

 何気なしに、自分の腕を見る。

 あれっ。この見慣れた金ピカグローブは……!


「──! 元に、戻ってる……!」


{{ ああ……あの姿からは、割とすぐに戻ってたわよ? まったく……貴女、本当に神様じゃ、ないんでしょうね? }}


「えっ、あ、あはは……」


『>>>ぼくらは本当の意味で、ヨロイの力を引き出したわけじゃない。あの時、かなり膨大な光属性魔法が、きみに集まっていたからねー……ヨロイは緊急措置として、きみを守ってくれたんだと思うよ』


「な、なるほど──……って、先輩っ!?」


『>>>やぁ。元気そうだね! よかったよ!』


「いや、それはこっちのセリフ……てか、先輩、声が……!」


『>>>はは……なんでだろね。普通に喋れるようになっちゃったね!』


「ホントにっ!?」


 私の目の前の縦長のアナライズカードには、

 以前通り、会話記録(ログ)が連なって、

 にょきにょき伸びていく。

 ほら、私がさっき言った会話内容も、

 ちゃんと記録されてるわ。

 でも今は、先輩もクラウンと一緒で、

 声もちゃんと聞こえてくるわっ!


「──! そうだっ! クラウンは!?」


『>>>あ、いや……さっきから、すぐ側にいるんだけどね……』


『────じぃ〜〜〜〜……。』



 ……えっ。

 な、なに……この会話記録(ログ)

 じぃ〜〜〜〜……、って……。



『>>>………』


『────じぃ〜〜〜〜……。』


「……えっと、どしたん……」


『>>>はぁ……ちょと、クラウンちゃん? さっきから何なんだぃ?』


『────ッ!。な、何でもありません。クラウンギアは大丈夫です。大丈夫:判定……。』 


『>>>ち、ちょっと顔を近づけただけで、そんなにビックリしなくても……』


 え、何なんだこいつら……。


{{ なに、どしたのピエロちゃん、変な顔よ }}

「 変ッ!? し、失礼ね! イニィさん……こいつら何か、おかしいわ……」

{{ ?? }}


 な、なんだろう。

 この2人の、なんかギクシャクした感じは……。


『>>>えーっと……』

『────……ぷぃ。』


「……アンタ達、チャラキングになった影響で、どっかヤラれたんじゃないの……」


『>>>! よしてくれよ……思い出したくない』

『────むっ。そ:それはどう言う意味ですか。』

『>>>えっ、ど、どうって……?』

『────私と直結したのは、忌み嫌う思い出に分類されるのですか。』

『>>>いやいやいや! そこまでは言ってないでしょっ! たっ、ただ、あんなキザ野郎になっちゃうとは、その……心の準備と防御力がさぁ……』

『────むむむっ。』


 ……。


「……うん、なんかケンカしてるだけっぽいな。ほっとこう」

{{ そ、それで貴女がいいのなら…… }}


 あ──、だいじょぶだいじょぶ。

 この程度のケンカ、食堂じゃ、日常茶飯事よ。

 気にしてたらやってらんないわ?


 ……ファサ──……


「ありゃ、白金の劇場幕……? いつの間に」


『────熟睡していましたので、掛けるものをと模索しました。』

『>>>ベッドを"落とそうか"、迷ったんだけどね? ふふっ』

『────なッ……。』


「……」


 ……アンタらねぇ。

 ケンカしてるのか、仲良いのか、

 はっきりしなさいよ。



『『『 ふむ…… 元気そうだね 黄金の少女よ…… 』』』


「……!!」


 えらい響く、男性の渋い声がして、

 さっと後ろを振り返ると──……、


「……──"木"?」


 めちゃくちゃでかい、白い花を咲かせた大樹が、

 私の頭上から、枝を垂らしていた。

 うっわ──!!!


「……光ってる……綺麗な木ね!」


{{ あら、よかったわね、お父様 }}


『『『 はっはっは……この歳で、娘さんから、綺麗と言われるとはなぁ…… 』』』


「えっ!? お、"お父様"……? まさか……ゼロンツさんなんですかっ!?」


『『『 さよう。其方のお陰で、生き長らえている 』』』


「ふ、ふぇ────!!」


 あんのバカのせいで、

 木のコブみたいになっちゃったゼロンツさんが、

 こんな、でっかい木になっていたなんて……!


『『『 黄金の少女よ……よくぞ、舞い戻った──! 』』』


「あ、いえ……」


 わぁ……でっかい聖なる木に、話しかけられている。

 こんなことって、人生にあるのね……。


『『『 其方のあの、光の鉄槌のお陰で、"くろいあな"も、最初の状態に戻ったようだ 』』』


「──! "最初の状態"!? ……無くなった、ワケじゃないのっ!?」


『『『 うむ……見よ 』』』



 ……──ウウ、ウウウゥゥ──……。



「これって……!!」


 目の前に、ちぃさな、ちぃさな、

 飴玉くらいの大きさの、

 "まっくろ"が、そこにあった。


「…………この、浮いているのが……」


『『『 うむ……全ての元凶、"くろいあな"だ…… 』』』


 大樹となったゼロンツさんが、

 重々しく、肯定する。


『『『 其方が金の力を使い、"しろいふた"に込められた力をぶつけ、ここまで小さくすることができた……しかし、この小さな暗黒は、このままではまた拡がりだし、悲劇は、繰り返されるだろう…… 』』』


「……完全に消すことは、できないんですか……!?」


{{ 流路を、読んでみたんだけどね……どうも、無理っぽいのよ…… }}


「! イニィさん……そんな……」


{{ ピエロちゃん、私ね? この"くろいあな"を持って、どこか遠くへ行こうと思うの }}


 ……!!!


「……いま、なんて言ったの……?」


{{ ……見なさい }}


「……?」


 イニィさんが、小さな片手を私に差し出す。

 ……? どういうこと?

 その手が何か……。


「……! イニィさんの手……透けて、る……?」


{{ 私を構成する、闇の魔法流路が、尽きかけているのよ }}


「……、……!!」


{{ "寿命"よ。私はもうすぐ、崩壊するわ }}


「うそよ……」


{{ その前に……無くなってしまう前に、どこか遠くへ、この"くろいあな"を、持っていこうと思うの }}


「そんな、そんな……どこへ……」


{{ うーん、空の上の、そのまた、上、とかかしら }}


「……バカ言わないで……」


 なん、でよ……

 命と引き換えにって、言ってるんだよ……?

 また……また、そんな事言って……。


「……クラウン、これ、格納できないの」


『────……不可能判定。スピリット系の魔物の特徴があります。』


「そんな……」


 せっかく、せっかくここまで……。


{{ ……できるだけ、遠くまで、運んでみせるわ }}


「……ふざけないで。お空に飛んでって、ひとりぼっちで死ぬなんて、私、許さないわ……」


{{ でも…… }}


「ゼロンツさんは、それでいいのッッ!? あんたの最愛の一人娘が、こんなこと言ってんだよ!!?」


『『『 ………… 』』』


「な、何とか言いなさいよっ!!!」


 な、なんで、最後に、

 こんな、こんな……


{{ ……いま、私の身体は、ガルンに依存して、何とか構成されているわ。そこに飛んでいる紫の時限結晶は、どうやら"しろいふた"と癒着してしまっていて、闇属性である私の糧にはならないの…… }}


「……!」


 すぐ、真横に、

 小さな、長く、白い羽根を生やした、

 紫の結晶が、飛んでいた。

 ……今は、どうでもいい……。


「何か、何か方法はないの……ッ!? ほんとうにっ、なにも……」


 目の前の小さな悪魔は、

 このままだと、消えてしまう。

 せっかく、ここまで、いっしょに……。

 そんなの……イヤだよ……!


{{ ……アンティ。ガルンを私から切り離して、旅に連れてってほしいの…… }}


「……違う話、すんなよ……」


{{ その子のお陰で、私、ここにいても、すごぉく、楽しかったわ! }}


「……ねぇ、やめろって……」


{{ 外の世界をね、もっとその子に、見せてあげたいのよ }}


「それはっ……! イニィさんだって……!」


{{ ……充分、生きたわ。とても、とても。すごく、ながく。もう…… }}


「やだぁ……」


『……──ガルンガルン……?』


{{ ……! ガルン…… }}


 心の宿った魔獣が、近づいてきて、

 不安そうに、悪魔に近づく。

 目の前には、光を吸い込んでいるような、

 真っ黒でちいさな、球体がある。


{{ ガルン、ごめんね…… }}


『……ガル……』



 ……ホントに、それしか、ないのかな……。


 ガルンだって、とても寂しいに決まってるわ……!


 ほら、そんなに大きく、


 クチをあけて───────……。




「──んっ?」




 ……………………。




    クチをあけて(・・・・・・)




『────ガガァ───────……! 』




{{ え あ、ちょ……! }}





『────ガップン……!』







「…………」



{{ ………… }}



『────……。』



『>>>…………』



『『『 ………… 』』』




『……──ガムン、ガムン……ガムムルゥ!』


「な───────……」




 ここっ、ここここッッ!!


 コイツぅぅううつう!!!!


 "くろいあな"ァ、


 食いやがったぁあああああ──────!!!!!




『──ガルガム……──ゴックンガル!!』


「うわぁああああああちょっとぉおおおおおお!!!」


 あんたぁ、

 何やってんのよォおおおおおお────!!!!!


『──ガルンガルゥゥゥ────ンっ!!!』


『>>>うわぁ……。なんかやってやった感が……』

『────……喜びを表していると予測。』


「ちょ! おまっ! ペッ! ペッしなさいっペッ! ちょ、こら、ホントに何考えてんのあんたッ!! お腹壊すわよっ!!? 吐けっ! 吐けコラァ!」


『──ガルッ!? ガガッ……ガルンガルゥン???』


「いや、あんたね……」


 上手いこと車体ひねって、

 首傾げてるように見せてんじゃないわよ……。

 あんた何食ったか、わかってんの!?


『────告。ガルンツァーはバッグ歯車へ格納:可能判定です。』

「え……──ぅえッッ!!? しまえんのっ!? ガルンごと、"くろいあな"、しまえるの!?」


{{ うそぉ…… }}

「えっ、次は何……!?」

{{ 私の身体の流路……今、再構成されたわ……。何、この高密度の闇魔法……ちょっ……これ私、死ぬの無理だわ…… }}

「────マジでっっ!!?」



 え、てことは……。






『『『 万事、解決なりぃぃいいいいいいい!!!!! 』』』




「ちょ、おいコラ大木親父いぃぃッッ!! てめ都合よくシめてんじゃねぇゾごるああぁぁあああああ!!!」





 ────クワッ!






 ────。



 永くの因縁から解放された、


 レエンの地にて。


 聖なる大樹さんに、


 ────ちょい、叫びました。



          アンティ






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