こんなのはじめて さーしーえー
私、呪われました。
「(ぴがぎゃあああああ────!!!)」
ホントに怖い時の悲鳴は、小さい。
噛み殺すみたいに、口が小さくなるからだ。
いや他の人は知らんけど。
私はそのタイプなので、ご近所に迷惑をかけずにすみました。
「そんなばやいやない、そんなばやいやない、そんなばやいやない…………」
1.悲鳴をあげる(噛み殺し気味)
2.仮面を投げる(机方向)
3.布団をかぶる(警戒のため、顔露出)イマココ。
────この間、約1ビョウ。
ガクガクガクガクブルブル……。
なんでや、なんでこないなったんや……。
放り投げた仮面は、机の上に着地したらしい。
さっきは裏から見たから、お皿みたいだった。
窓の月明かりで、照らし出される。
う、う、う、こわいよぅ。
のろいなんて、うけたくないよう……。
半泣きである。
学校の奴らのイタズラだろうか……
それにしては悪質すぎる……
さわっただけで呪いもらうとか……
「クラウン……私どうなっちゃうの……」
『────分析完了。
現在、状態異常の兆候は見られません。志向性呪詛に由来する。ベクトル指定以外の方角に移動すると発現する呪詛と予測。』
「わからんわからん! わかりやすく! べくとる指定って、どーゆーことぉ……」
『────希望の方角に進行しない場合、呪詛が発動する可能性有。』
「なによそれ……」
明日に私、旅立つんだってば。
そんな、わがまま言われても。
それに、仮面さんの行きたい方向なんて、どうやってわかんのよ……うぅ……
カリカリ……
びくっ。
「いまのなに」
…………。
「…………」
……カリカリ。
「ひっ!」
う、
う、
う、
うごいてるうごいてるうごいてる仮面うごいてるうごいてるよあっちだまどのほうだそっちだねそっちいきたいんだねこわいこわいこわいなんでうごくのもういやおうちかえるここがおうちだねあしたからちがうけどねどうしよどうしよどうしよ────……
「────うぇぇぇぇぇぇん……」
全泣きである。
……ヵタン
机の上を進んでいた仮面は、机と壁の境目までいった。
……カタ、コト。
……カタ、コト。
それ以上は、進めない。
……カタ、コト。
……カタ、コト。
……こんなの、一晩中きいてたら、気が狂う。
窓の、方向。
────ドニオスの方だ。
……カタ、コト。
……カタ、コト。
こわい。
こわい。
このままじゃダメだ。
「────────仮面さん」
カタッ!
「っ!」
…………。
「──仮面、さん、きいてください……」
…………。
「私、明日、ドニオスに、行くんです」
音が、止まった。
「あなたが、行きたいほうと、同じ、です」
仮面に、話しかけるなんて、おかしいな。
おかしいけど────……
「どこまで行けるか、わかりません。でも、進みます。……だから、今日は、じっとしててくれませんか……」
…………。
………………。
……………………。
と、まった。
膝をかかえ、眠った。










