おぺれーしょんずしーくれっと さーしーえー
さーしーえー追加(●´ω`●)+
>>>天井も床もない。
>>>無限のような、空間で──。
『>>>こっちはまだ見つけられない! そっちは!?』
『────こちらも反応ありません。』
『──ニ"ャウニ"ャウ。』
『──ムミャ──!。』
ぼくたちがいる、この空間。
アンティの、心のセカイか。
はたまた、ジゲンの狭間か。
アンティも、頑張ってくれている。
ガルンと、イニィさんと一緒に、
あの"魔王"と言うべき存在の、
凄まじい攻撃を、避け続けてくれていた。
すっぽりと、ぼくのすぐ目の前の空間に、
背中が当たりそうなくらいに寄りかかる、
まるで機械人形のような、金色の女の子。
この空間の支配者とも言える、
王冠の化身の少女の声が、ひびく──。
『────3号機、4号機は、アナライズカードスキャナ:連続射出用意:はじめ。6号機は引き続きイニィ・スリーフォウのスライムロードの作成の補助を進行。』
『──ミャ──!。』
『──ミャウミャウ!。』
『──ナァ──ナゥ。』
カシャカシャ、フニャフニャ、シャカシャカ──!!
ぼくらの周りには、彼女が組み上げた、
小さな猫のような姿のプログラムが7匹、
その丸っこい爪で、淡く光るキーボードを、
ひっかくように、操作している……よな。
……あれ、殴ってるんじゃないよな?
『──ミンミャ──!!。』
『──ミャウミャウ!!。』
シュシュシュン!!
チ────ン!!
『>>>っ! 速いね! お利口さんだ! 』
『──ミ"ャミ"ャミ"ャ〜〜!。』
……な、なんでダミ声なんだい。
"時限結晶探索用"のプログラムが完成し、
ぼくたちのいる場所に、
"金色の流路の束"が生まれる。
その光の筋たちは、カクカクと曲がりながら、
"アンティ達のいる側の世界"へと伝わって、
スキルとしての、"概念干渉"を引き起こすのだ。
──もうすぐ、"起動"する!
『──ガルルロロォオオオン!!! 』
「ちぇ! いきなし攻撃が多くなったねっ!? 」
{{ ピエロちゃん! 次はまた、右からくるわよ! }}
暗黒の魔王が繰り出す、闇の魔法の渦。
……まるで、竜巻だ……!!
黒の嵐の中で、
白い天国へ続くような道が伸び、
そこを、縫うように、咆哮が、翔ける。
翔ける。
翔ける。
翔ける。
まだか。
……──ブゥゥヴオオオン──!!
『>>>よしっ! アンティ! イニィさん! 今から探知用のアナライズカードを射出するよっ! 』
「!? えっと、なん──……!! 」
まだアンティが喋り終わらない内。
あっちの世界の、爆走するガルンツァーの左右に、
何枚も重なった、四角いガラス板のようなものが、
転送される。アナライズカードの積層体。
まるで透明な本がいっぱい、
横一列に、並んだみたいだ。
『────射出開始。』
『──ニ"ャッニャ!。』
──ズパンッ!
シュバババババババババ───!!!!!!
飛び立つ。
シルクハットから飛び出るトランプのような、
軽やかな軌道を描いて。
外側のアナライズカードから、
順番に射出される。
「うわとっ! ぴゅんぴゅん飛んでくっ! 」
『──ガルンガルゥゥウウウンン!!!』
『────射出完了。』
『>>>おっけ!』
ぼくの手には、そうだな……。
"透明の操縦桿"って表現が、
イチバンしっくりくるかな?
それをと……ポチッとな。
チュウウン、ビュオオオオッッ───!!
撃ち出された、いっぱいのアナライズカード。
それらが一気に大きくなり、
手当り次第、
ヒールスライムの内部をスキャニングしていく。
目の前のクラウンちゃんの手には、
小猫ちゃんたちのより大きめの、
透明のキーボードが、左右に一機ずつ。
キッチンミトンのような手で直接は触れず、
彼女が手をかざすだけで、光のキーボタンは、
反応していく。
『────感度良好。スキャン結果:1-17、19-32、反応:無。』
『>>>18もダメだ、33から47は……ああ、消えたね』
『────48-50もロスト。スキャントライ:失敗しました。』
『>>>──っふぅッ!』
冷や汗をかき、短いため息がでた。
心臓なんてもう無いのに、ドクドクする。
これ、けっこうな無理ゲーだな……。
ギガンティック・ヒールスライム、デカいよ……。
琵琶湖?
ナイアガラの滝?
その中から、小石を探すようなもんだよな……。
なぃわ……。
" ……──ガルガギャアアアィイイオオオオオ──!!!! "
「イニィさん! もっと真横に道を出してっ!」
{{ ──!? これ以上の傾斜は、道と言うより"壁"よっ!? }}
魔王の攻撃は、今も続いてるっ!
次の攻撃は……あれはまるで、真っ黒な土石流だっ!
「ガルンっ!! 気合い入れなぁぁ!!」
『──ガルルルゥ──ッン!!!』
{{ ちィィ──!! }}
何とか加速して、逃げ切ろうとしてる。
それをぼくは、
ここで一緒に、でも、
"違う場所"で、見てる──……。
『>>>……』
『────……クルルカン? ──……。』
……。
……はがゆい、な。
ぼくは、もう。
ここから見る事しか、できない。
もう、ぼくの体は、なくなったのだから。
あの聖なる白い花の下で、
かつて愛したあの人の側で、
もう骨すら、残っていないかもしれない。
また、黄金の身体を借りるべきだろうか。
……いや、アンティの身体はもう、
彼女が一番、よく動かせる。
ラクーンの里で"操り人形"にしてしまった時。
ダメージを代償に、彼女は"先見の感覚"を得た。
レエンの、空のネバネバ飛行戦で。
恐らく、自分の身体が、どこまで"まわる"のか、
彼女は、"限界可動範囲"を見極めた。
過去の思い出の、"夕焼けの生徒会室"で。
ぼく自身の、あの日までの"あちらの知識"を、
断片的ではあるが、手に入れた。
ぼくではもう、
彼女の身体で、
彼女以上のスペックは、出せない。
だから、見守ることだけが、残った。
『>>>どうすればいい……』
いま、ぼくたちは、避けまくっているだけだ。
いずれ、消耗するぞ。
ガルンを組んでいる歯車も、無限では、無い。
このままじゃ、ダメだ……!
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ───
『>>>……』
……わからない、わからないんだ。
この、広大なる白の中から、
"紫の輝き"を、どう見つければ────……!
いったい、どう────……、
『────似合わない。いえ、"らしい"と言いましょうか。』
『>>>え……?』
静かに冷静さを失いつつある"仮面"に、
静かに"王の冠"が語りかけ──……、
『────いいです、ごっ!……。』
────ずしゅ。
『>>>──ぶぉっ、フォッ……! 』
……──思いっきり上を向いた彼女の、
頭の大きな冠の先が、胸に、ささった。
……いたぃっす。
『────クラウンギアは謝罪を申せ……ごめんなさい。』
『>>>ぐ、ぐっ……! い、いいってことよ。で、な、なんだい……?』
『────……。』
クラウンちゃんは、いつもより少し、
申し訳無さそうな無表情の後に、
……凛とした言葉を、続ける。
『────あなたは、時にお調子者で、時に、臆病者です。』
『>>>…………!』
はっ、ははっ……。
戦闘中ではあったけど、
その、短なひと言に、
ぼくのすべてが、集約されているようで。
ズッコンと、ぼくの心に落ちた。
実に的確な、ぼくの印象だ。
この子、冷静に見えて、
かなありズケズケ、踏み入ってきたなぁ、はは。
『>>>"お調子者で臆病者"、か……』
ホントの事すぎて、ぐうの音も出ないな。
その通りだ。
『>>>ぼくは、きみに……"糾弾"、されるんだろうね』
下の彼女の目を見て、
少し微笑んで、言う。
それは苦笑?
それとも、冷静なロボットみたいなフリして、
ズケズケ言いたいこと言ってくる、
親愛な仲間に対しての親しみ?
はは。
死んだ後にも、
こういう風に直接、
面と向かって、けなされるのは、
滑稽なことだなぁ。
『────……"糾弾"されるかも:という予測については、私にはよく:わかりません。』
ありゃ……!
ぼくのはやとちり……?
『>>>お調子者のバカは、怒られないのかな?』
王冠の化身は、ぐりっと上を向いて、
こちらをまっすぐ見ている。
──そして、告げられる。
『────クルルカン。
"お調子者"は、"知識に幅と余裕があるから"。
"臆病者"は、"私達を大切に思っているから"。
────今はあなたを、好ましく思います。』
『>>> ──── 』
ふぇ。
と?
おい、ちょ。
そんな真っ直ぐに、
言うもんじゃ、ないって。
長いこと、仮面だったんだから。
ぼく、ひとの目を見て、しゃべるの、
基本的には、得意じゃあ、ないんだってば。
『>>> ………… 』
何とか、目をそらさずに、
思いっきり、言葉を詰まらせる。
面食らったのだ。
こーのこったら、真面目な顔して、
なんて小っ恥ずかしい事を言うんだ……
完全に、不意打ちだったじゃないかぁ……!
……じぃ────────っ……。
『>>>ぇ……?』
『────あなたが"糾弾"されると予測した事が、私はよく:理解できない。』
『>>>あ、いや……ちょと』
……じぃ────────っ……。
『>>>……』
下からの、ガン見である。
はてなの、ガン見である。
すっごいこっち、見てますよ。
『──ガルルルオオオオンンン──!!!』
「とぉりゃゃあ───!!!」
{{ あくまなかせぇ───!! }}
──ビュ──────ン!!!
あっ! アンティ!
逃げきった、すごっ。
『>>>……──はッ!』
いっ、いや、クラウンちゃん、
ちょ、後にしよう!
いま、魔王戦だからね?
アンティ達、がんばってっかんね?
ちょっと後で、ゆっくり話しよ────、
『────……私は、人では無いから、理解できないので────、』
『>>> きみには心がある。間違いないことだ 』
『──────。』
──!
す、すごい被せぎみで、否定してた。
い、いやだって、変な事、言うから。
『────……。』
『>>>…………。』
あの、クラウンさん……
いま、魔王と、バトってんです……。
そんな、『ぽかーん』って、くち開けたまま、
こっちをジッと、見ないでくれるかな?
『──────。』
『>>>……前見て、前……』
『────……む。』
ぷいっ。
前、見た。
素直。
……。
……ぐいっ、とふっ。
『>>>──!!?』
いきなり! 膝の上に! 乗ってきたっ!
『>>>なん────ッ!? 』
『────試してみたい事があります。』
『>>>えっ』
……?
ためす……って言ったか?
いや、ていうか、
最初にきみを膝に乗せた時、
いやがってなかったかい……?
あれから気を使って、
いつも、ちょっと離れてたんだけど……。
" オ ─ オ ─ オ "
──え?
ガルンに跨ったアンティ達の動きが、
─────"遅く"なっている!?
『>>>クラウンちゃん!? 』
きみ……!?
"反射速度"を使った"思考加速"を、
なぜ、ぼくたち2人"だけ"に……!
首を傾げ、問うと、
問いで、返された──。
『────……クルルカン。私の"知識の源流"が、どこからくるのか、知っていますか。』
『>>>! きみの知識の、"源流"──?』
……?
どういう事だ?
『────あなたは、不思議ではないのですか。あなただからこそ。──……私の知識が。』
『>>>きみ──……』
クラウンギア。
アンティキティラ、唯一無二の、
スキルにして、意思を持つ、相棒。
その情報量に、ぼくは確かに、疑問を持っている。
『>>>……きみの構成媒体の一つである"アナライズカード"には、初期ダンジョンコアの情報が詰まっていた……そうだろう?』
『────……。』
じっとこちらを見つめる、王冠の化身。
『>>>……』
……ちがう、それだけじゃ、ないよな。
だって、説明できない。
明らかに、彼女の知識の幅は、おかしい。
なぜ、違う世界からきたぼくの知識に、対応できるんだ。
『>>>……別に、きかなくてもいいと……思っていたんだ』
『────……私も、いわなくていいと、思っていました。』
……単刀直入に、切り込むことにする。
『>>>クラウン……きみは、なんでぼくの世界の、知識があるんだい?』
目を、みつめて。
『────クルルカン。
クラウンギアの……私の情報は、
逐一、アップデートされているのです。
会話をしている今も、常、日頃から──。』
『>>> ───── 』
なん……
てっ……た……?
いま、全てが止まって感じるのは、
アンティ達が、スローモーションだから、
… … … だけじゃ、無いはずだ──。
『>>>……きみは、何かから、"情報を受信し続けている"……そう言うのかい?』
『────トリガーになる"キーワードが"、対話中にコールされると、その関連情報が、"自動的"に追加ダウンロードされます。』
『>>> ──── 』
今までの、
ぼく達の、会話の中で。
明らかに、クラウンちゃんが、
"話を合わせてくる"。
そんな時が、あった。
────"あちらの知識"。
それが無いと、できない事。
…………。
"自動的に、ダウンロードされている"……だって?
なんだ、それ。
なん、だそれ……。
……。
アンティ。
きみの相棒……、
ユニークなんて、通り過ぎてきているよ……?
『────"キーワード"は様々なケースがありますが、状況を比喩する表現を検索中や、直接"言語"を聞いた場合に、ダウンロードされる事が確認されています。』
『>>>……』
『────アンティには、このことは言っていません。』
……。
えらいもん、
ぶちまけてくれたね……。
『>>>なぜぼくに言った』
『────……。』
膝に座りながら、
下を向きながら。
しばらく、スキルの少女は黙って。
ポツンと────……、
『────今のあなたなら──いいと:思ったから。』
『>>>えっ──……?』
……。
んーと……。
ど、どゆいみだ……?
『────あなたとの会話にて"追加ダウンロード"された知識は、全体のパセルテルジの中で、半数以上をしめています。あなたは私の中で、非常に大切な存在に分類されます。』
あっ……察し……。
そゆいみ……。
ふぅ……。
『────あなたと試してみたい作戦は、そのパセルテルジに起因します。』
『>>>あっ、はい、なんでしょう……』
『────……私の流路と、あなたの流路を、直接:接続します。』
『>>>は』
──。
はぁ……。
…………んぅ?
『>>>……────はああッッいいい!?』
アンティ、スローモーション中(*´∀`*)+










