ドリフトひゃっはー
久しぶりに会える嬉しさで、
柄にもなく、勢いのまま、飛び出した。
この、黄金の彼等達と共に、
私は、どこまで踊れるだろうか。
思えば、真の意味での共闘など、
これが、初めてのように思えた。
都合よく、子供の姿であった私は、
無邪気な声で、不安を隠した。
……はやい。
長くを共にした、優しき闇の獣は、
誇らしく咆哮をあげ、
白の道を翔け登った。
闇の咆哮と、闇の絶叫が、
重なった────。
『 ──ガルルロロロロロォォオオオン──!!!!! 』
" ……ァガルギャグォォオオオアアアアアアアアアアアアアア──!!!!! "
「────ッッせぇなあああぁぁ────!!!!!!!」
{{ …… }}
……黄金の罵声も、重なった。
『 ──ガッ、ガルッ──!?』
─────────────────────────────
>>>何でそこで キレれんのさ……
─────────────────────────────
「あっ、ガルン、アンタじゃないのよ。あのバカがね」
『────アンティ。御両親が悲しみます。』
「うえっ…………ごっ、ごめんなさい」
『 ガルルッ……、ガァルルルルッ…… 』
{{ ……ハハ…… }}
この子たちと私、うまくやれるかしら……。
紫の時限結晶を探すため、
私達は、あのバカ弟の側まで、
かなり、近づいている。
弟魔王を中心に、緩やかな左回りで、登る。
幸い、道の材料となる、聖なるネバネバは、
そこらじゅうにあった。
魔の杖で、導く────。
─────────────────────────────
>>>食堂で働くと 魔王にキレられる程
お客さんって アレなのかい……?
あっ 襲ってきたよ……
─────────────────────────────
「ち、ちょとお! なんで呆れぎみなのよぅ! 」
『────敵対象:闇魔法で構成された触手を展開中。一つ覚えのバカです。』
「わぁ。イニィさん! 道、よろしくねっ!」
{{ ……えっ、ええ! }}
こっ、この子たちったら……。
「──せぃやっ!」
『 ──ガルルロロォオオオオオオン!!!』
ピエロちゃんが右手の持ち手をひねり込むと、
ガルンの雄叫びが大きくなり、
速さがどんどん、上がっていくのがわかる。
たまに、ほんの少しだけ速さがおち、
左足の先で、何やらカチャカチャしている。
その度に速くなっていき、
ガルンの鳴き方の高さが、少し、変わった。
でも、流石は"くろいかみさま"の化身。
黒い触手どもは、この速さに、
食らいついてきている……!
『────6速です。』
『 ──ガルルロロォォォォォオオオオオオ──!!!!』
「ベアークラッチ切らないでね!! うわっこれダメだわ! 真っ直ぐ進んでたら追いつかれるし、あんの魔王から、どんどん離れてっちゃう!!」
{{ ……ッ }}
後ろから、無数の黒い槍が、
迫ってきているようだわ!
蛇の群れようにしなり、
今にも、覆いかぶさってきそう!
こんなに私達は、速いのに──……。
まっすぐ疾走しながら、黄金の彼女が、問う。
「──せんぱぁい!! やっぱ私、先輩の記憶、ちょい貰ってるっぽいんだけど、"バイクでドリフト"って、やっぱムズイのぉぉお──!?」
─────────────────────────────
>>>ブレーキターンも練習しないで
ぶっつけでやるなんて
正直アホだねっ!
─────────────────────────────
「そーゆーこと言うっっ!? 信じらんなぁぁあいっ!! コツ教えてぇええ!!」
─────────────────────────────
>>>んあぁ──……とね
テキトーに言うとっ!
曲がりで荷重を前にしてっ!
後ろがすべったら フカす!!
─────────────────────────────
「てててッ、テキトーだぁぁあああああ!!!」
{{ だいじょうぶかしら…… }}
『────このパターンは、かなり大丈夫なケースです。』
{{ うそぉ…… }}
この子たち、
今まで一体どんな旅をしてきたのかしら……。
『────魔法流路触手体、接近します。』
─────────────────────────────
>>>アンティ!!
─────────────────────────────
「──イニィさん!! わたしの中のイメージで、道、作ってねっ!! 」
{{ ──ッ、わかったわ!!! }}
「 ──、ふぅ────…… 」
……。
ピエロちゃんの、雰囲気が、変わる。
……集中、しているの?
─────────────────────────────
>>>ん? あれっ……この設計……
エンブレ どこ?
─────────────────────────────
『────私がエンジンブレーキです。』
─────────────────────────────
>>>あっ……
それは頼もしいブレーキだね……
─────────────────────────────
『────いつもやっている事です。』
黄金の仮面と、黄金の冠が、
謎の軽めなやり取りをしていても、
ピエロちゃんの集中は、まったく乱れない。
後ろから、闇の触手が、せまるっ──!
「 ……──" いくよ "──……! 」
『 ──ガルルォオオオオオオンン───!!!!!』
……。
今の私に、できることを──……、
せいいっぱい、するっ!!
{{ ──杖よ……! }}
フォォォオオン!!
───ズズゥウウばっしゃああああッッ!!!
目の前に続いていく、巨大な白い道。
随分先のほうで、ゆっくりと、左に曲げる。
少し、道幅を広くする。
ほんの少しだけ、緩やかにガルンの速さが落ち、
なんだろう……車輪とは別の、
"ガルンの車体の重心"が、
少し、前側に、"よった"、ような、
そんな、感触を受ける。
『 ──ゥオオオンンン────……!!! 』
{{ ……──ッ! }}
チラリと、道の外を、感じ取ってしまう。
白い道を外れたら、底なしの闇だ。
もう心臓なんて無いくせに、少し、ドキリとした。
疾走するガルンが、
徐々に、ゆっくりと、
左側に、傾きだす────……。
─────────────────────────────
>>>あとは きっかけだ……
"きっかけ"を つかめ アンティ!
─────────────────────────────
{{ ──ッ!? }}
こっ、この仮面さん!? な、何を言ってるの!?
私っ! 心を感じとるのは得意だけど、
今回ばっかりは、この道化師の仮面が、
何を言ってるのか、サッパリだわっ!?
このままじゃ、この道は曲がりきれないわ──ッ!
少し、道幅を──……、
「 ……──"きっかけ"──……」
{{ ──え? }}
視線が傾く中、ピエロちゃんが、ポツンと、言う。
「 ……──見える……、"灰色の道"──……、"白い線が引かれた"──……」
─────────────────────────────
>>> ────っ!!
─────────────────────────────
{{ ──! 貴女──…… }}
その言葉を聞き、私は悪魔の力で、
彼女の心に、"交流"した──。
フォオウウン────……!
{{ ! これは──!! }}
私にも、見えた。
平らにコーティングされた、
白いラインの入った、濃い、灰色の道。
左右は、流れる緑。
ここは、……そう、"峠"……?
たまに、緑の隙間から、
わずかな間隔で、街が覗く。
不思議なカタチの、ここではない、どこかの街。
流れていく。
景色が、後ろへと、流れていく──。
{{ これは、まさか──"仮面"の殿方の……? }}
─────────────────────────────
>>>アンティ……
きみ やっぱり ぼくの……
─────────────────────────────
「 ……"まがらなきゃ"── 」
{{ ──ッ!! }}
ハッとした。
この道は、ちがう。
あの"思い出"の中の道と、何か、ちがうわ!
そうだ! 曲げるだけじゃ、ダメなんだわ!
もっと、"傾け"ても、いいのよ!
せっかく私が、
自分で道を、創るのだから──!
{{ ──ッ杖よッ────!!! }}
フォオオオウウンン────!!!
杖が、優美に鳴き、
白い曲線は、
わずかに左へと、沈み、傾く、
{{ これで、どう──!!? }}
「 ……──"きっかけ"は 」
まだ、これから、今からだ。
私は、間に合ったの──?
傾きながら、私達は、突っ込む────!!
「 "きっかけ"は……こうだわっ──……! 」
{{ ──なっ……!? }}
左側に倒れているのに──……!!
前輪を、少しだけ、右に、きった────!?
─────────────────────────────
>>> ──いまだぁあっ!!
─────────────────────────────
『────ブレーキ干渉。』
『 ──ガルルロロォオオオオオオオ────!! 』
{{ ──くうッ……!? }}
────あ……。
そして、すべてが、ととのって──。
──"後輪"が、右に、流れた。
曲がる、……何故か、曲がり出す。
傾きながら、進み出して、
なのに、内へと、吸い寄せられた。
前輪もすでに、流れ始めている──……!
─────────────────────────────
>>>うわぁ……きてるわぁ
─────────────────────────────
「へへ……でしょ?」
黒い、たくさんの触手たち。
ものすごい速さで、左後ろへ、すっ飛んでいく。
私たちに、かすりもしない。
この動きが……かわし尽くしていく──ッッ!
『────慣性制御。角度、戻ります。』
「よっ……といっ!」
ピエロちゃんが、
少し手を、クイッとひねると、
魔法のように、すべてがフワッと、起きあがる。
{{ ──あ…… }}
────────カーブは……終わっていた。
「…………」
『────……。』
─────────────────────────────
>>>…………。
─────────────────────────────
{{ …………。 }}
『 ……ガルン? 』
……────"やったわ"……!
「 ……──ひゃっ、、はぁあああ────!!! ざまぁああ────!!!!! ガルンで避けてやったわぁああ────!!!」
『 ガルッ!? ──ガルルゥゥゥウウウウンン!!!!!』
─────────────────────────────
>>>カンペキだったな……
─────────────────────────────
{{ な、なんか……すごかったわね…… }}
『────初撃の回避に成功。引き続き"時限結晶"の感知を続けます。』
{{ あっ…… }}
「あ、忘れてた……」
『────……クラウンギアは……ぐすん……。』
─────────────────────────────
>>>アンティ ごめん はっきり言う
『>>>こんな車体が長いバイクで
ドリフトとか絶対ムリだろ』って
実は もんのすごおおおおおおく
思ってた……
─────────────────────────────
「……漬け物ビンに仮面を入れると、どうなるのかしら」
─────────────────────────────
>>>いや……
きみが においに困るんじゃない?
─────────────────────────────
{{ キャハハ…… }}
子供の悪魔の身体でも、
こんな呆れ声が出せるのね……。
悪魔の幻の身体。
でも、まだ、ドキドキしている。
みんなで力を合わせ、
何か一つの事をした時の、
言いようのない爽快感、なのだろうか……。
{{ 何ていうか貴方達……ぶっとんでるわね }}
「ふふ、ようこそ、イニィさん──?」
{{ あ…… }}
……。
そうか──
{{ "わたしも"か…… }}
キラキラとした、その、黄金の笑顔が────……、
" ……──ガルゴッ、ギャギャグォォオオオァァアアアア──!!!! "
「──ッチ……、ッせぇなあああああああぁぁ!!!!!!!」
『 ──ガルルロロロロロォォオオオン──!!!!! 』
『────……。』
─────────────────────────────
>>>…………。
─────────────────────────────
{{ …………。 }}
……──魔王に向かって、舌打ちした……。
{{ バイクにのったピエロって……つおいのね…… }}
「よっしゃああ!! いくわよガルンッ! あんな奴、せぇいばいしてくれるわあああっ!」
『 ──ガァルルルルルルルルゥゥウウンンン!!! 』
{{ あ、あ、ちょっと待ちなさいよ貴方たち! }}
紫の時限結晶、探すの覚えてるかしら……。
(;゜Д゜)ふぁ、んた、じ──……?
(つд⊂)わるいのはおれだ