0になるまで 前編
夢みたいな回です(笑)(*´ 艸`)
あ、おねんねスリープに挿し絵の三枚目たしてます。
言うの遅いねごめぬ(;^ω^)
夢を、
見るはずがない。
なのに。
キーン、コーン、カーン、コーン……。
「── はっ」
やべ……ねてた……。
「はーい、じゃあ今日はここまで! 明日の三限目までに、36ページまでは訳しておくように! ……それと、アンティさん?」
「うぇ!? は、はいっ!」
「授業の最後のほう、ツインテールが、カックン、カックン揺れて、綺麗でしたよ?」
「ぐっ!! ……す、スミマセンでした……!」
(ふぷっ……)
(くすくす……)
く、くそぅ……周りのみんなに笑われてる……。
頬が赤くなるのが、自分でわかる……。
「もぅ。ただでさえ目立つ金髪なんですから、授業中はしっかり、キリッと起きていてくださいね? 明日はアンティさんから始めます! 後ろの机の列の人! 順番に当たるから、ちゃんと訳しておきなさいね?」
(え〜〜!?)
(マジかよ〜〜……)
「ふふ、しっかり予習なさいね? では、号令!」
「きりーつ!!」
────がたたたっ、たっ。
「れーい!」
ツインテールが、垂れて、机にのる。
うう……英語の松前先生に目をつけられてしまった……。
後ろの列のみんな、ゴメン。
四限目が終わった後の教室は、
今までの10分休憩に比べて、
遥かに賑やかになる。
そりゃそうだ。
10分と1時間じゃ、全然違う。
前なんか先輩のクラスまで
ジャージ借りに行って……
あれはヤバかった……。
1秒、2秒とかの勝負だったわ……。
「……あれ? 私、誰にジャージ借りたんだっけ……?」
あれ……? 先輩……?
「あれ……?」
「ちょっと、アンティ〜〜! 後ろでみてたよ〜〜!!」
「あっ、かおこ……」
後ろの席の香桜子が、
ちょっとイジの悪そうな笑顔で、話しかけてくる。
彼女の髪の色は、日本人には珍しく、
随分と茶色がかったストレートだ。
……あれ?
んなこと言ったら、
私なんか、パツキンよね……。
「やってくれちゃったねぇ〜〜アンティ〜〜!!」
「あ……ご、ごめん、次の英語、この列からんなっちゃって……」
「このやろぉ──! ……ふふ、ま、それはいいんだけどね? 後ろから見てて、めっちゃ面白かったよぉ! アンティの黄金のツインテールがね……? こぅ、"ビョビョン、ビョビョン!"って揺れてたの!」
「ぐあああああああ!!」
「先生も途中で気づいてね? すっごい苦笑いしてたよ〜〜。前の方の席なんだから、気をつけなきゃダメだよ! くぷぷぷ……」
「……かおこの席、だいぶ後ろよね……。み、みんな、見てた?」
「いや、ほぼ全員見てたから。窓からの太陽光、めちゃめちゃ反射してたから。むしろ神々しかったから。授業ラスト5分、揺れるたびに、クラス一丸、ぷーくすくすだったから」
「今までありがとう香桜子。私、明日から不登校になる」
「ほぅ……。では明日からどうするのかね」
「私、冒険者になる」
「お〜い帰ってこい、友よ」
「……あんた今日、学食?」
「いやお弁当。アンティもだよね? ご一緒よいかい?」
「どーぞどーぞ」
ズリィ────……
私の机の右に、椅子を持ってきて、かおこが座る。
あ、隣の池永君のイス、勝手にパクリやがった。
「いやー、でも、次の化学の授業は気をつけたほうがいいよ〜? 銀我先生、ねぼすけには厳しいから!」
「げっ、次、ギンガ先生なの……こえぇ……」
「ははは……あっ! で、でもね、銀我先生って、ダメなことしたら厳しいけど、すっごい優しい時もあるんだよ!」
「そーなの? ……あのしかめっ面からは想像できん……。てか、あんたカレーかよ。ちょ、においうつんだろ離れろよ」
「耐えて。あれはしかめっ面じゃないの! ダンディ! この前、廊下でね? 私が体調悪い時に、"大丈夫か"って、声かけてくれたんだよぉ! あれはときめいたなぁ……!」
「あー……、確かに渋い声してんもんね。背ぇ高いし。てか、教職者として、あのロン毛はどうなのよ……」
「いやいやいやいやいや! アレがいいんじゃないっ! 仕事しっかりするからって、職員室でも、かなり評判いいんだよ? てか、松前先生が惚れてるとか惚れてないとか……ぐぐぐ」
「ほぅ、興味ねぇな。まぁきこう」
ご飯を食べながら、
気ままなおしゃべりをしていたら、
タイムマシンなんて、すぐに完成する。
……ほぅら、もう10分前だ。
やべ、化学の教科書あったかな……。
ガラガラガラ……。
「…………」
「あ、先生きた」
「ちょ!」
ギンガ先生、くんのはぇぇええ!
お、お手洗いにっ!?
「……まだ授業時間ではない。休憩をしていていい。しかし、開始時には席についているように」
「おおっ! 先生……今日もよい声ですなぁ……」
「かおこキモイ。ほれ、お手洗いいくよ!」
「はせさんじようではないか」
少し慌てつつも、
無事に教室に戻り、
無事に化学の教科書を見つけた。
黒板に板書する、ギンガ先生の背中には、
結えられ、垂れ下がる黒髪がある。
けっこう長い。
……私も、店、手伝ってる時、
ああゆう髪型してたなぁ……。
(……あれ?)
店……そう、食堂……あれ?
なんか今、違和感が……。
んん……?
「……のように、"拡散"は、物質が自然に広がっていく現象を表す。"熱運動"は、物質を構成する分子が、様々な向きに、様々な速さで絶えず繰り返す不規則な運動のことで、温度が高くなるほど……」
ええ声や、無駄に。
無事に居眠りをしなかった。
▼かしこさが、3、あがった!
なんつて。
──。
キーン、コーン、カーン、コーン……。
「……ここまでだ。号令」
(しぶい……)
(しぶいな……)
しぶいわね……。
なんであんなセリフだけなのに、
あんな映画のワンシーンみたいになんのよ……。
あれ……"映画"ってなんだっけ……?
えと……?
「……ま、いっか……」
次の授業の用意を終えて、
ぼーっと、窓の外を見る。
いーい、天気だ。
世界は、まるで平和だ。
よきかな、よきかな。
「ねぇ、アンティ」
「うぉ、なんだ、かおこか……」
「あのね……なんかね?」
「あに?」
「……──金時先輩が、放課後に会いたいんだって。伝言、頼まれちゃったの」
「はぁ? ……カネトキ先輩?」
「うん。ついさっき、生徒会の連絡で会ったんだけど、アンティに伝えてほしいって」
……???
カネトキ先輩……?
……誰やねん。
「えと……私で、間違いないの……?」
「う、うん……そだと思うけど……」
「ど、どこで……? まっ、まさか……校舎裏っ!?」
「あ、ううん。生徒会室に来て欲しいって」
……はぁ? まさか……。
「……居眠り、バレたんじゃ……」
知らない先輩からの呼び出し。
気にならないでもなかったが、
もうそろそろ六限目が始まる。
……素直に謝って、場合によっては逃げよう。
そう思って、現国の教科書をひらいた。










