ヒカリノオリバネ さーしーえー
世界くるくる。
さっき、ご飯をりんごだけにしといて、よかった。
ちゃんとたべてたら、吐いてる。
自分に触れているもの以外が、すごく、回ってる。
どっちが地面かは、わかんない。
杖を、はなすもんか。
おなかに、イニィさんの腕が食い込むのがわかった。
杖を私が、私を悪魔が、離さない。
とても、頼りになる悪魔さんだ。
回る世界の中で、
後ろから、爪だらけの腕がのびた。
十字架に、さわった─────。
「……後は、まかせなさい」
「イニィさん……」
射撃の反動で、空中を回転する私たち。
その中で、イニィさんの声は、不思議と響いた。
私にも、感じる。
くらい闇の底から、
聖なる何かが、鼓動を始めるのが────……!
《 ────────── ─ ─ ─ … … 》
《 ─・─・─・─・──・────・── 》
……────ドォォオオオオンンンッッ!!!
「ッッッ───!!」
持っている十字架から、
────光が、爆発した。
「まぶ、しっ……!」
─────────────────────────────
>>>!?
クラウンちゃん!? おい!
クラウンちゃん! 起きろ!
起きるんだっ!
─────────────────────────────
な、ん……?クラウンが、どしたって……!?
「先、輩ッ!!」
─────────────────────────────
>>>! これか……
Eコード……[強制冷却]!?
くそっ! 待ってアンティ!
クラウンちゃんの代わりをする!
─────────────────────────────
……────シュババババババッッ──!!
先輩の声と共に、
アナライズカードが何枚も、
仮面の目の穴に重なって、
眩しさがマシになる。
イニィさんが翼をはためかせ、
姿勢を真っ直ぐにしてくれた。
やっと見えてきた光景は、
とても現実離れしていた。
「……天、使?」
「……14の転換路が、動いたのよ……"しろいふた"の力を、引き出しているの……」
「イニィさん!」
十字架には、イニィさんの紫の爪も伸びている。
すごい……さっきは金と紫が混ざっていた杖の色が、
今はほぼ、白い光、一色だわ。
「……街の外周を、羽根が、覆っている?」
「それだけじゃないわ」
「! 下も!」
"くろいあな"をぐるりと囲うように、
12対の羽根が、空に向かって、伸びる!!
足元のお城のすぐ横から、
残りの2対の羽根が4枚、
私たちを仰ぎ見るように、
ひろがっていた。
街の周りに12、足元に2。
そして、この、杖。
"15"本の十字架が、そろったわ──……!
「ぐ……」
「イニィさん!?」
「だいじょうぶ……徐々に高度を落とすわ……お城にゆっくり降りるから、飛び移りなさい」
「……? は、はいっ!」
イニィさんの杖からは、白い羽根は出なかった。
でも、物凄く、光っていた。
多分、普通に見たら、目が潰れる。
そう思えるくらいに。
─────────────────────────────
>>>中継器……なのか……?
14の転換路を まとめあげるのが
この杖の役割なんだ……!
─────────────────────────────
「ッ! せんぱいっ! クラウンはッ!?」
─────────────────────────────
>>>! 気絶しているように見える
オートプログラムを一応
組んでたみたいで 時空間同期と
その他諸々は継続してる!
復旧シークエンス中だ……!
─────────────────────────────
「ことば、わかんないよっ!! だいじょうぶなの?」
─────────────────────────────
>>>! すまない 悪いクセだね……
ああ! すぐに回復するはずだよ!
─────────────────────────────
「さっきの、"銃"のせいだよね……」
クラウン……無茶したのかな……。
……───ォォォォオオオオオオオオォォ───………!!
──! 街の外周の羽根が……
「……大きくなっていく……!」
羽根が、植物のように、
天空に、そだつ。
黒い大地から、白を吸い上げるように。
暗黒の大地には、羽根の付け根から、
光の根っこのようなものが、
伸びはじめていた。
「私たちの高さを、超えるわ───……!」
「────……」
イニィさんは、しゃべらない。
流路の転写に、必死なのだろうか。
……こんな、激しい光だもの。
闇の力で抑え込むのは、
とても、大変なことなんだと思う。
私のスキルは、多分、属性なんて無い。
今、この光の力を御する事ができるのは、
イニィさんの、闇の力だけだ。
人を守ろうとした、悪魔の力しか──……!
「……──お願い、ふさがって────……!」
……──ォォォォオオオオオオオオオオオオ────!!
翼は、伸びきり、
根は、闇を裂き、
光は、咲き誇る。
下の2対の羽根は広がり、
暗黒の地面に、大きなバッテンを描いた。
……光の、十字架だ。
残りの聖なる羽根たちは、まっすぐと、天に向く。
「────……」
─────────────────────────────
>>>──……
─────────────────────────────
……──光の、檻だった。
この街は、光に、閉じ込められたんだ。
何も、出ちゃ、いけない。
とっても綺麗だけど、
寂しくて、切ない光だった。
こんな、まっくろになって、
光にとじこめられて、
悲しいよ。
ゆっくりとお城が近づいているのがわかる。
イニィさんが降ろしてくれている。
ちょっと気になった事がある。
なんでさっき、イニィさんは、
飛び移れ、って言ったんだ?
翼があるなら、普通に降りればいいじゃない。
どうして────……。
ガくんっ
「ッ」
いきなり高度が落ちた。
後ろを、見る。
「 なん 」
イニィさんの翼が、
光に、喰われはじめていた。
「 いやあぁぁぁぁぁあああああああああ!!! 」
叫んだ。










