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シェイクハンドフィニッシュ! さーしーえー

 

「……────……」

挿絵(By みてみん)


 私には、たくさん、立ちふさがってきた。


 少し、おかしな私。


 人と、少し違う私。


 それだけなのに。


 お父様や、ニオスさんがいなければ、


 もう少し、ダメになっていたかもしれない。


 不気味がられて、


 忌み嫌われて、


 たくさん、立ちふさがってきたものを、


 なんとか、押し倒してきた。


 でも、それでも、絶えない。


 まだ、立ちふさがり、続けてる。


 もう、私は、おかしくなっている。


 体全部、ぜんぶがだ。


 もう、人の形では、無い。


 私は、流石に、疲れた。


 もう、何も、押し倒せないかもしれない。


 人外の身体に、ちからが入らない。


 私は、あきらめようとしていた。



 なのに────。




 ……────きゅうういいいいいいんんんん!!!




 今、また、立ちふさがっている。


 黄金の少女が、立ちふさがっている。


 今までと、少し、違うところがある。


 金のヨロイの背は、私の方に向いて。


 顔は、私と反対の方を、向いている。


 今、私の前に立ちふさがっている、


 (まばゆ)い道化師は、


 どうやら、


 私に"立ちふさがっているモノ"から、



 私を、"守って"くれている────。





挿絵(By みてみん)



 ────きゅううううううんん……。

 ────ギギギ、ギギギギ──……!

 ──────キィン、ガシャコン……!

 ───────────ゴオオォォォオオオ────!!!



『────最終フェイズ:構成完了。

 ────右腕部に"インパクター"の概念を構築しました。

 ────攻撃用デバイス認定。

 ────呼称名を登録しますか。』


─────────────────────────────

 >>>わぁ……

   アイディア出したのぼくだけど

   これはちょっと なんてーかさ……

─────────────────────────────


「──うわっ、ちょ! こっ、このデッカイうで! めっさ重いんだけど……」


『────圧縮機構を使い、限界まで密度をあげています。

 ────"解放爆縮時"には、それ相応の威力を期待。』


─────────────────────────────

 >>>──ッ!?

   ま まさか クラウンちゃん!?

   "タメ機構"まで作っちゃったの!?

   ちょ、マニュアル見せてッ!

─────────────────────────────


「な、なに、なに?」


『────呼称名を登録しますか?』


「ちょ、ごめんクラウン、今は先輩の発言が気になり過ぎる。アンタいつもど──り、テキト──に決めなさいなっ!」


『────レディ(準備完了)

 ────攻撃デバイス、"爆震握手(シェイクハンド)"を、登録しました。』


「またすんなり出てきたわねアンタ! てか明らかに"握手(あくしゅ)"するようなお手手じゃないでしょ! お、おもいッ……」


─────────────────────────────

 >>>"7基連続空間爆縮システマ"……?

   推定チャージ……各順11ビョウっ!?

   こ れ は ア カ ン !!

   ろろろ、ロマン武器すぎるよっ!!

─────────────────────────────


「えッ、なにッ!! なにどういうことッ!?」


─────────────────────────────

 >>>アンティ!

   そのバカでかい右腕は

   力を"溜める"のに

   最低でも"77ビョウ"はかかる!!

   その間 逃げるんだ!

   とにかく 逃げまくれっ!

─────────────────────────────


「えええっ!? すっ、すっごく重いんだけどっ!?」




「………………なニヲ────……」




─────────────────────────────

 >>>『───「あっ」。』

─────────────────────────────



「──なニヲさっきから、ひとり言オオオオオぉぉおお────────!!!!!」



「ち、ちがわ〜〜〜〜いィィ!!!」






 …………ッ!


 暗黒の複眼の怪物となった、

 愚かなる弟から、黒霧の腕がのびる!


 金の少女から発せられる、

 "残り2人"の流路を、

 彼は感じ取れないようだ……。


 あの黄金の道化師は、1人で戦っているのではない。


 確かに、誰かと共に、戦ってくれている。


 ──この、私の為に────。





「ひぃいいいい! おもいぃぃいい!!」


 ──────ド、ドド、チュゥゥウウいいいいんん!!!


『────亜空式7連チャンバー内:加圧開始。

 ────第一チャンバー:加圧中。

 ────もうしばらくお待ちください。』


「しばらくってどれくらいよぉぉオオオオオ────!!」


─────────────────────────────

 >>>あと 74ビョウ!! よけてよけて!

─────────────────────────────



 ダダンッ! ダダンッ! ダダンッ!



 黄金の少女が、一歩一歩、踏みしめて、避ける。


 ……──あの足音の重さ──……普通ではないわ。


 あの大きな腕、重さ……! 流石に、


 あんな小さな身体で使うには、大きすぎる!


 今、なんとか歩けているのが、奇跡だわ!




「ガガガカカッッ──!! 急ニ動きガ、鈍くナッたジャなぁあイカアアアアァハハハハァァ───!!!」


 黒い霧の愚王がしゃべる!

 ──ッ! なんて醜い流路っ!

 アレは、邪悪そのものだわっ!


 あの子……

 あの、(ぎょ)しきれていない巨大な右腕で、

 いったいどうするつもりなのッ!?



 ────グゥオオオオオオオンン!!



 暗黒の霧の塊が、金の少女にせまるっ!!


 あ、あぶない────ッ!!!



 ────ドぉおおおおん!!!


 床に盛大に当たり、

 床の破片が、白く濁りながら、舞い上がった……

 そ、そんな……

 飲み込まれてしまったの……?



「ザマァあ!! ギャはハハははは──────は?」



 え────?


 ……────キュンキュルルルルルルル──……!!!



「……なるほど。こうね」


 暗黒が作った、白いもや(・・)の中から、

 その身体に不釣り合いな、巨大な腕を持つ、

 黄金の道化師が、横に(・・)スライドする(・・・・・・)────!


 あのブーツ────……"車輪"?



 ──────チュゥゥうううおおおおんんん──……!!

 ────ド、ドド、ドルルルルルルルルゥ───……!!!


『────第一チャンバー:加圧完了。

 ────引き続き、第二チャンバーに移行。』


「──これ、歩いちゃだめね。久しぶりに、"距離滑り(スケスケ)"に、頼らせてもらおっかな?」


 ────ガチャコ。



 ────!


 彼女の黄金のブーツの"ギザギザした車輪"が、

 ひとまわり、大きくなる。


 ─────ギリ、ギリ、ギリリ、ギリリ。


 床との接地面から漏れる音は、

 今の彼女の総重量の度合いを、

 感じ取らせてくれる。


 巨大な金の腕は、まるで、

 大きなハンマーのようだ。


 ……"ヒジ"に相当する部分から、

 細く、"炎の魔素"が吹き出ている。

 あの腕は、どんなマジックウェポンなのだろうか。


 ……いや……あれは……。



 ─────ぎゃるるるるるるるぅゥお──!!!


「ウオおオオおオ──!! 小娘ガァ!! チョコマカトオオオ!!!」



 ──よける。


 ──よける。


 ──よける。



 先ほどまでの、

 全ての空間を利用するような回避から、


 今度は、地面に接して、

 くるくると、回転しながら、

 すべるように、さける────!


「クラウン、左手も車輪」

『────レディ(準備完了)。』


 ────キュイイイイン!!



 彼女は、左腕も床に付け、

 両足と合わせて、3つの回転で、

 右の巨腕を支える。


 這いつくばるような、前傾姿勢。

 しかし、それは、

 まるで、獲物を狙う前の、なにかに見えた。



 ────ギャギャルルルルルルルッッ!!!!!


 ────きゅうううううううんん──!!!


 ────シャ──ァァン、シャ────ァアアアンッ!!



 あたらない。


 あたらない。


 すべての黒が、あたらない。


 かいくぐり、旋回し、


 獲物を狩る時を、待つ。



 ────ギャウォウォ、ルルアアアアア──!!

 ────シュコォォオオオオオ─────!!!


『────第五チャンバー内:完了。

 ────第六チャンバー加圧開始。

 ────純度100パセルテルジ酸素格納:同時進行中──。』


─────────────────────────────

 >>>よしっ! あと22ビョウだっ!!

   アンティ これホントにヤバイから

   使う時は メッチャ ちからを

   込めるんだよ!

─────────────────────────────


「ふぇっ!? な、なに、なにがヤバイの?」


─────────────────────────────

 >>>アンティ! このデカいアームは、

   内部でバックドラフト現象……

   "酸素爆発"を起こした勢いを

   敵に全てぶつけるデバイスだ!

   しかも 規模がやばい!!!

─────────────────────────────


「わっ、わかんないわかんない、わかんないぃぃ!!」


─────────────────────────────

 >>>──ああもぅ!

   7回 ほぼ同時に大爆発を起こして

   そのエネルギーで殴るんだよ!!

─────────────────────────────


「ええええええっ!!? 私の腕、バクハツすんのっ!?」


─────────────────────────────

 >>>だからぁぁあ!!

   そうじゃなくてぇぇえええ!!!

─────────────────────────────



 ──────ギャルルルルルルル


 ────・ア・ア・ア・アアア・アアアアア───!!!


『────"カーディフの火(ファイア)"による一酸化炭素圧縮:まもなく完了します。』


「や、山火事が、どうしたっての!!?」


『────最終第七チャンバー内:加圧完了まで:残り:7ビョウ。』


「うわあああああ!!! クラウンもなに言ってるかわかんなぃいいいい!!!」


─────────────────────────────

 >>>い いいかぃ!?

   難しく考えないで!!

   きみは "殴れば"いいんだよ!

─────────────────────────────


「な、"(なぐ)る"──……?」


─────────────────────────────

 >>>そっ そうだよ!!

   おもいっきり ね!!

   ! そろそろだっ!!!

─────────────────────────────



 ────グァ・グァ・グァ…………


 ────グァァアアアアアアアアアアアアアアアアア────!!!!!


 ────キュルル……キュルルルルルルルルルルゥゥウ────!!!!



『────全チャンバー内:加圧完了しました。

 ────各部クラッシャーギア:回転臨界到達。

 ────────────いけます。』





「───ッ! あの子、何てものを──!」


 唸るような金切り音を発する、

 彼女の、黄金の右手。

 巨大な輪のような装甲が、

 あらゆる向きに、轟音を撒き散らしながら、

 回転している。

 それは風を巻き込み、

 光を放ち、神々しさを感じさせる。


 私は紫の鉤爪(かぎづめ)で、

 自分を支えるのに、精一杯だった。


「ナ、な、ナ、なんだそれははぁアアアアアアアアアアアアアアアアア────!!!」


 愚かなる弟が、

 今までに見た事のない、

 強烈な力を封じ込めた、黄金に、恐怖する。

 流石に、わかる。

 そう、あの金の拳は、

 彼に、叩き込まれるのだ。



─────────────────────────────

 >>>"火"は ぼくがする!!

   アンティ! きみに合わすよ!

   きみは 何も考えずにっ

   おもいっっっきり なぐれっ!!

─────────────────────────────


「────!!」


『────シリンダー強制安定。

 ────全チャンバー:流路直結。

 ────クラッシャーギアフロント:臨界回転数。

 ────大丈夫、アンティ。

 ────あなたなら、やれる。』


「…………わかった!」



 ────ォォォォオオオオオオオオオオオ───!!!!!!!




 唸る右腕。


 唸る両足。


 唸る空気。


 唸る回転。


 唸る黄金。



 黄金の道化師の鎧の、


 ジグザグの繋ぎ目が、開いていく。


 吹き出るのは、


 光か、風か。


 眩しく光を放つその身体は、


 二つ結いの軌道を残し、


 突貫(とっかん)する────!!!!!







挿絵(By みてみん)


『『『ううおおおおおおおおおおおおォォォッッッ────!!!!!!!』』』


 ───ギャルルルルルオオオオオオオオオオ────!!!!!!!



「ウァアあアアあアアッ!! くるナァ、クゥゥゥルゥゥゥナァァァァアアアアアぉぉあああ!!!!??」




 もう、闇を避けることすらしない。


 はじめから、彼女たちは、


 避ける必要すら、無かったのだ。


 あの黄金を穢すには、


 あの暗黒は、あかるすぎる────。





 ────そして、拳は、打ち放たれる─────。






ぎゅおおおおおおおおおおッッっ!!!!!!!




「──だああああらぅああッッッっ、しゃぁぁあああアアアアアアア────!!!!!!!」

─────────────────────────────

 >>>──『 爆縮-点火ァァァ 』!!!

─────────────────────────────

『────"セブンス:インパクト"────!!!』







 ゴッッッ──── ─ ─ ─……


 ───────────────────!!!!!!!


 ──────────────────!!!!!!


 ─────── ────────!!!!!


 ──── ─── ────!!!!


 ──── ─────!!! 


 ── ───!!


 ──!




 ────────────。














「……いやぁ〜〜〜〜、我ながら、おっそろしぃわねぇ〜〜」


─────────────────────────────

 >>>ひでぇな……

   もうここ 部屋じゃない……

─────────────────────────────


『────考案したのは、あなたですので。』





「────……。」



 黄金のアッパーカットで、


 目線から上が、無くなった城で、


 黄金の道化師が、空を見上げている。


 腰に手を当て、


 呑気に上を向き、


 そんな彼女に、


 私は、ポロッと、きいてしまった。




「……──あなたたちは、神さまなのですか……?」



「──!」



 彼女は、びっくりした表情でふりむき、



 そして────。



挿絵(By みてみん)

「バカね。こんな変な格好した、神さまなんていないわ」




 ────ニカッと、わらった。





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