夢クラッシャー さーしーえー
「いま……何、と……?」
「問題で〜す」
愚弟が、しゃがむ。
「……十四機ある"テンカンロ"は、上から力を吸い込んで、下に放出する仕組みでした。"しろのふた"の力を吸い取り、"くろいかみさま"に浴びせてた。……──さぁて」
──ごくり。
「──それを全部、僕が、ひっくりかえした。さぁて、どうなる────?」
「お、お、お……!」
こい、つ────ッ!
上から下へ行く力は────……!
「──"下から、上へ"──!!」
「くかか、流石にわかったかな? 僕には、クイズの才能は無いらしい! そう……今、この都は"くろいかみ"の力が、下から! 上に!! 降り注いでいるんだよ!!!」
「──おまえっ、おまえっ、おまっ、えは──……!」
こいつが……こいつが……ッ。
「──それをするために、随分努力したよ。こんなカッコイイ体にならないと、アレに触ることすら、出来なかったしね〜〜」
目の前の愚弟が、
もう、普通ではない体を見せつける。
彼は、時限石の力をして、
この城の封印を、反転させてしまったのだ!
それが、全ての元凶だ……!
こいつは、ここで討ち取らなねばならない!
そして、十四の十字架を、元に、戻さないとっ……!
流路の力を持つ、私なら、
その十字架に、触れるかもしれないっ!
まだ、まだ、間に合うはずだっ!
この都は、再生できる、はずだ……!
私が育ったところ……!
まだ、まだ、間に合う……!
「ううっ……!」
杖に、力を込める。
この街を守ってきた、十字のひとつ。
15本目の、守護の象徴。
これを、私が託されたのだから。
勝算はある。
今、この杖には、時限結晶がはまっている。
父さんが、死にものぐるいで、
勝ち取ったもの!
私が、やらねば……!
ぐぐぐっ……。
脚に、力を込める。
おもい。
杖を、何とか脚の下から、引きずりだす。
挟まっていた所の、脚の感覚が鈍い。
鬱血しているかもしれない。
かまうものか。
「……ほう、立つんだ。すごいね。そのボロマントの重力操作は、なかなかのはずだけど」
「……はぁ、はぁ、私は、負けるわけにはッ、いかないっ!」
「その時限結晶の力かな? ……あの肥満体は、それを使って"しろのふた"の封印を強化するつもりだった。ふふ、本当に存在するとは、思わなかったけどね。そんな事よりも、もっとステキな事ができるというのに」
身体が、重いっ!
後ろの怪物は、ほぼ、黒い霧だけになっている!
もう、自我は残っていないだろう……。
「……物資をかき集め、他国に侵略をするつもりですかッ……!」
「ちがうんだなぁ」
ぐっ……
ひょうひょうと……!
立てた。
いける!
杖を、構え、流路を繋ぐ。
───ヴォン!
────ヴォン!
小さいが、時空球はでてくれた。
いこう──。
私しか、いない──。
「おおおおおおッ!」
杖を、両手で握り、
天高く、かかげた。
────ちょうど、その時だった。
「ふ──────よい角度だ」
パチンッ、と、
王が、指を鳴らした────。
──ビビビビビビビビビッッッッ──!!!
「──────なァッ!?」
十四の黒い稲妻が、私の杖に、そそぐ────!!!!!
「グががっ、ああああああああああああ!!!」
私の流路に、割り込んでくるッッ!!
感覚の焦点が、あわない。
叫びながら、朦朧とする中で、
何とか、時空球をヤツに、投げつける。
───ドぉん、ドぉん!!!
当たった……!
ど、う……だ!!
─────!?
「……だから、痛覚は切ってるんだって……頭悪いなぁ……」
愚王は、体半分、吹き飛んでいた。
しかし……体に埋め込まれている時限石は……
そのまま、無くなった体の場所に浮いていた。
血はでない。
削れた所に、規則正しく、石が並んでいる。
そして────。
────ブゥオオオオ──!!
黒い霧が集まり、即座に、体を補填した!?
王の体の半分は、闇だ。
そんなッ……!!?
「グギギ……スでニッ、ニンゲんでハ、ナイのっ!」
「くはは、こんな身体など、どうなってもいい」
「ど、ドウいうイミっ、だっ!? ああアアアッ!!!」
黒い十四の稲妻は、
私を通じて、私の中に入ってくる!
と、め、られない!!!
杖から、手が、離れない!!!
「グが、ぐぎぎッ、ガッ」
「やはりか! 君と"くろいかみ"の力は、相性がいい。そぅら────……」
「アアアアアアアアアアアア──!!」
ダめ、ダ!!
こレイジョうは、ダメ……!!
「……──かわるぞ?」
───ゴキン。
「こっ、フ……」
身体の中から、音がして、
胸を、何も無い目で、見る。
私の身体から、
棘のようなものが、突き出ていた。
「……、……ォ…」
──バキ、バキ。
────ギギ、ゴッ。
──かんかららん。
爪が、いきなり生えたので、
杖を、落としてしまう。
身体を見る。
────ボォオオオオオオオ……
お父様から頂いた鎧が、
黒い炎で、燃えていた。
炭になって、おちていく。
──ギゴゴッ、ゴキッ、バキ……
──ゴッ、ゴッ──……!
「や、ダぁ……」
背中から、何かが、左右に、突き出した。
ああ、ああ、そんな。
灰にまみれ、
杖をおとし、
棘がうがち、
心をゆらす。
手を、見てみた。
───ギギギ。
─────ギギギ。
───────ギギギ。
模様が。
私の、顔と、同じ、模様が、ひロ、ガル。
とま、ラナい。
ひろ、ガル。
ひろ、ガルルル、ア。
「アアア……」
服も、燃えた。
なんで、なんで、こんな。
「アアアア……」
ワタしは、もゥ……!
「───アアア、アアアアアアア────ッ!!!」
────人では、無くなっ、タ──……!
「アア、アアア……」
うまく、脚に力が入らない。
もう、先ほどの霧の怪物は、いない。
でも、へたりこんでしまう。
身体が、作りかえられて、いく。
「……うつくしいな」
「ア、あア……?」
「……見事だ、姉よ。流石は、"くろいかみ"に愛されただけのことはある……! そこまで凝縮された力を、その身に宿しても、そんなに……美しさを保つとは……!」
「あ……ァ、おま、エ……?」
「すばらしい。すばらしい! すばらしぃよ!!!!」
───ぱちぱちぱちぱち!!
「──僕の、新しい体に、ふさわしいよ!!」
───────ッ!!!!????
「ねぇ!!! もっと喜んでよ!!! お姉ちゃんは、合格したんだよ!!! 僕の基準に!!!」
「あ、ァ、ア……な、た……」
「やった……! やったぞ!! 僕は、やっと作れたんだ……!! 僕にふさわしい、最強の、体をぉ……!」
ちからが、はいらない。
しんじたく、ない。
こいつが、すべてをぎせいにして、
つくろうと していたのは。
────私だ。
私を、最強のバケモノにするためだ。
そして、その私を────……
「────じゃ、もらおっか?」
──自分にするために──……!
「──いやぁぁぁぁぁぁあああああ───!!!!」
こいつは、時限結晶を使って───、
────自分を、私に転写する気だ──!
ぜんぶ、
ぜんぶ、
ぜんぶ!!
ワタシの、せいだ……!
うあ、うああ。
くる。
ちからが、はいらない。
ああ、ああ。
なんで。
もし、わたしが。
ちゃんと、赤ちゃんの時に、
ころされていれば。
お父様は、誰かと、結婚したかも。
ニオスさんは、利用されなかった。
民は、化け物に成らずに、すんだ。
王妃さまは、私なんか、産まなければ。
王さまは、私なんかを、助けなければ。
──こんな奴に、私を会わせては、いけなかった。
「ちょ──だい?」
「や、だ……ァ」
かみさまを、恨む。
なんで、こんな、ことを。
なぜ、私を産んだの。
これから、私がこいつになるの。
泣きたい。
目がない。
泣けない。
なぜ、泣けないの。
私だって、泣きたい時が、あるのに。
今くらい、泣きたいのに。
自分とたたかって、
ずっと、1人でがんばって、
なのに、なんでなの。
「あはは、もらうね?」
やつの、体の宝石が、ひかる。
きた。
──。
助けて……!
お願い────。
誰か、たすけて────。
『────受諾、されました。』
「え────────?」
『────トライ:77。接続、成功しました。』
───────。
ッキュイイイイいいいいいいいいいいいぃぃぃいん──!!!!!
ッオオオオオオオぉぉおおおおおおおおおおおおお──!!!!!
「なッ────!??? んだよッ!!?」
王が、たじろぐ。
私との間に、杖が、あった。
本当の王と、本当の騎士。
二人の父から託された、十字の杖。
光っている。
眩いばかりの、
──夜明けのような、黄金に────!!
「な、なんだこの杖ッ!? 邪魔すんなよッ!!」
王が、杖に、手を伸ばす。
いけない!
あの時限結晶が、あの王の手に渡っては──!
「くそがァ─────!!! じゃますんなァァ────!!!」
気迫で迫る王。
闇でできた、王。
しかし、それよりも。
この光は、強く、美しい。
金の流路が、またたいた。
形になる。
あれは──、
───────"こぶし"?
「──おォオルゥるアアアアぁぁぁああああああ──!!!」
「なァっ──!? ぶっ、ぐべぇぇぇえええええ──!!!」
────ドゴォォォォォおおおおおン!!!
「────……」
王が、ものすごいはやさで、
折れ曲がって、とんでった。
言葉がでない。
つおい。
「あ……」
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>>>いやぁ── ちょっとつよく
やりすぎたんじゃないの!?
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「──しらん。あんなヤツは、ブタのエサよ」
『───同意。お仕置きが必要です。』
私の目の前に。
盾に、なるように。
────"黄金の道化師"が、立っていた。
お・ま・た・せ、
イたしましたァァァオァァァァァァァア!!!!
ヾ(*´∀`*)ノヾ(*´∀`*)ノヾ(*´∀`*)ノ










