みちびきしろしろ さーしーえー
前話の挿し絵、
わかりにくかったですね^^;
あれ若い頃(笑)の先輩です。
「──あのひとだ」
何よりも、直感で、わかった。
あの人に、呼ばれた。
────『こっちだよ』って。
『────対象補足。湖面より流体発起。人型の形状と判断。』
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>>>なんだいあれ……?
白いシルエットだ
スライムの一部って ことかい?
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白い水面の向こう。
"ベアークラッチ"によれば、
ここから100メルも離れていない。
まるで亡霊のように、
"彼女"は、たたずんでいた。
『────分析完了。スライム核反応:無。ゲル化魔法体と認定。』
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>>>女の人に見える……
ゴースト? いや……
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顔まではわからない。
輪郭だけが、よくわかる。
ローブを被っているような、
髪を流しているような。
「……いかなきゃ」
『────レディ。危険と判断した場合、即:撃破対象と認定します。』
「ごめん。おねがい」
『────接近しましょう。いけますか。アンティ。』
「──うん」
砂利と水の境界に立つ。
色は、どちらも白だ。
さっきまで襲われてたけれど、
今は、静かにしてくれてる。
ふと、天国との境い目みたいだな、
と思った。
はは、もしそうなら、シャレになんない。
歯車を出し、一歩、踏み出した。
────キィん。
白の水面に浮かぶ歯車に、
もう、危なげなく、重心がうつる。
────キィん。
─────キィん。
────キィん。
─────キィん。
─────白しかない。
目の前の人影は、にげなかった。
「…………」
『────対象までの距離:7メルトルテ単位。』
やっぱり、女のひとだった。
近くで、わずかに表情をみることができた。
まっすぐ、こっちを見ている。
腰までのびた髪は、ふんわりと輪郭をつくり、
膝下まであるような、
スカートのようなヨロイを着ている。
肩からは、短めのローブ。
「……あなたは、"魔法職"……?」
にこ……と、白いお姉さんが、ほほえむ。
湖と、同じ色だった。
髪の色だけが、紫に見えた。
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>>>髪に魔力が宿ってる……
核がないのに 何故……
っ!
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すっ──……。
「──っ……」
彼女の片手が、まっすぐこちらに向けられた。
警戒する前に、目を見開いてしまう。
たじろいでいると、
あげた手の下の湖面に、白の波紋が揺れはじめる。
────うきあがって、きたのだ。
「……────"杖"?」
美しい杖だった。
十字架みたいな、神聖な、白。
上と、左右が、フォークみたいになってて、
大きなステーキが、食べられそうだった。
まっすぐ。少しも傾かず。
彼女の手に、握られる。
そして、"呪文"が、唱えられた────。
{{ ── "再現" ── }}
「────え────?」
───オオオオオオッ!!
「!?」
急激な光が、私を包んだ。
まさかっ、攻撃……されたのっ!?
『────ががが、がががっ。』
────なっ!!!?
「──クラウンっっ!!! どしたのッ!?」
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>>>クラウンちゃん!!
ちょ しっかり!!
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「先輩っ!? クラウンはっ!?」
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>>>いまクラウンちゃんの
精神構造体に
直接ぼくを アドインしてる!
おい! おい しっかりするんだ!
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────ど、どうしたって言うのよ!!
信じられない目で、湖面の彼女を見る。
杖を横に携え、こちらを、静かに見ている。
『────き、き、き、強制ダウンロード、発生、ちゅウ。』
「っ!? クラウンっ!?」
『────形態流路接続箇所。
────アンインスとー、ト、ト、ト、、、ディれイド。
────ガが、ががが、消去できま、セん。
────流路、確定さレました。
────回復コンソール起動。
────エラー、、、認定されマセ、ん。
────強制接続されま、、ス。
────集積回路が、統合されマシタ。』
──な、何が起こっているの!!?
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>>>なんだこれ……!!
逆なのかっ!?
"こっち側から"
ハッキングしてしまってるのか!?
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「!? 先輩どういう───……ッ!?」
私の周りの湖面が、形を変え始める。
なに!?
なんか、包み込まれていくみたいな──……!
「……──は、な──?」
──"花"だ。
私を中心に、"白い花"ができている!
なんだか知らないけど、ここから逃げた方がッ!!?
ギシ……。
……───え?
「うそ……身体が、動かない……!」
ギギギ、ギギギ……!!
そんな、バカな!!?
こんの、バカヂカラのヨロイが、うご、かない!?
う、ああ……!
ギシギシと軋む首を動かし、
下を、見た。
「なによっ、コレ……ッ!!」
白の湖から、光の筋のようなものが、
ビッシリと、私のヨロイにのびていた。
なんなのっ、コレはぁ!!?
カクカクとした、
細い植物の根のような、光の流れ。
私の全身に、はしっている。
──これは、攻撃なのっ!?
目の前の白の魔女に、目で、訴えかける。
彼女は身をひるがえし、後ろへ歩き出す。
音もなく、ゆっくりと。
「──ッ! まって──!!」
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>>>ッ! ダメだ!
接続を解除できないっ!
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「どう、なっちゃうの───!!」
身体中を走る光の筋。
咲き誇る純白の大花。
そして。
──赤い光が、吹き出した。
……────キュイイイイイイ──……!!!
「あ、あ、あ──……!!」
────ひ、ひ、光ってる。
時限結晶が、光ってるぅ──!!!
『────こウぞうたイが、"再現"されマ、す。』
「──く、ラウン───ッ!!」
冠からあふれる、
強烈な赤い光の中で。
ヤなことを、思い出す。
あの、"猿辞典"に載っていたこと。
"──レエン湖は、時限結晶の暴走で生まれた──"。
「まさ、か──……!!」
こんなふうに────……!!
うわ、うわわっ……!
まずいぃぃいい────!!
{{ ──あなたのは 大丈夫── }}
「……────え?」
真紅の光が、視界をおおった──。
「──…………」
『────……。』
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>>>────……。
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…………はぁ。
「…………ねぇ。アレ、どう思う?」
『────申し訳ありませんでした。復旧しました。』
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>>>いや どうって言われてもねぇ……
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光は、おさまった。
身体は動き、
今は、頭上の相棒から、
まっかっか光線は出ていない。
いま私は、歯車のうえに、立っていない。
足場ができてんのよ。
真っ白な、足場。
目の前の"アレ"に向かって、
湖の上に、小さな足場が続いている。
なんだこれ。角砂糖か?
でかい角砂糖が浮いてんの?
これ、踏んでいけってか?
「……はぁ……。説明もとむ」
『────対象"アレ"の形成に、こちらの亜空流路を利用されました。現在も一部が仮接続されています。』
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>>>はは……ぼくたちさ
まんまと相手さんの手のひらの
上なんじゃない?
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「……そんな気、するわねぇ……」
どう考えても、"アソコ"に行けって、
そういうことだもんね……。
「……さっきのお姉さん捕まえて、正座させて、理由きこう」
『────支援します。』
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>>>ははは さんせー
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ここまでヒトのこと呼びつけたんだ。
説明責任を果たしてもらおーじゃないの。
「しゃーなぃ……いくかぁ!」
スライムの足場を、トボトボ、歩く。
「まったく、"御伽話"にも程があるわね……」
湖の上にできた、"純白の王城"。
……お料理とか、だしてくんないかな。










