食べられる? さーしーえー
前後にわけようとして、やめました(●´ω`●)
「まよった……」
何ここ、超入り組んでるじゃないの……
いや、光はけっこう漏れてて、まぁ見えるのよ。
ものっそい上の方に、細い亀裂が見えたりするし。
「もっと簡単にいけると思ったんだけどなぁ……」
キィン……。
キィン……。
水面のちょい上に固定した歯車の上を歩いていく。
天井を見てみる。
自然のわずかな光と、
山火事ミニ歯車に照らされた、壮大な光景が目に入る。
……なんか、つらら? みたいなモノが、
いっぱい下に向かって伸びてる。
あれ、氷とは違うかな?
あ、あそこの水に浸ってない所。
し、下からも、つららみたいなモノが、
上に向かって伸びてるわ。
おお、綺麗だわ……。
うわっ、ここ天井たっか。
大空洞だ……。
『────30フヌが経過しました。』
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>>>予想以上に迷路だったね〜〜
南向きに岩壊しちゃう?
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「うえっ、ダメよ! こんな綺麗な所、瓦礫の山にしたくないっ!」
『────崩落の可能性もあります。非推奨。』
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>>>光がさしてる所を
上に壊してみたら?
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「……これ、めっちゃ大きな岩と岩の間に、ちょっと隙間がある感じでしょ。壊すの大変だってば」
なんかちょっとやれる気がしないでもないけど、
多分、この場所ごと、全部埋まるわよ……。
むしろ出来るかもしんないってのが怖いわ。
私は破壊神になるつもりはない。……ないわよ。
……────ちゃぴんっっ──……
私が動く、わずかな揺れのせいだろうか。
さっきから、水滴がよく、
足元に溜まる水におちる。
かなり高い所からみたい。
……────ポチャんッ──……
なんというか……心によくのこる音だ。
また、光が少し漏れる場所に出る。
水を覗き込んだ。すごい。
ええと……、
──本当の透明って、こういうことだ。
めっちゃ、底まで見える。
綺麗だけど、恐ろしい。
空を歩いてるみたいだ。
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>>>やっぱり 上の亀裂の入り方が変だ
元々は、ここは真っ暗だったのかも
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「……というと?」
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>>>地殻変動で 形が変わっちゃってる
かも ってこと
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「ち、ちかく……?」
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>>>アンティ ごめん
近道かもって言ったけど
やっぱり天井を壊せそうな場所を
探そう 通路自体が崩れているかも
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「……! う、うん……」
天井を見ていた私は、また、歯車を出し、
恐ろしいほど透明な水面を歩いていく。
──キィん。
───キィん。
────キィん。
──────ぐにっ。
「…………」
えと、ですね……。
……さきに、言い訳をしておこうと思う。
①超、上見てた。
②ベアークラッチで全方位見えてるけど、超ゆっくり水の中から浮いてくるヤツに、なかなか気づけないってば。
③水の中の魔物の音って、聞こえにくっ。
「…………」
……──さ─────っ、と、血の気が引く。
さあ、私───。
──何、踏んだ?
「そ〜〜……ッ」
…………あ。
…………。
目が、合った。
「…………」
「…………」
─────────────────────────────
>>>わぁ……
─────────────────────────────
「かぁぁああバァァァア──────ッ!!!」
「おぎゃあああああ────!!!!!」
い、いやがった!
うわっ、クチでっかぁぁあいっ!!
に、逃げねばっ!!
「く、クラウン! 分析! 分析!!」
『────分析完了。
対象名【 たれぽん 】
弱点部位:不明。弱点属性:不明。
検索ヒット:無。……謎の生物。』
「なぞの生物ッッ!?」
─────────────────────────────
>>>ていうか こいつってさぁ……
─────────────────────────────
「うわわわわっ、きたっ!!」
「カバァァァァア────!!!」
ひぃぃぃぃい!!
く、くちがでかい!
何回言うのコレ!!?
すっごいキバ生えてる!!
きょ、凶悪だわっ!
ぜったい肉食ねっ!!
─────キィん! キンキンキンッ!!!
─────────ぐぉん!!
今までは、歯車を出してから上を歩いてたけど、
黄金ブーツに直接歯車を固定してから、
それを更に空中に固定する方法に切り替える!!
おおっ! そうよコレよ!!
こっちの方がラクチンじゃない!!
文字通り空中を走り、
スキルで加速しようとするが────……!!
「せっ、せまい──!!」
うわっ!
まだマッピングしてない方向に逃げてきちゃった!
道がわかんないっ!!
加速しようにも、
道が曲がりくねってて、そうも行かないわっ!
「かばばばばばばばァァ───!!!」
「うわぁぁぁああん!! はやぁぁぁあい!!!」
ブーツで空中を蹴りながら、
薄暗い洞窟を、くねくねと走る!
クチでか魔物の、水の中の体に、
魔法の光がチラリと見えるっ!!
──水魔法で加速してるっっ!?
『────アンティ! 前方に光源確認。』
「うえっ!? どこ!? どこ!?」
─────────────────────────────
>>>右前! ひろいとこ!
ちょっと植物がある所だよ!
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ほ、ほんとだ!!
空間がひらけた!
おっそろしいほど透明な水の中に、
けっこう大きめの陸地が顔を出してる!
上の方から、陽の光がはっきりと
射し込んでいるから、よく見えるわっ!
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>>>植物が育つほどの光ってことは
それなりの穴があるはず!
─────────────────────────────
……あれか! やった! 光の穴だっ!
あれなら通れるかも!
……っと。
まずは下にいっかい着地して……と!
……──ト────────────ン──……。
────キュッ!
「──うわっ! とと……」
大きくジャンプして、
陸地に一度、降り立った!
ここ……砂が積もってる?
上の穴から、降ってきたのかしら。
危うく足を取られるところだったわ!
ふぅ────ッ!
あの穴を抜けてから、
初めてまともな足場に立ったわ!
下がずっと綺麗な水だけって、
けっこう怖いもんなのね。
落ち着かないったらないわ……。
『────敵勢力:接近。上陸します。』
「ひゃっ!」
────じゃぱぁぁあああんッッ!!
後ろをふり返る!
油断しまくっていたら、
あの魔物、あがってきちゃった!
な!? 陸にもあがれるの!?
そんなぁぁあ……。
「は、はやく逃げちゃおう……!」
ズギュ、ズギュと、砂を踏み固めながら、
こちらに近づく魔物。
で、でも、後は、上の穴から逃げるだけだ!
この秘密の通路を抜けられなかったのは、
残念だけど……。
「──お、おじゃましました! そ、それじゃ────」
──────ぐらぁ……、
「──え────?」
────ド、ド……
……────パシャ。
……──────────ずずずん。
「…………」
…………。
……な……ん?
「……倒れたの──?」
…………。
目の前の魔物が、
いま、ふらふら〜〜ってなって、
倒れた。
横に、ゆらりと崩れおちたみたいに見えた。
あ……ゆっくり顔を、砂におろしたわ。
「……かばぁぁ……」
え、コイツ……どうしちゃったの。
……砂、苦手なの?
……────ぐぅぅうううう──……。
「──わっ」
…………?
……───くぎゅううううぅぅぅ──……。
…………。
「……これって……」
『────振音分析。発信源:敵対象消化器官。』
「えと……」
─────────────────────────────
>>>おなかが減ってるんだと思うよ
─────────────────────────────
「えぇ……」
……──ぐぅぅうううぅぅ──……。
「かばぁあぁ……」
「…………」
え、えらい元気が無さそうなんだけど……。
い、いいよね。
逃げていいよね。
チャンスだよね。
あ、目ぇ閉じた。
『────敵対象:著しく体力を消耗しています。』
─────────────────────────────
>>>ま、見るからに
食べる草が少なそうな所だし
体力温存してたんでしょ
─────────────────────────────
「ええっ!? こいつ草食なの!?」
─────────────────────────────
>>>うん たぶん
そこの草 根っこ掘られてるし
いきなり動いて疲れたんだよ
─────────────────────────────
「…………」
「スピ────……スピ────……」
さっきまで、とても怖かったのに、
目の前の砂で、眠るように、静かになってしまった。
……私が、いきなりここに来たからか。
…………。
上を見ると、今まで見た中で、
一番大きな穴が空いていた。
気持ちに余裕ができて、辺りを見回すと、
もんのすごく、美しい場所だった。
大きなタマゴのカラの中みたいな所だわ。
岩肌は茶色いけど、なんだか光沢がある。
天からそそぐ太陽が、
この魔物が作った波にあたって、
幾重にも重なる波のような光を反射していた。
周りは綺麗な水。
これ、綺麗ってもんじゃないわね。
ホンモノの透明を、私は初めて見た気がする。
水の境い目って、こんなにわからないものなんだ。
私のいる場所から離れるほど薄暗く、
反射した光の波が、よく見えるわ。
……幻想的って、こういう事を言うのよ。
「……すぴ───……、すぴ────……」
唯一する音を見る。
魔物は、眠っているわけじゃなかった。
さっきから、チロチロ、目を開けている。
……ものすごく、疲れているんだと思う。
幻想的な世界に横たわる魔物は、
とても、可哀想に見えた。
「ねぇ、先輩……こいつ、草とか食べるんだよね……」
─────────────────────────────
>>>たぶんね? て まさか!
─────────────────────────────
「…………」
─────────────────────────────
>>>や、やめときなよ……
そういうの 気にしてたら
きりなくなっちゃうよ……?
─────────────────────────────
だって……。
ええと……
こいつ身体でかいな……。
やさい……くだもの……。
でかいくだもの……。
あ…………。
…………。
…………。
────キュ。
────キュ。
ゆっくり、近づく。
いつもは派手な足音も、
今は、砂にとけてしまう。
────キュ。
────キュ。
────キュ。
…………。
「……───ねぇ、あんた──」
「……かばぁ──……?」
「……──すいかとか、食べられる?」
ファンタジーってなんだっけ?^^;










