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とつぜんおきみやげ

 

 サイコロ状に切ったお肉を、

 歯車から直接出した火で(あぶ)って、

 もぐもぐしている。

 すごい美味しい。

 ブラックペッパーをまとめて買っておいてよかった。


 でもヨロイの至る所に、煙ごしに脂が飛んでいる……。

 こりゃ、寝る前には、お掃除歯車が大活躍ね。


「……ごっつぉさん、じゃのう……」

「お粗末様です」

「お粗末なもんかぃ……」


 エンマさんが、幸せそうに苦しがり、

 床に寝転んでいた。


 考えたら、こんなでっかい教会の中で、

 ステンドグラスをみながら肉を焼くなんて、

 とても罰当たりな贅沢だわ。

 神さま、ごめん。


「……すまなんだな。付き合わせてしまって」


 あ。

 またエンマさんが、いきなり喋りだした。

 もう慣れましたよ。


「いえ……かなり冒険ぽくって、楽しかったです」

「どは……」


 まだ床には、

 ポッカリと穴が開いたままになっている。

 エンマさんが、寝たままそちらを見て、言う。


「けっきょく、あの原石も消えてしもうたのう」

「……そ、ですね。さっき、下に降りた場所では、あの鍵のようなカタチは、目につきませんでした」

「……ま、しゃあないのう……」

「先に、進みますか?」


 実は、さっき下に降りて、

 変な口のデカい魔物に追い返されるまでに、

 わかったことがある。


 逃げる途中、一部だけ、地図化することができた。

 クラウンと、先輩のお陰だ。

 "視覚域拡張野(ベアークラッチ)"でほぼ全方位、

 見る事ができるチカラの応用だ。


 どうやら、あの鍾乳洞は、

 南の方に繋がっているっぽい。

 ここは地下だけど、

 あの穴の転移魔法は、

 どうやらかなり地上よりの所に繋がっているようだ。

 鍾乳洞の中に、少し光がさしてたもの。


「……下にある洞窟、多分、レエン湖に続いているんだと思います」

「まことか?」

「はい、恐らくは」

「信じよう。何か、掴んでおるようじゃ」


 大きく手足を広げて上を向き、

 大きく息をはいた後に、言う。


「……ならば、ワシは元きた道を戻るかの。湖にはあまり近づく理由もない。それに──……」

「──それに?」

「ワシ、泳げんしのっ」

「! あらまぁ」


 それはちょっと、まずいわね。

 あの穴の下、思っきり水だし。

 魔物いるし。


「しかし、この抜け道、湖に向かっておるのか……」

「あ、まだちゃんと調べた訳じゃないですよ?」

「いや、ワシはおぬしの考えが当とうとると思う。ここから抜けれる場所は、あそこが一番理屈が通る」

「? というと?」

「──あそこに昔あったのは、城じゃ」

「あ──……」


 そ、そうか……。

 抜け道って……。


「なぜ無くなったのかはワシも知らん。時限石の暴走と信じてるヤツもおるがな。ただ、王族の抜け道の一つが、この道なのやもしれん」

「お、王族ですか」

「うむ。この穴の下は、階段などないのか?」

「はい。ツルッとした壁でした」

「なるほど。こちらから城には、行きにくくしてあるのじゃろう」

「それってその、お城に簡単に行かせないためですか?」

「その通りじゃ。王のいる場所に、簡単に行かれては困るじゃろう。穴の下には……城からこの教会に行くための仕掛けがあるやもしれん。魔物がいる事はよくわからんが……まぁ、王族の持つ特別なアイテムなんぞに反応する仕掛けやもしれん」

「…………」

「憶測じゃがな。あの十四の守護像、あれは、城までの道を守っておったのじゃなかろうかの」

「なるほど……簡単に通らせないための、ですね」

「うむ。まるで、試練よの。でも、有事の際は、あの原石の鍵をつかえば、城に行けるのじゃ。そうとしか考えられん……」

「……すごい、技術ですね」

「確かにそうじゃ! じゃが、めぼしい鉱石は無い……つまらん」

「えぇぇえええ……」


 いやいや。

 めちゃめちゃ神秘的な構造でしょ、この遺跡。

 これ、第一発見者になるんじゃないの?


「……ギルドに報告しないんですか?」

「壁を見よ。あの青」

「……! 時限石……」


 ずらりと並ぶ、壁に埋め込まれた、青の宝石たち。

 アイテムバッグの材料になる、神秘の魔石。

 私の持つ、時限結晶の、劣化版、と言っていい。


「この時限石、おそらく、この空間を維持するために、使われておる……失われた技術じゃ」

「…………」

「ここの場所がばれ、本物の盗っ人がここを見たら、どうすると思う」

「……! …………」


 壁を、改めて見る。

 たくさん(・・・・)ある(・・)

 青の宝石が、たくさん────。


「……"ひとつくらい、いいかも"と、盗み、ますかね……」

「全部、()りよるて。そして、規制されるまで、冒険者も、いくつか持っていくかもしれん」

「……! それは……」

「それは、この地下空間の崩壊を意味する」

「…………」


 ……こわいな。

 みんなの少しの"ちょっとだけ"という心で、

 この美しい大聖堂が、

 崩れさってしまうかもしれない。

 ……やだな。


「言わんでおこうと、思う……」

「はい……」


 ステンドグラスを2人で見て、決めた。




「どはぁ……しかし、あの原石、もっと調べたかったのう……」

「……調べたかった(・・・・・・)? 作りたかった、じゃなくて、ですか?」

「むう? おぬし何を言うとるのじゃ」


 エンマさんが、腹筋するみたいに……

 いや、あれは腹筋だわ。

 起き上がりかける。


「え……だって、鍛治屋さんでしょう? あの宝石で、刀なんかを作ったり……」

「な!? ちゃうちゃう! あんな宝石で、よい刀が織れるか! よくて装飾や、魔力媒体止まりであろう! ワシの目的は、地層の分析じゃ!」

「え、え!? そうなんですか!?」

「同じ原石の破片があるという事は、同じ場所で原石が見つかったということじゃ! その付着物を調べて、その土地の場所を絞りこめることがあるんじゃよ」

「そ、そうなんですか……」


 もっと、お金に汚い方向で欲しいのかと思ってたわ……。


「でも、ドロボウはダメですよ? 私にカケラ、あげようとしてたじゃないですか」

「うっ、それは……スマンて……」


 ────ドテ。


 あっ、また寝転んだ。


「身体、冷えますよ」

「ここはそんなに冷えておらぬ。いや、ワシが暑がりなだけか」

「そですね……そんなに寒くない、かな?」

「今日は、ここに泊まらせてもらうかの。教会じゃしの」


 はは……教会って、都合の良い所だわ。


「ああ──……。今回は、成果がなかったのぅ……これでは、何も打てん。貴重な武具の破片だけでも、と思うとったのじゃが……」

「だから、ドロボウはいけませ──……"武具の破片"……?」

「ん? なんじゃあ、首を(かし)げよって」


 はへん、はへん……あ。


「あります、破片」

「なんじゃと!?」

「ここから北の森に、ある"魔物"が使っていた、大きな斧の破片があります」

「"魔物"の武器の破片ということかっ!?」

「そですそです」

「そっ、そんな貴重な物を……! そこに、あったのか?」

「ええ、捨ててきました」

「す、捨てたっ!?」


 エンマさんが、今度は足もあげる腹筋の仕方で、

 半身を起こし、こちらを向く。

 ……いま、お尻だけで身体支えてるわ。


「おっ、おぬしが倒した魔物なのかっ!? なんと勿体ない……」


 さっき、食べてましたよ……。


「えとたしか……"隠密"のスキルを持っていた斧でした」

「なんじゃとぉぉぉおおおおおおお!!!!!」


 どうやら、私とエンマさんは、

 ここで真反対に進むことになりそうだ。


 何とか気を沈めてもらい、

 エンマさんは長椅子で寝ようとしたが、

 けっきょく床で、


 私は、エンマさんが、

 気にせず使えと言ってくれたので、

 マイベッドを出して、眠りについた。







 だいたい朝に起きると、


 エンマさんは、いなくなっていた。


 ベッドの側に、手紙と、ある物が、置いてあった。




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