だだだ大聖堂 さーしーえー
「うっわ────!! すっごぉ──……!!」
「うおっ! いきなり大きな声をあげるでなぃ! 驚くじゃろが!」
「だってだって!? エンマさんっ、これっ、これっ!?」
こぉおぉんな大きな教会、私、見たことないもの!!
うわははは、すごぉ────い!
「これ、こんな所では静かに……。あ、いや……ワシら以外に誰もおらんか。ま、気持ちはわかるの! まさか、遺跡の地下に、こんな大聖堂クラスの教会があるとはのぅ……!」
だだだ大聖堂って、王都とかにある、
すんごい偉い神官さんがくる、
でっかい教会の事よね!?
王都の中、入った事は、ないかんなぁ……!
「いやっはぁァああ! すごい! すごい綺麗ですね! 見てください目の前のステンドグラス! やばいですよ! くるっと! ぐるっと天井までありますよ!?」
「うぅむ! 見事なもんじゃのう……!!」
"能力おろし"の時に見た、
ドニオスのステンドグラスも綺麗だったけど、
ここに比べたら、ちょっと話になんないわ!?
あそこのステンドグラスは、
目の前の壁に、
大きな三つのステンドグラスがあるけど……
ここのは、部屋が四角じゃなくて、
なんというか丸っこくて!
目の前の壁から、横の壁一面まで、
全部がステンドグラスで埋まってるの!
きれいすぎる……。
光を透かして、
聖堂の中に、光のカーテンを揺らめかせている。
あれ?
ここ、暗黒の球体の中じゃ無かったっけ?
なして、光っとるのん……?
……んまぁ細かいことはいいわっ!
目の前の全てがステンドグラス……!
天井、たっか!!
うわっ! 上の方に、
丸い意匠のステンドグラスがあるわ!
きれいねぇ……!
柄にもなく、
造形と光の美しさに興奮していると、
どうやらエンマさんも、天井を見上げてるみたい。
あ、今の私、真横も見えるのよ。
「……あの歯車窓、見事なもんじゃのう……!」
「えっ────!!?」
いきなり"歯車"の言葉がでて、驚く!
えっ、えっ!!?
私、エンマさんの前で、
大っぴらに歯車法、使ってないよねぇ!?
あるぇ……?
「あの……はぐるま、って……?」
「なんじゃ、知らんのか? あの丸いステンドグラスの事を、"歯車窓"、と言ってな? ほれ、時間箱の中の、透明の歯車に似ておろう!」
「え! へ、へぇ、そうなんですか?」
知らなかった……。
そう言えば、あのステンドグラス、
丸くて、ギザギザしてて、
歯車に似てるわね……!
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>>>え、バラ窓のバラって、花じゃないの
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先輩のイミフ発言はスルーし、
天井から少しずつ視線をおろし、
また、下の湾曲した壁一面に広がっている、
ステンドグラスに目をまかせる。
「エンマさん、あれってさ……!」
「ああ……"ヒューガノウン"じゃな」
縦長の、細いステンドガラス。
それが連なっている光の意匠。
全体をぶち抜いて、光の精霊、
ヒューガノウンときたもんだ。
「すげぇえぇええ……」
「どははっ! その反応だけ見ると、歳相応の田舎から出てきた娘に見えよるな! さっき打ち上げられたクルルカンと、同一人物とは、思えんぞい!」
「むむっ!?」
し、仕方ないじゃないのよその通りなんだからっ!!
ええ、ええ、どうせ私はカーディフからきた、
田舎食堂娘っ子ですよッッ!!
『────ヒューガノウン。光と癒しの精霊。造形の形状から予測するに、天族だと予測。』
「え、天使……?」
天使と精霊は……違うくなぁい?
突然、何言い出すのよクラウン。
「てかさ……天使さまっているの?」
『────肯。魔物の分類の天使は、天族の天使と混同されている場合が多いと予測。共有記憶情報に起因する。』
「え! ま、魔物に天使っているの!? 何よそれ……えと、天族の天使、とは別なの!?」
『────ダンジョンクリエイトで生成できるのは、堕天状態の天使だけです。』
んんん……?
天族が堕天して魔物に……?
「……ふたつの違いって……」
『────堕天した天使は、羽根が黒色になり、稀に両性具有になりますね。』
「……それって悪魔化してない……?」
ダンジョンって、そんな魔物もいるの!?
こえぇな……。
堕天使がいるダンジョンなんて、
お金の為とはいえ、自分から行きたくないわね……。
そんなヤツいるなら、私、お手紙配るわっ!
人の想いを届けるって、
やりがいがあって、安全だもの……。
まぁ、いきなりドーン、とは儲からないケド……。
「なぁにをぶつくさ言うとる……」
「え!? あ、ははは……。ここ、とっても大きな教会ですけど、外の大きな球の中って考えると、ちょっと小さいですね」
「む、それはワシも気になっとった。ここは、幅100メルの球体の中なんじゃよな……大聖堂の他にも、この球の中には何か建物があるやもしれんの」
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>>>アンティ! 壁に! 見てみて!
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お、ん?
(なんすか先輩……壁のステンドグラスなら……)
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>>>違うって! その下の壁!
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???
ステンドグラスの、下の壁……?
うわ、なんかレリーフが彫ってあるわね!
魔物とか、植物とか、馬車に乗って、
武器を構えている人の意匠もあるわ!
光に目を惹かれたけど、
ここの、石材? のレリーフも見事なもんだわ!
……ん?
あれ……?
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>>>気づいたかい?
そのレリーフの 魔物の目とか
武器の装飾部とか 青いでしょ
それに、その背景……
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「……等間隔に、いっぱい青い宝石が埋め込まれてるわね。……って、まさか、これ!」
『────分析完了。
────全て、時限石です。』
「え、えええええええええ」
これ、これぇえ……?
壁に近づき、よく見ると……。
「うそ……ホントに……これ、全部なの……?」
レリーフの背景の柄は、
格子状の模様になっていた。
その、線が交差する場所に、
青い宝石が、光輝いていた。
斜めの線全ての、交差する所にだ。
「わ、わ、わけわかめ……」
『───この球状構造物の、外見周囲と、内部の空間範囲の誤差に関係があると予測。』
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>>>はっはァ──
時空魔法の一種ってことかぁ
にしてもえげつない手間かけてるね
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ひぃえぇぇ〜〜……!
ずらりと並ぶ、青い宝石に、なんというか……。
どれだけアイテムバッグ作れるのよ……。
これだけ同じ大きさのモノを揃えるって、
ここを作った人は、どんな人なのやら……。
「おーい、娘っ子や、こっちにきてみい!」
「……はッ! は──い……!!」
エンマさんが、何やら、正面の、
ヒューガノウンのステンドグラスの下で、
手招きをしてる。
私は、食堂屋の一人娘よろしく、
おっかなびっくり、そこに向かった。
あ……まさしくそうよね……。










