表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
236/1216

打ち上げアンティ

 


 ───うあああ、やっちまったわ!




「ほれっ、ほれっ!? 娘っ子! どこじゃ、どこが光っとるのじゃ!!」



 拝啓、

 故郷の父さん、母さん。

 私は今、

 むっさテンション高いドワーフさんと一緒に、

 遺跡の、ボッロい街の中にいます……。



 ま、おわかりだと思いますけどね……

 "眼魔(ガンマ)"が、発動してたワケですよ……。

 もらった緑色の宝石? の原石から、

 ポヤポヤと、湧き水の泡みたいに、

 緑色の光が出ていたワケで……。


 それを、うっかり言っちゃったのよ……。

 しかも、遺跡の街で、

 同じような光を見たのも、

 その流れで、言っちゃったもんだから……


「どっふぉおお───!!! 楽しみじゃの楽しみじゃの!! どーこぞにあるかいの! わんが愛しの鉱石ちゃんワぁ────!!?」


「うん、やらかしたわ……」


 エンマさんのテンションが、ヤッバい。

 わかる?

 ちっさい筋肉質のおじさんが、

 ゆっくりげんなり歩く私の周りを、

 ぴょんぴょん跳ねながら回転してるのよ……。

 なんで軌道がズレないの……

 ドワーフの歩行術、マジで謎だわ……。


「────ああ、もぅ!! 周りで飛び跳ねないでくださいッ!! 落ち着いて移動もできやしませんッ!!」

「いやほほほ! そんに堅いこと言うなてぇ! おぬし、まさか隠れた魔力を見る力なんぞ、持っておるとはのぅ!!」

「──くっ────!」


 先刻の自分の迂闊(うかつ)さが悔やまれるッ!!

 こんなおじさんぴょんぴょこ状態になると知っていたら……!

 うう! なんでだ!

 なんで、眼魔(ガンマ)はいつも、

 いきなり発動するのよ!?

 仮面のバカぁぁあ───────!!!


─────────────────────────────

 >>>いや……そこは自分で気付こうよ……

   光ってる段階であやしいでしょ……

   クラウンちゃんもそう思うよね?

─────────────────────────────

『────……。』



「────ッ!!」


 我が心の相棒である、王冠の、まさかの沈黙。


 クラウン……あ、ん、た。

 その沈黙は、『肯定』ってイミ……!?

 いつもやってる、『────肯。』ってやつ!?

 そんな……仮面先輩と、グルになるなんて……!


「………うう、ぐすっ」

『────ァ、アンティ。その判断は早計と判断。』

─────────────────────────────

 >>>クラウンちゃん?

   判断でサンドイッチなってるよ?

─────────────────────────────



 く、くそう!

 もぉういい!

 私はスネる!

 ええ、ええ、どうせ私のせいですわ!


「どっふぉふぉお────い!! 鉱石鉱石ィイ──♪♪♪」


 うううっ!

 何なの、この私の周りを飛び跳ねる筋肉は……!?

 誰か説明して……


『────サイクロイド曲線です。』


 わっっかんねぇぇ……。





「みてくるから、待ってて」


 騒ぐ筋肉に、私は言う。


 さっき、私たちが居た砦跡は、

 街に比べると、高度があった。

 ま、その上に、さらに崖があるんだけどね。

 よするに、高いところからの方が、

 あのポヤポヤ光玉は観察しやすいってこと。


「どうするつもりじゃ?」

「上から見るんですよ」

「上からじゃと?」


 さっき、砦から見た、緑の光の泡は、

 そんなに大きくは無かったわ。

 多分、ヒゲイドさんの身長くらいかな?

 大体の場所を目指して来たら、

 けっこう瓦礫や建物跡が多くて、

 光が見えなくなってしまった。


 近いと、見えにくくなるものって、ある。

 昔、ルーンバタフライを追っかけてて、

 近づいたら、どの花にとまってるか、

 わからなくなったことがある。

 そういう時は……!


「────上に、離れる(・・・)のよ!」


 せ──……よぃ──……の──……!



 キィィィ────────────ン!!!



「……これ、耳鳴りみたいでヤだな……」



 真上に打ち上がる、私の身体(おうごん)


 おお、一望できるわね。

 すっご……ここまで、

 バカみたいに真っ直ぐ上だけに上がったのは、

 初めてかも。

 淡い、紅色の石の街並み。

 でも、ここから見ると、

 かなり精巧に作られた街だとわかる。

 道の跡が、弧を書いているのだ。

 まるで、大切な、まぁるい何かを、

 包み込むような、道の通っていた跡────。


「────あ……」


 見、えた。

 緑の、光じゃない。

 瓦礫の果て。


 水面が、見えた────。


「レエン湖────」


 白い。

 水面が、白い。

 ─────光か?

 あんな風に、強烈に反射するのだろうか?

 たまたま、そういう(・・・・)角度なのかな。


 ………わかる。


 まるい。


 まんまる(・・・・)だ。


 ヒゲイドさんの、地図の、通り──……。


 あれが、私の小さな冒険の、


 ────最終、地点なんだ────。



 ひゅ

   う

    ぅ

     ゜



「うわっ……」


 や、やばっ!


 レエン湖に見とれてたら、

 落下しはじめたわっ!

 今は、准反重力機構は使ってない!

 流石に空中に浮ける事、

 エンマさんにバレたら、

 えらいこっちゃだわ!


 し、しかたない……。

 落下しながら、光を探す方法は……。


「────"反射速度(クロックダウン)"!!」


 時間は重さを持って、


 広大な景色は、


 まるで、


 大きな絵の中にいるみたいだ。



 ゆっくり。


 ゆっくり。


 ゆっくりと。



 身体ごと、下を向く。


 へんな、感じだ────。


 地面はこっちのはずなのに。


 足が向く空が、下に感じる。


 地面は、前。


 上は、また、空。


 私の後ろが、天空だ。


 星が(・・)目の前にあって(・・・・・・・)


 大きいんだな、と、わかる。



 ……はは。


 何、当たり前のことを、私────。



『────アンティ。落下加速に合わせて、貴方の思考も加速しています。このままだと──。』

「! 熱暴走(オーバーヒート)、まっしぐらか」


 いかんいかん……

 調子にのって、ゆっくりにしすぎた(・・・・・・・・・)みたいだわ。

 ちょっと、なかなか見れない景色だったからね。


 ええと、街の跡地の、緑の光……っと。


「あそこと……あそこ! 光が強い──クラウン!」


『────レディ(準備完了)。上空からによる正確なポイント設定。遮蔽物:無。マッピング完了しました。』

─────────────────────────────

 >>>オーライ

   こっちにも座標バッチリ!

   おじさんに合わせた最短ルート

   マーカーだすよー

─────────────────────────────


「よし、じゃあ、降りますか。よっと──」


 少し、緩やかに思考の速さを戻し、

 身体の向きを、少しずつ調整する。

 おっと、意外と速く落ちてるのね……こわっ。


「くっ、クラウン──。」

『────レディ(準備完了)。地表接地直前に、瞬間的に准反重力機構デミハングラビティシステマを作用させます。流路起動中。』

「たのむ。流石に、こんな所で体当たり墓穴掘りなんかするような、親不孝な英雄には、なりたくないわ」

─────────────────────────────

 >>>ははは……!

   ぼくの分まで長生きしてよ

─────────────────────────────

「ばか。そゆこと言わないの」

『────限界まで衝撃は緩和可能判定。

 ────"力量加圧(パワーアシスト)"、どうぞ。』

「あいよ」



 ひゅ─────るるるるるるるるるるぅ……


 ふおっ、


 …………、


 …………、



 ────キィィィ────────────ンん……!!




「ふぅ……」



 着地、成功……だねっ。



「──エンマさん。とりあえず、光の強いトコ、わかったよ──?」


「…………」


「……? え、エンマさん?」


「──う、」


「う?」





「打ち上げ、クルルカン────……!」




     ……高く、跳びすぎたわね。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ