チャリティーってなんやねん
ごめぬ、タイトル変えました(*´﹃`*)
何やら楽しそうな、
娘っ子のひとり言で、目が覚める。
むおっ、ここは……そうか。
どうやら晴れているらしく、
心地よい光が、秘密の部屋を照らす。
うーむ、久しぶりにゆっくり寝たのう……。
……むぅう?
クルルカンの娘っ子は、
誰かと話しておるように聞こえるの……
……はて?
部屋に入ってきた黄金の娘っ子に、
昨日の魚料理の礼と、
今、誰としゃべっておったか、きく。
「こ、今度、街で行われる、チャリティーのお芝居の練習、よ……?」
と、かなり動揺した様子で説明された。
た、確かに、役者としては適役じゃろうが……
子供受けは……しそうじゃのぅ。
ばかうけじゃろうのぅ。
黄金の義賊、クルルカンじゃからのぅ。
最近の冒険者は、街の活動に協力的なんじゃな……。
どはは、芝居の練習を聞かれたとは、
なるほど、確かに恥ずかしいよの。
仮面ごしにも、顔が真っ赤なのが、わかりよるわ。
ワシは遠慮したが、
小さな桶に水を出しよるので、
顔など洗わせてもらうとする。
相変わらず、いつの間にか手元に出る。
なんという早業じゃ。
これで、道化師でもすれば、
格好と相まって、一躍有名になろう!
昨日の料理の腕といい、
どこでも生きていけそうな娘っ子じゃな!
桶を返す際、
岩の狭間に二日もぶら下がっていた、
ワシの体を心配をされたが、
練り飯はちまちま食っておったし、
挟まったまま眠りもしたので、
大きな疲労はない。
でっかい焼き魚も、もろうたしな。
むしろ、娘っ子のほうが心配じゃ、と言うと、
何やらはぐらかされた。
やはり、ここにくるまでに、
かなり厳しい戦いをしたのかもしれん。
こやつの歳を考えると、少し思う所がある。
ただ、明らかに顔色は良くなっておるので、
深くは詮索せぬようにした。
この隠れ家の事といい、
何やらワケありなのじゃろう。
娘っ子は昨日の料理を作ろうとしたが、
何やら大変そうだったので、遠慮した。
娘っ子は、焼き魚を見て神妙な顔になった。
そんな顔せずとも、これも美味いじゃろうに。
「……エンマさんは、ここでなにしてたんです?」
「む? 鉱物を探しておったのじゃ」
「鉱物……っていうと、やっぱり、鍛冶屋さんなんですね!」
「どはは、ドワーフが全て鍛冶屋と言う訳ではないぞ?」
「はは、わかってますよ」
「せいぜい9割くらいじゃな」
「…………」
おお、やはり偏見を持っておったか。
意外そうな顔をしよる。
「ワシのように、流れておる者は珍しいよの」
「そ、そうなんですか」
「うむ。ワシは、石から探しておる。商売をしたいワケではないのだ」
「石?」
「うむ。素材の、だの」
ぱりっ。
んぐんぐん……。
ごぐごぐ……。
「……ッぱ。普通は持ち込みや仕入れで済ましちまうが、たまに、どうしても自分で鉱石を探してみたくなるドワーフがおる。ワシもそのひとりじゃ!」
「……なるほど」
「そうじゃ! 助けてくれた礼に、鉱石をやると言うたな! どれ……」
「え!? い、いや、いいですよ……岩殴っただけですし……」
……いや、娘っ子よ……。
ワシ、ドワーフだからわかるが、
あんな高密度の岩石、ハンマーで殴っても、
表面が剥がれるだけじゃ……。
おぬしのパンチ、
内部まで衝撃が貫通しておったぞ……。
自分がどれだけ非常識なのか、
理解しておらんな……。
「ほら、よい。ここらへんとか、どうじゃ!」
「えっ……うわ! これ……」
娘っ子に、美しい緑の原石を見せる。
まるで、昨日いた、深き森の光のようじゃろて。
「こ、これ、宝石なんじゃあ……!?」
──シュッ!
パラララララ………。
「!? いまどっからだしよった!?」
こやつ、マントの陰から本を取り出しよった!
な、なんじゃ? ……お?
「お! それは、"猿辞典"ではないか!」
「え? さる?」
「"バールモンキーでもわかる宝石・鉱石辞典"じゃろ!」
「あ! そうですそうです!」
「それは、なかなかよい本じゃぞ!」
「そ、そんな、有名な本なんですか?」
「うんむ。昔っからある本じゃ。鍛冶屋を始めた頃や、宝石商なんぞも、重宝しよる」
「そう、なんですね……」
ん? なんじゃ?
急に、大人しくなりよって……。
「あの……エンマさんは、この本の、"レエン湖"の記述を、読んだ事はありますか?」
「なぬ? レエン湖じゃと?」
これは鉱石の書本じゃ。
湖の記述など……いや、まてよ?
「ああ! 最後の節のか! 確か、"時限結晶"の項目じゃな?」
「──ッ!」
ワシの言葉に、
娘っ子の黄金の眼が、見開かれよる。
ふふ、どうじゃ。
ワシの記憶力は、なかなかのもんじゃろう。
「ワシも、若い頃に、その本に世話になったクチじゃ。しかしの、その記述は正直、眉唾モンだと思うとる」
「え…………」
「あれじゃろ? "騎士の冒険者"を父に持つ娘が、"時限結晶"を暴走させたっちゅう……」
「はい……」
「時空魔法の結晶化なんぞ……そんな国を滅ぼすようなアイテムがありゃあ、ワシが剣に打ち直して、王様にでもやるわぃ! どわっはっはっはっは……!!」
「は、はは、そっそうですよね! そんな危ないモノ、あるわけないですよねはははは……」
……ん?
何やら娘っ子が、眼をぐるぐる回しておるの。
そう言えば、こやつの頭の王冠も、
ぐるぐる回っておるの。
お、赤い宝石がついとる……はて。
あんな石はあったじゃろうか?
何にせよ、変なマジックアイテムをつけとるのう。
「ほれ、受け取れ」
緑の原石を、金の手に押し付ける。
「で、でも、こんな高価そうなもの……」
「かまわん! それに、それは装飾用じゃ! とても剣にはならん! ワシが持っていても、それほど役にたたん!」
「いや、お金になるでしょ……」
「売るなり焼くなり、好きにせぃ! それはワシからの気持ちじゃ!」
「焼きませんってば!」
娘っ子は、原石を見つめながら、
マントの影に辞典を隠しよる。
おい待て。
普通にやりよるが……
一体どこに消えたんじゃ……。
よもや、マント型のアイテムバッグなのか!?
なぁるほど! 洒落とるのお!
「この原石、すごく綺麗ですね……街の中で見つけたものなんですか?」
「なぬ?」
娘っ子が、不思議なことを言い出しよる。
普通、原石といえば、
岩をほじくりかえして見つけるもんじゃ。
……じゃが、娘っ子の言う事は、当たっておった。
「なぜ、そう思うたのじゃ?」
「えっ? だって、ここにくるまでの街の中に──」
キョトンと、首を傾げ、
二つ結の金を揺らしよる。
「──この石と、同じ光が出てる所が、ちょこちょこあったじゃないですか」
……………。
……………。
な、な、な……。
「え、えと…………あっ!?」
「なんじゃとぉぉぉおおおおおおお────!!!??」










