ひとり言はほどほどに さーしーえー
(´◉ω◉` )
飯テロをしたことを、
ここに、謝罪いたします。
またやるけど。
────シルエットは、紫。
「ちかいね」
────淡い、紫だ。
「きて、くれたんだね」
────たぶん、女の子だ。
あなた、は……?
「こっちに、きて」
また……。
「わたしは、まきこんだから」
まき、こんだ……?
「しらなかった、の……彼女が、いるなんて」
かの、じょ、って……
「わたしのせいで、ぬいとめられて、しまった」
…………?
「こっちだよ……」
………! まって………
「まってる」
ちがっ……!
「わたしを、けしにきて────」
「──────ッ!!」
──がバリ、と。
いつもの布団を跳ね除け、
黄金の身体をさらす。
「ここは……?」
『────おはようございます。オペレーティングを開始します。』
「クラウン……おはよ」
小さな窓から、でも、
強く、キラキラした光が、
石造りの、淡い赤の壁を、
照らしている。
朝特有の、空気の洗練さがあった。
「ぐ〜〜〜〜……」
「あ……」
ここ……仮面先輩の、隠れ家だ……。
離れた所の寝床に、
ドワーフのエンマさんが、
横向きになって腕を組んで、
幸せそうな顔で眠っていた。
「……ベッドに入った記憶が無い……」
『────ログ照会。昨夜、調理中に就寝。エンマ・ドジルグによって、マイ・ベッドに運搬。調理物は奪取されました。』
「奪取て……あ、食べてくれたんだね」
床を見ると、丁寧に重ねられたお皿が、
邪魔にならないように、壁に寄せてあった。
……やっぱ、照り焼きなんか、
無茶して作らなきゃよかったかな……はは。
料理の途中で寝ちゃったみたいね。
「クラウン……また、変な夢を見た気がする。何か、異常はない?」
『────自己分析中……完了。異常箇所:無。害意のある存在は、確認できません。』
「そう……」
『────以前に言っていた、呼びかけのようなものでしょうか。』
「……うん」
────こっちだよ。
「確かに、あの時の声だった──……」
『────レディ。警戒を怠りません。』
「あ、いや……なんかごめんね? 気のせい、かな……」
『────アンティ。』
「──……?」
『────何かが、あなたを呼んでいるのですね。』
「……信じるの?」
『────いつものことです。』
「! ……ははっ」
クラウンは、私の言葉を、
頭から否定はしなかった。
皮肉とも受けとれる返答は、
しかし、いつも信じている、
という意味も含まれている。
「ぐがか〜〜〜〜……」
「……エンマさんが寝てる間に、身の回りのこと、済ましちゃうかな」
『────レディ。』
「よしょ……むぅ」
ベッドからはい出る時に、
やはり、身体の重さが気になる。
早く寝落ちしたせいか、
精神はかなりスッキリしてるけど、
身体は、まだダル重だ……。
「ふぅ……けっこう、あの時に酷使しちゃってたんだね……」
『────重度の筋組織断裂ではありませんが、範囲が全身に及んでいます。疲労感を感じると予測。』
「ううう……ま、しゃあない……」
床の食器を、
エンマさんが見てないうちに、バッグ歯車へ。
……たれ付きのお皿を、
あんまり重ねないでほしかったなぁ。
汚れが移っちゃうかんなぁ……。
あ、まぁバッグ歯車で、
一瞬でピカーッなんだけどね?
……ふふ。
普通なら、一晩放置のたれ汚れで、
萎えてるところよね。
奥のドアを開けると、
左が書庫? 右が、小さな部屋だった。
ドアノブを歯車で固定し、
ヨロイを解き、
身を清めることにする。
バッグ歯車式シャワーを使いたかったが、
水音は、エンマさんに不審がられる。
お湯を出して、身体を拭くに留め、
後は不本意ながら、
例の歯車由来の、あっつい熱消毒で、
水蒸気まみれになった。
綺麗になったクルルスーツを着込み、
(グぉぉぉおおおん……っていって焦った)
仮面を付け、
小さな部屋を出ると、
小さなメッセージが、目の前に浮く。
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>>>そろそろ 話しかけていいかな?
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「……のぞきか、先輩……」
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>>>まて 話せばわかる……
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「……それ、普通なら、絶対のぞいたヤツのセリフですよ……」
『────安心してください。音すら聞こえていません。』
……それはそれで可哀想ね……。
……あ。そうしろっつったの私だわ。
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>>>ははは
朝なのに 真っ暗無音ですよ……
いや それはいいんだよ
アンティ 向かいの部屋なんだけど
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「? 本がある部屋?」
先輩の言葉のままに、
向かいの部屋の本を、歯車で回収する。
どうやら、雑記と歴史書なんかが、
あるようだった。
この、花言葉辞典ってなんやねん。
……ちょっと興味あるわね。
「なんか、恥ずかしい隠しものでもあったら、一緒に回収してあげるわよ?」
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>>>は、ははは……
やだなぁ 何をおっしゃる……
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「……あやしいな」
『────あやしいですね。』
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>>>ぼくのプライバシー ないよね……
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む。
そ、そうか。
そういう視点もあるのか……。
私はそーゆーの、
あんまり気にしなかった(覗き以外)けど、
確かに先輩って、
常時、クラウンに監視されてるみたいなもんよね。
「……ぷっくく」
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>>>あーあ あーあ 笑うがいいさ
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「ご、ごめんってば……いや、あの女の子に、尻に敷かれてると思うと、ね?」
『────あの、女の子……とは。』
「いや、アンタのことでしょ」
『────!!』
「ヨトギサキと会ったとき、手、握ってくれたでしょ」
ちゃんと、見てんのよ。
『────あ、あれは、その……。』
「いやー! クラウンが、あんな、ちんまい女の子の外見とは思わなかったわー! お目目、赤かったわね!」
『────……。』
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>>>お? いい矛先だな……
いいぞ もっとやれ
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『────むか。』
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>>>あ 後がこわい
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「てかさ、先輩も金髪だったのね! 目は、ちょっと黄緑っぽかったかな……?」
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>>>! よく見てるねー……!
ま、まぁ、ぼくの金髪は、
生まれつきじゃないんだよ
魔法でちょっと変えてたというか
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「え!? そうなの!?」
はい、ツインテールも完了。
きゅいんきゅいん。
本を回収し終わり、
元いた部屋に戻る。
「んお……おはよう、娘っ子や……」
エンマさんが起きていた。
寝床で半身を起こし、
身長にしては、ごっつい腕で、
目を擦っている。
「ふふ、おはようございます」
「うむ。元気そうじゃな」
「ええ、お陰様で。ありがとです、ベッドに運んでくれて」
「おう! こちらこそ、ご馳走になった!」
「あ、そか……」
あの魚の照り焼き、
食べてくれたんだっけね。
「……どでした?」
「世界一、うまかった!!!」
あまりの言葉に、キョトンとする。
「──は、ははは! 何ですかソレ! 言い過ぎですよ!」
「そんなことはない! あんなあやしい液体から、あんなうまいたれができるとは!!」
「あ、あやしい……」
"シャウユ"のことね……。
いやぁ、私が能力おろしに行く前の週に、
プライス君のせいで、
アレが大量にウチに届いた時は、
流石に家族全員でお説教したわ。
ナベとか使ってお説教したわ。
母さんが眼を真ん丸にすると、
マジで怖いのよ……。
まぁ、研究してみたら、
なかなか素晴らしい調味料だったから、
いいんだけど。
「ところでおぬし……」
「はい?」
「今、誰かと話しておったか?」
「…………」
この後、のらりくらりと、
黄金の言い訳をした。
『>>>あ、クラウンちゃん、どしたの……って、痛い痛い! ちょ、無言でスネ蹴るのやめてもらえませんかっ!?』
『────滅殺。』
先輩……( º дº)










