表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
232/1216

黄金の秘密の隠れ家 さーしーえー

 

挿絵(By みてみん)

「なんてこったい……」


 ドワーフのエンマさんについていくと、

 回廊のような場所が、崩れていた。

 とても立派な砦だけど、

 時の流れには勝てなかったみたいだ。


 崩れた所のすぐ側の壁には、大きなハンマーと、

 リュックのような物が置いてあった。


「……荷物は無事だったみたいですね」

「……すまん。ここには、四方を壁に区切られた、部屋のような所があったんじゃよ……」

「なんで謝るんです?」

「助けてくれたお礼に、寝床だけでも、と思うたのじゃよ……」

「あ、そ……うですね。もう、そろそろ夕方か……」

「おぬし、けっこう疲れておるように見えよるよ。二日もぶら下がっていたワシよりな」

「ん……!」


 そんなに、見た目でわかるほどかな……。

 ラクーンの里での戦い。

 さっきの牛野郎のボコボコ。

 ヨトギサキのこと。

 身体的にも、精神的にも、

 確かに、ちょっとまいっているかも。

 とにかく、ゆっくり休みたいや……。


「そこらへんで、火を起こしたりしちゃあ、ダメかな」

「……あまり、よくはないのぅ。火を怖がる魔物と、興味を持つ魔物がおるからな……できれば、壁に囲まれたような場所が、ここの遺跡では安全なんじゃ……」


 エンマさんは、この遺跡に、

 珍しい鉱石や、遺物を求めて、

 時々きては、滞在しているらしかった。

 森が近く、食べ物もなんとかなるそうだ。

 こんな街から離れた場所……。

 多分、私より、冒険の知識や、

 身の守り方は詳しいはずだ。

 もしかしたら、ウルフくらいなら、

 問題なく相手ができる実力者かもしれない。


「困ったのう……暗くなるまでに、まともな部屋を探さねばならん……」

「そ、ですね……」


─────────────────────────────

 >>>アンティ 言っとくことが

─────────────────────────────


「?」


 黄金の仮面様。

 なんざんしょ。


(なぁに?)

─────────────────────────────

 >>>ここ ぼくの隠れ家あるよ

─────────────────────────────

(──!!)


 ま、まじかっ……!!

 "隠れ家"ってと、あの、

 蕾のナイフと、

 バスリーさんへの手紙を、手に入れた場所のような!?


─────────────────────────────

 >>>使うかどうか アンティに任す

   ほら 今は この人いるから……

─────────────────────────────


「! …………」

「? どうした? 娘っ子……」


 そうだ。

 初代クルルカンが使った、秘密の隠れ家。

 そんなすごい所に、

 エンマさんを案内していいのかな……。

 あ、私だけ行く……?

 いや……。


 ────グラり。


「! おい!」

「──!」


 おっ……と。

 はは、ねむたい。

 こりゃいかんわ。


『────情報隠蔽は、確かに重要度:高の事案です。ですが、あなたには、しっかりと休める場所での、休息を推奨。』

「ん……」


 まだ、レエン湖には、ついていない。

 ここで、倒れちゃうより、

 しっかり休んだほうがいいに決まってる。


(先輩……部屋、きれい?)

─────────────────────────────

 >>>はは

   出ていく前に 掃除と結界したよ

   まって マーカー出す

─────────────────────────────

(ありがと……)



「大丈夫か!? ちっ、こうなったら、ここいらで野宿するしか……」

「──エンマさん、きいてください」

「! なんじゃ?」


 赤い髭と、赤い眉毛が、

 くいっと、角度をつける。


「──今からあなたを、ある場所に招待します。ですが、その場所のことを、誰にも言わないでほしいんです」


「! むぅ──……」


 エンマさんは、いきなりの提案で、

 面食らったみたいだった。

 こちらの眼を見て、考えている。


「……言えば、どうなる?」

「私が、困りますね」

「こ、困るて……そこは、おぬしがゆっくり休める場所なのか?」

「! ふふ……おそらくは」


 グラ、りと。

 また少し、身体が揺れる。


「っ……わ、わかった! 見ておられんわ! さっさと案内せぃ!」

「はは……こっちです」

「お、おぅ……」


 懐かしい、透明の矢印に(いざな)われ、

 半壊した遺跡を、歩いていく。

 後ろから、ハンマーとリュックを背負い、

 エンマさんが、続く。



「ここか……?」


 少しだけ、塔のようになっている場所につく。

 しかし、周りの壁は、

 やはり半壊し、太い柱のようなものだけが、

 この部屋と、上のまぁるい屋根の部分を支えている。


「お、おう……確かにここなら、まだマシじゃが……」

「違うよ……」

「ん?」


 私は、建物の中に入り、上の天井を見上げる。

 ……これまた、懐かしい。

 黄緑色の魔法陣が、光って、見えた。


─────────────────────────────

 >>>部屋の真ん中の、柱だからね

─────────────────────────────


「うん……」

「?」


 まぁるい、石造りの部屋の、ど真ん中。

 そこに、天井を貫く、一本の太い石柱。

 そこにも、植物が絡むように、

 光の蔦が、伸びてきている。


 仮面が、熱くなった気がした。


 ()れる。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!


「なっ、なんじゃっっ!?」

「────……へぇ」


 この前は、いきなり地面が消えたけど、

 今回は、天井から、何か、せり出してきた。


 階段(・・)、だ。


 ふふ、すご、い。


 まるで、絵本、みたい。



 ────ゴ、ゴ、ゴ、ゴゥン……。



 サラサラとした、砂煙を落としながら、

 螺旋状の階段が、石の天井から、伸びる。


「こりゃ…………驚いたな」


 エンマさんが、目をまん丸にして、

 つぶやくように、言った。


「すごい、でしょ」

「お、おぬし……。ここは、初めて来たのではないのか?」

「ん……」


 少し、怪訝そうに、きかれる。

 あやしまれてるのかな……。

 あや、あたまが、まわんなぃ…………。


「あの……ほら……私……"二代目"だから……」

「に、二代目……?」


 眠さにかまけて、なんだか、テキトーに、

 返事をする。


 いいや。

 登っちゃおう、かいだん……。



 キン、キン、キン──……。


「いきますよぅ」

「──えっ、あ! お、おぅ……」


 何やら首を傾げていたエンマさんも、

 でっかいハンマーに気を付けながら、

 石の螺旋階段を、登った。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ